第2節 家族類型から見た「家事・育児・介護」と「仕事」の現状

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第2節 家族類型から見た「家事・育児・介護」と「仕事」の現状

第1節で見たとおり,中長期的に女性の「家事・育児・介護時間」は減少し「仕事等時間」は増加してきたが,結婚したり子供を持ったりした場合,すなわち夫婦や夫婦と子供の世帯における女性は,仕事をしていてもしていなくても,その「家事・育児・介護時間」は大きく変わっていないかむしろ増加している。一方で,近年,「夫婦と子供」から成る世帯割合の低下や単独世帯の増加等により,特定の家族類型をもって標準的な家族構成とみなすことはできない状況になってきている。

そこで,この節では,「単独世帯」「夫婦のみ世帯」「夫婦と子供世帯」といった家族類型ごと,さらには子供の年齢層別に,「家事・育児・介護」と「仕事」のバランスが現状ではどのようになっているかを見ていく。また「見えない家事」ともいわれる家庭のマネジメントの夫婦間の負担状況を見たうえで,さらに,小さな子供のいる夫婦,介護が必要な者のいる家族に焦点を絞り,「家事・育児・介護時間」の長短のみならず,実施している内容や頻度に着目して,バランスや分担について掘り下げていくこととする。最後に,家族内の分担にとどまらず,外部サービスの利用についても現状を紹介する。

参考

「家事等と仕事のバランスに関する調査」について

本白書では,家事等や仕事のバランスや家族内の分担について,「時間」以外の実態(実際に担っている内容や頻度など)を詳細に把握するために,「家事等と仕事のバランスに関する調査」(令和元年度内閣府委託調査・株式会社リベルタス・コンサルティング)の調査結果を紹介している(「第2節1.」,「第2節2.」,「第2節3.(1)」,「第2節5.」並びに「第3節1.(1)及び(2)」)。

本調査の調査概要は,以下のとおりである。

(1) 調査目的

「家事・育児・介護」と「仕事」のバランスの実態について,「時間」といった量的な面に加えて実際に担っている内容や頻度といった質的な面にも着目することで,より詳細に把握する(「バランス」の実態の掘り下げ)。この際,家事等や仕事のバランスや分担が人々の生活にどのような影響を与えるかについての視座を得るために,時間の長さと生活満足度等との関係にも着目する。

また,従来の家事・育児・介護に関する調査よりも,より対象者が広く,(特に育児については)時間軸も長く想定したものとする(対象者像の拡大)。

具体的には,第1節1では,男女または夫婦(夫婦全体及び6歳未満の子を持つ夫婦)におけるバランスをみたが,「第1節3.家族・世帯等の状況」で見たとおり,近年の「夫婦と子供」から成る世帯割合の低下や単独世帯の増加等を踏まえると,多様な家族類型を視野に入れて,それぞれの家族類型に属する男女の特色や全体的な傾向を把握する必要がある。このため,夫婦+子供世帯だけではなく,単独世帯や夫婦のみ世帯なども含めた家族類型ごとに時間や実施頻度等を把握する。

育児については,子供が巣立つまでの長期にわたり,男性の参画が求められるのは乳幼児期に限られるものではないため,本調査では0歳から中学生までの子について年齢区分に応じた分析をする。これにより,長期にわたっての夫婦のバランスや分担の状況を把握する。

(2) 調査方法

  • インターネットモニターに対するアンケート調査
  • インターネットモニターに,同居している配偶者(事実婚などのパートナーを含む。以下同じ)がいる場合には,配偶者にも同じ質問をしている。

(3) 調査期間

令和元年12月23日(月)~26日(木)

(4) 調査項目

「暮らしに関する調査」という名称で,以下の14の項目を調査した。

  1. 1生活時間に関する質問
  2. 2家事・育児・介護に関する質問
  3. 3外部サービス利用に関する質問
  4. 4生活満足度やディストレス(抑うつ・不安)に関する質問

