第1節 M字カーブ問題の解消等に向けたワーク・ライフ・バランス等の実現

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第4章 雇用等における男女共同参画の推進と仕事と生活の調和

第1節 M字カーブ問題の解消等に向けたワーク・ライフ・バランス等の実現

1 ワーク・ライフ・バランスの実現のための長時間労働の削減等

内閣府では,仕事と生活の調和の実現に向けて,政労使,都道府県が密接に連携・協働するためのネットワークを支える中核的組織として,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「行動指針」に基づく取組状況の点検・評価を行うための総合調整を行うとともに,ワーク・ライフ・バランスに関する好事例等の情報の収集・提供を行っている。また,社会全体で,女性活躍の前提となるワーク・ライフ・バランス等の実現に向けた取組を進めるため,女性活躍推進法及び「公共調達等取組指針」に基づき,ワーク・ライフ・バランス等推進企業を加点評価する取組を,国,独立行政法人等で実施しているほか,努力義務となっている地方公共団体で国に準じた取組が行われるよう働きかけを行っている。また,東京2020大会に関する調達や民間企業等における各種調達でも同様の取組が進むよう働きかけを行っている(第2章第1節参照)。

厚生労働省では,労使の自主的な取組を促進するため,労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主に対する支援を行うとともに,長時間労働が行われている事業場に対して重点的な監督指導を行っている。さらに,過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)及び「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成27年7月策定,平成30年7月変更)に基づき,労働行政機関等における対策,調査研究等,啓発,相談体制の整備等,民間団体の活動に対する支援等の過労死等の防止に関する対策に取り組んでいる。

加えて,事業者が労働者のメンタルヘルスケアに取り組むよう,「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月健康保持増進のための指針公示第3号,改正平成27年11月健康保持増進のための指針公示第6号)の普及啓発,ストレスチェック(平成27年12月創設)の実施とその結果に基づく面接指導の実施の徹底を図るため,労働基準監督署を通じた指導や産業保健総合支援センターによる支援を実施している。

また,働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」8において,事業者,産業保健スタッフ,労働者やその家族等に対して「メンタルヘルス対策の基礎知識」や「悩みを乗り越えた方の体験談」等の情報提供を行うとともに,「こころの耳電話相談」9・「こころの耳メール相談」において,働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話・メール相談に応じている。令和2(2020)年度は,「こころの耳SNS相談」において,SNS相談を実施した。

さらに,女性活躍推進法において,事業主が自社の労働者の労働時間の状況等を把握した上で,行動計画を策定することを義務付けており,着実な履行確保に取り組んでいる。さらに,自社の女性の活躍状況に関する情報公表項目の選択項目のひとつとして「労働者の一月当たりの平均残業時間」を盛り込んでおり,情報公表に当たっては,「女性の活躍推進企業データベース」において公表を行うことを促進している。

総務省では,地方公共団体に対する助言,情報提供や女性活躍を始めとするダイバーシティ・働き方改革を推進するための実践的方策についての調査研究を行っている(第2章第1節参照)。

8厚生労働省委託事業 こころの耳 https://kokoro.mhlw.go.jp/

9「こころの耳電話相談」 https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/

2 ライフイベントに対応した多様で柔軟な働き方の実現

内閣府では,ワーク・ライフ・バランスの推進に向けた社会全体の気運を醸成するための取組として,「仕事と生活の調和」推進サイトを通じて,関係省庁の施策,関係団体等の取組や,「カエル!ジャパン」キャンペーンへの登録企業・団体の取組等を周知している。

また,企業等の取組を支援するための「カエル!ジャパン」通信(メールマガジン)を発行し,ワーク・ライフ・バランスに関する国の施策や周知情報を分かりやすく紹介しているほか,経済団体との共催により企業経営者や管理職を対象にした「トップセミナー」を開催し,企業の先進的な取組事例や仕事と生活の調和に取り組むメリットに関する情報を提供した。

厚生労働省では,男女雇用機会均等法等で定める妊娠,出産等を理由とする不利益取扱いの禁止や,妊娠,出産,育児休業等に関するハラスメントに係る事業主の防止措置義務について周知・履行確保を図っている。また,雇用管理上の措置を講ずるに当たっての取組支援を行った(第2章第2節参照)。

さらに,次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度(くるみん)及び特例認定制度(プラチナくるみん)の周知等により,認定を目指す企業の取組を促進している。

そのほか,保護者の通院や社会参加活動,又は育児に伴う心理的・身体的負担の軽減のため,保育所や駅周辺等利便性の高い場所で就学前の児童を一時的に預かる一時預かり事業を拡充している。

また,全国各地での企業向けセミナーの開催や仕事と家庭の両立支援プランナーによる個別支援を通じて,「育休復帰支援プラン」「介護支援プラン」や「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」の普及促進に取り組むとともに,同プランに基づき円滑な育児休業・介護休業の取得,職場復帰に取り組む中小企業事業主に対して助成金を支給している。特に,介護離職防止に取り組む事業主に対する助成金(介護離職防止支援コース)について,介護休業及び介護両立支援制度の利用日数の要件緩和等を行うことにより,介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境の整備を行う事業主に対する支援を拡充したほか,介護離職防止のため,介護支援専門員(ケアマネジャー)が要介護者の介護を行う家族が就労している場合に,その勤務実態も踏まえてケアプランを作成できるよう,仕事と介護の両立支援について学べる研修カリキュラムを策定した。

