監視・影響調査専門調査会(第9回)議事録

  • 日時: 平成18年5月15日(月) 15:00~17:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席委員:
    • 鹿嶋会長
    • 勝又委員
    • 神田委員
    • 林委員
    • 古川委員
    • 山口委員
    • 横田委員
  2. 議題
    • (1) 開会
    • (2) 多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する有識者ヒアリング及び質疑応答
      • 政策研究大学院大学 黒澤 昌子 教授
        「女性の能力開発の実態」
      • お茶の水女子大学 三輪 建二 教授  
        「女性の生涯学習 成人教育学の立場を中心に」
    • (3) 閉会
鹿嶋会長
ただ今から、男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会の第9回会合を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御参加いただきましてありがとうございます。
 本日は、能力開発・生涯学習に関する監視・影響調査検討会から、独立行政法人国立女性教育会館研究国際室長の中野様と学習院大学教授の脇坂先生のお二人に御出席いただいております。
 検討会につきましては、3月31日に第1回の会合を開催いたしまして、今後の進め方等について審議を行ったところでございます。
 それでは、本日の審議を進めさせていただきます。
 本日は、あらかじめ事務局より御連絡させていただきましたとおり、「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」について、有識者の方々からヒアリングを行いたいと思います。
 まず、政策研究大学院大学の黒澤教授から「女性の能力開発の実態」についてお話いただき、その後、お茶の水女子大学の三輪教授から「女性の生涯学習 成人教育学の立場を中心に」についてお話をお聞きすることにしております。
 それでは、黒澤先生よろしくお願いいたします。
黒澤教授
今、御紹介に預かりました黒澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は通常は労働市場一般の分析と言いますか、特に最近は高齢者の方はシルバー人材センターですとか、若年の方はフリーターの分析を、そのほか全ての人々に対する企業内での能力開発の実態とその効果、そしてまた公共職業訓練と言いますか、そういった公的な職業能力開発に対する施策がどうあるべきであるのか、そしてその効果といったものの実証的な分析もさせていただいております。
 

(パワーポイント映写)

◎女性の能力開発の実態について
 今日はかいつまんでという感じなので、皆さんの御参考になるようなお話ができるか不安なのですけれども、まず、第一に、職業能力開発に公的な支援はなぜ必要なのかというような話を、特に女性の観点から絞ってみると、なぜそれが余計に必要なのかという話を少しさせていただきまして、それに続いて、職業能力開発の実態が企業の中でどうなっているのか、自己啓発がどうなっているのかを既存の調査結果に基づいた実態をお話しさせていただきます。最後に、その実態を踏まえますと、女性は企業内で雇用主が負担をするいわゆるOFF-JTというものから除外されていることが多いものですから、どうしても自己啓発をやる傾向がある。その自己啓発を支援している制度として教育訓練給付制度というのがございますけれども、それの実態と問題点についてお話しさせていただいて終りにしたいと思います。
◎女性の能力開発(人的投資)における問題点
 まず、女性に限らず、なぜ能力開発というものに公的な支援が必要なのかというと、市場に任せておくと、どうしても能力開発は過少になってしまうのだということがあります。その理由は、経済学的な効率性の観点から見ても、例えば教育というのは、初等教育・中等教育はより大きいのでしょうけれども、受ける本人だけでなくてほかの人にも便益を与えるという外部性があるということですとか、自分の将来的な能力を担保に訓練を受けるための資金を借り入れることができないという資本市場の不完全性、それと自分がどこでどういう訓練を受ければ良いか分からない。そしてまた、これは非常に重要ですけれども、受けた後、どんなふうに評価されるのかということが分からないといった、そういった不確実性というものは男女共にあるわけでして、そういったものがある限りにおいては、能力開発は過少になるので、市場に介入して支援をする必要があると思われます。
 しかしながら、女性の場合支援がより一層必要だと思われる点が、こちらにございます仕事と私生活の両立が困難であるという状況です。そういう状況があると、女性の離職率は高まるという傾向が見られる。企業が訓練費用を負担した場合、その訓練の費用を回収するためにはより高い生産性をもってその企業に貢献してもらわなくてはいけないわけですが、離職してしまうと収益は途絶えますので、人的投資の期待投資収益が下がってしまう。だから企業はそういう人たちへの訓練投資は控えるということになります。
 しかも、女性は女性でも、A子さんは非常にやる気があって、結婚して子どもを産んでもずっと就業を続けるかもしれないけれども、B子さんはそうでないというようなことが分からないものですから、グループとして男性と女性と見たときに、女性の方が離職率が高いということで、女性というグループの平均でそういった判断をしてしまうという統計的差別をしやすくなるという状況があるわけです。
 しかしながら、企業だけが人的投資、能力開発をする主体ではないわけでして、実際女性本人も自分に対して能力開発をすることができる主体ではあるのですけれども、ここでまた、日本の現状としまして、年功賃金ですとか、そういったような状況で中途採用市場というのが活発に機能しておらず再就職は困難ということになると、自分が自己投資しても、自分に戻ってくる収益というものが非常に平均的に低くなってしまう。そうすると女性自身も人的投資を控えるという傾向が生じてしまいます。
 さらに、これが一番重要な点なのですけれども、実はこういうことも起こります。企業内訓練をやらせてもらえない。それはどういうことかというと、責任のある仕事に就かせてもらえない。そういうことになると女性の就労意欲が減ってしまう。そうすると、結局は離職率が本当に高まってしまうし、女性が自分の能力に投資しようという意欲もなえてしまう。いわゆる自己実現予測と言いますか、企業側が想定していた、女はこうだといったステレオタイプが実現化してしまう。こうした悪循環の生じてしまうということが非常に女性の場合は問題になっていると考えることができると思います。
◎女性の能力開発に必要なこと
 以上のことから女性の能力開発に何が必要かと考えると、③、④、⑤は男女にかかわらず必要である支援の在り方だと思うのですが、特に①、②は、先ほどのフローチャートの一番上の両立しにくいところをしやすいようにする。また、性別や年齢といったグループで管理するのではなく個別に処遇する。それはつまり処遇の均等化ということになるわけですけれども、そういったことを進めていくことが、結局は先ほど申し上げたような女性における悪循環を断つことに有益ではないだろうかと思います。もちろんそこには再就職をしやすくするという意味において③のような支援も必要であるし、一番最初に申し上げたような、資金制約に見舞われている場合の④のような支援も必要です。特に女性の場合は非労働力化する可能性が高いわけですから、そういう人ほど正社員という立場を持っている人よりも、自分の能力に投資をしようとしたとき、誰も貸してくれる人がいないわけですから、より手厚い支援が必要なのではないか。⑤は、いわゆる公共職業訓練ですとか、そういった直接的な機会の提供も考えられるのではないか。
 こんなふうに整理できるのではないかと思われるわけでございます。
◎高等教育:大学・大学院進学率の推移
 では、次に、まず高等教育の実態から見ていきたいと思います。次いで企業の中での能力開発について見ていきたいと思います。これは皆さんも御存じだと思うのですが、大学・大学院進学率の推移でして、女性がピンクになっております。このピンクの線は、実線が学部の進学率で、この学部の進学率は、3年前の中学校の卒業生に占める比率でして、4年制大学だけにしています。大学院への進学率というのは、大学の学部の卒業者のうち、直ちに大学院に進学した者で、医学部、歯学部の場合は博士課程への進学者も含むことになっています。御覧になるとお分かりのように、近年非常に女性の進学率が高くなっています。
◎高等教育:学部学生・修士課程学生に占める女性比率(分野別)
 ところが進学している学部や学科の中身はどうなっているのかを見たのが次の図なのですが、これは左側の赤い方が各学部の在学生に占める女性の比率でございます。それに対して右側のブルーの方が、これは修士課程の在学生に占める女性の比率になっています。こちらが合計で、全ての学部についてです。一番右側がMBAやいわゆるロースクールの部分ですけれども、見てもお分かりのとおり、このあたり(理学・工学)が非常に女性比率が少ないという状況がある。
 この部分(理学・工学)は、一般的に就職率は良いのですけれども、なぜそういうところに女性は行かないのかという話になるのですが、実はそういった学部を卒業して就職する場合、女性が必ずしも男性と同じように就職率が良いとは限らないということがあります。また、中に入ってからの昇進ですとか企業内訓練の機会も理系に女性が進んだ場合、後で不利な状況になるんですね。それは企業が嗜好的に差別しているというのでは必ずしもないと思います。これはアメリカでも言われていることなのですけれども、理学とか工学というのは、いったん辞めたり、キャリアの中断があると技能の陳腐化が非常に激しいとされています。ゆえに人的投資の期待収益力が非常に低くなってしまうので、女性が敬遠されるという統計的差別、すなわち合理的な差別を企業の側がやっている可能性もあるのではないかと考えられます。
 MBAは、しかしながら30%ぐらいは女性です。米国の場合、MBAの修了者に占める女性の割合は、1971~95年までに3.9%~37%に増えておりまして、特にビジネスの分野では女性の進出は向こうの国でもかなり進んでおります。日本もそういった状況が理学、工学と比べては進んでいるという状況になっています。
◎企業内訓練(OFF-JT)と自己啓発の実態(正社員)
 次に、企業内の訓練の状況はどうなっているのかを見たのがこのスライドでございます。
 これは、厚生労働省が、今は委託の調査になってしまいましたけれども、「能力開発基本調査」といって、従業員30人以上の企業に勤めている正社員に対して調査票を配って、あなたはOFF-JT受けましたか、あなたはここ1年間に自己啓発をやりましたかというようなことを聞いている調査です。この数値はその従業員調査に基づくOFF-JTを受講したという比率、自己啓発をしたという比率でございます。