14の回答に先立ち,回答者についての状況(就業状況,世帯の状況,子供の有無や末子の年齢など)も質問し,クロス集計に用いている。

(5) 回答者数など

  • 回答者数は,13,637名(女性6,804名,男性6,833名)。このうち,モニター及び配偶者のカップルは5,486組。
  • 平成27年国勢調査における世帯の家族類型別人口割合に基づき,サンプルの割付を実施。なお,有業率や学歴による割付は行っていない。

1 家族類型ごとに見た家事・育児・介護時間と仕事等時間

家族類型や子供の年齢層の違いによって,男女の1日の「家事時間」3,「育児時間」4,「介護時間」5及び「仕事等時間」にどのような特徴が認められるかを見てみる。

3食事の準備・後片付け,掃除,洗濯,衣類・日用品の整理片付けなどの家事に使う時間

4乳幼児の世話,子供の付き添い,子供の勉強や遊びの相手,乳幼児の送迎,保護者会活動に参加などの育児に使う時間

5家族や親族に対する日常生活における入浴・トイレ・移動・食事の手助けなどの介護に使う時間

I-特-16図a 家族類型(男女別)ごとの1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間別ウインドウで開きます
I-特-16図a 家族類型(男女別)ごとの1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間

I-特-16図b 家族類型(男女別)ごとの1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間別ウインドウで開きます
I-特-16図a 家族類型(男女別)ごとの1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間

I-特-16図c 家族類型(男女別)ごとの1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間別ウインドウで開きます
I-特-16図a 家族類型(男女別)ごとの1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間

I-特-16図[CSV形式:3KB]CSVファイル

(家事時間)

仕事をしている人の「仕事のある日」を見ると,女性の「家事時間」は家族類型により大きく異なるが,男性の場合は家族類型により異ならないという傾向がある。この結果「家事時間」は,単独世帯では男女差がほぼないが,夫婦になると女性は男性の2倍以上になる。最も男女差が大きい家族類型は「夫婦+子供(末子が小学生)世帯」であり,女性の家事時間は男性の3.58倍である。

仕事をしている人の「仕事のない日」についても,「仕事のある日」と同様の傾向が見られ,夫婦になると女性は男性の2倍以上の家事時間となっている。

また,「夫婦+子供世帯」の女性について,仕事をしていない女性の「普段の日」を仕事をしている女性の「仕事のない日」と比較すると,「家事時間」が40分~1時間半程度長い。

(育児時間)

「夫婦+子供世帯」で仕事をしている人の「仕事のある日」を見ると,「育児時間」は,女性が男性の2.1~2.7倍程度になっている。「仕事のない日」については,女性が男性の1.2~1.3倍程度であり,「仕事のある日」と比較すると男女差が縮まる傾向にある。男性の「仕事のある日」の中では「夫婦+子供世帯(末子が就学前)」の男性の「育児時間」が最も長い。

また,「夫婦+子供世帯」の女性について,仕事をしていない女性の「普段の日」を仕事をしている女性の「仕事のない日」と比較すると,末子が中学生になるまでは仕事をしていない女性の「育児時間」の方が2時間程度も長い。

(仕事等時間)

仕事をしている人の「仕事のある日」の「仕事等時間」を見ると,女性は「仕事等時間」の短い順に,「夫婦+子供世帯(末子が小・中学生)」,「夫婦のみ世帯」と「夫婦+子供世帯(末子が就学前)」,「単独世帯」となるが,男性は,「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」,「夫婦+子供世帯(末子が小・中学生)」,「夫婦+子供世帯(末子が就学前)」となり,ほぼ反対の傾向を示している。また,「単独世帯」では男女差はわずかであるが,「夫婦のみ世帯」では,男性が女性の1.2倍弱,「夫婦+子供世帯」では,男性が女性の1.3倍強となっている。

(「仕事等時間」,「家事時間」,「育児時間」,「介護時間」の合計時間)

