第7節 人身取引対策の推進

本編 > II > 第1部 > 第8章 > 第7節 人身取引対策の推進

第7節 人身取引対策の推進

人身取引(性的サービスや労働の強要等)に係る情勢に適切に対処し,政府一体となって総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいくため,「人身取引対策行動計画2014」(平成26年12月犯罪対策閣僚会議決定)に基づき,関係行政機関が緊密な連携を図りつつ,人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を推進している。また,人身取引議定書の締約国として,国際社会と連携して人身取引撲滅及び被害者保護に努めている。

内閣府では,人身取引対策の啓発用ポスター及びリーフレットを作成し,地方公共団体,空港・国際移住機関(IOM),その他海外も含む関係機関に配布し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。また,令和2(2020)年4月を「AV出演強要問題・『JKビジネス』等被害防止月間」とし,啓発サイトを用いた広報啓発を行うとともに,関係府省庁と連携し,インターネット,新聞,ポスター等各種媒体を活用した広報を実施した。さらに,各都道府県・指定都市に対し,同月間の周知を図るとともに,各地域の実情に応じた取組の実施について協力を依頼する旨の通知を発出する等の取組を実施した。

警察では,人身取引事犯の警察等への被害申告を呼び掛けるリーフレットを作成し,人身取引被害者等の目に触れやすいところへ配布するとともに,NGOと意見交換しながら人身取引の実態を分かりやすく示した資料を作成し,リーフレットの多言語版とともに警察庁ウェブサイトに掲載している。

また,警察庁の委託を受けた民間団体が市民から匿名による人身取引事犯等に関する通報を受け付ける「匿名通報事業13」を運用している。

法務省の人権擁護機関では,人権相談等を通じて,人身取引の疑いのある事案を認知した場合は,人権侵犯事件として調査を行い,事案に応じた適切な措置を講ずることとしている。

厚生労働省では,婦人相談所が実施する人身取引被害女性の保護において,通訳雇上げのほか,人身取引及びDVに関する専門的な知識を持った通訳者を養成するための研修を実施するとともに,他の法律・制度が利用できない場合には,被害女性の医療に係る支援も行っている。また,通訳・ケースワーカー(外国人専門生活支援者)の派遣を民間団体等に依頼し,婦人保護施設に入所する人身取引被害女性に対する支援の強化を図っている。

さらに,技能実習生に対する人身取引が疑われる事案への対応として,労働基準関係法令違反が認められた場合に労働基準監督署においてその是正を指導しているなどのほか,令和3(2021)年2月,都道府県労働局の人身取引対策担当者により関係行政機関と必要な連携を行い迅速,的確に対応するとの取組の強化を図った。

国立女性教育会館では,独立行政法人国際協力機構(JICA)からの委託を受けて,人身取引対策に取り組む機関の機能強化や連携,日本及び各国の人身取引対策について理解を深めることを目的とした課題別研修「アセアン諸国における人身取引対策協力促進」をオンラインで実施した。また,人身取引に関するパネルやブックレットの貸出を行うとともに,ホームページにおいて広く情報提供を行っている。

13「匿名通報事業」 https://www.tokumei24.jp/