 OFF-JTは、ここでの定義は「通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)のこと」、自己啓発は「職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動を言い、趣味というようなものは含まない」というような定義になっております。
 ここでは女性・男性それぞれについて、OFF-JTと自己啓発の実施率が棒グラフの高さでして、それに対して線グラフの高さの方は、実施した正社員における延べ時間というものです。1年間の延べ時間を見ています。これを見ますと、OFF-JTの受講率は大体男性が10%ポイントぐらい高くて、自己啓発についてはほとんど変わらない。延べ時間についてみても、自己啓発の場合はほとんど変わらないような状況になっていて、OFF-JTについても延べ時間で見る限りにおいてはそれほど変わらないというような状況が見てとれます。ですから実施率は変わるけれども、ほかはそんなに変わらないということが見てとれるのですが、もちろんこれは正社員といっても皆さん一緒になっておりますので、これを学歴別に見るとどうかというのが次のスライドです。
◎企業内訓練(OFF-JT)受講率(性・学歴別)
 これは、左側が女性で右側が男性です。棒の高さの方が実施率、線の方が実施した場合の時間になります。これを見ますと、先ほどの理系の話ではないですが、学部の文系の大卒の場合は、男性と女性でOFF-JTを受けた比率はほとんど変わらない。ところが理系の場合は非常に差がある。理系の場合は企業内訓練の機会でも非常に差があるというような状況です。しかしながら延べ時間で見ますと、文系の方でもこれだけ男性と差があるというような状況が見てとれるわけでございます。
 同じようなものを今度は自己啓発について見たのが次のスライドです。
◎自己啓発実施率(性・学歴別)
 今度は自己啓発ですと、この二つが大卒なのですが、女性の方がやっている。しかも延べ時間も女性とほとんど変わらない状況になっているというのが自己啓発の実態です。なぜ、女性が自己啓発を男性よりもやるのかといえば、それはOFF-JTという形で企業が提供する訓練から排除される傾向があるということが自己啓発を進めることの背後にあるのではないかということが推察されるわけでございます。
◎詳細な分析による男女差:OFF-JT受講率に対する男性ダミーの推計値およびP値
 今までの図表は単に平均を比べたものなのですけれども、昨年度この能力開発基本調査のJILPTにおいて利用させていただく機会を得まして、そこで回帰分析をしました結果がこちらです。これはOFF-JTの受講率、受講する確率に対する男性のダミーの推計値及びP値、P値というのは、統計的な有意性を示すものでございます。
 ここで性別以外にコントロールしているのは何かと言いますと、年齢、年齢二乗、学歴、職種ダミー、経験年数、転職経験があるのかないのか、同じ時期に自己啓発を一緒にしたのかどうか、企業規模、企業が労働者を増やしている企業なのか、そうではないのか、そういうようなものです。ここでの0.228ですが、これは「ロジット」の係数で、ちょっと面倒くさいですけれども、IN(P/(1-P))に対する影響です。何故こんな変なものを入れたかというと、比較のためなのですが、これをもうちょっと分かりやすく申しますと、年齢、学歴、職種、経験年数、自己啓発やったかどうか、企業規模とか、企業がエクスパンドしているか、そうではないかとか、そういったものを全部一定とした場合でも、男であることによってOFF-JTを受ける確率というのは限界効果で見ると4%~5%ポイントぐらい高まるという結果が出ているわけです。
 ただし、今のように企業の規模、企業の業種ですとか、企業の状況をコントロールしても、その企業による雇用の管理の仕方などの様々な違いはコントロールされてないわけです。
 こちらの「ロジット固定効果」と書いてあるのは何をしたかと言いますと、この平成15年度の調査の場合、従業員のデータと企業のデータがマッチできるのですね。そうすると同じ企業に勤めている従業員の属性の違いから、訓練実施確率の違いを説明することができます。ですから、年齢や勤続年数などが同じで、かつ同じ企業に勤めているのだけれども、片方が男の人だとどのぐらい訓練が受けやすいかということを推定することができるんですね。これを見ていただくと分かりますが、倍ぐらい男性の確率が高まる。つまり同一企業に勤めている人ということでコントロールを詳細に詰めた結果を見ると、実は男女格差というのは、平均で見るよりももっと大きいのだということが見てとれる。
 しかも、この星印は、この上にある推計値が統計的に有意に0と違うことを示すのですが、製造業だけに限定してみると、OFF-JT受講率の男女格差はほとんど有意ではない。ところがいわゆる女性とか専門職、ゴールドカラーとか言われている人たちや、全従業員に占める大卒者の比率が高いと言われているこういった産業でこそ、女性が男性に比べてOFF-JTを受ける確率が有意に低くなっている。また、中小企業と大企業とを比べると、どちらかというと、大企業の方で女性の方が受講率が低くなっている。そういう状況が浮かび上がってくるわけです。
 実際は、最初にお見せしたような平均値の比率で見るよりも、女性がOFF-JTを受ける機会が少ないのだということが分かるということです。
 以上は受講率についてなんですけれども、これを延べ時間についてやってみますと、同一企業の中の比較をやってみても、実は男女に有意差は見られなかった。
 次に自己啓発で同じようなことをやってみたのですが、自己啓発の実施率はほとんど男女に差はみられませんでした。自己啓発をやった人たちについての自己啓発延べ時間で見ても差がないという状況でした。ただし、OFF-JTを受けると、自己啓発をする確率が大体0.23ポイントぐらい高まるんですね。それを考えると、企業で企業内訓練を受けている方が自分でもやるというような、そういった可能性も考えられる。もちろん企業がOFF-JTをやらせる人というのがそもそも能力の高いことを示している可能性はあるのですけれども、OFF-JTを受けにくいことが、女性が自分に自己投資する確率をも低めている、そういう可能性もあるのではないかということです。
◎OFF-JT実施率:過去1年間(男女・就業形態・年齢階級別)
 以上が能力開発の実態に関する報告のメインな部分ですが、今のは正社員に限った調査でございます。実際のところ、正社員以外の人たちの能力開発の実態を調査したものは非常に少ないのが現状ですが、昨年度、佐藤博樹先生のプロジェクトで、経済産業省からの委託で、対象としては全国25歳以上54歳以下の男女の個人5,000人に行った能力開発についての調査がございますので、それをご紹介します。まずOFF-JTの実施率がどうなっているのかを見たのがこちらの図表でございます。ピンクが女性で、左の二つが40歳未満の若い人のグラフです。右の二つが40歳以上ということで、男性、女性です。
 これを見ますと、「(役なし)」の正社員の場合は、男性の方がちょっと高いという状況で、「(役あり)」の場合は、若い方はあまりやらないのですけれども、40歳以上になると女性の方がやっている人が随分多くなっています。ここでの非典型に何が入っているかというと、パート、アルバイト、嘱託、派遣、契約社員の全部が入っているのですが、この部分の若い人の中では女性の方が訓練受けている人が多い。いわゆる基幹パート的な、脇坂先生の方がよく御存じだと思いますけれども、そういった方々で受けている人が多いのではないかと思われます(40歳未満)。しかしながら、40歳以上になると男女がそれほど変わらないというようなことが見てとれる。しかしながら、これは平均値ですので、先ほどのような詳細な分析をすると、もうちょっと男女格差は出てくるのかもしれません。
◎自己啓発実施率:過去1年間(男女・就業形態・年齢階級別)
 このスライドは自己啓発実施率です。自己啓発ですので、今度は無業者も入っています。「昨年1年間で自己啓発をしましたか」ということについて、「はい」と答えた人の比率ですけれども、こちらになりますと、「正社員(役なし)」も「(役あり)」も女性が方が断トツに多くやっている。40歳を超えると女性の方が非常に高い比率でやっている。こちらは40歳以上も40歳未満も女性の方が本当に頑張っているという状況です。
 しかしながら非典型の女性はそれほどやっておらず、無業の場合でも、女性と男性と比べると、女性よりも男性の方がやっているという状況が見てとれます。非典型とか無業ではそうでもないですけれども、正社員においては、先ほどみたようにOFF-JTの機会があまり与えられないというようなことからも、自己啓発をやっている女性が多いという実態がここからも確認されるわけです。
◎教育訓練給付制度:利用状況の推移
 最後の部分に入ります。自己啓発というものを今日本で支援している代表的な制度として、例えば教育訓練給付制度というものが1998年にできました。この図は、その受給者の数をこの棒グラフの高さで、そして受給者の受給金額の平均値がどうなってきたのかを線グラフで示したものでございます。やはりピンクが女性のものになっております。これを御覧になると分かるように、非常に増えてきている。特に2000年から2001年にぽーんと額が増えているのは、上限が30万に引き上げられたからと考えられます。
◎教育訓練給付制度:推計対象者に占める利用比率(年齢別勤続年数5年以上常用雇用者に占める利用者比率)
 実はこの制度には問題があります。もちろんこういった制度ができ上がったこと自体、非常にすばらしいことだと思うのですが、教育訓練給付制度というのは、一応一般被保険者であった期間が5年以上ないといけないと、そういった制約がこの調査の当時はあったわけですね。先ほどのグラフですと、男の人と女の人とで利用者数はそれほど変わらず年々増えてきたわけですけれども、利用できる対象者は、女性の場合、勤続年数が一般被保険者として5年以上勤めている人は少ないので、対象者に占める利用者を見ると女性の方がだんぜんに利用率が高いというのがこちらの図が示しているものでございます。
 ここでは、対象者数を厳密にとれないので、賃金センサスのいわゆる常用雇用の正社員の勤続年数が5年以上の人数を分母にとりまして、分子に先ほどの利用者数をとったわけですが、これを見てもお分かりのとおり、特に20代後半から30代前半の女性における利用率というのが非常に高くなっていることが分かります。
 このようにみますと、先ほど見たように、企業内訓練から排除されているというか、対象外とされていたグループが、個人主導の能力開発を行う上で積極的に使っているということで、この程度は一定の役割を果たしていると言うことができるとは思います。
◎教育訓練給付制度推計対象者比率(年齢・性別、2002年度)
