重大問題領域に関する合意結論

重大問題領域に関する合意結論

(総理府仮訳)

婦人の地位委員会は、

  1. 第4回世界女性会議で採択された「北京行動綱領」、特に女性と健康に関する第IV章C項、「国際人口・開発会議」の「行動計画」及び「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を再確認する。
  2. 健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態(ウエル・ビーイング)であって、単に病気や虚弱でない状態ではないこと、到達し得る最高水準の健康の享有は人種、宗教、政治的信念、経済的または社会的状況の別にかかわりなく万人の有する基本的権利のひとつであること、及びすべての国の国民の健康は平和と安全の達成にとって基本であり、個人と国家の最大限の協力に依存している旨を謳っている世界保健機関憲章を想起する。
  3. 「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の締約国に対し、同条約の下で第12条に関する報告を含む第1次報告及び定期報告を作成する際に女子差別撤廃委員会の一般的勧告を考慮するよう要請する。
  4. 到達し得る最高水準の心身の健康を享有する権利の実現は女性によるすべての人権の完全な実現の不可欠な一部分であり、また女性及び女児の人権は普遍的な人権の不可侵にして不可欠かつ不可分の一部であることを認める。
  5. 保健サービス等の基本的な社会サービスの利用可能性、社会における女性の地位及びエンパワーメントの程度、雇用及び労働、貧困、非識字、高齢化、人種・民族、及び女性の健康に影響を及ぼす有害な態度及び伝統的又は習慣的慣行をはじめとするあらゆる形態の暴力等を含む国内開発水準と生涯を通じた女性の心身の健康との関連性を、並びに女性自身のウエル・ビーイングと社会全体の発展のために女性の健康に投資することの重要性を認める。
  6. 多くの国で開発の不足が女性にとって重大な障害になっていること、及び国際的な経済環境が国内経済への影響を通じ、女性に質の良い保健サービスを提供・拡大する多くの国の能力に影響を及ぼしていることを認識する。政府の優先事項の競合と不十分な資源も、更なる重大な障害になっている。
  7. 「北京行動綱領」第IV章C項の戦略目標の実施を促進するために、以下の行動を取ることを提案する。

政府、国連システム及び市民社会が判断に応じ取るべき行動

  1. 女性が生涯を通じて有する、良質で包括的で経済的に利用可能な健康ケア及び保健サービス並びに保健情報への男女均等な普遍的アクセス
    (a)
    適切で経済的に利用可能な良質の健康ケアと保健サービスに対する男女均等な普遍的アクセスを女性の生涯を通じて確保すること。
    (b)
    公約と実施の差をなくすために、女性の健康に対する投資に有利な政策を策定し、行動綱領の目標達成に向けた取組みを強化すること。
    (c)
    教育、清潔な水と安全な衛生設備、栄養、食糧の安定供給及び保健教育プログラムを含む健康ケア関連の社会サービスに対する男女均等な普遍的アクセスを女性の生涯を通じて確保すること。
    (d)
    ライフサイクル・アプローチの一環として、予防措置に重点を置いた性と生殖及び精神面に関する保健サービスを男女の広範な保健ニーズに応えるためのプライマリー・ヘルスケア体制に組み込むこと。
    (e)
    情報へのアクセス、プライバシー、秘密保持、敬意及びインフォームド・コンセントに対する子どもの権利とともに親及び法律上の保護者の責任、権利及び義務を考慮しつつ、性と生殖に関する健康の問題について若者に教育と情報を提供するためのプログラムを彼らの完全な関与の下に立案・実施すること。
    (f)
    貧困女性、障害を持つ女性又は社会的に疎外されている女性に生涯を通じて良質な保健サービスを確保する必要措置を整備するための十分な資源を適宜、配分・再配分すること。
    (g)
    より広範なマクロ経済政策が貧困の女性化と女性の健康に及ぼす影響を評価することによって貧困撲滅に向けた取組みを強め、影響を被りやすい層の生涯を通じた保健ニーズに対処すること。
    (h)
    高齢女性の健康問題と依存を防ぎ、自立した健全な生活を送れるようにするために、可能な場合には早期に予防的・促進的な保健政策を採用すること。
