第1節 M字カーブ問題の解消等に向けたワーク・ライフ・バランス等の実現

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第4章 雇用等における男女共同参画の推進と仕事と生活の調和

第1節 M字カーブ問題の解消等に向けたワーク・ライフ・バランス等の実現

1 ワーク・ライフ・バランスの実現のための長時間労働の削減等

平成19(2007)年12月に政労使の合意の下に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に基づき,官民一体となり,仕事と生活の調和実現に向けた取組が行われている。

社会全体で,女性活躍の前提となるワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組を進めるため,女性活躍推進法及び「公共調達等取組指針」等に基づき,国及び独立行政法人等の調達において,生産性,持続可能性等の高いワーク・ライフ・バランス等推進企業を加点評価する取組を平成28(2016)年度から実施している。また,女性活躍推進法において努力義務となっている地方公共団体についても国に準じた取組が行われるよう働きかけを行うとともに,東京2020大会に関する調達や民間企業等における各種調達でも同様の取組が進むよう働きかけを行っている(第2章第1節参照)。

また,内閣府では,社会全体の気運醸成に向けた取組として,「カエル!ジャパン」キャンペーンを推進しているほか,原則月に2回,ワーク・ライフ・バランスに関する国の施策や関連行事等の情報を分かりやすく紹介する「カエル!ジャパン」通信(メールマガジン)を発行している。

厚生労働省では,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法及び「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)に基づき,時間外・休日労働時間の削減及び年次有給休暇の取得促進を始めとした労使の自主的な取組を促進している。

具体的には,時間外・休日労働時間の削減及び年次有給休暇の取得促進等を推進するため,厚生労働省幹部及び都道府県労働局長が業界及び地域のリーディングカンパニーのトップに働き方改革の実現に向けた取組の実施を働きかけるとともに,こうした企業の先進的な取組事例を広く普及させるために「働き方・休み方改善ポータルサイト5」を活用して情報発信をするなどの取組により,企業の自主的な働き方の見直しを促進した。さらに,10月の「年次有給休暇取得促進期間」に加え,年次有給休暇を取得しやすい時季(夏季,年末年始及びゴールデンウィーク)に集中的な広報を行うとともに,地域のイベント等と合わせた年次有給休暇取得促進の取組を促す「地域の特性を活かした休暇取得促進のための環境整備事業」を実施し,地域における休暇取得促進の気運を醸成した。

このほか,過労死等がなく,仕事と生活を調和させ,健康で充実して働き続けることができる社会の実現のため,過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)及び「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成27年7月策定,平成30年7月変更)に基づき,労働行政機関等における対策,調査研究等,啓発,相談体制の整備等,民間団体の活動に対する支援等の過労死等の防止に関する対策に取り組んでいる。

加えて厚生労働省では,事業者が労働者のメンタルヘルスケアに取り組むよう,「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月健康保持増進のための指針公示第3号,改正平成27年11月健康保持増進のための指針公示第6号)の普及啓発,ストレスチェック(平成27年12月創設)の実施とその結果に基づく面接指導の実施の徹底を図るため,労働基準監督署を通じた指導や産業保健総合支援センターによる支援を実施している。

また,働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」6において,事業者,産業保健スタッフ,労働者やその家族等に対して「メンタルヘルス対策の基礎知識」や「悩みを乗り越えた方の体験談」等の情報提供を行うとともに,「こころの耳電話相談」7・「こころの耳メール相談」において,働く人のメンタルヘルス不調や過重労働による健康障害に関する電話・メール相談に応じている。

さらに,働き方改革関連法に伴う労働安全衛生法及び労働安全衛生規則の改正により,事業者が産業医及び長時間労働者本人に対し労働時間等の情報を提供する仕組みを創設(平成31年4月施行)した。

ワーク・ライフ・バランスの推進,長時間労働の見直し,地域における女性の活躍推進等の「働き方改革」を進めるためには,地域の実情に即した取組が重要である。このため,地方公共団体や労使団体,金融機関などの地域の関係者からなる「地域働き方改革会議」が全都道府県に設置され,地域の課題を踏まえて,地域特性に応じた「働き方改革」の取組が進められている。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局では,関係府省及び専門家からなる「地域働き方改革支援チーム」により地域での取組を支援する等により,こうした地域ぐるみでの「働き方改革」を推進している。また,労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「労働施策総合推進法」という。)第10条の3の規定に基づく協議会等も,全都道府県に設置され,中小企業が働き方改革を円滑に取り組めるよう,支援等が行われている。