 これが最後のスライドになりますが、これは教育訓練給付制度の対象者がそもそもどのくらいいるかを、年齢別に見たものでございます。対象者は、先ほども申し上げたように、一般被保険者期間が5年以上ということですので、5年以上の人というのは、この図を見るとお分かりのように、40代以降の女性でぐっと減ってしまっています。つまり労働力から退出して、戻ってくるときはパートとして戻ってくる。あるいは非労化している、失業しているというような女性が多い中で、この教育訓練給付制度の対象になる人の比率は非常に少なくなっているわけです。この比率は誰に占める比率かというと、ここで使っているデータは、リクルートのワークス研究所がやっている2002年の「ワーキングパーソン調査」、なのですが、これはいわゆる首都圏とか東海、関西、つまり大阪、名古屋、岐阜地域、そして東京の周辺において、週に1日でも働いた人を対象にしております。その人たちに対して、この制度の対象ですかと聞いたところ、男女でこれだけの差があるということです。つまり、無業者はこの分母から排除されているので、無業者を含めると一層ドラスチックな男女格差が出てくると思われます。
 冒頭で、こういった訓練資金への支援というものは、通常の企業内の訓練を受けにくい人たち、自分たちでは訓練の資金を調達しにくい人たちを対象にすべきであると申しましたが、実際こんなにも女性の対象者の比率が低いということを見ますと、この制度をどうにか対象外の人も含めるような形で拡充するか、あるいはそういう人たちに向けて新たな制度をつくるということが必要なのではないか。特に、この制度があることによって、実は専門学校ですとか、そういった教育機関にとってみれば、価格の引き上げができるわけです。そうすると、制度対象外になっている人たちにしてみれば、この制度がない場合に比べて、より高い値段で訓練が提供されていることになってしまうので、公平性の観点から見ても、考え直すべき点が多いのではないかと思われます。
 

(パワーポイント映写終了)

 というわけで、女性という観点から見ますと、今後、外部労働市場で、自分たちの身につけたスキルがきちんと評価され得るような地盤の整備、また、自己啓発の支援を充実させるということ、そして企業内においては、両立支援と処遇の均等を進めることなどによって、最初に申し上げた、女性の能力開発における問題の悪循環というものがなくなると良いなと思う次第でございます。
 以上です。
鹿嶋会長
大変興味深い、データを裏付けして指摘していただいたように思います。皆さんの方で質問、御意見等ありましたらお願いしたいと思います。どなたからでも結構です。
横田委員
大変興味深い指摘をデータに基づく実証的な御報告で、恐らく実際にこのデータを一定の期間でとると、過去、例えば20年ぐらいからこうやってくると、ある種の変化はあるのではないか。特にこの4~5年変化がスピードアップしているなという感じがするので、その点について、何か調査の結果があって、ある種のトレンドがあるのかというのが質問の一つですね。
 もう一つは、コメントなのですが、私はこういうデータをとって発言するわけではないのですが、これまで大学などで教育に携わり、実際の実社会とのつながりのところも、多少若い人を紹介する、応援するというようなことをやってきたその経験から言いますと、女子学生の場合、それから女子学生でないとしても、高校卒業でも良いのですが、非常に資格を取る傾向が多いのですね。それが自分たちが好きだから、その分野の資格を取るというのもあるし、それから、ほかに行きたいのだけれども、社会的制約、先ほどおっしゃったですね、結婚して一時家庭に戻ったときに会社だと切れてしまう。でも資格を持っているとまだ続けられそうだ、あるいは続けられるというので、そっちの方の専攻が非常に強いんですね。
 専門学校のことをちょっと最後におっしゃいましたが、専門学校の方のどういう分野に、女性が多いか、男性が多いかというのを見ると、多分結構クリアーに出てくる部分があるのではないかという気がするのですね。仕事でいっても、例えば美容師とか、私の分野で言いますと、翻訳、通訳という仕事は圧倒的に女性です。それから出版関係の編集は、私の分野はみんな女性です。つまりある意味で専門性があって組織の中で位置付けられるというのとはちょっと別です。個人の力で評価されるところになると、女性だ、男性だと言っていられなくて、能力のある人を使わなくてはいけなくて、その場合に、実はそういう能力を持っている人は女性しかいないことが多いです。同時通訳の世界は恐らく90%女性なんですね。こんな現象があるということを感じまして、これがさっき申し上げたトレンドの中に出てきているのではないかという感じがします。
 同じようなことで、これにも実は書いてあるのですが、MBA(法大)と書いてあるのは多分法科大学院だと思うんですね。これはこれまでの法学部でも徐々に女性の比率は増えてきたんです。これは要するに弁護士資格という資格を、ただ、これまで女性が高校まで勉強してきて、それで大学で法学部にいきなり行かないで、教養学部とか外国学部に行きますと、司法試験を受けるという雰囲気がなくなっちゃうわけですね。ところが法科大学院は教養学部や文学部を出て、3年でちゃんと法学教育をしてしっかり勉強さえすれば、かなり高い確率で弁護士になれそうだというので、最初の年から非常に女性が多いんです。ですからいきなり3分の1ぐらいですね。これが次第に働く女性の置かれている立場を変えていくのではないか。
 そんなことをちょっと感じまして、それをどういうふうに、今後女性のエンパワーメントにいかしていったら良いのかということを感じたということです。コメントも含めてですけど、もし何か御説明いただけたらお願いします。
黒澤教授
ありがとうございます。本当におっしゃるとおりでして、資格の重要性というのは本当にあるのですけれども、なかなかそれが将来的なキャリアですとか、賃金に結び付いてないという実態があります。すいません、後者の方からお話しさせていただきます。実は先ほどの教育訓練給付制度の、このリクルートワークスのデータを使いまして、教育訓練給付制度を利用することによって、その後の5年間ぐらいでどの程度給与に差があったかということを見たのですけれども、男性の場合は全く有意な効果は見られない。それに対して女性の場合は有意にマイナスなんですね。
 教育訓練給付制度を利用された場合の講座の中身などを見ますと、やはり語学ですとか、そのあたりが非常に多いのですけれども、あとはワープロですとか、ITの初歩の部分ですね。そのあたりが、これは教育訓練給付制度を利用している人たちのアンケートなどでも見られるのですけれども、企業で自分の今置かれている職務にどれぐらい有益なのかですとか、今後のキャリアの設計というか、そういった相談とかコンサルティングとかアドバイスを全く受けないで、自分の受けている周りのいろいろな情報の中で決めているケースが非常に多く、そこで労働市場とのミスマッチが起きている可能性があります。
 しかしながら、どうしてこんなに女性は自己啓発するのかというと、企業内での人的投資の機会があまり得られないので、彼女たちにとってみたら、やはり自己啓発をすることの期待収益が一番大きなものなのではないかと思うんですね。だからこそそういったものをもう少し透明性を持たせるような仕組み、アドバイスを中に入れるですとか、そういったことは必要なのではないかと思う次第です。
 それから、最初のトレンドについてですけれども、すいません、実は私は今まで女性と男性というか、そういう観点を中心に分析を行ったわけではなく、今回のために女性と男性という観点からブレイクアップしたものですから、ワンショットで大変申し訳ないです。しかしながら、トレンドを見ると、きっとその中に面白い状況が見えてくるような気がいたします。
 90年代、バブルがはじけて以降、特に98年以降は、能力開発の実施率、能力開発・OFF-JTをやったという企業の比率でさえドラスチックに減っておりますし、自己啓発に任せて、能力開発は企業の責任ではないというふうに思う企業も増えているような、そういった不況という背景がございますので、その中で果たして男女の格差がどうなってきたのかというのは非常に興味深いことですし、ぜひ見てみたいと思います。すいません。
鹿嶋会長
ありがとうございました。しかし企業ではじかれて、教育投資やって自己啓発するのだけど、それが報われなくて、シジフォスみたいな形で。
黒澤教授
そうなんですよ。悲しいですね。当時大阪大学の大学院生だった、吉田さんという方が、自己啓発をした場合、4年後の年収で見たときに若干プラスの影響があったという研究結果をなさっていて、これは私の分析と違って、企業を超えた、転職をした場合に自己啓発がもしかしたら報われているのかもしれないという可能性を示しているのかなと。ただ、男女ということを問わず資格の効果というものを見たことがあるのですけれども、これがまた効いてきませんで、MBAでさえもでして、ミスマッチなのでしょうか。そのあたりをもうちょっと突き詰めていく必要があると思っています。
山口委員
自己啓発をする人は企業内訓練を受けられなくて、企業内訓練のプログラムと同じようなことをやっているのかどうか。そこまでの調査がおありになるのか。それから企業内で訓練受けたのと自己啓発を受けたという評価なのですが、それはあくまでも仕事の上で成果が出てきたときに評価なんですが、その辺の調査は連結調査はないのですか。
黒澤教授
ないですね。非常に難しいです。でも非常に重要なポイントでございます。ただし、先ほどOFF-JTを受けている方が自己啓発をやる確率が高まると申し上げましたけれども、その逆も真であります。その因果関係というものが、企業で学んでいるから、学んでいることを自分で補完しようとして、いわゆる宿題的な形で自分で学ぶということをやっているのか。それとも単に学ぶという行動をすることが好きな能力の高い人たちが両方やっているという、その能力の部分なのか。つまり本当に二つの行為が補完的なのかというところは分からないのですけれども、確かにそうした関係は見えているところでございます。
 企業によっては、企業内訓練ということではないのだけれども、自己啓発を非常にやりやすい環境にしている。例えば、これからあなたのキャリアを踏んでいく上で、こういうことが必要なのだということを明確にしている企業ほど自己啓発の確率が高いですとか、そういうことも分析から見えております。ただ、個別の内容で、それが連動しているかどうかということについて、そこまでやっている調査は私は存じ上げません。もう一点は、成果としてあらわれるかどうか。これもまた非常に難しい点で、特に日本の場合、賃金が改定されるのもそれこそ年に一度ぐらいでしょうし、また、年功賃金というか、長期的にその人の生産性を見極めて、報酬なり、その人の昇進なりに反映するようなシステムの中で、我々も分析するときに、訓練が起こってから何年後の状況を見れば良いのかというのは非常に難しいところです。ただ、2年後ぐらいを見たところによれば、ある程度の効果は見えておりまして、特に生産性と賃金というものの両方への効果を見ますと生産性への効果の方がより大きいと。しかしながら賃金へもある程度反映されているというようなことは、徐々に実証的な分析でも分かってきているところではあります。
鹿嶋会長
ほかにありますか。
勝又委員
企業内訓練の受講率のところで、学部・院卒の理系の女性が非常にそういうOFF-JTを受ける率が低いということなのですけれども、それは例えば企業規模というのでしょうか、理系の女性で大企業とか中小企業というような形で、基本的には大企業の方がOFF-JTに費やすのは大きいと考えて良いのですか。
黒澤教授