    (i)
    障害を持つ女性に対する支援に特別の配慮を確保し、自立した健全な生活を送る力をつけさせること。
    (j)
    国の優先保健事業の一環として、女性のための適切なスクリーニング・サービスの必要性に対処すること。
    (k)
    生涯を通じて女性の健康、ウエル・ビーイング、フィットネスにプラス効果を与える定期的なスポーツとレクレーション活動の実践を女性に奨励するとともに、スポーツをし、スポーツ施設を利用し、競技に参加する女性の平等な機会を確保すること。
  1. 性的及び生殖的健康
    (a)
    生殖的及び性的保健を含む良質で経済的に利用可能な保健サービスへの普遍的なアクセス、持続的に高い妊産婦と乳幼児の死亡率の減少及び重度・中等度の栄養失調と鉄欠乏性貧血の減少に関する、北京行動綱領に設定された目標を達成するための取組み並びに緊急ケアを含む妊産婦ケア及び必須産科ケアを提供するための取組みを促進するとともに、「安全なマザーフッド・イニシアティブ」を考慮に入れつつ、とりわけ感染症、栄養不良、妊娠中の高血圧、危険な妊娠中絶及び分娩後の出血などによる妊産婦の死亡と子どもの死亡を防ぐための既存戦略を実施するとともに新たな戦略を開発すること。
    (b)
    医学的に禁忌である場合を除いて母乳保育を促進・支援するとともに、「母乳代替品の市販に関する国際綱領」及び「乳児にやさしい病院イニシアティブ」を実施すること。
    (c)
    第4回世界女性会議の報告書のパラグラフ96を考慮に入れ、性感染症とHIV/AIDSの防御とともに妊娠を防ぐ殺菌剤と女性用避妊具といった二重の方法を含む、安全かつ経済的に利用可能であり効果的で簡単に利用できる、女性がコントロールする家族計画の方法の科学的研究と開発を支援すること。
    (d)
    男性の避妊方法の開発と普及を支援すること。
    (e)
    セクシャリティ、生殖及び育児に関する事柄において責任を引き受けることを男性に奨励するために、男女、特に若者を教育すること。
    (f)
    望まない妊娠を防ぐために、女性の能力と知識を高め、情報に基づいた選択を行える力を女性につけること。
    (g)
    メディア及びその他の分野と協力して、初潮や閉経といった女性と少女の生殖生活上の大きな変わり目に関する肯定的な態度の涵養を奨励し、必要な場合には、そのような変化期にある女性に対し適切な支援を提供すること。
    (h)
    女性と少女に対する明確な暴力であり、その人権の重大な侵害となるため、適当な政策の開発と法律の制定及び/又は強化などを通じて、女性及び少女の健康に影響を及ぼす女性器切除及びその他の有害な伝統的・習慣的慣行を撤廃し、適切な教育・啓発手段の開発を確保するとともに医療従事者によるそれらの施術を禁じる法律を採用すること。
    (i)
    若年結婚、強制結婚及び女性の生命権に対する脅威といった有害な慣行をすべて防止するためのあらゆる必要措置を講じること。
  1. HIV/AIDS、性感染症及びその他の感染症
    (a)
    性感染症及びHIV/AIDSの予防と研究、そのケア及び治療、並びに社会サービス・支援の提供及び貧困緩和等を通じたその影響の軽減について、教育及び啓発を支援するとともに最高レベルの政治的コミットメントを確保すること。
    (b)
    最も深刻な危険にさらされているグループ、特に若者の間のHIV/AIDSと性感染症の世界的な蔓延を縮小するために、教育と意識啓発キャンペーン、高品質のコンドームに対するアクセスの改善と母親から子どもへの HIV感染を防ぐ抗レトロウィルス療法の利用しやすさの改善、HIV/AIDS関連の病気に対する治療、ケア及び支援等を通じた防止措置を増強すること。
    (c)
    HIV/AIDS感染及びその他の性感染症の原因のひとつである女性への性暴力を廃絶するための法律を制定し、施策を採用し、AIDSを助長するような社会文化的な慣行を禁止する法律の制定を含めた法律の見直し及び制定、これらの感染症に対する女性のかかりやすさの一因と思われる慣行との闘いを適宜行うとともに、女性、思春期の少女及び幼い少女をHIV/AIDSに関連する差別から守るための法律、政策及び慣行を実施すること。
    (d)
