国連婦人の地位委員会合意結論等

  1. 少女及び女性のための教育と訓練はとりわけ高い社会的・経済的見返りをもたらすものであって女性のエンパワーメントの前提条件である、という広範なコンセンサスがある。教育は、人権としての女性の権利に対する認識を高め、促進することを目的とすべきである。各国政府、国内、地域及び国際機関、非政府機関を含む、二国間及び多国間援助機関並びに市民社会は「北京行動綱領」に従い、農村女性、移住女性、難民女性、国内避難民女性及び障害を持つ女性に重点を置いて、女性の非識字率を1990年レベルの少なくとも半分に減らすための特別な取組みを継続すべきである。
  2. 政府及びその他のすべての行為者は、2000年までに基礎教育への普遍的なアクセス及び少なくとも80パーセントの小学校の学齢児童による初等教育の修了を確保し、2005年までに初等及び中等教育における性別格差を解消し、2015年以前にすべての国において普遍的な初等教育を提供するという、「行動綱領」で設定された基準を達成するための特別な取組みを行うとともに、多国間及び二国間援助の提供を検討すべきである。
  3. 教育のための目標及び目的を達成するための行動を関係諸機関がどのように調整するかを示す、「行動綱領」実施のための国内戦略・行動計画をまだ策定していない政府は、これを策定すべきである。戦略は、達成期限を定めた目標と監視基準を設けるとともに実施のための資源の配分又は再配分の提案を含めた包括的なものでなければならない。少女及び女性並びに少年及び男性が平等に教育を修了できるようにするために、あらゆる提供源からの追加資金の動員も必要かもしれない。
  4. 援助国政府は、国内総生産の0・7パーセントを全体的な政府開発援助に向けるという合意目標の実現に努めるべきである。また、政府開発援助と途上国国家予算のそれぞれ平均20パーセントづつを基本的な社会計画に振り向けるという相互の約束に合意したパートナーである当事先進国及び途上国は、ジェンダーの視点を考慮すべきである。
  5. 政府及びその他の行為者は、ジェンダーの視点をあらゆる政策及び計画の主流に据え、とりわけ、教育機会への不平等なアクセスと不十分な教育機会に対処し、かつ特に困難な環境にある少女及び女性に配慮するという積極的で目に見える政策を促進すべきである。女性の教育、訓練及び生涯学習が、あらゆるレベルの政策、機会均等政策の主流に、また国家人間開発計画がある場合にはその主流に据えられなければならない。女性の地位向上のためのナショナル・マシーナリー、政府の政策立案者、使用者団体、労働組合、非政府機関及び民間部門は、あらゆる政策がジェンダー問題に敏感に対応し、女性及び女性団体が政策立案過程に参画することを保障するために協力すべきである。
  6. 統合された政策立案は、女性の雇用と被雇用能力に重点を置いて、一方における教育・訓練政策、他方における労働市場政策という双方の政策の相互関連を強調しなければならない。女性の被雇用能力を高めるためには、特に科学技術分野の基礎教育と職業資格がきわめて重要である。融通性のある勤務時間体制や規則的でない労働に女性が多く見られる点を考慮すれば、仕事を確保しながら自らのキャリアを高めることができる「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(職場内教育)」への女性の参加を促進することが特に重要である。
  7. 女性にかかる余分な負担を軽減するために、家庭内の責任を新たに配分し直す必要性について認識を高めなければならない。
  8. 国家統計局、責任を有する政府省庁、調査機関、女性団体、使用者団体及び労働者団体は、女性、政府、政策立案者及び訓練機関に対し、入手できる限り最も有益な労働市場情報を提供すべきである。内容を改め、適切で最新化した労働市場情報システムにより、使用者の支援による訓練、現在の雇用傾向、所得及び将来の雇用機会を含む、訓練に関する男女別データを提供すべきである。
  9. 識字と理数系基礎知識だけでなく生涯学習能力と所得創出のための能力向上も盛り込んだ、的の広い成人教育・訓練プログラムが開発されるべきである。たとえば児童及びその他の被扶養者のケア体制を作るなど、成人教育への女性の参加を阻む障害を除去するための措置が講じられなければならない。
  10. 極小企業又は小企業の創始又は改善を希望する女性は、財政支援サービスへのアクセスだけでなく、企業経営の成功を支援するための、技能を基礎にした訓練へのアクセスも持つべきである。
  11. 政府は、教育と訓練を提供する責任を果たすべきである。政府の政策は、教育・訓練分野のさまざまな行為者が男女の機会の平等を促進することを保障するものでなければならない。政府は、訓練過程を適切で効率的かつ効果的なものにするために、公的部門と、非政府機関、労働組合、使用者団体及び協同組合を含む民間部門との協力を促進すべきである。市民は、教育、訓練及び雇用における男女の平等を達成するために、メディアが果たし得る重要な役割から利益を受けつつ、政府・非政府の取組みの動員に助力しなければならない。使用者団体及び労働者団体は、国及び地方レベルにおける職業訓練の提供に重大な役割を果たすべきである。政府は、特に遠隔地域に住む又は社会的、経済的、文化的及び肉体的制約を持つ女性に対する教育・訓練提供への女性の参加を確保する戦略を開発する最終的な責任を担うべきである。