ですよね。ただ、男女差は大きいんですよね。
勝又委員
男女差は大きい。というと、この学部・院卒の理系で女性が非常に大きいというのは何が一番背景にあるのか。
黒澤教授
大卒で理系の人を採っているのはそもそも、大規模な企業の方が多いということはいえると思います。
勝又委員
大規模の方が多いんですか。
黒澤教授
多いと思うんです。ただ、これはちゃんとブレイクダウンしてみないと分からないのですけれども、先ほどロジット分析でもう少し詳細にやると、中小企業よりも大企業の方が男女の格差というのは大きいわけですよね。だから、その部分ももちろんありますし、しかしながら理系というトレーニングを受けてきた女性がどういう職にその企業で就いているのか、どういうポジションに就いているのかというのを考えた場合に、これは推測でしかありませんけれども、恐らく企業の方は、すぐに辞めるであろうというか、つまり理系の人を理系のトレーニングをいかす職に就かせるということは、企業が非常にたくさんのトレーニングをしないといけない。しかし女性の場合、離職率が高いですから、それを渋っているような状況があるのではないか。だからこそ男性の理系大卒の人たちが就くような仕事には就かせていないのではないか。これは推測にしかすぎないのですけれども、そういう状況が起こっているのではないかということですね。
 例えば、採用率で見ても、90年以降の不況期において、女性は男性よりも就職率は大きく下がったんですね。中でも文系の大卒の女性よりも、理系の大卒女性がより大きく下がったんです。理系の大卒の女性の場合は、大卒にもかかわらず専門学校を卒業した人と全く変わらないような就職率になっているというような結果もありますので、そこら辺で、企業の方のそういった採用とか、入ってからの雇用管理の在り方もそのあたりは違うのかもしれないなというふうに思います。
神田委員
自己啓発ですけれども、これは調査を詳しく見れば分かるのでしょうけれども、内容は大体どういうものなのでしょうか。それが、例えば10ページの図がございますけれども、この場合に、男とか女、あるいは年齢とか働き方などによって違いがあるのでしょうか。自己啓発の中身として。
黒澤教授
おっしゃるように、自己啓発の中身、これは能力開発のこの調査を詳細に見れば分かってくると思うのですけれども、私が今頭で覚えている限りにおいては、無業とか非典型の方は資格に結び付くものが多いですね。それに対して正社員の方は、語学ですとか、女性ですと特にそういったものが多いというようなことだったと思います。非典型の男性というのは、特にこれは派遣だけについて申し上げると非常に専門化している場合が多いんですね。そういう人たちはもうちょっと自分のやっている職務に直結したものをやっているというような印象はありましたけれども、すいません、もう少しそこら辺は詰めて見てみる必要があると。
鹿嶋会長
よろしいですか。
神田委員
もうちょっと中身が具体的にならないと。
鹿嶋会長
ほかにはありますか。私、一つお聞きしたいのですけれども、女性の理系の進学率の低さというのは、言ってみればジェンダーバイヤスの典型例だというふうによく言われますが、どうも今の話を聞いていると、就職が非常に文系よりもむしろ厳しいと。それから、会社に入ってからも企業の合理的な差別もどうもありそうだと、そのあたりをむしろ敏感にキャッチしちゃっているのですか。それが理系の進学率の低さに反映しているのでしょうか、どうなんでしょうか。
黒澤教授
それはあるのではないかと思いますね。それから、ただ、進学率、大学への進学率というものが、この平成不況の間にも、なぜ、あんなに上がり続けてきたのかということ自身は非常に不思議なわけで、これは、こういうことを言うと、私は女性なので、こういうことを言っても怒られないと思いますが、大学に行くことの収益の一つというのは、結婚相手と言いますか、自分の人生のパートナーと出会うことであると。そういうふうに考えた場合に、必ずしも自分の生涯所得というよりも、家計としての生涯所得を高めるというふうに考えた場合に、自分の就職率は低くても大学へ進学するということは一つの合理的な選択肢であり得るのではないかと思うんですね。
 それが理系に行った場合と文系に行った場合は、理系に行くと、周りは男性ばかりだからそっちの方が良いかなという気もするのですけれども。そうやって考えると、理系に何で女性が行かないのかというのはその仮説に反するわけですが、いかがでしょうか、脇坂先生。
脇坂教授
さっきのデータですけれども、家政学部は理系に入るんですか。
黒澤教授
すいません、家政学部は理系ではないですね。
脇坂教授
それなら安心です。家政学部だと、全然企業における扱いが、配置が違うので、入ってないんですね、家政学部は。
黒澤教授
家政学部はもうちょっとこっちに。
脇坂教授
さっきの学部別の文系、理系、文系には入るんですか、家政学部は。
黒澤教授
家政というのが1個ここに。
脇坂教授
文系でも理系でもないところに入るんですか。
黒澤教授
はい。
脇坂教授
そこではなくて、OFF-JTの受講率。
黒澤教授
理系の中にですね……。
脇坂教授
理系に入るのだったら当たり前だなと思うんです。私のイメージで言うと、例えば製造業で採用するのはエンジニアが多いんです、圧倒的に工学部の。そこだと男女の差別ないです、OFF-JTでも。もちろん微妙な差はありますよ。こんな差はない。家政学部のデータの影響がこれにあるのではないか。
黒澤教授
これは従業員個人調査で、理系か、文系かでマルつけるようになっているんですね。
脇坂教授
マルつけて、本人は何学部出身か、家政学部の人は普通はどっちにつけるんですか。
黒澤教授
文系だと私は思っていたのですけれども、どっちにつけるのでしょうか。
山口委員
神田先生、お茶の水女子大ではどうですか。
神田委員
理系の性格を持っているところとありますから、これをやるときには非常に難しいんですよ。丁寧に中を見てやらないと難しいと思います。
三輪教授
生活科学部という名前に変えていますけど、食物栄養学科という理系もあれば、カウンセリングコースもあったり、これは文系と位置付けると思いますよね。
横田委員
ちょっと興味があって伺いたいのですけれども、お茶の水女子大の家政学部、今、生活科学部ですか、高等学校の試験科目は数学はリクワイアされていますか。
山口委員
国立はみんなあるんじゃないの。
三輪教授
センター試験はありますね。
横田委員
ありますよね、これは一般的にどこでもあるわけですね。
三輪教授
大学で実施する中には数学は入っています。
横田委員
これもまたきちんとした調査の結果ではないんですが、前からそうなんですけれども、高校までの勉強と、高校での進学指導等の流れが、女性は数学が嫌い、あるいは得意でない。数学が得意でないと理系はやめなさいという感じで流れがそこで決まることがあるんです。もちろん家政学部、このデータで見ると大きいんですが、家政学部を持っている大学はそんなにたくさんないですから、家政学部出身者の数は実はそんなに多くないんですね、全体の中では。
 そういうことを考えると、私は高校までの教育の在り方にも偏りがあると。今、人文系は数学は全く試験科目になっていません。試験科目になっているのは英語が絶対なんですね。次に国語、それから、社会が入るか入らないかということで理科系の科目がないところが、男子の受験するところでも多いんです。その中で女性は初めから理科系へ行かないようなトレンドをつくっているのではないかという気がしますけれども、これは私のあまり学問的な調査の結果ではない印象なんですけれども。
脇坂教授
さっきの私の発言間違いで、家政学部が多い頃の話で、今、物すごく減っているから、影響力はないですね、ここには。
神田委員
この今の4ページの図なんですけれども、特に理工系が少ないというこれなんですけれども、少ないことを踏まえて政策的にいろいろ行われておりますよね。私どものところでも、女子高生を「夏の学校」といって理系だけの人たちを集めた、そういう場をつくったりしているんですよね。ですから、これについては、私は先ほど、変化、トレンドを見る必要があるという御意見、ここがとても重要だと思うんですね。政策との関連で、どういうふうにこの数が動いていくのか、そこら辺は分析しておかないといけないところと特に思います。
 それから、さっきの家政も減っている中でのことですから、全体の構成の中でどうかという、そういう分析が必要なのではないでしょうか。
鹿嶋会長
ありがとうございました。ほかによろしいですか。
原田審議官
一つだけ確認したいのですが、最後のページの資料なのですけれども、女性の対象者比率が少ない理由は、基本的にはパート、雇用常用という要件から外れる人が多いということですか。いったん子育てのために家庭に入った方が、再チャレンジをしようという場面ではこの制度は動かないのですね。
黒澤教授
失業しても1年以内ですよね。
原田審議官
パートで実態上はずっと5年を過ぎても更新されている方も対象になるわけですか。
黒澤教授
これは労働者の人に対象者かどうかというのを聞いていまして、それの比率です。不明を除いた比率に占める対象者であるという比率なので、そのあたりはもちろんきちんとした統計と乖離が出てくることは確かだと思います。
原田審議官
育児休業、例えば1年以内が多いかもしれないけれども、1年以内でも良いですが、育児休業をとっている人は対象になる。
黒澤教授
はい。
鹿嶋会長
黒澤先生、どうもありがとうございました。
黒澤委員
どうもありがとうございました。
鹿嶋会長
それでは、次は三輪教授からお話をお伺いします。よろしくお願いします。
三輪教授
始めてよろしいですか。休憩があるかと思ったのでのんびりしていたのですが、始めさせていただきます。
 それでは、私の方は、「女性の生涯学習-成人教育学の立場から-」ということで、黒澤先生の報告とはがらっとカラーが違うかもしれません。まずあまりというか、ほとんどデータが出てこないということと、それから、働いている女性を対象としたお話よりは、子育てをしながら、あるいは子育て終わってから地域で活動し、NPOで活動している女性たちを少しイメージに置きながらお話を聞いていただければと思います。
 

(パワーポイント映写)

◎女性の生涯学習-成人教育学の立場から-」
 なぜ、花があるのだと、こういう女性の生涯学習で花をということ自体がステレオタイプだと言われそうなんですが、これは私が花が好きだからという理解で御了解いただきたいのと、黒澤先生も女性がピンクで男性が青というあれでしたから、それに免じて御了解いただければと思います。
◎目次
 自己紹介の後は、大きく四つに分かれていますが、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲが生涯学習という領域における女性の学習の歴史的な展開を私なりに整理したもので、最後は私の専門が学習論ということですので、ほとんどあまり考えたことがないお話が多いかもしれませんが、お聞きいただければと思います。
◎自己紹介
 最初の自己紹介のところは、本当にあまり知られてない領域かもしれませんが、私自身は、成人教育とか社会教育学ということをやっていまして、ここの真ん中に書いてあるようなことをやっております。