「仕事等時間」,「家事時間」,「育児時間」及び「介護時間」の合計時間の長さを男女別世帯類型別に見ると,長い人から順に,仕事をしている人の「仕事のある日」で「夫婦+子供(末子が就学前)世帯」の女性(12時間23分),同じく男性(12時間2分),「夫婦+子供(末子が小学生)世帯」の女性(11時間21分),同じく男性(11時間13分)となっている。仕事をしていない人の「普段の日」でも,「夫婦+子供(末子が小学生)世帯」の女性は11時間7分であり,同じく「夫婦+子供(末子が小学生)世帯」で,仕事をしている男女の「仕事のある日」と大きな違いはない。

(介護をしている人の状況)

「自身が介護をしている」と回答した人を対象に,1日の「介護時間」,「家事時間」,「育児時間」及び「仕事等時間」を見てみる(I-特-17表)。

I-特-17表 1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間(「ふだん自身が介護をしている」と回答した人)別ウインドウで開きます
I-特-17表 1日当たりの家事・育児・介護時間と仕事等時間(「ふだん自身が介護をしている」と回答した人)

I-特-17表[CSV形式:3KB]CSVファイル

「介護時間」については,仕事をしている人のうち「夫婦+子供世帯」においては,仕事のある日,ない日にかかわらず男女差が小さい。これに対して,仕事をしている人であっても「単独世帯」や「夫婦のみ世帯」においては,女性の方が男性より「介護時間」が長い。

また仕事をしている人のうち「夫婦+子供世帯」については,「家事時間」,「育児時間」及び「介護時間」の合計時間についても男女差が小さい。具体的には,「仕事のある日」で見ると,「夫婦+子供(末子が就学前)世帯」で女性が4時間19分,男性が4時間10分,「夫婦+子供(末子が小学生)世帯」で女性は4時間3分,男性が3時間50分となっている。「夫婦+子供(末子が中学生)世帯」では女性が3時間43分,男性が3時間14分と若干男女差が開くが,それでも「夫婦+子供(末子が中学生)世帯」(仕事をしている人の「仕事がある日」)全体における「家事時間」「育児時間」「介護時間」合計の男女差(女性3時間25分,男性1時間8分)(I-特-16図a.)と比べると圧倒的に差が小さい。「仕事がない日」についても同様の傾向が認められる。これに対して,仕事をしている人のうち「単独世帯」や「夫婦のみ世帯」においては,同合計時間についても仕事のある日,ない日とも女性が男性より長い。

「仕事等時間」は,仕事をしている人のうち「夫婦+子供世帯」を見ると,「自身が介護をしている」場合は,全体に比して男女差が大幅に短縮される。当該類型は,全体では「仕事等時間」の男女差が他の世帯類型より大きく,男性が女性の1.3倍強であるが(前述「(仕事等時間)」部分参照),「自身が介護をしている」場合は男性が女性の1.1倍前後(ただし,末子が中学生の場合は,女性が男性の1.1倍)になる。この場合「自身が介護をしている」か否かで大きく変わっているのは,男性の「仕事等時間」である。仕事をしている男性の仕事がある日の「仕事等時間」を,全体と「自身が介護をしている」場合で比較すると,「夫婦+子供(末子が就学前)」で10時間2分から8時間40分に,「夫婦+子供(末子が小学生)」で9時間51分から8時間51分に,「夫婦+子供(末子が中学生)」で9時間49分から7時間10分に減少している。

これらの結果を踏まえると,現状においては,男性は,育児と介護の両方を担う状況が生じた場合に初めて,自身の「仕事等時間」を短縮し,その分を家事・育児・介護に振り向けていると考えられる。他方「夫婦+子供世帯」の女性の「仕事等時間」や「家事・育児・介護時間」は全体と「自身が介護をしている」場合とで大きな差はない。

したがって,女性は育児に加えて介護も担う状況が生じても,介護分の負担が時間として純増するのではなく,家族のケア全体の一部として,仕事との時間バランスを大幅に変えることなく生活していることがうかがえる。