そのほか,「女性の活躍・両立支援総合サイト 両立支援のひろば」において,企業の両立支援の進捗状況に応じた取組のポイントと様々な企業の具体的な取組事例の周知を行うことにより,効果的・効率的な情報提供を行っている。

加えて,「多様な正社員」制度の一類型である短時間正社員制度について,その導入・定着を促進するため,制度導入・運用支援マニュアルをパート・有期労働ポータルサイト10に掲載し,短時間正社員制度の概要や企業の取組事例の周知を図った。

さらに,総務省,厚生労働省,経済産業省,国土交通省のテレワーク関係4省が連携し,仕事と子育てや介護との両立等柔軟な働き方が可能となるテレワークの全国的な普及促進を図るため,「テレワーク・デイズ」や11月の「テレワーク月間」等に係るイベントの開催や周知広報を行った。

総務省では,地域や中小企業におけるテレワーク導入促進に向け,関係団体等と連携し「テレワーク・サポートネットワーク」を活用したセミナー・相談会を実施したほか,テレワーク環境整備のための費用補助,テレワーク導入を検討する企業等への専門家による相談対応,テレワークに先駆的に取り組む企業等に対する表彰,全国でのセミナー開催等の取組を実施した。

経済産業省では,地域の中小企業・小規模事業者が,そのニーズに応じ,地域内外の女性・シニア等の多様な人材を確保するため,企業の魅力発信やマッチングの促進等を行った。

厚生労働省では,適正な労務管理下における良質なテレワークの推進のため,令和3(2021)年3月にテレワークガイドラインの改定を行った。また,テレワーク相談センターにおける相談対応やコンサルティングを実施するとともに,企業のテレワークの導入・活用を促進するため,中小企業に対してテレワークの導入や拡充に要した経費を助成する等の取組を実施した。

10「パート・有期労働ポータルサイト」 https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/

3 男性の子育てへの参画の促進,育児休業・休暇の取得促進

厚生労働省では,男性の仕事と育児の両立を推進する「イクメンプロジェクト」や男性の育児休業等取得促進に取り組んだ企業に対する助成金(出生時両立支援コース)の支給による支援を通して,男性が育児休業を取得しやすい職場環境の整備を図った。特に,令和2(2020)年度より個別面談の実施等により,男性の育児休業取得を後押しする取組を実施した場合の加算措置を設け,育児を行う男性労働者が働き続けやすい雇用環境の整備を行う事業主に対する支援を拡充した。また,男女別の育児休業取得率の情報公表が進むよう,取組を促している(第2章第2節参照)。

内閣府では,男性の家事・育児等参加に対する普及啓発活動を行った(第2章第3節参照)。

また,配偶者の出産直後の男性の休暇取得を促すことにより,男性の育児への参画・意識改革を進める「さんきゅうパパプロジェクト」について,ロゴマークやハンドブックを活用した啓発活動等を引き続き実施した。

4 女性が活躍するための前提となる人材育成

厚生労働省では,女性の就業支援に向けた研修等が効果的に実施されるよう,女性関連施設等の職員を対象とした相談対応や講師派遣事業を実施した。なお,令和2(2020)年度からは,新型コロナの拡大を受け,オンラインでのセミナーも実施している。また,国,都道府県等が設置・運営する公共職業能力開発施設において,離職者等に対する公共職業訓練を実施するとともに,雇用保険を受給できない求職者に対し,職業訓練と訓練期間中の生活支援等により早期の就職を支援する求職者支援制度を実施している。

また,事業主等が行う職業訓練を支援するため,人材開発支援助成金による助成等や,公共職業能力開発施設における在職者に対する訓練の実施,事業主等に対する同施設の貸与,同施設の職業訓練指導員の派遣等を行うほか,職業能力開発に関する情報提供・相談援助等を行っている。

さらに,労働者の自発的な職業能力開発を推進するため,教育訓練給付制度の活用のほか,労働者の自発的な取組を支援する事業主に対する助成を行っている。

労働者の主体的なキャリア形成を支援するため,キャリア形成サポートセンターの整備などを通じ,生涯を通じたキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールであるジョブ・カードを活用しながら,労働者が身近に,必要な時にキャリアコンサルティングを受けることができる環境を整備した。

加えて,公的職業訓練において,再就職に向けた介護分野や医療事務分野等,多くの女性が活躍している分野での訓練コースの設定や子育て中の女性が受講しやすい託児サービス付きの訓練コースや短時間の訓練コースによる支援を実施している。

さらに,労働者の主体的な職業能力の開発及び向上を促進し,再就職時の職業能力に基づいた評価にも資するよう,業界共通の職業能力評価の物差しとなる技能検定をはじめ,企業・労働者双方に活用される職業能力評価制度の整備を推進した。