第三部 「北京行動綱領」の重大問題領域の実施

3 女性に対する暴力

(1)賃金格差についての取組

労働基準法第4条では、賃金について女性であることのみを理由とした差別的取扱いが禁止されているが、実際に支払われている平均賃金(パートタイム労働者を除く。)の男女間格差を見ると、徐々に縮小してきているものの、1997年において女性は男性の63.1%となっている。こうした男女間賃金格差は、職務(職種、職位・職階)、勤続年数、学歴構成等のちがいによるところが大きいと考えられる。

男女間の就業分野の違いについては、これまで女性に対し、男性と均等な機会が必ずしも与えられていなかったことにより生じている面もある。このため、募集・採用、配置・昇進における女性差別の禁止、女性の職域の固定化や男女の職務分離といった弊害が認められる「女性のみ」又は「女性優遇」の措置の禁止、男女労働者の間に事実上生じている差を改善するためのポジティブ・アクションの規定の新設などを含む男女雇用機会均等法の改正、女性労働者に対する時間外・休日労働、深夜業の規制の解消等を行うなど、男女の均等取扱いと女性の職域の拡大が着実に実現されるよう努めている。

男女の勤続年数の差異については、男女労働者が育児や介護といった家族の一員としての役割を果たしながら働き続けることができるよう、育児休業制度、介護休業制度の定着をはじめとする職業生活と家庭生活との両立支援対策や、労働時間の短縮を積極的に進めている。

また、こうした男女の差異の解消を図るためには、その背景にある男女の能力や役割に対する固定的な考え方を改めることが重要であり、そのための広報啓発活動に取り組んでいるところである。

さらに、労働基準法については、従来からその履行確保につき指導を努めているところである。

(2)低い男性の育児休業取得率

育児休業法が1992年4月1日より施行され、今年で6年をむかえる。1996年度の調査によると、育児休業制度を導入している事業所は60.8%と、規模が500人以上の事業所では、97.1%となっており、この制度が次第に定着しつつあることが伺える。しかし、一方で育児休業を取得した者のうち99.2%が女性で、男性はわずかに0.8%となっており、育児休業取得者のほとんどは女性である。この背景には、日本的雇用慣行と密接に結びついている男女の固定的な性別役割分業と職場優先の企業風土があることが指摘されている。

1998年12月、政府の少子化への対応を考える有識者会議では、性別に関わりなく能力と仕事内容に応じた報酬体系を基本とした効率的で多様な男女共同参画型の働き方を可能にしていくことが、子育ての喜びと働く喜びを両立しやすい社会を築くために不可欠であるとの認識から、日本的雇用慣行と密接に結びついている男女の固定的な性別役割分業を隅々まで見直し、あわせて職場優先の企業風土を是正すること等の内容を盛り込んだ提言を提出している。

(3)景気停滞が女性の就労に与えた影響

我が国は経済グローバル化及びアジア通貨危機の影響による、昨今の景気停滞によって構造的な不況に陥っている。景気停滞の影響は中高年層のみでなく、女性も大きく影響を受けている。

総務庁の労働力調査によると1998年11月の女性の完全失業率は4.4%で、比較可能な1953年に統計を取り始めて以降で最高となっている。また文部省と労働省による、1998年3月に大学等を卒業した者の就職状況調査(1998年4月1日現在)によれば、就職希望者の就職率は、大学で93.3%(前年同期比1.2ポイント減)、短期大学で86.6%(前年同期比3.9ポイント減)となっており、学生の就職を取り巻く状況は、雇用情勢が厳しさを増す中、大変厳しいものとなっているが、男女別に見ると、大学男子で94.6%であるのに対し、女子については、男子を4.1ポイント下回る90.5%となるなど、特に女子の就職が厳しいものとなっている。

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