◎『児童教育』16 2006.2(三輪建二教授資料その2)
 先ほどお配りした資料でこういうのがあるので(おとなのコミュニケーション・子どものコミュニケーション)ちょっと見ていただきたいと思います。小さな縮小コピーなんですけれども、私も今附属にかかわっていまして、附属小学校の『児童教育』という雑誌の中で最近書いたものなんですけれども、最初の方に「おとなのコミュニケーションの事例から」ということで、比較的地域活動の出発点になる話し合いのような活動に講師というか、ファシリテーターという形で入っています。線を引いたところをちょっと読んでみますと、「地域活動の具体的な体験を話している女性の発言を途中でさえぎり、『要するに…ということだね』といってすぐにまとめ、また体験談は議論に値しないと顔をしかめる男性もおられる。仕事場で培った、合理的で理論的だとされるディスカッションを良しとし、制限時間内でひとつの結論を出すという営みを、職場ではないはずの成人教育・生涯学習の場合にそのまま持ち込んでいるのだなと、と思ったものである」。
 要するに退職前後の方がだんだん地域に入ってくるときに、こういう場面に出会う。私が口下手だからうらやましいということもあるのですけれども、これがどうも女性たちの学習、かえって女性たちがしり込みする結果になっているということがあります。
 次の線でも、「男性の、一見すると合理的な議論の仕方に圧倒されてしまうのか、『話し上手でないので』としり込みし、まとめを報告する段になって、『慣れていらっしゃるから』と男性陣に発表を頼んでしまう女性たちが、とくに年配の方々に多かったのである」という体験を持っています。
 「2007年問題」というものが喧伝されていまして、その多くの議論は、一斉に退職する段階の世代の人たちが退職した後の会社の損害という議論なのですけれども、私のような成人教育の立場からすると、私のこれはちょっと偏った理解かもしれませんが、「一見合理的なコミュニケーション能力をもつ男性サラリーマンが地域デビューすることで、これまで、女性たちが主体となって築きあげてきた地域のコミュニケーション・ネットワークが徐々に、あるいは急激に崩れていくという問題として、しかも、女性たち自身が『男性の方どうぞ』という形で、この潮流に棹をさしかねないという問題としてとらえている」というのが、これが私個人の問題関心であります。
 それを教育学と言いますか、生涯学習という立場でずっと実践にかかわりながらやってきているというのを私の自己紹介に代えさせていただきたいと思います。
 でも、これはゴールがどこにあるか。女性がもう少しエンパワーメントされてきちんとした議論に参画できるようにということも一つの方向かもしれませんけれども、こういったらあれですけど、どっちもどっちだなという印象を持っていまして、生活の場というのは必ずしも一つの問題だけできれいに割り切れない、子育ての問題と介護の問題がリンクしたりとか、いろんなことをもう少し丁寧に聞き合ったり話し合ったりということが、退職した男性にもどれだけできるかということが問題かなというふうに思います。ちょっと余計なことですが。
◎Ⅰ 社会教育における女性(婦人)の学習
 最初Ⅰは、ちょっと過去にさかのぼりまして、戦後からの社会教育と言われる分野の女性(婦人)の学習ということを過去にさかのぼって考えてみたいと思うのですが、1949年に社会教育法というのが制定されまして、ここには学校教育法に基づき、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーション活動を含む。)ということになっていまして、これはほかの条文と照らし合わせて考えてみますと、基本的にはまず団体を対象としている。この中に青少年団体のほかに婦人団体なども社会教育関係団体として認定して補助金を与えるということとか、それから、4番目に青年学級とか婦人学級ということを書きましたけれども、団体や婦人学級を対象とする活動というのが、ここに女性という場合には位置付いている。
 もう一つ言えるのは、②に書きましたけれども、社会教育という領域は、必ずしも広くではなくて、基本的には教育委員会の関連施策のことを指していますので、今日のお話は、企業というのは、社会教育の定義の中には入っていないということが言えると思います。
◎婦人学級
 少し歴史をひもといて、婦人学級ということで言いますと、私よりも専門家がいらっしゃるのですけれども、稲取というところで、文部省が指定研究社会学級の一環として開設してから、結局身近な生活課題、嫁・姑の問題だとか子どもの問題などを小集団で話し合う問題解決学習という形で実施をしたということで、スローガンは、「承り学習から自ら学ぶ学習へ」と、そういうことがあったと言われています。
 なぜ、これが戦後一世を風靡したかと言いますと、ここにデータがありますように、非常に件数が増えているということが、山口先生もどこかでつながりがあると思うんですけれども、どこかでという言い方は大変失礼しました。
山口委員
いいえ。
三輪教授
それで、要するに予算があまりないということで、講師を呼ばなくても済むという、そういうこともあるのですけれども、女性たちが自分たちの日常の問題を、自分たちの言葉で語るという、そういうのは戦後今までなかったこととして、私は歴史的には大事なものではないかなと押さえています。その結果として、61年に文部省内に婦人教育課が設置されたという歴史があります。
◎共同学習運動
 もう一つ言えるのは、この時代、1950年代は共同学習運動と言いまして、これはどう言ったら良いのでしょうか。一方では戦前の生活つづり方という、日常の生活の問題を文章で丁寧につづっていくという、戦前からの歴史が一方であり、他方でアメリカのワークショップの考え方とか、ジョン・デューイの経験主義的な学習方法を取り入れるという戦前と戦後がマッチングされた形として、同時にお金がない。でも講師を呼ばないで自分たちで学べるということで、青年団や青年学級において「共同学習」運動ということがあり、これが婦人学級へも浸透したという歴史があります。
 ちょっと古いことかもしれませんが、私は今日的な意味もあると思って、後でお話したいと思っていますが、共同学習というのは、青年学級が下火になりましたので、むしろ婦人学級に継承されるという歴史があります。
◎共同学習から系統学習へ
 しかし、1960年代になりますと、共同学習が下火になりまして、系統学習というふうに言われるようになったわけですね。これが婦人の学習にとってどういう影響を及ぼしたかということはまだ私も少し歴史を丁寧にひもとかなければいけないのですけれども、要するに都市化とか高度経済成長が農村地域にも起こりまして、こういう婦人学級の共同学習は農村で盛んだったのですけれども、農村のいろんな産業の活発化というのは、決して農村の中だけの問題ではなくて、日本の産業全体の問題であり、更にひょっとすると世界の産業の構造転換と結び付いている。そうすると、「おらの村の話だけしていてもしようがないじゃないか」ということで、まず、もう少し経済学とか社会学、あるいは哲学、思想などを含めた専門家からきちんと社会科学的な学習をして、それと自分たちの日常の暮らしを結び付けていく。だから話し合い学習から系統学習へという流れが60年代に起こってきたということがあります。
 これが婦人学級の方でもそういう流れがありまして、共同学習というのはハイマール経験主義ということでかなり下火になっていったということがあります。
◎Ⅱ 社会教育から生涯学習へ
 次の段階、これが今の1950年代から60年代が共同学習と系統学習の流れということで、1970年代、1980年代を、これは私自身のネーミングなので、というか、分類の仕方なのでどれだけ正確かどうか分かりませんが、社会教育からいわゆる生涯学習へという流れが登場してきたと思います。それを私は5点に分けて整理をしてみました。
 一つは、先ほどの社会教育の実践のイメージは集団だったのですけれども、生涯学習というのは、基本的には個人にターゲットを絞っているという理解ができると思います。これは1981年の中央教育審議会答申の生涯教育についての定義なのですけれども、「変化の激しい社会にあっては、人々は、自己の(人々はですから、ここは複数なのですが)充実・啓発や生活の向上のため、適切かつ豊かな学習の機会を求めている。これらの学習は、各人が自発的意思に基づいて行うことを基本とするものであり、必要に応じ、自己に適した手段・方法はこれを自ら選んで、生涯を通じて行うものである。その意味では、これを生涯学習と呼ぶのがふさわしい」ということで、ここの定義は、生涯教育よりは生涯学習、自発的意思だからという定義で引用されることが多いのですけれども、私はこれに加えて集団的な志向から個人志向への転換という位置付けを私はしているつもりです。
◎2 知識・技術の高度化(1980~)
 それから、1980年代からよく言われるようになったのは、農村の近代化ということは先ほども言いましたけれども、もう少し更に激しい技術革新という時代を迎えまして、これは1985年の臨時教育審議会の第一次答申の中からピックアップした文章なのですが、国民の価値観が高度化・多様化し、新しい知識や技術を継続的に学習する必要があり、人生50年型から人生80年型の社会へ移行する。
 教育に対するこのようなインパクトに対して、生涯を通ずる学習の機会が用意されている『生涯学習社会』を建設することが重要ということですので、先ほどの個人志向に合わせて、新しい知識や技術を学ぶのは、これは生涯にわたってであるということで、主として高等教育レベルと言いますか、大学開放など婦人学級以外の学習機会の整備ということがこの時代に強調されたということがあると思います。
 こちらにいらっしゃる内閣府の方で婦人学級に参加された方はあまりいらっしゃらないかもしれないぐらい、あまりイメージがわかないかなと思いますが……。
山口委員
知っています。
三輪教授
御存じですよね。私は大好きなんですけれども。
◎3 女性学の浸透(1970年代~)
 それから、これは時代が前後しますが、新しい知識ということと若干重なる部分としてジェンダー・スタディーズの登場と浸透ということが、もう一つ、生涯学習の大きなインパクトとして挙げなければいけないと思います。これは私が特に細かく説明する必要もなく、家庭を含めた社会を男女が対等の立場で共につくっていくことが男女平等であるという視点から、これまでの男性中心の学問そのものを転換していくということで、これは本当に多くの女性に勇気を与えたということは私は十分、ちょっとデータを伴った立証は私自身はできないのですけれども、言えたと思います。
 ただ、これは別な見方、私のように教育学の立場から見ると、ともかく新しい知識として、当初の女性はそれを啓蒙的に学習する傾向があった。そもそも横文字から入ってきた学問体系という傾向もありましたので、まずは謙虚に学ぶということが行われていたように思います。そういう意味では、社会教育で行われていた共同学習とか集団学習というよりは、個人が新しい知識を習得し、同時に女性学を学ぶという流れがつくられていったのではないかと思います。
◎4 インフォーマルな学習(1980~)