2 家事・家庭のマネジメントの分担

家事・育児・介護には,作業に要する時間や実際の作業負担以外に,日々の家事をマネジメントする責任や日々の家庭生活を滞りなく送ることが出来るようにする責任に伴う負担もある。そこで,こうした責任の所在を把握するために,夫婦の間で,「食材や日用品の在庫の把握」「食事の献立を考える」「家族の予定を調整する」といった家事のマネジメントや家庭生活のマネジメントを誰がしているかを見てみる6。

主だった家事・家庭のマネジメントの項目について,夫婦に分担状況を聞くと,「妻」と「どちらかというと妻」との合計が,おおむね5割以上である。特に「食材や日用品の在庫の把握」「食事の献立を考える」は,「妻」とする回答が6割を超え,「どちらかというと妻」という回答もあわせると8割を超える。

さらに,「食事の献立を考える」「親や親族との付き合い」「家計管理・運営」に絞って妻夫別及び年齢階級別の回答状況を見てみると,年齢による違いは無い(「食事の献立を考える」),妻の回答は20代~50代まで回答状況に大きな違いは無い(「親や親族との付き合い」),妻も夫も20代が「妻」という回答が最も多く過半数に達している(「家計管理・運営」)などの結果が得られた(付図1参照別ウインドウで開きます)。

以上によると,日々の家事をマネジメントする責任や日々の家庭生活を滞りなく送ることが出来るようにする責任は妻が多くを担っており,年齢が若くなると妻の責任負担割合が軽減されるという状況にもないことがうかがわれる。

I-特-18図 家事・家庭のマネジメントの分担(夫婦回答計)別ウインドウで開きます
I-特-18図 家事・家庭のマネジメントの分担(夫婦回答計)

I-特-18図[CSV形式:1KB]CSVファイル

6夫婦(事実婚などのパートナーを含む。)に対して同じ質問をして夫婦両方から回答を求めた。

3 小さな子供がいる夫婦

(1)育児の実施状況

「1 家族類型ごとに見た家事・育児・介護時間と仕事等時間」では,小さな子供がいる世帯で,男女ともに仕事等時間と家事や育児に要する時間の合計時間が長い,仕事等時間の男女差が大きい,仕事をしていない場合には,その分,家事や育児時間が長くなるといった点が見られた。また,第1節「1.『家事・育児・介護時間』と『仕事等時間』の推移」で見たとおり,6歳未満の子を持つ夫婦は,夫婦全体と比較すると,妻はもともと長い「家事・育児・介護時間」がさらに長くなり,夫は高水準の「仕事等時間」がさらに長くなるとともに「家事・育児・介護時間」がわずかに長くなり,妻は「家事・育児・介護」に夫は「仕事」により忙しくなっていることがうかがわれた。

そこで,ここでは小さな子供がいる夫婦の育児の実施状況について,実施している内容や頻度等に着目して掘り下げていくこととする。

(育児の分担割合や実施頻度)

子供の年齢を「0歳~2歳」「3歳~就学前」「小学校1年生~3年生」に区分して,各区分の年齢の子がいる夫婦について,夫の分担割合を見ると,子供の年齢が低いほど,わずかに分担割合が上がる(I-特-19図)。

I-特-19図 育児の分担割合(妻・夫)別ウインドウで開きます
I-特-19図 育児の分担割合(妻・夫)

I-特-19図[CSV形式:1KB]CSVファイル

さらに,主な育児の実施頻度を見てみたところ,以下のような結果が得られた(付図2参照別ウインドウで開きます)。

まず,子供の年齢にかかわらず,妻は「ほぼ毎日・毎回する」という回答割合が高く,夫は,実施する場合でも「週に1~2回程度する」又は「月に1~2回程度する」の回答割合が高い。妻は日常的な育児を担い,夫が限定的な場面で関わる傾向が明らかである。

また,子供の年齢にかかわらず夫の「まったくしない」という回答割合が特に高いのは,就学前の子がいる場合の「育児に関する予定の管理」「育児に関する情報収集」「保護者会活動」,小学校1年生から小学校3年生の子供がいる場合の「保護者会やPTAの活動・個人面談」である。

