国連婦人の地位委員会合意結論等

  1. ジェンダーの視点の主流化並びにジェンダー分析及びその他の、男女平等を促進するために用いるあらゆる関連の方法には、児童及び被扶養者のケア、家事及び家庭責任の分担並びに無報酬労働に関する問題を十分に考慮しなければならない。
  1. 女性にかかる家庭責任の負担を軽減し、この責任の分担を実現するために提案された主な行動方針は、以下の事項である。

A.変化を認識すること

  1. 経済的、社会的及び人口統計的な変化-特に、経済・社会生活への女性の参画の増大、進展していく家族構造の性格、貧困の女性化及び無報酬労働との間に存在する関連性-、それらの変化が児童及び被扶養者のケアを保障する家庭の能力に及ぼす影響、並びに家事労働を含む家庭責任の分担は、女性だけでなく社会全体に影響する問題である。
  2. 北京「行動綱領」の実施に向けて国内レベルで立案された第1次計画及び戦略の中で強調されたように、家庭責任の分担及びその職業生活との両立が優先目標にならなければならない。

B.家庭責任における男性の役割を増大すること

  1. 家庭責任は、男性にも女性にも平等にある。家事、児童及び被扶養者のケアを含む家庭責任への男性の参画が増大すれば、子ども、女性及び男性自身の福祉に寄与することになるだろう。遅々とし、かつ困難なものにならざるを得ないとしても、この変化が不可欠であることに変わりはない。
  2. 政府は、とりわけ教育を通じ、また、従来は女性のものと見なされていた活動への男性側のアクセスの増大を促進することによって、考え方の変化をも含むこれらの変化を奨励することができる。

C.態度及び固定観念を変えること

  1. 家庭、地域社会、職場及び社会全般における無報酬労働と男女の相対的役割の地位に対する態度を変えることが重要である。この目的のために講じる施策は、女性と男性を等しく対象とし、また、思春期の若者に特別な注意を払いつつ、様々な世代を対象にするものでなければならない。
  2. これらの施策は、無報酬労働の社会的・経済的重要性の認識をそのひとつに加えるべきであり、とりわけ男女の同一労働又は同一価値労働同一報酬の原則を具体化する法律の採用及び適用を通じて、労働市場の差別撤廃を目指すべきである。
  3. 教育制度、特に小学校におけるそれが少女及び少年の役割認識の変革に果たす核心的な役割を認めなければならない。国内機構及び非政府機関が変革の促進に果たす役割は大きい。

D.法制度整備

  1. 立法及び/又はその他の適切な措置を取ることにより、男女間における家庭責任の分担のバランスを再調整するとともに、男女に現行の法律条項を知らせる必要がある。
  2. 仕事関係の責任と家庭責任の両立、、並びに児童及び被扶養者(特に高齢者及び障害者)のケアを確保するための立法的枠組みの開発が、社会的パートナーを含む社会全体及び政府によって促進されなければならない。後者(政府)が、変革の主たる行為者にならなければならない。
  3. 以下のための行動が必要である。
    (a)
    ジェンダー又は既婚であることに基づく、とりわけ家庭責任を理由にした、あらゆる形態の直接又は間接的差別を禁止するために、法律及びその他の措置を発布及び適用すること。
    (b)
    出産休業に関する法律を推進すること。
    (c)
    男女が育児休業を取り、社会保障の恩恵を受けることを可能にするような立法措置、報奨金及び/又は奨励措置を促進すること。そのような措置は、働く男女を解雇から守り、同等のポストで仕事に再参入する権利を保障するものになるべきである。
    (d)
    特に女性及び男性のためのフレックス・タイム制(自由勤務時間制)を導入することを通じて、男女が家庭生活と職業生活を両立できる就業条件及び仕事の編成方法を促進すること。
    (e)
    同一労働又は同一価値労働に対する男女間の報酬格差を解消し、非差別的な労働評価方法の開発及び賃金交渉へのその方法の導入を促進すること。
    (f)
    国際及び地域人権条約の批准又は承認及びその実施に向けて、積極的に取り組むこと。
    (g)
    「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准し、承認し、かつ実施を保障して、その普遍的な批准が2000年までに達成できるようにすること。
    (h)
    法律及び指針の適用を確保するとともに、男女の同一労働又は同一価値労働同一報酬に関するILO(国際労働機関)条約・第100号のような、国際労働基準を保障する自発的な倫理綱領が採用され、それが働く男女に平等に適用されるよう奨励すること。
    (i)
    労働条件の交渉に責任を持つ機関への女性の参画を奨励すること。この点に関しては、労働条件の交渉における女性の参画率とこの問題に関する重視度の間に見られる関係に注目すると興味深い。
    (j)
    社会保障制度に対し、働く男女が育児と介護に費やす時間を考慮に入れるよう奨励すること。

