重大問題領域に関する合意結論

重大問題領域に関する合意結論

(総理府仮訳)

婦人の地位委員会は、

第4回世界女性会議で採択された「北京行動綱領」、特に「女児」に関する第IV章L項、「ウィーン宣言及び行動計画」、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」並びに「児童の権利に関する条約」を再確認する。

第IV章L項の戦略目標の実施を促進するために、以下の事項を提案する。

A.女児の人権の促進及び保護

政府、地方当局、非政府機関及び市民社会、並びに適当な場合には国連システムが取るべき行動

  • 児童の人身売買、児童買春及び児童ポルノの防止及び根絶のための措置に関する「児童の権利に関する条約」の選択議定書の策定によって、子ども、特に女児による自らの人権の享受をさらに促進すること。
  • 認識を生み出すための地元委員会の設置を含む、地域社会に基盤を置く行動を組織するとともに、思春期の少女と若い母親の状況に特に焦点を合わせて、「児童の権利に関する条約」及び「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の遵守を監視すること。
  • 地域社会の指導者、宗教組織、親及びその他の家族、特に男性の家族を含む地域社会の動員を目的とし、女児に特別に焦点を合わせた子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンを行い、態度の変化を監視すること。
  • 法執行官及び司法官を対象にして、女児に特別の注意を払った子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンとジェンダー訓練を行うこと。
  • 意識啓発キャンペーンとジェンダー訓練を通じ、息子志向に当たる伝統的及び習慣的慣行を撤廃すること。
  • 開発に対する少女と少年の寄与を認識し促進すること。
  • 家庭における少女と少年に対する非差別的な取り扱いを促進すること。これについては、少女と少年に食糧、教育及び健康への平等なアクセスを確保するための施策を採用すること。

「児童の権利に関する条約」及び「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の締約国が取るべき行動

  • 「児童の権利に関する条約」及び「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に対する報告書に子どもに関する包括的情報と男女別・年齢別の統計を盛り込むとともに、それぞれの委員会に対し、報告審査に当たっては女児に特別の注意を払うよう要請すること。
  • 「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」及び「児童の権利に関する条約」に対するいかなる留保についても、可能な限り厳密かつ狭く規定し、上記条約の目標及び目的に反しないことを確保し、かつ撤回のために見直すこと。

B.女児の教育とエンパワーメント

政府、教育機関、及び適当な場合には国連システムが取るべき行動

  • 1997年10月にアディスアベバで開かれた「思春期の少女とその権利に関する専門家グループ会議」の所見と勧告を参考にすることを検討すること。
  • 初等教育の義務化を検討すること。
  • 女児に基礎教育を保障するために、少女の普遍的な就学と学業継続、並びに妊娠している少女と若い母親の継続教育を確保すること。
  • 親、政府及び非政府機関を含むあらゆるレベルの社会に対し、地域社会におけるジェンダーへの認識を高めるための教育政策の実施を支援するよう奨励すること。
  • 学校管理者、親、地方行政官、職員、教員、教育委員会及び生徒といった学校社会のすべての構成員にジェンダーにセンシティブな訓練を提供すること。
  • 肯定的な自己イメージを通じた女性と少女の自己矜持を促進するために、教科書を含む教材を見直して、意思決定、開発、文化、歴史、スポーツ及びその他の社会的、政治的及び経済的努力におけるものを含む、社会における女性の効果的役割を強調するよう改訂すること。
  • 先住民の少女及び農村部の少女のための教育行政に携わる政府官庁の職員に向けたジェンダーの視点に関する感受性養成プログラムと、先住民の少女及び農村部の少女の状況に合わせた教材を開発すること。
  • 移住家庭の少女、難民・避難民少女、少数民族の少女、先住民少女、孤児の少女、障害を持つ少女及びその他の特別なニーズを持つ少女を含む困難な境遇にある少女の特別のニーズを明らかにし、かつ、そのニーズの対処に必要な資源を提供すること。
  • 特別のニーズを持つ少女を含む少女とその代理機関を意思決定過程に関与させ、自らのニーズを特定する際の、及びそのニーズを満たすための政策及び計画の企画、立案、実施及び評価に当たっての、完全かつ積極的なパートナーとして参加させること。
  • 少女に自らの指導、啓発及び紛争解決の能力を開発するための訓練機会を提供すること。
  • 調査を行って特に農村部の地域社会における男女格差を資料で証明することにより、家庭内の少女と少年の無償労働を目に見えるものにし、基礎及びそれ以上の教育とキャリア開発への少女の平等なアクセスに対する家事労働の意味に注目し、不均衡の是正と差別撤廃のための措置を講じること。

