重大問題領域に関する合意結論

重大問題領域に関する合意結論

(総理府仮訳)

婦人の地位委員会は、

  1. 第4回世界女性会議で採択された「北京行動綱領」、特に女性の地位向上のための制度的仕組みに関する第IV章H項、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」及び国連システムのすべての政策及び計画におけるジェンダーの視点の主流化に関する経済社会理事会合意結論1997/2を再確認する。
  2. 国内本部機構の実効性と持続可能性は、国内におけるその定着度、政治・社会経済体制、及び資源へのアクセスが最も少ない層を含む女性のニーズとそのような女性への説明責任に大きく左右されることを認識する。加えて、地域及び国際レベルにおける情報の共有が国内本部機構及び関連するその他の制度的仕組みの強化にとってきわめて重大であること、ジェンダーの平等はあらゆる人権及び基本的自由の推進と擁護、民主主義の尊重、平和及び開発を通じて促進されること、並びに男女の完全な参画が不可欠であることを認識する。
  3. さらに、ジェンダーの主流化はあらゆるレベルにおける効果的な政策決定のための手段であり、対象を女性に特定した政策及び計画、平等法規、女性の地位向上のための国内本部機構及びジェンダー・フォーカル・ポイント設置の代わりとなるものではないことを認識する。
  4. 国内本部機構は北京行動綱領の実施に必要なものであること、及び、国内本部機構が効果的に機能するためには明確な権限、可能な限り最高のレベルへの位置づけ、説明責任の仕組み、市民社会との協力関係、透明な政治的プロセス、十分な財政的・人的資源及び継続的な強い政治的コミットメントが決定的に重要であることを認める。
  5. すべての国、特に開発途上国の国内本部機構の任務を支援するためには国際協力が重要であることを強調する。
  6. 経済社会理事会が1999年度実質会期のハイレベル・セグメントを女性の地位向上の審議に当てることを決議した理事会決定 1998/298 を歓迎する。
  7. 「北京行動綱領」第IV章H項の戦略目標の実施を促進するために以下の行動を取ることを提案する。