    HIVに感染している事実を明らかにした女性が暴力、指弾その他の悪影響を受けることがないように、HIV/AIDS、性感染症のほか、ハンセン病やフィラリア症などの伝染病を取り巻き、特に女性の場合にはそれらの病気の発見不足、治療不足及び暴力を招く指弾と社会的排除を根絶すること。
    (e)
    結核とマラリアに対する予防及び治療施策を増強し、世界のほとんどの地域、特にアフリカで妊婦に有害な影響を及ぼしているマラリアに対するワクチン開発の研究を促進すること。
    (f)
    HIV/AIDSや性感染症に感染している男女に対し、パートナーにその事実を告知して感染から身を守る手助けをするよう教育・助言・奨励し、これらの病気蔓延の縮小を確保すること。
  1. メンタルヘルスと薬物濫用
    (a)
    生涯を通じた精神医学的な病気とトラウマの治療に特別の注意を払いつつ、ジェンダーと年齢に敏感なメンタルヘルス・サービスとカウンセリングを、とりわけプライマリー・ヘルスケア体制に組み込むことによって、また適当な紹介支援を通じて、必要に応じて利用できるようにすること。
    (b)
    女性と少女は特に武力紛争と避難の状況下において、さまざまな形の差別、暴力及び性的搾取に起因する、ストレス、抑鬱、無力、疎外及びトラウマ関連の精神障害に苦しむことがより多いため、このような病気に対する適切なカウンセリングと治療を提供するための効果的な予防面・治療面の保健サービスを開発すること。
    (c)
    催眠薬やアルコールを含む薬物使用及び濫用の原因と影響のジェンダー格差に関する調査及び情報普及を支援し、妊娠中の女性を対象にしたものを含む、予防、治療及び更生へのジェンダーに敏感な効果的アプローチを開発すること。
    (d)
    女性及び少女の喫煙の減少を目的とする防止プログラムを企画、実施及び強化すること。たばこ産業による、若い女性をターゲットとして搾取する活動を調査すること。たばこの広告と未成年によるたばこへのアクセスを禁じる措置を支援すること。1998年7月に世界保健機関が提案した「タバコ・フリー・イニシアティブ」に留意し、禁煙スペース、ジェンダーに敏感な禁煙プログラム、喫煙の危険性を警告するラベル表示等を支援すること。
    (e)
    男女間における家庭・家族責任の公平な分担を促進し、家庭内でいくつもの役割を担う結果、疲労とストレスに苦しむことの多い女性を助けるための社会支援制度を、適当な場合には提供すること。
    (f)
    薬物濫用や摂食障害等の問題に対処するために、女性及び少女の心身の健康と自尊心と全年齢層の女性の社会的評価度の間の関係に関する調査を支援すること。
  1. 職業上及び環境上の健康
    (a)
    公式・非公式部門における労働を含む、男女双方の労働の職業上・環境上の健康リスクがもたらす短期的・長期的影響に関するジェンダー別研究を支援し、職場における危険、環境における危険、及び農薬を含む有害化学物質、放射線、有毒廃棄物及びその他の女性の健康に影響を及ぼす危険物から生じるものを含めたこれらのリスクを減らすための法的その他の効果的施策を採用すること。
    (b)
    職業上の危険を防止するために人間工学的に作られた、安全で、セクシャル・ハラスメントや差別がない、ジェンダーに敏感な労働環境のための職業保健政策を通じて、農業及び自家の家事労働者を含むすべての部門の女性労働者の健康を守ること。
    (c)
    有害な環境と職業上の危険から、妊娠中又は産後間もない又は授乳中の女性労働者とその子どもの健康を守るための特定的な施策を採用すること。
    (d)
    健康に対する環境上の危険について国民、特に女性に十分かつ正確な情報を提供するとともに、清潔な水、十分な衛生設備及び清潔な空気へのアクセスを確保するための措置を講じること。
  1. 政策開発、調査、訓練及び評価
    (a)
    特別及び多様な女性グループを含むすべての女性の生涯にわたる健康についての、学際的・合作的な包括的調査を推進すること。
    (b)
    行動綱領の健康及びその他の関連重大問題領域の実施について報告するための国レベルにおける具体的なアカウンタビリティ(説明責任)の仕組みを確立すること。
    (c)