E.家庭支援政策を採用及び促進し、男女の家庭生活と職業生活の両立を奨励すること

  1. 家庭責任の平等な分担の原則に基づき、かつ労働市場における平等の促進及び子どもの権利保護のための政策と調和する家庭支援政策を国内、地域及び地方レベルで定めることが不可欠である。ひとり親の家庭に対して、特別な配慮がなされるべきである。もはや女性が“劣った者"及び/又は被扶養者と定義されることなく、資源に対して男性と同じアクセスを享受することを保障されるために、必要な場合には、法律を改正しなければならない。
  2. 国及び社会全般が、児童及び被扶養者のケアに責任を有する。この責任は、働いている男女や訓練中、勉学中又は求職中の男女に料金が手頃で信頼できる児童及び被扶養者(特に高齢者及び障害者)のケアサービスへのアクセスを保障するための地方及び国レベルにおける組織立ったアプローチの採用に反映される。この責任はまた、親及び使用者に対する報奨措置という形、地方自治体、経営側と労働側、非政府機関及び民間部門の間の協力関係という形、さらに技術的支援及び職業訓練へのアクセスの提供という形をとることも可能である。
  3. 政府がこの方面で行っている取組みを補う目的で、国際金融機関に対し、特に貧困の集中が比較的大きい地域において、母親の訓練又は有給雇用への参入を促進するために保育施設を設置する事業への融資の必要性が増大している点を考慮するよう奨励すべきである。
  4. 児童及び被扶養者のケアは、男女の新たな職業の主要な創出源になり得る。
  5. 飲料水及びエネルギーを供給するための適切な技術を利用することにより、家事負担を軽減する必要がある。

F.調査及び情報交換を展開すること

  1. 女性の地位向上のための国連システムワイド中期計画(1996年ー2001年)と両立する場合、様々な国連機関の能力を利用して、特に以下の諸分野で調査を行うことができよう。
    (a)
    家庭生活と職業生活の両立及び家庭責任の分担に関する男女の状況及び態度の変化-特に、サハラ以南のアフリカの情況における調査を行うべきである。
    (b)
    たとえば農業及びその他のタイプの非商業的生産活動における無償労働など、すでに国連の国民経済計算体系(注10)において考慮されている無償労働に関するデータの収集。
    (c)
    離婚又は別居後に夫から妻に支払われる扶助料の、様々な現行制度に関する情報の収集及び交換。
    (d)
    「行動綱領」の実施の枠組み内で、測定及び評価が示されている無償労働。
    (e)
    男女の無償労働が時間利用に及ぼす影響を測定し、また経済・社会政策の監視に使用するという観点からの、男性及び女性の無償労働に関する時間利用調査。

G.国際協力を通じた変革の推進

  1. 婦人の地位委員会は経済社会理事会に対し、男女平等を促進すべく策定される国連及び国連加盟国のあらゆる戦略及び政策は、男女平等という概念に不可欠な要素として、児童及び被扶養者のケア、男女による家庭の仕事及び責任の分担、及び無償労働といったものを十分に考慮に入れるべきであると勧告する。
  2. 婦人の地位委員会は経済社会理事会に対し、国連システム並びに国連加盟国の政策の決定に当たって、上記の諸提案が考慮されるよう勧告する。

注:

注10
国連出版物、販売番号E.94.XVII.4.
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