第45回国連婦人の地位委員会ステートメント

(女性2000年会議の評価)

昨年6月に開催された女性2000年会議には、各国からハイレベルな出席があり、また多くのNGOが参加した。このことは、各国が女性の地位向上に関する問題に高い関心を有していることを示すものであったといえる。「政治宣言」及び「更なる行動とイニシアティブに関する文書」の協議は、一時はその採択が危ぶまれるほど難航した。必ずしも女性のための議論とは関連しないような事項で多くの時間を費やさざるを得なかったことは残念であったが、最終的に合意が達成されたこと、各国が男女平等実現の重要性を認識し、強いコミットメントをもって本問題に取り組んでいることを示すものであると考える。

採択された「政治宣言」の中で、各国が女性の地位向上のために取り組む決意を再確認するとともに、NGOの役割と貢献が重要であること、男性の共同責任が不可欠であることが確認されたことは評価できる。また、「更なる行動とイニシアティブに関する文書」においては、女性に対する暴力への対応の充実、仕事と家庭の調和促進のためのファミリー・フレンドリー施策の充実、開発や平和達成のための女性の政策・方針決定過程へのより積極的な参画、情報技術分野の教育や訓練等を通じた女性の雇用の向上などが言及されたことは、北京行動綱領からの進展の例として注目される。

(男女共同参画基本計画)

我が国においては、女性2000年会議の成果を踏まえ、2000年12月に施策の総合的且つ計画的な推進を図るため「男女共同参画基本計画」を策定した。基本計画は、11の重点目標の下、2010年までを見通した長期的な施策の方向性とともに、2005年度末までに実施する具体的な施策を記述している。例えば、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大、男女労働者の間の事実上の格差解消、農山漁村における女性の社会参画及び経営参画の促進、仕事と家庭の両立、女性に対する暴力根絶、女性の生涯を通じた健康の保持増進、男女共同参画や自立意識をはぐくむ学校教育・社会教育の充実等が、今後の施策として挙げられている。この基本計画に従い、政府は、育児休業をとりやすく、職場に復帰しやすくする等仕事と家庭の両立施策充実のための法案を国会に提出した。

(男女共同参画推進体制の強化)

また、我が国では、本年1月の中央省庁等改革の際、男女共同参画に関する国内機構は、男女共同参画室の局への格上げした。また、内閣府の中に、4つの重要施策に関する会議の一つとして、内閣官房長官を議長とし、関係閣僚と有識者で組織する男女共同参画会議を設置し、推進体制の強化が図られた。この会議は、男女共同参画に関する重要事項の調査審議のほか、施策の実施状況の監視やその影響調査などを行うこととしている。我が国は、男女共同参画の実現を21世紀の我が国社会にとって最重要課題と捉えており、新たな体制の下、全力を挙げて施策を推進していく。

(人間の安全保障の観点)

「更なる行動とイニシアティブに関する文書」においても新たな問題としてあげられているグローバリゼーションの進展は、人や情報の交流といったプラスの面をもたらす一方で、貧困、感染症、紛争、難民等とならび、貧困の女性化やトラフィッキングという問題を顕在化させている。これらの問題に取り組むに当たり、我が国は、「人間の安全保障」の観点を取り込むことが重要であると考える。99年3月には、我が国のイニシアティブにより国連に「人間の安全保障基金」が設立され、また、昨年9月のミレニアム・サミットにおいて総理より提唱した「人間の安全保障委員会」の設立が、本年1月に発表された。本年のパネル・ディスカッションのテーマの一つでもあるHIV/AIDS問題は、人間の安全保障に大きく係わる問題であり、途上国の開発の中心的課題の一つにもなっている。我が国としては「沖縄感染症対策イニシアティブ」を通じ、この問題に積極的に取り組んでいく考えである。

(第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議)

また、児童の商業的性的搾取も、人間の安全保障の観点から対応すべき問題である。児童の商業的性的搾取は、児童の権利の深刻な侵害であり、その保護のための対策を進めることは重要である。このような観点から、我が国は、UNICEF、ECPAT、児童の権利条約NGOグループと共催し、12月に横浜において第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議を開催する。我が国としては、この世界会議に多くの国からハイレベルの参加を得て、有益な議論が出来ることを期待している。

(結び)

女性2000年会議が成功裏に終了したことは喜ばしいことであるが、重要なのは今後如何にその結果を現実のものにしていくかである。そのためにも、今次会議において、今後の婦地委のあり方について十分な議論を行い、効果的な作業方法と実践的な中期計画を達成することは重要であると考える。また、我が国としては、国内及び国外における女性の地位向上と男女平等の実現に向けて、国際機関及びNGOを始めとする市民社会とも協調し、施策の推進に努めて参りたい。

(了)

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