 4番目に挙げているのは、それとはまたがらっと違う流れ、つまり個人志向の高度な知識の学習とは、また生涯学習というのはすごく曖昧な概念なのですけれども、4番目に挙げたのは、今までの流れと正反対と言いますか、1990年の生涯学習の基盤整備については、スポーツ活動や文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動等の中での生涯学習が行われるという定義をしています。
 私たちは「インフォーマルな生涯学習」というふうに言ったりするのですけれども、一見教育的価値が組織的に提示される場ではないところで、お互いに学び合う関係の中から、新しい知識や技術の習得も行われ得るということで、これは繰り返しますけれども、女性の参加が男性よりも多いボランティア活動での学習を生涯学習の中に広めているという意味では二つの層の学習をターゲットにしていると言いますか、個人的志向で高度な知識を求めている女性層と、ボランティア活動が高度ではないという言い方ではないのですけれども、インフォーマルな学習を行う人たちの層を両方生涯学習ということで組み込んでいっているという理解が私はできると思います。
◎5 教委以外の管轄の施設・教育機能
 そうなりますと、本当に先ほどの黒澤先生の話とはかなり違った対象がイメージされると思うのですけれども、つまり繰り返しますけど、あまり働く女性がというよりは、社会教育から離れつつあるのですけれども、やはり地域の人たちで活躍している人たちを対象にした、必ずしも職業とか資格ということを強調しない、生涯学習は本当は入るのですけれども、現実的にはあまり入ってこない部分が対象になっていますが、5番に書いてあるのは、それに対応する生涯学習の担当する行政の役割ということでちょっとまとめました。要するに社会教育という狭い範囲から、もう少し生涯学習の機会を整備、充実するというのが行政の役割であると方向転換をしているということです。
 したがって、社会教育課という名称が、80年代からは生涯学習課とか生涯学習振興課に変わり、同時に必ずしも女性の教育とか学習というのが、教育委員会だけに属するものではないということで、女性課自身が教育委員会から離れていくとか、そういう傾向も出てきています。
◎① 学習情報の提供(個人志向)
 それから、実際の行政の役割、行政といってもちょっと曖昧な言い方で申し訳ないのですが、生涯学習振興課等の行政の役割を二つだけ見ておきますと、一つは個人志向に対応しまして、どう言ったら良いのでしょうか、働いている方はこういうのをあまり御覧にならないと思いますけれども、私は中野区に住んでおりまして、中野区の社会教育委員をやっているものですから、「生涯学習スポーツガイドブック」というのをちょっと回覧しようと思うのですが、これなどを見ますと、区の生涯学習振興課の役割は、一つはこういう行政の中での多様な教育事業を生涯学習課が網羅的にまとめて一冊の冊子として情報提供して、それを区民が自分のニーズに応じて選択をする。ですからこのプログラムを見ますと、教育委員会主催の事業というのは非常に少なくて、福祉課だったり、あるいは女性課だったり、他領域の行政がやっている事業も集めているというところが特色があるのではないかと思います。
◎WINET(三輪建二教授資料その2 5~7ページ)
 それから、今日ここにヌエックの神田理事長と中野室長がいらっしゃると思わなかったので、また、補っていただきたいのですけれども、今日お配りした資料の3枚目、4枚目は、これは私は個人志向の情報提供に位置付けてみたので修正があったらあれなんですが、私はこれは学生に積極的に進めています。WINETというのがありますけれども、これはパワーポイントには今日は用意してないのですが、WINETというのは、国立女性教育会館の女性情報ポータルということで、ここをクリックしますと、これは全部は印刷できなかったのですけど、横断検索とか義語使用と書いてあるんですか、ここに一覧がありますから、この中で自分が欲しい情報というものをまたクリックしていくということになります。次のページをあけていただきますと、これは縮小コピーなのですけれども、例えば、左側の方は、私は教育ですので、女性教育/キャリア形成というところではどんな情報があるかなと思って開いてみると、ここに掲げてあるような項目があって、更にこれをクリックすると個別の情報が出てくる。
 右側の方は、これは女性と男性に関するデータを調べたいなと思ったときには、そこを開いて、更にここに書いてあるような情報を入手することが可能であるということで、繰り返しますけど、個人志向で一人ひとりの女性が学びたいニーズを検索できるような情報システムを、これはヌエックの場合はナショナルセンターということですけれども、各都道府県の女性センターはこれは同じようなことをやっているのでしょうか。やはり情報提供というところは力を入れているということは言えるのではないかと思います。
◎② 重要な現代的課題の講座の提供
 またパワーポイントの方に戻りまして、そういう情報提供という個人手法の対応に対して、あまり個人のニーズに対応していますと、皆さんはどうなんですか。個人のニーズに対応してばかりしていて、それが正しいとなっていると、男女共同参画の学習への参加者が減ってくると。あまり関心を持たれないという現実があります。それよりはテニスに行きたい。男性の場合はなぜ講座に行って怒られて帰ってこなければいけないのだということになってきてしまいますが、他方で行政の重要な役割は、現代的課題の講座はきちんと提供するということで、少子高齢化や情報化とかグローバル化の一つとして、男女共同参画の学習のプログラムを提供する。
 大ざっぱなまとめかもしれませんが、生涯学習振興の役割は、情報提供という対応と重要な課題としての男女共同参画の講座の提供ということが大きく私は言える。これが一つの現状になっているのかなというのがここまでの整理になります。ここまでの整理というのは、これは現代のも入っているのですが、1980年代にこういう情報提供と現代的課題という二つの流れが出てきて、90年代からは更に新しい傾向が出てきたというのが私の理解です。それが協働の時代とがグループ学習ということになるわけです。
◎Ⅲ 協働の時代とグループ学習(1990年~現在)
 ある意味では、これは女性学を学習することの一つの転換というふうに位置付けられるのかもしれないと思っています。ある意味では新鮮であった女性学の学習というものを、多くの女性が、あるいは男性も含めてするようになっていて、ある程度内容を理解するようになった人々が育ってきている。そうだと、新しいことを提供するというよりは、女性学、男女共同参画に関して学んだことを、どうやって、今度は自分たちの生活にいかしていくかということになりますので、教育学の立場から見ると、次に書いてあるような啓蒙的な講義に加えての方が良いかもしれませんが、参加型学習(ワークショップ)というものに対する関心が高まってきています。
 それは別な言い方をしますと、個人への学習ニーズへの対応から、もう一度少しグループ学習ということが再評価されるという言い方もできるように思います。それが戦後の共同学習とどこまで似ているかどうか分からないのですが、もう少し分析が必要なのですけれども、例えばここでヌエックのと、また、あれなんですけれども、これはたまたま私の手元にあった、ちょっと古い平成15年度の施設職員のためのセミナーなんですけれども、これの目次を見ますと、講演や講義が最初にありますが、併せて体験学習とか分科会の学習があって、そこでワークショップなどが展開されて、そして、それは自分の問題として持ち帰っていくという流れが出てきていまして、70年代、80年代とは少しカリキュラムというか、プログラムの提供の仕方の転換があったように思います。
◎2 行政との協働(1990年代後半~)
 もう一つの特色は、1990年代後半からですけれども、これは北京女性会議の影響もありますが、女性の社会参加、これは内閣府の定義の中にも入っていますけれども、社会参画ということで、政策や方針決定過程へ女性がどう参画していくかということがテーマになってきています。そうなりますと、個人単位というよりは、NPOとかボランティア団体が、女性を中心とした団体も含めてですけれども、どうやって、これは議員になっていくということのほかに、どのようにして行政と協働できる能力を培っていくかということが大きなテーマになってきています。これも裏もあると思うんですけれども、行政がだんだんお金がなくなってきているので、これは女性学をする人から見ると、女性の団体を安上がり行政という形で活用しているのではないかという批判もありますが、エンパワーメントという視点から見ると、単に下請として活用されるのではなくて、きちんと提言ができるには、それなりの能力開発が必要であるということで、それをエンパワーメントという形で表現するようになってきたというのが新しい傾向ではないかと思っています。
◎3 女性リーダーの養成
 現代の傾向の3点目は、ある程度、一般の女性の、これはデータをとっているわけではないのですけれども、男女共同参画への関心が定着した段階として、今度はリーダー養成ということで政策決定への参加、あるいは協働のための力量形成を支援する学習プログラムの開発ということも出てきているということです。
 これも回覧しますが、今年日本女性学習財団というところで『学習支援ハンドブック』というものの編集にちょっとかかわりましたので、御覧になっていただきたいと思います。
◎Ⅳ 成人女性の学習論
 もうそろそろ終りにしたいと思うのですが、私の専門が学習論で、黒澤先生のようにデータできちんと話すことの大切さを痛感していまして、今、冷や汗状態なのですが、別な言い方をすると、私が具体的な学習の場面にしょっちゅうかかわっていて、女性の意識の変容とかのプロセスというのはなかなかきれいにデータに出なかったりするものですから、それに免じて許していただきたいと思うんですが、最近の傾向はワークショップ中心で、女性の自主的な活動をそこで支援するということと、同時にそこに男女共同参画の視点を取り入れるということが内容になってくるのですが、果たしてこの2点があると大丈夫なのかなというのが私の関心事です。
 そこで私はアンドラゴジー(成人教育学)ということをやっているわけですけれども、2点だけ紹介しますと、必ずしもこれは難しいことを言っているつもりはなくて、冒頭で紹介しました男性の発言にしり込みしてしまう女性のように、たとえ女性学を学んだとしても、いざ自分が行動するときに、学んだこととその成果が行動になってすぐには結び付かないということがあると思います。そうなりますと、女性学を学んだけれど、実生活に適応できないとか、学んだことと実際の行動が結び付かないということがありますので、そうだとすると、私などが教育のプログラム等にかかわる人間なのですけれども、そうだったら、講座の組み立て方自身を自主性とかエンパワーメントにつながるものにしていけば良いのではないかというのが私の発想になります。
◎平成15年度 あざれあゼミナール 「男女共同参画ファシリテーター養成コース」実施要項(三輪建二教授資料その2 P8~9)