  12. 教育に関する立案担当者及び政策立案者、政府並びにその他の行為者は、教育、技術訓練及び生涯学習を連続した不可欠要素と認める、これらの分野におけるプログラムを開発すべきである。このことは、フォーマル及びノンフォーマルな教育、学校外の教育、地域活動及び伝統的知識が尊重され、認められることを意味する。そのようなプログラムは、個人、企業、組織及び社会全般を巻き込む新たな学習文化の過程全体を通じて女性が平等を享受することを保障する、全体論的視点に立ったアプローチを取るべきである。
  13. 教育に関する立案担当者及び政策立案者は、少女及び女性のための数学及び科学技術教育に新たな重要性を与えるべきである。必要な技能を開発するために、女性は、たとえば情報技術など最新技術の利用を含むあらゆるレベルの科学技術教育、職業訓練及び生涯学習への完全なアクセスを有する必要がある。科学、工学、技術など少女及び女性の参入が足りない分野への彼女たちの参加を促進し、彼女たちが計画から適用、監視及び評価に至るまで新技術の開発に積極的に参加することを奨励するための取組みを、広範な戦略及び様式を用い、たとえば少女及び女性のための情報サービスや職業ガイダンスの開発を通じるなどして行うべきである。
  14. ジェンダーに配慮した教材、教室での実践及びカリキュラムの開発、並びに教員のための意識覚醒及び定期的なジェンダー研修の開発が、少女及び少年の身体的・知的発達を目的とした、ジェンダーに関する固定観念の打破と非差別的な教育・訓練の開発にとって、不可欠な前提条件である。性別分業を強化する、少女と少年の行動に対する期待の格差を撤廃するためのジェンダーに配慮したプログラムの伝達において、教員養成は不可欠要素である。すべての教育分野における多文化的でジェンダーに配慮したカリキュラムの開発を支援するためには、教員のジェンダーに配慮した指導能力を向上させる技術を研究し、広く普及する必要がある。
  15. 特に女性教員の採用、研修、労働条件及び地位が改善されるとともに、教員、教員養成担当者、学校管理者及び立案者のための、ジェンダーに配慮する研修が開発されなければならない。教育分野の管理における女性の参画不足を克服するために、積極的参画推進措置(ポジティブ・アクション)プログラムが奨励されるべきである。
  16. 教育と訓練における平等を確保するために利用できる手段、たとえば調査、広報キャンペーン、教員を対象にした再教育講習、ジェンダーに配慮した教材の開発、積極的推進措置及びジェンダー影響評価などの活用を促進すべきである。これらは、少女及び少年、親、教員、学校管理者及び政策立案者など多様な行為者を対象とする。
  17. 政府は、少女及び女性を学校に踏み止まらせ、高等レベルを含むすべての教育レベルにおける在学率の男女格差を解消するために、非差別的な教育と訓練へのアクセスを増大するとともに、安全かつ必要とされる環境を作るべきである。学校当局、親及び管理職員によって、学校内及び課外活動中の安全が推進されなければならない。学校給食プログラム、輸送手段、また、必要な場合には寄宿学校を提供するなど、あらゆる行為者が取組みに参加すべきである。あらゆる教育分野に対する、そして特に生涯学習に対する非政府機関の寄与は重要である。
  18. 政府及びすべての行為者は、特に困難な環境にあるグループへのジェンダーに配慮した早期児童教育の必要性を認識し、それを提供するとともに、女児のために質の高い教育の生涯にわたる学習を確保すべきである。
  19. 政府及びすべての社会的行為者は、成人女性の生涯学習を奨励するために、ノンフォーマル教育のプログラム及び広報キャンペーンを推進すべきである。
  20. 国連機関及び専門機関は既存の権限内で、あらゆる教育段階における女性及び少女の学業継続のための最善の実践又は戦略に関する情報を集め、普及すべきである。
  21. 役割モデルを提供し、女性が自らの社会の向上になす寄与を広く知らしめ、男女平等教育及び訓練の基礎を開発するために、女性学が支援され、そのカリキュラムと研究が教育機関と女性団体に共有されるべきである。
  22. 事務総長は、ジェンダーの視点の主流化に対する自らの全体的な責任を考慮に入れ、第4回世界女性会議のフォローアップの一環として、女性及び少女の教育と訓練に関する情報を分析し、「ウィメン2000」をはじめとする国連の公式言語による刊行物を通じて各国政府及び非政府機関に広く普及し続けるべきである。
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