国連婦人の地位委員会合意結論等

  1. 北京「行動綱領」は、女性とメディアをその12の重大問題領域のひとつに認定している。北京「行動綱領」に述べられているように、広告及びメディアにおけるジェンダーの固定観念化は、男女平等に対する態度に影響する不平等要因のひとつである。婦人の地位委員会は第40回会期中にこのテーマについて交わされた一連の意見交換を通じ、メディア及び新たな通信技術内部の、及びそれらを通じての表現並びに意思決定への女性の参画とアクセスを増大するために用いるべき施策を検討した。メディアが女性の地位向上に今よりはるかに大きな寄与を行う可能性は、いたるところに存在している。本委員会の意見交換から生まれた決議は、「行動綱領」のあらゆる要素を実施することの重要性を考慮に入れつつ、「行動綱領」の戦略目標及び行動を成功裏に実施するための諸提案を含むものである。

A.表現の自由を含む女性の人権の尊重とメディア

  1. 婦人の地位委員会は、表現の自由の原則並びに出版及びその他の通信手段の自由の原則に対して認めていた重要性を再確認した。委員会は、ジェンダーの視点から見た表現の自由について、特に女性によるその完全な享受、メディアへの平等なアクセス、メディアが女性とその多様な役割に対して描くバランスのとれた多彩な描写、及び女性に対するあらゆる形態の暴力の廃絶を目的とするメディア情報との関わりにおける表現の自由について、審議を行った。表現の自由を含む女性の人権の尊重は、国際社会の基本原則である。この点において、女性ジャーナリストを含む情報分野の専門的職業に携わる女性に対する差別、脅迫及び暴力行為に関する懸念も表明された。表現の自由を含む女性の人権の完全な実現という目標を達成しようとするならば、ジェンダー分析によって明白に示された女性差別の組織的及び構造的な性格をより明確に考慮するような方法で人権文書を適用しなければならない。
  2. 人権委員会及びその仕組みと手続き、女子差別撤廃委員会並びに独立専門機関を含む関連国連機関は、婦人の地位委員会からその権限内の協力を受けつつ、見解及び表現の自由を含む女性の人権に対する侵害を、各機関の権限の範囲内で、ジェンダーの視点からさらに綿密に調べるべきである。

B.自主規制、自発的指針及び市民社会に対する敏感さ

  1. 「行動綱領」は、メディアによる自主規制の仕組みが奨励されるべきであり、ジェンダーに基づく偏向を持つ番組編成を排除して固定観念にとらわれない女性像の描写とバランスのとれた多様な男女描写を促進するために、表現の自由に矛盾しない範囲で、職業上の指針並びに倫理綱領及びその他の形の自主規制の開発をその中に含めるべきである、と述べている。
  2. 市民社会に対する敏感さという観点から、監視、周知と教育、及び十分に整備された効果的な苦情申立て手段の枠組み内で、公共及び民間の業界のための自主規制を設けるべきである。そのような自主規制措置及び自発的指針は、強制によってではなく、メディア専門家との話合いの過程を通じて設定されるべきである。
  3. メディアにおける暴力描写に関しては、固定観念にとらわれない男女描写の促進並びに暴力を生み出すメディアの描写パターンの排除におけるメディアの役割について意識を高めるために、また、メディアの内容に責任がある人々に対して自発的な職業上の指針及び倫理綱領の策定を奨励するために、さらにまた、女性に対する暴力の原因と結果について情報を提供し教育するメディアの重要な役割に関して意識を高めるために、政府及びその他の関連行為者が適当な場合、イニシアティブを取るべきである。
  4. 表現の自由に矛盾しない範囲で適宜、取ることができるイニシアティブの例としては、以下のようなものが挙げられる。
    (a)
    メディアに対し、ジェンダー・バランスがとれた男女描写についての自発的指針に関する情報交換及び最善の慣行の共有を含めて、国際的な討論に参加するよう奨励すること。国境を越えた世界規模の通信の急増に、特別な注意を払うべきである。
    (b)
    メディアの仕事のあらゆる分野及びあらゆるレベル、並びにメディア諮問機関、メディア規制及び監視機関における男女の均衡を達成する目的の下に、積極的措置(ポジティブ・アクション)及び機会均等政策を取るなどして、経営、番組編成、教育、訓練及び調査への女性の平等な参画を支援し奨励すること。

C.メディア教育の重要な役割

  1. たとえば実践的なワークショップ及び訓練期間を通じたメディア教育は、ジェンダーの固定観念化と平等の問題に関し、一般大衆、政府、メディア産業及び専門家の意識を高めるための効果的な方法である。
  2. 多くの女性を含む国民の大多数が非識字又はメディアの知識を持たない国々では、政府は適切な教育及び訓練の提供という目標を支援すべきである。
  3. 市民社会全般が、消費者行動及び啓発、並びに様々な形のメディア監視を通じて、メディアの内容及び固定観念化した描写に対して影響力を行使する重要な役割を担っている。
  4. 国際レベルでは、メディア教育及びその他の措置に関する各国の経験の交換が、立法担当者、国内の放送当局及びメディア専門家に利益をもたらすことができる。

D.必要とされる環境の創出

  1. 肯定的な環境の創出は、バランスのとれた女性及び少女描写の達成を目指す措置を促進するための条件である。変革は、必要とされる方法で、かつ指令によるやり方をとらずに促進すべきである。指標の確立及び監視を含む継続的な調査が、進捗状況の評価にとって重要である。
  2. 国連や国連の女性関連事業と非政府機関、学者及びその他のインターネット利用者をつなぐwww(ワールドワイドウェブ)のホームページである「ウィメン・ウォッチ」の開発のような国際レベルのものを含め、女性メディアのために必要とされる環境も創出すべきである。非政府機関が、メディア、教育、調査、消費者啓発及び監視にはたす極めて重大な役割が認識され、増大されるべきである。
  3. メディア・ネットワークは、男女平等に向けた誓約を行うよう、又はすでに行ったその誓約を強めるよう奨励されるべきである。公共メディアが存在する場合、公共メディアは女性の地位向上に対する誓約と寄与によって民間メディアに模範を示すことを奨励されるべきである。
  4. 配慮と行動が必要な分野を明らかにするとともに、ジェンダーの視点を組み入れる目的で既存のメディア政策を見直すための、女性とメディアのあらゆる側面にわたる調査を政府が支援すべきである。
  5. 政府は、ポルノグラフィ並びに女性及び子どもへの暴力のメディアでの放映を禁止する適切な立法措置を含め、表現の自由に矛盾しない範囲内で、効果的な措置を取るか又はそのような措置を制定すべきである。

E.女性と地球規模の通信

  1. 情報技術の進歩は、国境を打ち開いた。地球規模の通信網における女性の役割を強化する必要がある。そのような情報技術を阻む障害、及びその開発のあらゆるレベルにおける女性の関与を阻む障害を縮小すべきである。
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