5厚生労働省委託事業「働き方・休み方改善ポータルサイト」 https://work-holiday.mhlw.go.jp/

6厚生労働省委託事業 こころの耳 https://kokoro.mhlw.go.jp/

7「こころの耳電話相談」 https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/

2 ライフイベントに対応した多様で柔軟な働き方の実現

厚生労働省では,育児・介護休業法の定着を図るため,制度内容の周知や雇用管理上の措置を講ずるに当たっての取組支援を行っている。また,育児や介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境の整備を行う事業主等を支援するため,両立支援等助成金の支給を行っている。

併せて,全国各地での企業向けセミナーの開催や育児プランナー・介護プランナーによる個別支援を通じて,中小企業における労働者の円滑な育児休業・介護休業の取得及び職場復帰等を円滑に行うためのツールである「育休復帰支援プラン」「介護支援プラン」や,事業主が従業員の仕事と介護の両立を支援する際の具体的取組方法・支援メニューである「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」の普及促進に取り組んだ。また,子の看護休暇(小学校就学前の子1人につき年5日(2人以上の場合は年10日))及び介護休暇(介護を必要とする家族1人につき年5日(2人以上の場合は年10日))をより柔軟に利用できるよう,時間単位での取得を可能とすること等を内容とする法令改正(令和元年12月公布・告示,令和3年1月1日施行・適用)を行い,リーフレット等により改正内容の周知を図った。

加えて,次世代法に基づく認定制度(「くるみん」認定,「プラチナくるみん」認定)の周知や,「女性の活躍・両立支援総合サイト」8における,仕事と家庭の両立に向けた企業の自主的な取組の参考となる指標や好事例等の周知を行った。

さらに,所定労働時間が短いながら正社員として適正な評価と公正な待遇が図られた働き方であり,育児・介護や地域活動など個々人のライフスタイルやライフステージに応じた働き方を実現させるものとして期待される「短時間正社員制度」について,その導入・定着を促進するため,「短時間正社員」制度導入・運用支援マニュアルを作成・配布し,併せて,パート・有期労働ポータルサイト9に掲載することにより,短時間正社員制度の概要や取組事例等について周知・啓発を行った。

「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成30年6月閣議決定)等に基づき,関係省庁では,テレワークの一層の普及拡大に向けた環境整備,普及啓発等を連携して推進している。

総務省,厚生労働省,経済産業省,国土交通省のテレワーク関係4省は,産学官から構成される「テレワーク推進フォーラム」において,テレワークの円滑な導入や効果的な運用に資する普及活動を展開している。「テレワーク推進フォーラム」では,平成27(2015)年度から11月を「テレワーク月間」として,テレワークの普及促進に向けた広報等を集中的に実施している。令和元(2019)年度のテレワーク月間においても,周知ポスターや動画によるPRや関連イベントの開催等を集中的に行った。

平成29(2017)年度からは,東京2020大会の開会式が予定されていた7月24日10を「テレワーク・デイ」とし,この日に全国で一斉にテレワークを実施する国民運動を展開している。令和元(2019)年には東京2020大会前の本番テストとして,7月22日から9月6日の約1か月半を「テレワーク・デイズ2019」と設定し,テレワークの一斉実施を呼びかけたところ,2,887団体,約68万人が参加した。

総務省では,テレワーク環境整備のための費用補助,テレワーク導入を検討する企業等への専門家派遣,テレワーク普及促進の担い手育成のためのテキストブックの作成及び講習会の開催,テレワークに先駆的に取り組む企業等に対する表彰を行うとともに,全国でセミナーを開催し,その普及を図った。

厚生労働省では,企業等に雇用される労働者が行ういわゆる雇用型テレワークについて,実行計画に基づいて改定した労務管理に関するガイドラインの周知,テレワーク相談センターや国家戦略特別区域制度に基づいて設立した東京テレワーク推進センターを通じた相談対応,企業等に対する労務管理に関する専門家の派遣,事業主を対象としたセミナー等の開催,テレワークに先進的に取り組む企業等に対する表彰の実施,テレワーク導入経費に係る支援,企業によるテレワーク宣言を通じての取組の紹介等により,適正な労務管理下における良質なテレワークの普及を図っている。

