第4節 非正規雇用労働者の処遇改善,正社員への転換の支援

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第4節 非正規雇用労働者の処遇改善,正社員への転換の支援

1 同一労働同一賃金の実現に向けた均等・均衡待遇の取組や正社員への転換に向けた取組の推進

雇用情勢が着実に改善しているタイミングを捉え,正社員を希望する者の正社員転換や非正規雇用を選択する者の待遇改善を推進することが重要である。このため,厚生労働大臣を本部長とした「正社員転換・待遇改善実現本部」において平成28(2016)年1月に策定した「正社員転換・待遇改善実現プラン」や,各都道府県労働局に設置した本部において同年3月までに策定したそれぞれの「地域プラン」に基づき,非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を強力に推進している。

パートタイム労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)に基づく是正指導等により同法の着実な履行確保を図った。また,パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保に向けた事業主の取組を支援するために,事業主に対する職務分析・職務評価の導入支援・普及促進等を行った。

さらに,平成30(2018)年6月に働き方改革関連法が成立し,同年7月に公布された。同法による改正後の短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「パートタイム・有期雇用労働法」という。)及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。)には,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた,1不合理な待遇差を解消するための規定の整備,2労働者に対する待遇に関する説明義務の強化,3行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備等を内容とする改正が盛り込まれた。短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号。いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」。)では,正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に,いかなる待遇差が不合理なものであり,いかなる待遇差が不合理なものでないのか,原則となる考え方及び具体例を示し,当該ガイドラインの周知を行った。

法の円滑な施行に向けて,事業主が何から着手すべきかを解説する「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」や,各種手当・福利厚生・教育訓練・賞与・基本給について,具体例を付しながら不合理な待遇差解消のための点検・検討手順を詳細に示した「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」等を策定し,周知を行った。また,パートタイム・有期雇用労働者の均等・均衡待遇の確保に向けた事業主の取組を支援するために,事業主に対する職務分析・職務評価の導入支援・普及促進等を行った。

加えて,企業における非正規雇用労働者の待遇改善等を支援するため,平成30(2018)年度より47都道府県に「働き方改革推進支援センター」を設置し,労務管理の専門家による個別相談やセミナー等を実施した。

2 公正な処遇が図られた多様な働き方の普及・促進

有期雇用労働者,パートタイム労働者,派遣労働者等の非正規雇用労働者には,企業側の人材ニーズや労働者の様々な働き方に応じた選択肢が提供されるなどの面もあるが,雇用が不安定,賃金が低い,能力開発機会が乏しいなどの課題がある。

このため,非正規雇用労働者の正社員転換,処遇改善といった企業内でのキャリアアップに取り組む事業主に対してキャリアアップ助成金を支給し支援している。

また,厚生労働省では,労働契約法の定める無期転換ルール(有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合等に,労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み)について,無期転換ルールの概要や導入手順をまとめたハンドブック,モデル就業規則,導入した企業事例や各種支援策等をまとめたポータルサイトを活用した周知のほか,無期転換ルール導入のためのコンサルティング支援や全国47都道府県でのセミナー開催など,あらゆる機会を活用して周知・啓発及び導入支援を行った。

さらに,多様な働き方の普及・促進を図るため,職務,勤務地,労働時間を限定した「多様な正社員」制度を導入している企業の導入事例の収集,「多様な人材活用で輝く企業応援サイト」11による周知・啓発を行うとともに,シンポジウムの開催によって雇用管理上の留意事項や企業の取組事例の紹介をすることにより社会的気運の醸成を図った。

また,有期契約労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和や,事業主に育児休業・介護休業等に関するハラスメントの防止措置を義務付けていることなど,育児・介護休業法の周知徹底を図るとともに,指導等により,同法の着実な履行確保を図っている。

派遣労働者については,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律(平成27年法律第73号)により,派遣元事業主に対し,均衡待遇の確保のために考慮した内容を派遣労働者の求めに応じて説明する義務や,派遣先に対し,福利厚生施設の利用機会を与えるよう配慮する義務等を課すこととされた。改正法の内容を解説したパンフレットを作成し都道府県労働局で配布することなどにより周知徹底を図り,指導等により,同法の着実な履行確保を図っている。

国の行政機関で働く非常勤職員の給与については,平成29(2017)年5月に,平成30(2018)年度以降,特別給(期末手当/勤勉手当)に相当する給与の支給を開始すること等を各府省等間で申し合わせたが,当該申合せに沿って各府省において取組を行った結果,平成30(2018)年度においては,期末手当や勤勉手当について9割超の非常勤職員に支給されており,着実に処遇改善が進んできている。

また,非常勤職員の休暇について,令和元(2019)年8月の人事院勧告時の報告において,民間の状況等を踏まえ,新たに夏季休暇を設ける旨言及し,令和2(2020)年1月に夏季休暇を新設した。

総務省では,地方公共団体の臨時・非常勤職員について,一般職非常勤職員に関する「会計年度任用職員」制度を整備するとともに,特別職非常勤職員及び臨時的任用職員の要件を厳格化し,任用・服務の適正化と期末手当を支給可能とすることを一体的に進めるための改正法(地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律(平成29年法律第29号))が平成29(2017)年5月に成立したことから,令和2(2020)年4月の改正法の施行に向け,各地方公共団体において条例・規則の制定等の必要な準備が円滑に進められるよう,「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」のQ&Aの追加や準備状況等に関する調査に係るヒアリングを実施し,地方公共団体に助言を行うなどの支援を行った。そして,令和2(2020)年度の地方財政計画には,新たに必要となる期末手当等の経費について所要額を適切に計上し,新制度に円滑に移行できるよう必要な財源を確保した。

また,地方公共団体の勤務条件等に関する調査では,一般職非常勤職員について育児休業制度を設けていない団体が見受けられるため,必要な条例の整備について要請した。

11「多様な人材活用で輝く企業応援サイト」 https://tayou-jinkatsu.mhlw.go.jp/