 また、お手元の今日配布した資料を見ていろいろ前後して申し訳ないのですけれども、WINETの後の最後の2ページですが、私が2年ほど前に静岡県のあざれあというところで、ファシリテーター養成講座にかかわって講座の企画、運営、実践ということをやったのですが、私の仕掛けは、こういう企画とか運営、実践の仕方をあまり私が講師として教えるのではなくて、実際の講座の実施を参加者に全部委ねたということをやりました。
 そうなりますと、私の説明はハウツー的なものに終わっているのですけれども、みんなで相談して、ある講座を選んで、あざれあで実際に実施する。実際に実施するとなったらどんなことが必要ですかね、と問いかけて私は東京に帰っちゃうんですけど、そうすると、教えてくれない先生ということで、最初さんざん批判が起こるのですけれども、別の言い方すると、何が必要ですかね、という謎を残して帰っていくと、皆さんは広報が必要だよね、講師との交渉が必要ですよね、という形で、徐々に自分たちでグループを作って活動するようになっていきます。
 次のページはちょっと細かい字で縮小し過ぎてあれなんですけれども、実際の講座の実施までに、私がいない段階でどれだけグループのメンバーが集まって、実際の実施までにやったかということが書いてあるのですが、言い換えれば講座の組み立ての中でどうやってエンパワーメントということをやっていくかということを組み入れることによって、学んだけれども、現実にいかせないではなくて、講座の中でエンパワーメントそのものを実践的に学んでいくと、それが実際に実社会に戻ってからも、ある程度の活動ができるのではないかというのが、ここでの私の一つの実践です。
 繰り返しますけど、データをとっておいた方が良いんですよね。こういうファシリテーター役をやっていますと、抗議のメールは来るは、ちゃんと教えてくださいという連絡が来るはという中で、評判が悪くなっちゃうのですけれども、あえてそういうことをしているということと、もう一つは、男女共同参画とかジェンダーというのは、私はその人の生き方そのものにかかわる問題ですので、どうやって自分自身の生き方そのものの問題として考えるかということは、よほど学習として位置付けないと難しいのではないか。
 よく講座の感想文を見ますと、良い先生のお話が聞けましてありがとうございます、というのがあると、私はどこが良かったのですか、と聞き返して、また叱られるというか、批判されるんですけれども、それはどこが良いかということを自分で言えなければ、これは結局、ただ、講演を聞いたであって、男女共同参画が自分にとって持つ意味ということは理解されないまま終わるのではないかというふうに思います。それはある意味で、かなり相当大きな、あるいは長期間にわたる丁寧な学習の展開というのが必要になってくるわけで、自分自身が知らず知らずに身につけている価値観そのものにどこかで気づいていくということが必要になってくると思います。
◎②女性の人生経験への気づきと変容
 例えば、このパワーポイントでは、今日の全般のテーマとかかわるかもしれませんが、ある女性のニーズが、早く再就職したいなんですね。私などが講座のファシリテーターになると、すごくいじわるなファシリテーターで、あるいは内閣府の提言からすると、再就職の支援をすれば、それで良いのかもしれませんが、なぜ、再就職をしたいのですか、というような問いかけから始めたりします。そうしますと、ひょっとすると、その女性にとっては、今まで持っている仕事観とか家族生活そのものの在り方の再検討と、それに加えた上での再就職という位置付けを本人がきちんと自覚するという作業がないといけない。いけないというのは、ここは議論があるところなんですけれども、そういうふうに思っていますので、私は男女共同参画における価値観の問題というのは、かなり丁寧な学習プロセスを踏まえないと、良いお話でしたね、で終わって、うちに帰るとそのまま。「鹿嶋先生のお話はすばらしかったですね。」でもうちに帰ったらそのままということがやはり続くのではないかと思っています。
◎女性の学習の支援
 それを成人教育学的に見ますと、これは戦後の歴史からということになるのかもしれませんが、戦後は自発的、自律的に学ぶという共同学習が一時期あって、それが系統学習に経済成長に伴っていったん戻って、また、自律的な学習ということがあり、現代ではそこにただ、参加者の自発性に任せていくだけではなくて、何らかの形で働きかけると言いますか、先ほど言いましたように、自律性を促すプログラムだとか、行政とわたり合える能力をつけるための仕掛けだとか、更にはジェンダーとか男女共同参画の考え方そのものに対する問いかけとか、何らかの働きかけを講師側がするようになってきている。しかし、教えるのとは違う働きかけという意味で、ちょっとこういうよく分からない矢印を、教師が教えるから、長い矢印があって、学習者主体の学びになり、現在また少し講師の側が働きかけるという、そういう流れになってきているというふうに理解しています。
 パワーポイントには書かなかったのですけれども、ある意味では、今日の前半の話につながるかどうか分かりませんが、女性にとって生涯学習とは一体何なのだろうという問いかけにあまり答えてないかもしれませんね。子育て支援についての生涯学習はどうなんですか、再就職のプログラムの現状はどうなっているのですか、そういう質問に十分答えられない方向だったかもしれませんが、ある意味では生涯学習というのは、そういう子育て支援とか、再就職、あるいは政策決定への参加ということの基本になる、どう言ったら良いのでしょうか、女性のエンパワーメントというところに少なくとも私は注目しているということかもしれません。それが大事で、その基本を踏まえた上で、女性の人たちは、今度はそれこそ自己決定的に子育て支援とか、再就職とかというところにつながっていくのかなというふうに思っています。
◎まとめ
 繰り返しますが、ちょっと私の関心に沿い過ぎた報告で、生涯学習全体の報告ではないかもしれませんが、まとめとしまして、歴史的展開としての三つの段階。そして、女性の生涯学習論としては、自己決定性を獲得していくことへの援助とか、ジェンダーや男女共同参画の価値観の意識変容への働きかけとか、それから、個人のというよりはグループの、つまり行政と対抗できる力をグループでつけていく、そのエンパワーメントだとか、特にリーダー養成に今は少し焦点を当てているのかなというまとめで、後は参考文献で、私がかかわったものばかり取り上げて申し訳ないのですけれども、報告に代えさせていただきます。

(パワーポイント映写終了)

 御清聴ありがとうございました。
鹿嶋会長
ありがとうございました。生涯学習を非常に歴史的に整理していただきまして大変ありがとうございました。質問、御意見があればどうぞ。
古川委員
女性の生涯学習についての歴史、私も初めてお伺いして大変興味深かったのですが、一つは、戦後の大ざっぱに言えば、大ざっぱというか、私なりの理解で、一言で言えば、共同学習から個人学習志向と、再びグループ志向というようなことで大変興味深かったのですが、そこで3点ほどお伺いしたいのは、そういうふうな変化をしてきた主なる要因というのは何だったのだろうか。それは例えば学習を学ぶ、いわば女性のニーズというようなこととか、あるいは学者先生方とか、いろいろ世の中のそういったリーダーたちの一つの誘導というのか、リードぶりだったのか、あるいは予算がどうだということも含めて、行政サイドの要請というようなものがあったのかどうか。恐らくそういったものがミックスされたものだろうとは思うのですが、それについての何か御意見と言いましょうか、御見解があればということが一つ。
 それから、評価と言いましょうか、そういったものの評価というものをどう考えていくのかという問題。
 三つ目は、そういう変化をたどってきた生涯学習というものが今後どういった展開をしていくだろうかという予測みたいなものがおありであれば、お教えいただきたい。
 大変興味深いお話をありがとうございました。
三輪教授
専門家がほかにもいらっしゃるので補っていただきたいのですけれども、共同学習から個人志向、またエンパワーメントの時代の協働のというのは、私の整理なので、ひょっとしたら違ったまとめをする方もいらっしゃるかもしれせんが、これは生涯学習という概念もそうなんですけれども、少なくとも学者の誘導というのはなくて、教育学も生涯学習論も結構後追いの学問でして、現状がこうなっていて、生涯学習もそれにネーミングを当てるとこれですよねという傾向があります。それは必ずしも悪いことだと思っていないのですけれども、そうなりますと、基本的には存在が意識を規定するではないのですけれども、農村の地域の現状だとか、もう少し広い社会構造的な変化がこのような学習の転換を生み出している大きな要因かと思いますし、最近の協働のというのは、行政の対応もかなり大きい。NPOで成長した人たちがいっぱい出てきたので活用するという意味と、同時に何とかその活力を財政削減の中で利用したいということもちょっと大きいというふうに思っています。
 評価に関しましては、今日の私のお話は、評価にひょっとしたらなじまない分野をあえてお話して、私自身、学習のプロセスとか展開に関心があって、一人ひとりの何とかさんという固有名詞をイメージしながらいつも考える傾向がありますので、評価になじまないと思うんですけれども、他方で生涯学習は、今、政策や事業が厳しい評価にさらされていまして、そこはむしろヌエックの方に補っていただければ良いと思うんですけれども、評価できる部分として、評価というのは盛んに行われていると思います。参加率、講師とか事業評価みたいな形での参加満足度の調査などは行われています。
古川委員
非常に難しい注文ばかりしておりますので、どうもありがとうございました。
三輪教授
協働の時代だというのが比較的新しいので、今後はどうなるのかなと、ちょっと私もよく分からないところがあります。すいません。
鹿嶋会長
中野さん、その評価の問題、御指摘もありましたので、触れていただければ。
中野室長
評価は、国立女性教育会館も非常に難しいなというふうに考えておりますが、今のこの状況の中で、とにかく何らかのものは評価を出しましょうということで、今やっているのが、例えば募集が100人のところに何人来ましたか。それから、やった人がどれくらいの満足度を得ていますか。それから、それをやった後に、戻ったときにフォローアップ調査というのをやっていて、半年後にやって学んだことがどのようにいきていますかといったようなことでやっていますけれども、評価というのは数字を求められることが非常に多いのですが、数字ではなくて質的なものをどういうふうに評価していったら良いかというのが今本当に頭痛く考えているところです。例えば女性のエンパワーメントと言ったときに、数字ではなくて質だとしたら、どういったものを評価項目にしていけば良いのか、まさにちょうど悩んでいる最中のことだと思うのですが、理事長いかがでしょうか。○神田委員 共同学習から系統学習へ、グループ学習へという線についても、ちょっと異論があるんですよね。共同学習から系統学習へと移っていった、そこのところで女性学が出てきたのですけれども、社会教育の領域の中で意識の問題というのはずっとやってきたわけですね。それがいわゆる女性問題学習という形であって、その女性問題学習は共同学習の線でやってきたというふうに思いますね。