C.少女の健康ニーズ

政府、市民社会、及び適当な場合には国連システムが取るべき行動

  • たとえば法律の立案と実施を含む適切な施策を採ることによって、あらゆる形態の性的搾取と性的虐待から女児を守ること。
  • 親、関係機関と個人(特に政治的指導者、人気のある人物や地域の名士)の連携、及びメディアに対し、思春期の少女の性と生殖に関する健康を含む子どもの健康を唱道するよう奨励すること。
  • 女性と少女に対して有害であり、彼女たちの人権及び基本的自由の侵害であると同時にその完全な享受を妨げる障害でもあるすべての習慣的または伝統的慣行、特に女性器の切除を、意識啓発プログラム、教育及び訓練の立案と実施を通じて撤廃するとともに、そのような慣行の犠牲者がトラウマ(精神的外傷)を克服するのを助けるためのプログラムも加えること。
  • 女性の人権の侵害であり、女性の人権と基本的自由の完全な享受を阻む障害である習慣的または伝統的慣行を禁じる国内法及び国内政策を開発し実施するとともに、女性と少女の健康に有害なそのような慣行を行う者を訴追すること。
  • 特に人間関係、性と生殖に関する健康、性感染症及び未成年の妊娠に関する情報と、秘密が保持され、利用が容易な、それらに関するカウンセリングを広範に利用できるようにすること、及び少女と少年の対等な責任を強調すること。
  • 保健従事者による思春期の少女のための保健対策を改善し、保健従事者に対し、適切な訓練を提供するとともに、少女のニーズを理解するために彼女たちと協力するよう奨励すること。
  • 妊娠している少女及び若い母親を認め、差別から守り、情報、保健対策、栄養、教育及び訓練への彼女たちの継続的なアクセスを支援すること。
  • 性と生殖に関する健康の分野における非政府機関の活動と、少女のための健康指導センターを支援すること。
  • 「児童の権利に関する条約」に明記されている子どもの権利の尊重を確保するために、婚姻の最低年齢に関する法律を制定し、及び、必要な場合は最低年齢を引き上げること。

D.武力紛争における少女

国連及び政府が取るべき行動

  • 平和維持軍の行動規範と活動指針に子どもの権利に関する情報を盛り込み、軍隊、人道活動に従事する者へのジェンダーに対する感受性を養うための訓練を提供すること。
  • 少女とその他の個人及び地域社会に対し、武力紛争における少女の人権の侵害を関係当局に通報するに当たって重要な役割を果たすよう奨励するとともに、ジェンダーに配慮した十分かつ利用しやすい支援サービスとカウンセリングを確保すること。
    特に総会が勧告している「児童の権利に関する条約の選択議定書」の採択を通じて、武力紛争状況における女児の武力紛争参加、徴兵、レイプ及び性的搾取から守ること。
  • 難民キャンプ及び再定住と再統合へのとりくみにおいて、保護並びにジェンダー面で適切な支援とカウンセリング・センターに対する少女の特別なニーズに対処するための措置を講じること。
  • 武力紛争における子どものための和平地帯を作り、それを守ること。

E.買春及びその他の形態の性的搾取を目的とするものを含む人身売買

政府、国際機関及び市民社会が取るべき行動

  • よりよい立案と予防プログラムの改善のために、少女の人身売買、身体的・精神的虐待及び性的搾取の問題に関し、情報を収集して国民の意識を啓発すること。
  • 1996年にストックホルムで開催された「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」の「宣言及び行動のための課題」の勧告の実施を検討すること。
  • 特別の訓練を受け、安全で支えとなる環境を提供する職員を配備した、虐待または性的搾取を受けた子どものための回復プログラムを設けること。

政府が取るべき行動

  • 女児に特別の注意を払いつつ、児童の売買春、近親姦、虐待及び人身売買を含む性的搾取を禁止する法律を制定及び施行すること。
  • 未成年者を巻き込む、性産業、性的搾取、小児性愛行為、臓器売買、児童ポルノ及びセックス・ツアーに従事する、またはこれらを促進する個人及び組織を訴追及び処罰し、これらの行為の被害児童が罰せられないことを保障しつつ、国内犯・国外犯の別を問わず関係したすべての加害者を有罪とし処罰すること。
  • 少女のよりよい保護とそのような犯罪を犯す者を法に照らして処断するための、仕組みの立案と国際協力の強化。
  • 虐待を受けた少女の更なるトラウマ(精神的外傷)または被害の防止という特有のニーズに司法及び法的手続きが敏感になることを確保する措置を採用すること。

F.労働と女児

政府、国際機関及び民間部門が取るべき行動

  • ILO(国際労働機関)条約を含む、子どもを保護するための国際合意の批准及び実施を検討するとともに、女児を保護するために、国内法規をこれらの合意と整合するものにすること。
  • 働く少女が、平等かつ有利な条件で教育及び職業訓練、健康、食糧、緊急一時保護施設(シェルター)及びレクリエーションへのアクセスを持ち、職場における経済的搾取、セクシャル・ハラスメント及び虐待から保護されるよう保障すること。
  • 家事労働者など非公式部門で働く少女に特別の注意を払い、その人権と基本的自由を保護するための施策を開発し、彼女たちに対する経済的搾取、酷使及び性的虐待を防止すること。
  • 家事労働者として雇用されている少女及び自家の家庭内の過度な雑仕事を担っている少女の特別なニーズの性質と範囲について政府及び国民の認識を高め、その経済的搾取と性的虐待を防止するための施策を開発すること。
  • 最も忌まわしい形態の児童労働を撤廃するための新しい国際条約の作成に向けた1998年のILO(国際労働機関)会期における取組みに積極的に寄与すること。
  • 1997年にオスロで開催された児童労働に関する会議の「行動のための課題」で特定されている行動の実施を検討すること。

G.一般的勧告

政府及び国連システムが取るべき行動

  • 「北京行動綱領」を完全に実施するために、国内行動計画の一部として女児のためのプログラムを準備すること。
  • 国連システムの諸機関、特に子どもの権利と関心問題に取り組む任務を担う国連児童基金は、国、地域及び国際レベルでの女児の状況に関する意識啓発のための、親善大使を用いたユニセフ(国連児童基金)国別プログラムを通じて、女児により大きな注意を払うべきである。
  • 事務総長は、「北京行動綱領」の5年目の実施状況見直しに先立ち、婦人の地位委員会に対して女児に関する報告を行うべきである。
  • 「北京行動綱領」及び「児童の権利に関する条約」に従って、女児のための政策とプログラムを子どもの権利、親の責任、権利及び義務、及び発達していく女児の能力に基づいたものにすること。
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