    性別・年齢別データ及び調査結果の収集、利用及び普及を改善し、罹病率・死亡率、社会指標を越えて女性と少女の生活の質と社会的・精神的なウエル・ビーイングを把握するジェンダー別の質的・数量的な健康指標の使用及び必要な場合にはさらに調整を加えた開発等によって男女の生活経験の格差を把握する収集方法を開発すること。
    (d)
    貧困、加齢、ジェンダーの相互関係に関する調査を促進すること。
    (e)
    保健計画の立案、実施及び評価のあらゆるレベルに女性の参画を確保すること。また、ジェンダーと年齢に敏感な保健政策・保健予算の作成や、立法の枠組みと監視・フォローアップ・評価の仕組みに支えられた、個々の国内における必要とされる環境の創出等を通じて、保健分野のあらゆるレベルにジェンダーの視点を確保すること。
    (f)
    女性のための質の高い保健サービスを確保するために、保健サービスへの女性のアクセスを阻害する一部の保健専門家による差別的な態度・慣行の撤廃に役立ち得る、すべての健康ケア・保健サービス提供者の履修過程と訓練の主流にジェンダーの視点を据えるとともに、保健分野におけるジェンダーの視点の開発と治療及び予防の実践に対するその適用を確保すること。
    (g)
    女性の権利への対処を確保するために、健康ケア提供者の履修過程に医療倫理を強化して少女と女性が敬意と尊厳をもって扱われることを確保するための関連人権テーマを盛り込むべきである。
    (h)
    女性に対する不必要な医療措置に対処するために、保健サービス提供者と利用者に対する教育と調査を増強すること。
    (i)
    必要がある場合には、薬、医療装置及びその他の医療用品の臨床試験に、十分な知識と同意の下に女性を加え、得られたデータを分析して性及びジェンダー格差を調べること。
    (j)
    人間のゲノム(1個の生物を作るのに必要な最低限の遺伝子セット)及び関連の遺伝子研究の科学的・法的発達と、それが全般的な女性の健康と権利に対して持つ意味に関するデータを集め、そのような情報、及び承認された倫理基準に従って行われた研究の結果を普及すること。
  1. 保健分野の改変及び発展
    (a)
    保健分野が改変・発展し、ケア提供の多様化が進み行く状況下で、女性に対するケアへの均等で公平なアクセスを確保し、保健分野の改変・発展の取組みが女性の健康を促進することを保証するための措置を講じること。ヘルスケアの提供不足に対処すること。
    (b)
    保健分野の改変・発展がもたらす機会を捉えて、この分野にジェンダー分析の過程を組織的に組み込み、保健分野のあらゆる改変・発展に対するジェンダー影響評価と監視を行って女性がそれら改変・発展から等しく利益を受けるよう保証すること。
    (c)
    ジェンダーに基づく不平等賃金を撤廃するためのジェンダー別職業集中の減少への取組み、保健分野における質の高い労働条件の確保、及び適切な技能訓練及び技能開発の提供等に向けた戦略を開発すること。
  1. 国際協力
    (a)
    開発のための国際協力を強化・実行し、開発と女性向け保健サービスの供給のためにあらゆる提供源から国内・国際的財政資源を動員するための、国際社会による強力な政治的コミットメントを確約すること。
    (b)
    貿易面の改善を伴えば、女性の心身の健康に特別に留意した保健サービスの拡大・改善のための公的・民間両資源を生み出す一助となり得る、対外債務免除の進捗を促進すること。
    (c)
    二国間援助機関及び多国間開発機関を含む国際社会に対し、特に経済的に困難な期間における、女性に対する健康ケア・サービスの提供を含む基本的社会サービスの供給の確保について、開発途上国を支援するよう奨励すること。構造調整政策に対するジェンダーに敏感なアプローチがさらに奨励される。
    (d)
    グローバル化と相互依存のマイナス影響を最小限にとどめて利益を最大限に高めるための協力と調整の強化を通じ、とりわけ、開発途上国における特に女性への健康ケア・サービスの提供を増進するための協調した取組みを奨励すること。
    (e)
    国際協力の枠組みにおいて、堅実なマクロ経済政策及び制度がとりわけ女性への健康ケア・サービスの提供を支援するよう奨励すること。
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