 それが全体の中でどうだったかという問題にはなるかと思いますけれども、だから、系統学習の延長線上にグループ学習があるというふうには思ってない。一貫しては共同学習に基づくグループ学習が女性の学習の中にあったと。
三輪教授
あったと思います。ただ、文科省というか、社会教育の焦点がそこに一時期当たらなくなってきたということは言えると思いますね。○神田委員 それはあります。そんなふうに思っておりまして、また、三輪先生といろいろお話させていただきたいと思っております。
 評価の問題は大変難しいのですけれども、生涯学習の中で、個人志向的なものと社会づくりなりが分化したところが非常に大きな問題であって、そこをつなげていくことがこれからの最大の課題だと思っております。
 男女共同参画社会づくりということが出てきたときに、個人志向と社会づくりをつなげて枠だととらえました。課題になっている、キャリア形成支援はどちらかというと、個人志向的な方向なんですね。そのキャリア形成支援というものと、社会参画のためのエンパワーメント、いわば社会づくりをどういうふうにつなげるかというところで個人志向と社会志向というもののつながりが見えるのではないかと思い、プログラムを考えているところです。
 それから、参加型学習ということについては、これは私どもの会館でも研究的に詰めなければいけないと思っています。
 研修で、講義を並べるだけでは不十分だと思っておりまして、それぞれの経験を取り入れながら学習するという、それが成人の学習の一つの大きな特徴で、それがないと表面的な学習になってしまうと考えております。
鹿嶋会長
ありがとうございました。なかなか難しいですね。
神田委員
難しいです。
鹿嶋会長
社会教育、社会学を知るというのも。ほかに御意見、どうぞ。
山口委員
三輪先生のお話を伺っていて、いろんな見方があるなと思って、非常に興味深く伺いました。戦後の女性が解放されて法律的に男女平等が保障されたましたが、女性たちがそのことを学習することから始まったと思います。最初は女性団体にGHQが会議の仕方とか、そういう民主的な議事の進め方の教育があったんですね。それで非常に女性団体が成長してきました。
 先生のお話を聞いていて、今はみんなが企画をして運営も全て行うようになり、これは大きな変化です。企画・マネージメントが女性団体に一番欠けており、やっと50年たってそこに到達したのかなという思いがしました。
 それから補助金の問題なんですけれども、社会教育法が改正されるときに、団体に補助金を出すという問題で意見が分かれたのですね。行政は社会教育の条件整備だと言われるけど、お金を出すということで、結局中身までいろいろ世話をするようになってしまう。団体の自主性というのが損なわれて、承り学習になってしまった。それがずっと尾を引いていると思うのです。
 もう一つは、1975年の国際婦人年の目標のインパクトはすごく大きかったと思いますね。女性対象の学習が、教育委員会の所管だったけれども、国際婦人年で特記された世界行動計画を国内的な男女平等政策として学習を位置付け、行政もその所管を、地方で知事部局に置くとか、国も総理府にと新しい行政で、教育委員会が所管が変わってきた。ある意味で男女共同参画に関しては、教育委員会の対応は遅れたと思います。その方の知識が少ないし、女性課の方が専門になってきて進んできたと思います。
 もう一つは女性学なんですが、女性学は70年代、75年から国内で盛んになってきて、大学の学科も設置されましたね。女性団体には直接あまりその頃は歓迎されていなかった。学問と女性団体の間でうまくかみ合わなかったということがあります。もっと女性学が、婦人学級や女性団体のところに入っていれば、あまり今のようなジェンダーに対する誤解がなかったと思います。女性団体も自主性が育っています。
 行政の手足は嫌よということですよね。だから自分たちで考えるというけど、大事なことは、お金を自分たちで作るという考え方が薄いと思います。それは財政が厳しくなったからこうだというのでなくて、本来的には教育というのは、自分たちがやりたいことを、自分たちがお金を作ってやるべきですが、一番欠落しているのは、そういうことに金を出すことをしないで国が出すのが当たり前ということがあると思います。
 この頃は承り学習はだめですね。大きな大会でも分科会があり、自分たちの意見を言い、一方的な学習だけではだめだというところに来ています。
 生涯学習というのは本当に先生がおっしゃるとおり範囲が広いですね。
 各地で男女共同参画ということで男性の方たちも入ってきているんです。女性たちが嫌がる。男の人たちは企業等での経歴をぶら下げて入ってくると言うんですよ。ここは平等なのよというけど、先生がお書きになられたとおり、企業等で身につけたもので理論的に合理的に整理するけれども、それはそれであって、語り尽くせない女性の生活経験があるので乗り合わせがとても大事だと思います。
 生涯学習も最近は情報の場ではないですか。私は今自分のところで、教育基本法の政治教育事業をしておりますけれども、成果が上がるのは時間がかかりますね。もしかしたら20年先かもしれない。この静岡のプログラムは実践的ですね。私は女性有権者のための政治教育プログラムを提供してきましたが、戦前派が減ってきた。若い人は自分の肩書になるもの、役に立つもの、趣味的なものへの参加が多くなってきて、しかも継続的に勉強するということがない。ちょうどテレビのコラムみたいな勉強の志向ですね。また、地方議会の女性議員が増えるよう養成講座をやっていますが、学習することが大事なのであって、受講者のうち何人当選して何%かということだけではない。努力の時代を経て、それが芽を吹く時代があると。やっぱり最低10年かかりますよね。
 ですから教育というのは、行政評価でギリギリ詰めて成果が上がらないとかということではないと思うんですね。最近の行政評価というのは、特にヌエックなんかも影響受けていると思いますが、教育の評価というのはすごく難しい。時間がかかることは認識しなければならないと思います。
 私、三輪先生の話、非常に興味深く伺いました。ありがとうございました。
鹿嶋会長
林委員が挙がりましたね。どうぞ。
林委員
整理されたお話、初めて聞きまして、歴史的な部分は母の生涯と農村の時代というのを重ね合わせながら聞かせていただきました。それで、感想と意見なのですけれども、多様な選択を可能にする生涯学習をどうつくっていくかという観点から聞かせていただいていたのですが、参加型の学習というところ、あるいは自主性とか共同参画の視点というふうに今後向いていかなくてはいけないだろうという先生の問題提起がありましたが、そういうふうに学習のスタイルも視点も変わってきたのは、国際的な女性運動ということと非常にかかわって、日本でも変わってきたという実感があります。聞くだけから参画をして気づいて、そして行動そのものも変える。かつて行動を変えられない時期がやっぱりあったような気がするんですね。それが今行動をする力をつけるというのか、企画をする力、提案する力、交渉力とか、それは今、行政との交渉力というお話もありましたけれども、行政だけではないですね。地域の中での交渉力もあるし、男社会における女の交渉力も必要になってきますし、そういったようなものを生涯学習の中で身につけて多様な選択肢につないでいくということの必要性を非常に強く感じながら聞かせていただきました。
 それで質問なんですけれども、最後のところで、先生の5ページのところで、「成人女性の学習論」というふうに出ているんですね。なぜ、そこが成人女性の学習論になるのかというのが、私は少し分かりにくくて、それは成人女性の学習論ではなくて、成人の学習論であり、生涯学習論であるとするならば、非常に分かりやすいんですね。
 というのは、一番最初に先生が書いてくださった文章の中にも、女性が体験を通して物事を発信し、自分の身辺から動かして変えていこうというところに根拠を持ちたいと思って学び始め、知恵を出し始めようとしているときに、男性は要するにこういうことだね、というふうに割ってくるというお話がありましたね。そういう世代が生涯学習の場にも入り込んでくる。そういう意味で、なぜ「女性の」となったのか、質問したいと思います。
三輪教授
独りよがりの発表かなと思ったんですけれども、良くいえば、私自身、机の上というよりはしょっちゅう出歩いて講座などにかかわっていますので、そういう意味では現実的な提言の部分もあったのかなという受け取り方をしました。最後の「成人女性」というところは、すぐには回答できないのですけれども、どうしたら良いのでしょうね。
 大きく分ければ、成人学習ということで、例えばこういうことなんですね。介護の問題という講座で、男性、女性一緒に入りまして議論すると、女性の方は一般的に「自分の母親がね」とか、「父親がね」という話をして、男性は「介護法の改正の問題点は」という話で全然かみ合わないということの中で、私は男性の方は、身近なところから問題を発する。だから、こう言うと厳しい言い方ですけれども、男性の方は退職したら、1年間、黙って公民館の講座に出るというのを提言したいのですけれども、1年間無言。それから徐々にというのも良いのではないかと思っているんですが、そうすると他方で女性だけを味方にしているかというと、女性の方も力をつけていくというのは大変なことですから、エンパワーメントというのは、交渉力も含めて、ですから最終的には両方が良いところをいかし合いながら学ぶということが必要だと思いますけれども、とりあえずは、私は地域の女性の方がこのままだと心配だなという余計な思いから「女性が」としました。
 以上です。
鹿嶋会長
ありがとうございました。いろいろ皆さん御意見、御議論ありがとうございました。今日のテーマである「多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習に関する施策」については、今後、引き続き調査検討を進めていきたいと思っております。
 本日の審議は、ここまでとさせていただきます。
 次回の専門調査会は、今月の29日10時より内閣府の3階特別会議室において開催いたします。
 議題は、都道府県・政令指定都市の審議会等の職務指定について取り上げる予定であります。
 最後に事務局から連絡がありましたらお願いします。
塚崎調査官
お手元に資料2としまして、2月9日の会議議事録をお配りしています。チェックをしていただいておりますので、公表させていただきたいと思います。
 それから、前回の3月31日の議事録(案)がございますので、修正等ございましたら、できましたら来週の月曜日(22日)ぐらいまでに事務局までお寄せいただきたいと思います。
 それから、能力開発生涯学習に係る施策について、府省調査を今やっておりますが、先日、委員の皆様方には御意見を伺わせていただいたところでございまして、お忙しい中、いろいろ意見をいただきましてありがとうございました。皆様の御意見を反映させていただいたものを現在府省に配布して、調査をしているところでございます。結果が出てまいりましたら、取りまとめて専門調査会で御報告をさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。
鹿嶋会長
それでは、これで本日の監視・影響調査専門調査会の第9回会合を終わります。本日はどうもいろいろありがとうございました。

(以上)