また,請負等により自宅等で働くいわゆる自営型テレワークの就業環境整備を図るため,実行計画に基づいて改定したガイドラインの周知徹底等を図った。併せて,「ホームワーカーズウェブ」の運営により,自営型テレワーカー及び自営型テレワークの発注者に対する情報提供等の支援事業を実施した。

国土交通省では,テレワークによる働き方の実態やテレワーク人口の定量的な把握を行った。

経済産業省では,テレワーク・デイズ周知媒体(ポスター,リーフレット等)を作成,関連府省と協力しながら配布することで多種,多様な団体への周知を行った。

8厚生労働省委託事業「女性の活躍・両立支援総合サイト」 https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/

9「パート・有期労働ポータルサイト」 https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/

10令和2(2020)年3月30日に,東京オリンピックは令和3(2021)年7月23日から開催されることが決定された。

3 男性の子育てへの参画の促進,育児休業・休暇の取得促進

厚生労働省では,男性の仕事と育児の両立を推進する「イクメンプロジェクト」や助成金の支給による支援を通して,男性が育児休業を取得しやすい職場環境の整備を図った。また,育児休業等に関するハラスメントの防止措置が,事業主において適切に講じられるよう周知や履行確保を行っている。

内閣府では,配偶者の出産直後の男性の休暇取得を促すことにより,男性の家事・育児への参画・意識改革を進める「さんきゅうパパプロジェクト」(令和2(2020)年に男性の配偶者の出産直後の休暇取得率80%が目標)を推進するとともに,妊娠・出産・子育てに際して,男性ができることを考えるきっかけとなるようハンドブックを活用した啓発活動を行った他,動画「そうなの?さんきゅうパパ」の作成や「子育て応援コンソーシアム」第5回会合において,NHK番組「おかあさんといっしょ」の体操のお兄さんとして,平成17(2005)年から平成31(2019)年まで,歴代最長期間を務めた小林よしひさ氏を「さんきゅうパパプロジェクト」広報大使に任命する等,大規模キャンペーンを実施した。

また,平成29(2017)年度より,主に子育て世代の男性の家事・育児等の中でも料理への参画を目的とした「“おとう飯”始めよう」キャンペーンを実施し,イベントの開催や祝日や季節に応じた料理機会の提案,令和元(2019)年9月から,本キャンペーンの新たな試みとして,男性の料理参加を促進する「気づき」と「あるある」をコンパクトにまとめた「おとう飯語録」を,おとう飯大使のSNSや当局ホームページで公開することにより啓発を行っている。

また,内閣府が,平成29(2017)年度に,各都道府県及び市町村の協力を得て収集・整理した,「地域における男性の家事・育児等の参画促進に係る取組の好事例」の中から,他の自治体においても活用・展開が可能な先進的な取組事例を内閣府ホームページに掲載し周知を図ることにより,他の地域への優良な取組の展開を図った。

4 女性が活躍するための前提となる人材育成

厚生労働省では,全国の女性関連施設等が行う女性就業促進支援事業が効果的,効率的に実施され,全国的な女性の活躍推進のための支援施策の充実が図られるよう,相談対応や講師派遣等,女性関連施設等に対する支援施策を実施している。

国,都道府県等が設置・運営する公共職業能力開発施設において,離職者等に対する公共職業訓練を実施するとともに,雇用保険を受給できない求職者に対し,職業訓練と訓練期間中の生活支援等により早期の就職を支援する求職者支援制度を実施している。

また,事業主等が行う職業訓練を支援するため,人材開発支援助成金による助成や,公共職業能力開発施設における在職者に対する訓練の実施,事業主等に対する同施設の貸与,同施設の職業訓練指導員の派遣等を行うほか,職業能力開発に関する情報提供・相談援助等を行っている。

さらに,労働者の自発的な職業能力開発を推進するため,教育訓練給付制度の活用のほか,労働者の自発的な取組を支援する事業主に対する助成を行っている。