男女共同参画推進連携会議「ワーク・ライフ・バランスの取組推進」チーム 第2回会合 議事概要

  • 日時: 平成24年7月19日(木) 10:00~12:00
  • 場所: 永田町合同庁舎 共用第1会議室

参加者

(チームメンバー)

  • 権藤光枝議員、高橋俊介議員、萩原なつ子議員、南砂議員、静岡県立大学 犬塚協太教授(木苗直秀議員代理)、鍵山祐子議員、寺田範雄議員、全国地域婦人団体連絡協議会 夏目智子事務局長(柿沼トミ子議員代理)、全国中小企業団体中央会 石田さとし労働政策部部長代理(眞鍋隆議員代理)、麻島幸江議員、一般社団法人大学女性協会 阿部幸子会長(牧島悠美子議員代理)、糸数久美子議員、羽入田俊議員、社団法人日本観光振興協会 松山豊浩事業部長(齋藤芳夫議員代理)、大久保清子議員、一般社団法人日本経済団体連合会 阿部博司主幹(川本裕康議員代理)、髙瀬幸子議員、倉治ななえ議員、松井比呂美議員、大倉多美子議員、金子堯子議員

(内閣府)

  • 岡島 男女共同参画局長、武川 大臣官房審議官、木下 男女共同参画局総務課長、小林 男女共同参画局推進課長、河上 男女共同参画局総務課政策企画調査官
  • 議事概要

    ○各団体の活動等報告

    日本産婦人科医会、日本歯科医師会、日本女医会、日本医師会、日本看護協会、日本観光振興協会の各団体推薦議員より、各団体の取組内容や課題等について発表があり、意見交換を行った。
    その主な内容は以下の通り。

    (ワーク・ライフ・バランスの必要性について)

    • 医師にとって長時間労働と過酷な勤務環境が課題であり、ワーク・ライフ・バランスの実現は容易ではない。勤務環境では当直が特に過酷である。連続で当直をしないよう配慮される場合は多いが、当直翌日、仮眠や帰宅時間などの配慮はされていないケースが多い。
    • 看護職員の離職の特徴として、20代後半から30代にかけて就業率が急激に低下し、復職する看護職員は少ない。また定年退職後の勤務希望者が少なく、60代を過ぎると就業率が低下する。厳しい勤務環境、特に長時間労働と夜勤による負担が離職の原因となっており、長く働き続けるための職場づくりが重要である。
    • 女性の割合が増えているのに、女性の組織率が上がらない理由がワーク・ライフ・バランスにあると考え、意識調査を行った結果、「妻、母、嫁としての立場があり、時間的余裕がない」という回答が多かった。また、性別役割分担意識についての項目を見ると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」との考えについて、女性の7割が否定的なのに対し、男性の5割が肯定的であり、性別役割分担意識に関し男女の差が大きい。
    • 30代の初産・分娩が主流になるなど、高齢妊娠が増えているという現状とそのリスクを、ワーク・ライフ・バランスの基本知識としてご理解いただきたい。マスコミにプレスリリースした際の資料からもわかる通り、40歳を過ぎてからの妊娠は妊娠率自体が低くなり、医学的にもリスクが高い。女性のキャリアデザインを考えるうえで妊娠には適齢期があることを理解してほしい。正しい情報が伝わっていないことが課題である。
    • 高齢妊娠の問題に関し、高齢の出産をポジティブに報道することの問題もあるが、若年時に出産をしておかないと危険だということを、企業の人事を含め、知ってほしい。
    • 高齢妊娠の問題は広く知ってほしいが、「だから女性は出産が大事で仕事をしなくてもいい」とならないよう、男女共同参画の視点を持って発信していく必要がある。
    • 20代の産婦人科医の半数以上が女性となっている。妊娠適齢期の問題は、医師自身のワーク・ライフ・バランス、キャリア形成などの問題ともかかわる重要な問題である。
    • 次世代のことを考えた場合、ワーク・ライフ・バランスや女性のキャリアアップが置き去りにされている問題があることを指摘したい。
    • 女性医師、女性の労働人口は約4割程度にも達し、なお増加している。女性医師なくして未来の医療はなく、女性が働くことで経済にもプラスと言われている。こういう時代だからこそ、WLBを構築できる社会を作るべきだと思う。
    • 有給休暇を活用した長期連続休暇の取得と長期旅行の促進を目的とした「1ウィークバカンス」キャンペーンを毎年実施している。観光庁をはじめとするご後援、協力をいただいて取り組んでいるが、心身リフレッシュ等の「長期旅行」の効用をとおしてワーク・ライフ・バランスの推進活動とも連携を広げていきたい。