女性の地位向上とジェンダーの平等のために政府、国内本部機構その他の制度的仕組み、及び国連システムを含む国際社会が取るべき行動

  1. 政府が取るべき行動
    (a)
    国内本部機構の強化と女性の地位向上の支援に向けた、強力な政治的コミットメントを継続的に提供すること。
    (b)
    可能な限り政府最高レベルへの国内本部機構の位置付けと、女性の地位向上のためのすべての制度的仕組みに対し、その役割と責任の遂行に必要な権限の付与を確保すること。
    (c)
    国家予算のほか、特定のプロジェクトのためには国内本部機構が国以外の機関から資金を集める可能性も認めることにより、国内本部機構及び女性の地位向上のためのその他の制度的仕組みに十分かつ持続可能な財政的・人的資源を供給すること。
    (d)
    ジェンダーの主流化について実効性を確保するために、国内本部機構の機能をあらゆるレベルで適切に組織化すること。
    (e)
    ジェンダーの視点の主流化が十分に理解され、制度化され、実施されることを確保すること。これらの取組みには、行動綱領に対する認識と理解の促進を含めるべきである。
    (f)
    政府の全活動の中枢へのジェンダーの視点の組み込みがジェンダー平等を達成するための二元的・相補的戦略のひとつになることを確保するための措置を引き続き取ること。これには、目標を特定した優先事項、政策及び計画並びにポジティブ・アクション(積極的参画促進措置)を絶えず設定することが含まれる。
    (g)
    各省庁の上級管理レベルがジェンダー平等公約を実現し、すべての活動にジェンダーの視点を組み込む責任を担うことと、ジェンダー専門家又はジェンダー・フォーカル・ポイントからの適切な支援が得られることの確保。
    (h)
    すべての意思決定レベル及びすべての省庁その他の意思決定機関への効果的なジェンダー・フォーカル・ポイントの設置を適宜、促進・確保し、それら相互間の緊密な協力を進めるとともに、フォローアップの仕組みを創設すること。
    (i)
    国内本部機構及び特定機関内部のフォーカル・ポイントが行政機構の中で周辺扱いされることなく、政府の可能な限り最高レベルで支援され、政策諮問機関として明確に規定された権限を付与されることを確保するためにあらゆる措置を講じることを含め、すべてのレベルにおける制度的仕組みの創設及び強化を創始及び/又は奨励すること。
    (j)
    女性のニーズと利益及びジェンダーの平等への敏感さを高めることを目的とした男女双方の省庁職員に対するジェンダー研修を含む能力作りを促進し、ジェンダー平等の分野における利用可能な国内・国際モデル及び方法論を利用することによって彼ら自身の能力を開発すること。
    (k)
    ジェンダー別統計、ジェンダー予算編成、ジェンダー監査、確立した基準に基づくジェンダー影響評価、その他の達成度指標、及び国際合意が義務づけるものを含む公的な定期報告等、効果的な監視の仕組み及び手段によって、政府の説明責任及び透明性を適当な場合には促進し、確保すること。
    (l)
    女性の地位向上とジェンダーの主流化を含むジェンダー平等の分野における進捗の測定と見直しに必要な、ジェンダーに敏感な達成度指標の作成について、政府外部の機関を含む諸機関に適宜助力すること。
    (m)
    分析、政策開発及び立案の際の利用に向けて、行動綱領の全重大問題領域におけるデータの収集及びジェンダー別化と統計及び指標の開発を絶えず改善すること。
    (n)
    有償労働と無償労働の関係及びそのジェンダー分析への重要性を目に見えるものにし、これについて適切な政策を開発するために無償労働の価値を数量的に評価する方法を開発することで関係省庁及び機関における一層の理解を促進すること。
    (o)
    たとえば農業、食糧生産、天然資源管理、被扶養者のケア及び家事、ボランティア労働等における女性の無償労働は社会に対する多大な寄与である点を認識し認めること。
    • 変革を促進するために、男女間の有償労働と無償労働の不平等な分布状況を目に見えるようにすること。
    • 無償労働の真の価値を評価し、中核的な国民経済計算とは別個だがそれと整合性を持ったサテライト勘定又はその他の公的経済計算に正確に反映すること。
    (p)
    市民社会、すべての政府機関及び国内本部機構の間の関係を強化すること。
    (q)
    組織に属していない農村部及び都市部の貧困層を含むすべての女性のニーズ、権利及び利益の特定と政策・計画開発におけるそれらの主流化を確保すること。これは、女性の多様性を尊重し、多くの女性が直面している、公共政策の開発への参画に対する阻害要因を認識するやり方で行うべきである。
    (r)
    政府の地域・国内・国際的公約の実施に対する支援として、ジェンダー平等の問題に対する意識啓発活動に非政府機関が関与することを尊重すること。行動綱領の実施及び監視に、女性を積極的に関与させるべきである。
    (s)
    国内行動計画の作成、女子差別撤廃委員会に提出する報告の準備及び行動綱領の実施等の国内・国際活動に当たっては、適宜、非政府機関及び市民社会と調整又は協議すること。
    (t)
    すべての意思決定分野における開かれた参加型の意見交換と男女のバランスのとれた参画の促進によって透明性を確保すること。
    (u)
    ジェンダー問題に関する活動の調査・分析・評価に携わる自主機関を支援するとともに、政策及び計画の変化に影響を与えるために調査結果を利用すること。
    (v)
    違反に対処するための適切な法的枠組みを含む十分な手続きを備えた明確な差別禁止規定を設けること。
    (w)
    必要な場合にはジェンダー平等立法に着手し、適当な場合、とりわけ平等法遵守の促進及び確保に責任と権限を有するオンブズパーソンや機会均等委員会等の独立機関を設置又は強化すること。
    (x)
    ジェンダーの主流化の進捗状況に対する監視とすべての政府報告のジェンダー関連面の強化に議会及び、適当であればどのような場合でも司法を巻き込むとともに、すべての意思決定分野のあらゆるレベルにおける開かれた参加型の意見交換と男女のバランスのとれた参画の促進によって透明性を確保すること。
  1. 国内本部機構及びその他の制度的仕組みが取るべき行動
    (a)
