国連婦人の地位委員会合意結論等

  1. 最近開催された国連諸会議及びサミット、特に「第4回世界女性会議」及び「国連環境開発会議」は、持続可能な開発の相互強化的な構成要素である経済開発、社会開発及び環境保護に対する女性の寄与が認識され支援されるべきであり、環境管理には明確なジェンダーの視点が必要である、と強調した。さらにまた、女性の寄与が認識され支援されなければ、持続可能な開発は画に描いた餅になるだろう、という。
  2. 「国連環境開発会議」の成果の5年目に当たっての見直しと評価に際しては、「北京行動綱領」(注13)及びその他の世界規模の会議の成果を考慮に入れつつ、男女の平等を達成するために、単に女性を主要グループとするという考え方にとどまらず、すべての法律、政策及び計画の中心にジェンダーの視点を据えることを主要な焦点とすべきである。
  3. 「アジェンダ21」(注14)及び「北京行動綱領」の国及び地方レベルにおける実施に関連するものを含む、環境に関する計画及び政策の企画と実施に当たり、責任を有するすべての行為者は、ジェンダーに基づいた分析のための分析手段と方法論の開発と適用によって、それらの計画及び政策にジェンダーの視点が全面的に組み込まれるよう保障すべきである。ジェンダーの主流化とその影響を評価するために、監視と責任の機構が整備されるべきである。
  4. 持続的開発委員会は、その将来の仕事の中心にジェンダーの視点を据え、持続可能な開発のための政策及び計画がもたらす女性と男性で異なる影響が十分に理解され、効果的に対処されるよう保障すべきである。
  5. 責任を有するすべての行為者は、持続可能な開発へのジェンダーの視点の組み込みに対して、政府省庁間、また国際レベルでは国連機関、基金、機構及びその他の国際機関の間の調整がなされて協力的な全体論的視点に立つアプローチを採用するよう求められる。
  6. 責任を有するすべての行為者は、適切な法律及び/又は行政規則を通じた財政面・技術面の意思決定への参画を含め、女性があらゆるレベルの持続可能な開発に男性と平等な資格で積極的に参画することを支援すべきである。
  7. 政府は、社会のすべての部門が成長の恩恵に与ることを保障するともに環境悪化を回避するために、貿易と投資の自由化政策がジェンダーの視点を十分に組み込んだ効果的な社会・環境政策によって補われるよう保障すべきである。
  8. 消費者の年齢や識字レベルを問わず理解されるエコマークの表示や地元のリサイクル計画などの方策を通じ、消費者として環境にやさしいやり方で行動できることを、男女双方ともさらによく認識すべきである。
  9. 男女のリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に及ぼす影響を含む、環境汚染物質及びその他の有害物質の影響に関するジェンダーに配慮した調査が強化され、女性のガンの発生率と関連付けられるべきである。調査結果は、国家政策及び計画の実施に関する調査の結果を考慮に入れつつ、広く普及すべきである。ただし、十分な科学的データのないことが、人間の健康に対する害の防止施策を先送りする理由になってはならない。
  10. 環境面から人間の健康を促進し保護することを目的としている政策の開発と実施にとって、それも、すべての人がその基本的ニーズである飲み水への量的・質的アクセスに対する権利を有する点に鑑みれば特に飲み水の基準設定におけるそれにとって、国内及び国際レベルでの女性の積極的関与が不可欠である。水の獲得、保存及び利用に女性が果たす重要な役割を特に尊重し強化する水資源管理に、ジェンダーの視点が加えられるべきである。廃棄物処理、水及び衛生設備システムの改善、水質や水量に影響を及ぼす工業、農業及び土地利用プロジェクト等に関わる意思決定に女性が組み込まれるべきである。女性は、その人間的ニーズのために、清潔で料金が手頃な水へのアクセスを持つべきである。安全な飲み水と衛生設備への普遍的なアクセスの保障が前提条件であり、そのためには、国内・国際両レベルにおける協力が奨励されなければならない。
  11. 政府は、関連の国際及び地域合意に従い、農薬を含む禁止有害化学薬品の不法輸出と闘うべきである。政府は、国際貿易において一定の有害化学薬品及び農薬に事前のインフォームド・コンセント手続きを適用するための国際文書の法的な締結交渉を支援すべきである。
  12. 政府、国際社会及び国際機関は、あらゆるレベルの環境保護及び保全に対する個人参加方式のアプローチを確保するとともに、政策及び計画の策定に当たっては、持続可能な開発は男女の共有責任であることを認識して、男女双方の生産的及び再生産的役割を考慮に入れるべきである。
  13. すべての政府は、「アジェンダ21」及び「北京行動綱領」で自らが行った、開発途上国への財政及び技術援助並びに環境的に健全な技術の移転を含む公約を実行するとともに、そのような援助及び移転すべての中心にジェンダーの視点を据えることを保障すべきである。