    (ワーク・ライフ・バランス推進の課題について)

    • 保育園体制は数の上で非常に不足しているのが事実であるが、特に保育士の養成が課題である。女性がプロフェッショナルとして働く場合、預けている子どもの状態が急変すれば仕事を中断して保育園に行かなければならないという大きな問題がある。そこでまず、病児保育の調査を実施した。
    • 健康保険から受け取る診療報酬が低廉であることの見直しや、子育てしながら就業できる支援体制の整備など、団体単独では実現が難しいのも現状である。
    • 病児保育も課題であるが、子どもが病気になったとき、責任のある仕事を持っている人は仕事を抜けるのが難しい。自分でなければできない仕事があるという働き方自体を、産業保健労働衛生の面から見直すべき時期という考えも出ている。
    • 子どもが病気の時くらいは父親と母親のどちらかが面倒を見るが本来の姿だと思う。ワークシェリングについて、日本は人員が豊富ではない。特に専門職では誰でも同じ仕事ができる体制を作ることが難しいのはどこの国にも共通の問題である。
    • 全国数十箇所の保育園の調査では、病児保育の稼働率が上がると赤字になり、病児保育支援の公的補助では賄いきれないという結果になった。ある地域の保育園で働く保育士にアンケートを行ったところ、自分の勤務する保育園では、病児保育がない方がいいとした人は54%、病児保育は不可能と回答した人は85%に上る。保育士が病児保育に協力できると回答した人は41%にとどまった。
    • 前出のキャンペーンで実施する一般を対象としたWEBアンケート結果を見ると、有休が取得しづらいなどの実情が継続的に示されている。長期連続休暇の促進に必要なこととして、「法律や会社の制度等による休暇取得の義務化」や「上司の理解や率先垂範」といった回答が毎年上位にあがっている。
    • 例えば出産でも、同僚の目を意識しなければならない面がある。休みを取りやすい精神風土づくり、意識改革が進まないと、旅行のための長期休暇も取得できない。
    • 会合が夜の8時に開催されるなど、長時間労働型の男性の生活リズムに合わせたものになっており、子育てに携わる者も参加できるように運営していく必要がある。
    • 高齢妊娠の問題や女性の理事が少ない問題などは、むしろ男性に聞かせたい。男性自身の意識やワーク・ライフ・バランスが大きな課題であり、男性にとっても重要な話だ。
    • 女性医師の役割は大きくなるが、女性が働きやすい環境とは男性にとっても働きやすい環境であり、その実現に向け、組織全体の意識改革、ひいては組織の文化を変える必要があるとの意見もある。
    • 文化を変えるという発言に賛同する。働き方や生きる価値、経済のあり方を含む話なので、経済のかじ取りをする人にワーク・ライフ・バランスをしっかり学んでリードしてほしい。指導的立場にある人、特に男性の意識改革が重要である。
    • 第3次男女共同参画基本計画でも「男性にとっての男女共同参画」は重点項目となっている。
    • 医師や看護師などの専門職の働き方を見直さないと、専門職になりたいと思う人が増えない。これも日本社会全体に言える問題だと思う。

    (ワーク・ライフ・バランス推進の取組みについて)

