第46回国連婦人の地位委員会ステートメント

(環境・貧困)

今日我々が直面するグローバル・スケールの環境問題は、人類が貧困から脱するために生産性の向上を追及した一つの結果として出現した。しかし、その過程は又ジェンダー差別 を生み、固定化する結果をもたらした。その意味で、ジェンダー平等の実現とその戦略としての女性のエンパワーメントは環境問題の解決に不可欠であるといえる。

経済が発展し、福祉サービスが制度化された社会においても「貧困の女性化」の進行が指摘されている。その根本には生産資源へのアクセスにおけるジェンダーギャップや女性自 身の労働や収入のコントロールの欠如、労働市場や諸制度における不平等といった男女間の不平等な社会的分業の仕組みがある。

近年には、貧困は単なる物理的・経済的ニーズの不充足のみならず、自律性の欠如や尊厳の喪失、無力感といった側面をも包含すると理解されている。その意味で性差別と年齢 差別にさらされる高齢期の女性が直面する課題への取り組みは今後益々クローバルな重要性を持つであろう。

(国内の取り組み)

我が国では、2001年1月の中央省庁等改革に際して、内閣府に男女共同参画会議と男女共同参画局を設置するなど、ナショナルマシーナリーを強化した。また、政府は、女性 2000年会議の成果などを踏まえて2000年12月に策定された「男女共同参画基本計画」に基づき、具体的な施策の実現に努めている。会議は行政各部の施策の統一を図るための 企画、立案、総合調整に資する機関として、重要事項の調査審議、関連施策の監視の実施、税制・社会保障制度・雇用システム等がライフスタイルの選択に中立になるよう、政府の 施策の影響調査を実施してきた。政府は、閣議決定した仕事と子育ての両立支援策の方針等に基づいて、保育所の受け入れ児童数の増大等に取り組むとともに、育児休業を取りや すく、また職場に復帰しやすくする等、仕事と家庭の両立施策充実のための法律改正を行った。また、女性に対する暴力は人権侵害との強い認識の下、2001年4月には配偶者から の暴力の問題を総合的に規定した初めての法律である「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が制定され、着実に実施されつつある。

また女性農業者の経済的自立を促すため、法人化の推進や、能力の向上や環境整備を図るための技術・経営研修や情報提供、無利子資金の貸付等を推進してきている。今後とも 農山漁村の地域資源の管理や安定的かつ安全な農産物の生産など、持続的な農業、食料生産における良好な環境の保全に関して重要な役割を果たしている女性の活動を支援して いきたい。

2000年12月には環境基本計画が改訂され、環境保全に関する女性の高い関心、豊かな知識や経験が広く生かされるよう、環境の分野において男女の共同参画を進めることの重 要性が盛り込まれた。

(途上国支援)

途上国における均衡の取れた持続的な開発の実現のためには、開発援助の実施に当たり女性の役割・地位の重要性を認識し、配慮していくことが重要である。こうした観点から我 が国は、1995年の第四回世界女性会議において、教育、健康、経済・社会活動への参加、の3分野に重点を置いたWID分野の開発援助の拡充に努力するとする「途上国の女性 支援(WID)イニシアティヴ」を発表した。その後、同イニシアティヴに基づき、保健・教育面での女性支援や人口家族計画への支援、女性の経済的自立を促進するための小規模金 融、職業訓練、労働環境の改善等への支援を積極的に行うとともに、この分野での途上国の政策立案能力向上の支援に努めてきている。

途上国における開発・発展に伴う環境破壊は深刻であり、特に貧しい女性がその犠牲になっている。途上国の支援にあたっては開発と環境保全との両立を図りつつ、持続可能な開 発の支援を行っていくこと、またそこに女性支援の視点を入れていくことが重要である。

また我が国は、国際機関に対しても積極的に支援を行っている。昨年10月UNIFEMより申請されたアジア、中南米、アフリカの三地域を対象とした「HIV/AIDSに関連するジェンダー 平等を通じた人間の安全保障の促進」プロジェクトに対し、この1月「人間の安保基金」から300万米ドルの拠出を行うことを承認した。

(アフガン復興支援)

アフガニスタンの和平・復興への取り組みを支援するため、本年1月東京において「アフガニスタン復興支援国際会議」が開催された。その会議に於いて小泉総理大臣は、日本のア フガン支援は、和平プロセス・国民和解のための支援と、アフガニスタンの将来を担う人づくりに対する支援に重点を置く旨述べ、復興支援の柱の中に「教育(特に女子)」、「女性の 地位向上」を挙げた。アフガニスタンにおいて、公正で機能的な社会を構築するためには、ジェンダーの平等、女性の地位向上が不可欠である。今後の具体的な支援にあたってこの 点に留意するため、内閣官房長官・男女共同参画担当大臣の主催で「アフガニスタンの女性支援に関する懇談会」を開催し、女性のニーズに合わせた援助の在り方について検討を 行っている。

(第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議)

児童の商業的性的搾取は国際社会が抱える深刻な問題である。我が国は、昨年12月、UNICEF、ECPATインターナショナル、児童の権利条約NGOグループとの共催で、第2回児 童の商業的性的搾取に反対する世界会議を横浜において開催した。児童の権利の深刻な侵害である商業的性的搾取の被害者は、主として女児である。この問題は、女児や女性の 社会的地位が低い場合や女性が社会の進歩から取り残されている場合には一層深刻なものとなる。児童の商業的性的搾取の根絶に向けて取り組んでいくにあたって、女児を搾取か ら保護するとともに、女性の社会的な地位向上に努めることが重要である。

(結び)

このように、現在、国内に於いても国際社会においても、ジェンダーの視点をもって諸施策に取り組むことが求められている。我が国としては、国内及び国外における女性の地位向 上と男女平等の実現に向けて、国際機関及びNGOを始めとする市民社会と意思疎通の場を設け協調しつつ、施策の推進に努めて参りたい。

(了)

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