  14. 国際社会及び国連機関は、ジェンダー影響評価の実施能力の開発と分析手段及びジェンダーに配慮した指針の考案について、途上国への支援を継続すべきである。すべての環境影響評価の中心にジェンダーの視点が据えられなければならない。政府、民間部門及び国際金融機関は、投資決定がジェンダーにもたらす影響の評価を実施する取組みを促進すべきである。
  15. 政府、市民社会、国連機関及びその他の国際機関は、持続可能な開発政策及び計画の開発と実施にジェンダーへの配慮を組み込むことを保障するために、女性と環境に関する男女別データと情報を収集し、分析して普及すべきである。
  16. 国連、国際金融機関、政府及び市民社会などの行為者は、女性を対象にした継続的なプログラミングの重要性を認識しつつ、持続可能な開発のためのすべての資金提供計画においてジェンダーの視点を適用すべきである。資金は、部門を横断して分かち合うべきである。
  17. 多国間及び二国間援助機関、政府及び民間部門は、国際及び国内レベルにおける「アジェンダ21」実施の擁護に積極的な役割を果たす際、とりわけ、途上国の持続可能な開発のための国内政策及び計画を支援するに当たって、非政府機関、特に女性団体への支援を増大すべきである。
  18. そのような支援はまた、移行期経済体制の国に対して二国間及び多国間レベルで行われるべきである。
  19. 政府、教育機関、及び女性団体を含む非政府機関は、健全な環境上の慣行に関する情報を提供し、ジェンダーに配慮した教育を支援し、ジェンダーに配慮したこの分野の特別な訓練プログラムを開発するために、協力して働くべきである。
  20. 関係するすべての行為者は、とりわけ持続可能な消費パターンと天然資源の責任ある利用を通じた公式・非公式双方の教育訓練活動を利用し、青年期の少女及び少年と協力して働くことを奨励されるべきである。
  21. 政党は、ジェンダー面を備えた環境目標をその党綱領に盛り込むよう奨励されるべきである。
  22. 政府は民間部門及びその他の市民社会の行為者と協力し、とりわけ、地元住民、特に女性の力をつけることによって、貧困、特にその女性化を根絶し、生産及び消費パターンを変革し、持続可能な開発の基礎として健全で良好に機能する地方経済を創出するよう努力すべきである。女性が都市計画、基本的設備及び通信・輸送網の準備、安全に関する政策等に関与することもやはり重要である。この目的を達成するためには、国際協力を強化しなければならない。
  23. 女性は、持続可能で生態学的に健全な消費・生産パターンの開発と天然資源管理へのアプローチの開発に果たすべき不可欠な役割を持っている。天然資源の利用と保護における女性、特に農村女性及び先住民女性の知識と専門技術は、認められ、強化され、保護され、かつ環境管理政策及び計画の企画と実施に際して十分に活用されるべきである。
  24. 土地に関する権利差別に終止符を打つために、親族の男性の仲介を受けない、土地への平等なアクセスと管理権を女性に保障するよう、法律を立案及び改正すべきである。女性は、確実な使用権を与えられるとともに、土地及びその他の形態の財産、信用、情報及び新技術を配分する意思決定機関に十分に参画すべきである。女性は、「北京行動綱領」を実施するなかで、とりわけ相続を通じ、土地及びその他の財産の完全かつ平等な所有権を与えられるべきである。土地改革計画は、土地に対する女性の平等な権利を認めることから始めて、貧困女性及び男性がもっと土地を利用できるようにするためのその他の措置を講じるべきである。
  25. 政府は、先進的なエコ・ツーリズム(環境観光)事業の開発を促進して、女性によるこの分野の起業活動を促進・助長すべきである。
  26. 女性の人権に関する若者への教育と訓練を確保し、女性に有害で、女性を差別する伝統的・習慣的慣行を撤廃しなければならない。
  27. 政府、研究機関及び民間部門は、科学技術分野の教育及び訓練を保障することによって、太陽エネルギーなど環境的に健全な技術の開発における女性の役割や、新規かつ適切な技術の開発への影響における女性の役割を支援すべきである。
  28. 政府、民間部門及び国際社会は、安全保障と武力紛争と環境の間の関連性、及び民間人、特に女性と子どもに対するその影響に優先的に注意を払うよう求められる。
  29. 男女の平等が持続可能な開発の達成に不可欠であることを認識し、婦人の地位委員会議長は、婦人の地位委員会の合意結論「女性と環境」に対して、第5回持続的開発委員会議長及び「アジェンダ21」の実施状況を見直す国連特別総会の留意を得るべきである。

注:

注13
第4回世界女性会議(北京、1995年9月4日ー15日)報告(A/CONF.177/20 及びAdd.1)、第I章、決議I、付属文書II
注14
国連環境開発会議(リオ・デ・ジャネイロ、1992年6月3日ー14日)報告、第I巻、会議採択決議(国連出版物、販売番号 E.93.I.8及び正誤)、決議1、付属文書II
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