    • 現状把握のため実施した調査によると、医師の平均睡眠時間は短く、自宅待機も頻繁にある。メンタル面のサポートが必要との結果も出ている。これらの課題に対し、医師、病院管理者の意識改革・啓発のためのパンフレットを作製したほか、職場改善のワークショップを実施している。また、労働時間ガイドラインの作成を検討している。
    • 看護職確保定着推進事業として、2006年12月から2010年3月まで、「多様な勤務形態」、「短時間制職員制度の推進」、「選ばれる職場づくりの支援(サポートブック作成、配布)」に取組んだ。
    • 看護労働改善プロジェクトとして、2010年4月以降、「夜勤負担軽減と長時間労働是正」、「ワーク・ライフ・バランスの推進」に取組んでいる。具体的にはワーク・ライフ・バランスに関するワークショップを開催しているほか、夜勤・交代制勤務に関するガイドラインの作成を進めている。ワークショップでは、病院内の推進体制づくり、現状分析、アクションプランの作成、取組み成果発表と次期の計画などを盛り込み、PDCAのサイクルを回して少なくとも3年は継続する。
    • 上記ワークショップの中で調査を行ったところ、「勤務先に長く勤めたいとは思わない」という回答が多い。また、「看護ケアに十分な時間を取れる」という回答が少なく、専門性が発揮されていない状況が伺える。
    • 女性医師の場合、生活の質の向上以前に、仕事と家庭の両立が課題になる。そこで、キャリア形成に関して卒後11年~15年の医師を対象としたアンケートを実施した。女性医師は一般女性労働者でM型となる30代でも85%が、40歳以上でも90%以上が働き続けている。また、女性医師が働き続けられたのは、働き方を変えているためであり、そのやり方は大きく二つあることが分かってきた。(1)収入が減ってもよいので仕事を減らしている。この場合、その女性医師の時間給は男性より高い可能性があり、満足度は男性より高かった。大学病院で働く男性の満足度は最低であったが、一方で当直を止めたり勤務時間を短くした分を他の女性医師がカバーしていたと思われる。(2)子どものいる女性医師は大学病院を離れ、公的医療機関や診療所で働くことで、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指すという結果を得た。
    • 本会においては代議員は選挙によって選ばれるので要望することは出来ないが、今後は女性代議員の誕生が望まれる。
    • 女性医師の視点から行った調査により、過酷な勤務環境、非正規雇用者が多く出産や育児への方の保護が不十分であること、夫が医師である場合には家事、育児への協力度は低くなること、などの課題が明らかになった。男性を含めた医師全体の勤務環境の改善、医療への適正な投資のほか、指導的立場、意思決定機関への女性の参画が必要だと感じている。女性医師の支援のため、女性医師バンクによる就業継続・復職支援や若い女性医師・医学生、あるいは病院管理者を対象とした各種講習会などを行っている。また指導的立場、意思決定機関に参画する女性の割合を増やす取組を進めており、各委員会の役員に最低1人は女性を入れることを目指している。
    • 平成17年からは働く女性のための育児環境整備支援事業に取組み全国の保育園調査・特に病児保育を実施し、平成21年以降は女性中心ではなく男性を含めた男女共同参画への意識改革をテーマとしている。
    • 働きやすい環境づくりからスタートし、女性自身の成長が必要という視点から、平成19年から働く女性のためのキャリアデザインセミナーを実施している。
    • 国への要望により、臨床研修中の産休・育休に関する規程の整備を実現したほか、医療機関での短時間勤務正職員制度の導入を一部実現した。
    • 今後も一般を対象にウェブで実施するアンケートの中で、ワーク・ライフ・バランスについて、または長期旅行がもたらす効用などについて掘り下げて質問してみたい。また、セミナー活動等においても、ワーク・ライフ・バランスと旅行との関連などのテーマを検討したい。

    (取組の成果、または成果につながった取組)

    • 今のところの成果として、看護職員離職率が、2008年度から3年連続で減少した(2007年度12.6% → 2011年度11.0%)。このほか、超過勤務時間の削減、役割分担の見直し、職場の風土改善などが挙げられている。
    • 会内に設置した委員会に最低一人は女性を入れることを目的に取組んできた。目標の1割は達成しつつある。
    • 男性中心の社会を変えるということでは、情報提供や会議、フォーラムなどの取組を通じ、都道府県医師会の役員の意識を変えることで女性役員の数が増えている。情報提供を粘り強く繰り返し、振り返ってみると、結果的に少しずつ意識が変わったなと感じる。
    • サポートブックなどを活用し、アクションプランを各病院に働きかけを続け、意識改革をしてきた。アンケートを通じて、自分の病院の姿が見えるようになっており、それに基づいたアクションプランを作っていただくようにしてきた。とはいえ、成果というよりまだ途中だと考えている。
    • 働き方や意識の改革は重要。2002年に女医3人が同時に妊娠した時は男性の医局長があたふたしていたが、今では女性医師が妊娠することは想定内の事態となり、あたふたすることもなくなった。それは、2002年に休んだ人が産休を取ってもきちんと復帰できたという実績があったからであり、医局長の意識も変わった。休むことに不安はあると思うが、堂々と休み、堂々と復帰できるような環境を整備していくことが必要。

    (その他)

    • 女性理事が少ないという件について、例えばスポーツ系の団体など、理事は男性が多いので、選手と役員の構成にゆがみが生じている例がある。年功序列など様々な問題があると思うが、現役の構成に近づけるなど工夫が必要。こういうことを目標の一つに入れるといいのではと思う。

    ○今後の進め方 会合を1回追加し、各団体の発表から課題等を抽出した上で、「ワールドカフェ」の手法で全体的な議論を行い、今後の取組に活かしていくことが決定された。