    女性の地位向上を促進する政策を立案し、実施を促進し、執行し、監視し、評価し、それらの政策に対する支援を動員し、ジェンダーの平等を擁護し、公開の討論を促進すること。
    (b)
    必ずしも政策実施の行為者の役割を務めるのではなく、あらゆる政策及び計画においてジェンダーを主流化するための促進役を務めること。但し、国内本部機構は政策策定に当たってのパートナーであり、特定のプロジェクトを自ら実施及び調整する道をとることもできる。
    (c)
    分析、政策開発、立案及びプログラミングの際に利用するための、行動綱領の全重大問題領域のデータの収集及びジェンダー別化と統計及び指標の開発における具体的な措置の採用について、他の政府部局を支援すること。
    (d)
    男女間及び適当な場合には女性間の所得及び労働負担の格差を含む、女性とジェンダーの平等に関する調査と調査結果及び情報の普及を促進すること。
    (e)
    ジェンダーの平等及び女性の地位向上に関わる問題に関し、メディアを通じた討論を含め、より多くの情報に基づく公開の意見交換を促進するためにジェンダー関連データ、社会への女性の重要な貢献に関するものを含むその他の情報及び調査結果を利用しやすい形式と場所で広く配布するための具体的な措置を講じること、とりわけドキュメンテーション・センターを設置すること。
    (f)
    計画及び政策の持続可能性を促進するために、国内本部機構の職員に対して現在実施されているジェンダー研修をすべてのレベルで確保すること。
    (g)
    ジェンダー平等問題の専門知識を持つ専門スタッフを採用するための政策を適宜、開発すること。
    (h)
    地方、地域、国内及び国際レベルで、他の機関との協力関係を創出又は強化すること。
    (i)
    市民社会を支援と正統性の重要な基盤と認識し、したがって、非政府機関、調査機関、社会的パートナー及びその他の関係団体との定期的な協議を通じた市民社会との関係を創出及び強化すること。これは、ジェンダーに敏感な政策及び女性の地位向上の強力な基礎を作るだろう。
    (j)
    女性とジェンダーに関わる国内及び国際政策に関し、女性機関、非政府機関、学術機関、メディア及びその他の機関と協力関係を築いて連携及び協議するとともに、それらの機関に政府の国際公約を報知すること。
    (k)
    ジェンダーに関する固定観念と否定的な男女描写の再検討を目的とした対話にメディアを引き込むこと。
    (l)
    啓発対話を開始することや、有償労働力人口における女性に影響を及ぼしている問題への対処を民間企業に助言すること等を通じ、民間セクターとの協力関係を創出及び強化し、男女の平等を促進する方策と手段を提起すること。
  1. 国連システムを含む国際社会が取るべき行動
    (a)
    経済社会理事会の合意結論 1997/2を実施すること。
    (b)
    国連システム全体における女性の地位向上のための改定中期計画(1996年ー2001年)を完全に実施すること。
    (c)
    事務局における女性の地位向上のための戦略的行動計画(1995年ー2000年)について個々の管理者が各自の責任領域内におけるその実施に説明責任を負うこと、及び、均等なジェンダー分布の達成に向けて50パーセントを下回らない女性の任用と昇進を可能な限り確保するために、国連憲章第101条に従い、公平な地理的配分の原則を十分に尊重しつつ、個々の部局におけるジェンダー・バランス達成のための具体的戦略を定めたジェンダー行動計画を部局長が開発することを確保すること。
    (d)
    行政調整委員会の女性及びジェンダー平等に関する機関間委員会に対し、北京行動綱領を実施するための、及び主要な国連会議及びサミットの実施とフォローアップへのジェンダーの視点の組み込みを促進するためのその任務を継続するよう要請すること。
    (e)
    国連婦人開発基金及び国際婦人調査訓練研修所がそれぞれの権限を遂行するため実施する重要な活動への支援等を通じ、北京行動綱領の実施を支援すること。
    (f)
    政府開発援助(ODA)その他の適切な援助を通じ、各国政府の国内本部機構強化の取組みを支援すること。
    (g)
    多国間・二国間の援助機関及び開発機関に対し、その援助計画に国内本部機構を強化する事業を盛り込むよう奨励すること。
    (h)
    各国政府及び国内本部機構に対し、ジェンダー及び女性の問題に関する情報を関係国際機関に提供するに当たっては自国の市民社会と広範な協議を行うよう奨励すること。
    (i)
    「良い慣行例」を編集・刊行するとともに、後方支援を提供して、適当であればどのような場合でも情報技術への平等なアクセスを確保すること。このことに関しては、国連の現地駐在調整官事務所、特に開発と女性(WID)プログラム及びジェンダー・ユニットが重大な役割を果たすべきである。
    (j)
    計画の、ジェンダーに敏感な効果的な立案、監視、評価及び実施を確保するために、ジェンダー別データ及び質的達成度指標を開発・普及すること。
    (k)
    多国間開発機関、二国間援助機関及び国際的非政府機関に対し、ジェンダー別データの収集・分析及び無償労働の測定・評価に関するすでに開発された方法を途上国及び移行期経済諸国が利用できるようにするとともに技術援助及び財政的資源を含むその他の資源をそれらの国に提供するよう奨励すること。
    (l)
    無償労働に関する情報への組織的で包括的なアプローチを作成するために、国連事務局経済社会局婦人の地位向上部は詳細かつ構成のすぐれた質問状を作成して、すべての国に配布すべきである。質問状は、無償労働の測定・評価の進展に関するインプット及び無償労働を認識しそれに対処する政策・計画及び法律に関するインプットを求めるべきである。
    (m)
    婦人の地位向上部に対し、世界中の国内本部機構間のよりよいコミュニケーションが推進されるように、「国内本部機構ディレクトリー」に権限、職員数、Eメール・アドレス、ファックス番号、ワーキング・レベルの連絡先等を掲載するよう要請すること。
内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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