次に,子供の年齢による違いについては,同じ項目や同じような内容の項目で比較すると,夫は子供の年齢が低いほど育児に関わる傾向がある。

以上によると,妻の育児負担は子供の成長により軽くなるとはいえない。子供の年齢別に妻と夫双方に育児の分担割合の認識を聞いた結果を見ても,妻の育児分担割合は子供の年齢が上がっても小さくなってはいない。また,「育児時間」も「夫婦+子供世帯」の妻の「育児時間」は,仕事をしている場合の仕事のない日や仕事をしていない場合のいずれにおいても,末子の年齢が上がるほど短くなるわけではない(I-特-16図)。

(妻の就業状況による夫の育児分担状況の違い)

夫による育児の実施頻度や分担割合については,妻の就業状況による違いも見られた(付図3参照別ウインドウで開きます)。

具体的には,子供の年齢を「0歳~2歳」「3歳~就学前」「小学校1年生~3年生」に区分して,各区分の年齢の子の育児について夫の実施頻度や分担割合を見ると,妻が「フルタイム勤務」の夫は,妻が「短時間勤務」または「無業」の夫より育児に関わる傾向がうかがわれる(ただし,子供が小学校1~3年生の場合,妻が「無業」の夫より育児に関わるとは必ずしも言えない。)また,子供が小学校1~3年生の場合,妻が「短時間勤務」の夫は,妻が「無業」の夫よりも育児への関わりが薄いことがうかがわれる。

一方,「育児に関する予定管理」や「育児に関する情報収集」「保護者会活動」などの育児のマネジメントに関する項目については,妻の就業状況にかかわらず,夫の関わりが薄い傾向がある。

(長時間労働と夫の育児分担状況との関係)

「1 家族類型ごとに見た家事・育児・介護時間と仕事等時間」では,就学前の子供のいる世帯の男性が,男性の中では最も育児時間が長いが,仕事等時間も最も長いことが明らかになった(I-特-16図)。そこで,夫の長時間労働が家事や育児への参画にどのように影響するかを把握するため,夫の週間就業時間別に育児時間や家事時間の長さを見てみる。

「仕事のある日」については,夫の週間就業時間が長いほど,育児時間が短くなる。「週間就業時間が60時間以上」の夫の育児時間は,平均的な「週間就業時間が40~48時間」の夫の育児時間より32分短い。

「仕事のない日」は,「仕事のある日」ほど,週間就業時間の長さと育児時間の短さとの関係はみられず,「週間就業時間30時間未満」の者を除くと,育児時間は3時間~3時間半前後に分布している。

夫の育児分担割合は,「週間就業時間30時間未満」の場合は4割であるものの,「週間就業時間60時間以上」では2割と半減しており,夫の育児分担割合は,夫の週間就業時間が長いほど低くなっている。

以上によると,「仕事のない日」以外は,夫の週間就業時間が長いほど,育児時間が短くなり,育児分担割合は低くなっており,夫の育児への参画には,長時間労働の解消が不可欠であることが明らかである。

I-特-20図 未就学児のいる夫の育児時間・育児分担割合(週間就業時間別)別ウインドウで開きます
I-特-20図 未就学児のいる夫の育児時間・育児分担割合(週間就業時間別)

I-特-20図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(2)男性の育児休業等

(男性の育児休業取得率等)

平成30(2018)年度における男性の育児休業取得率は,民間企業が6.16%,国家公務員が12.4%,地方公務員が5.6%で,近年上昇している(I-特-21図)。しかし,いずれも女性(民間企業82.2%,国家公務員98.5%,地方公務員99.4%)と比較すると,依然として極めて低水準にあり,男女間で大きな差がある。

I-特-21図 男性の育児休業取得率の推移別ウインドウで開きます
I-特-21図 男性の育児休業取得率の推移

I-特-21図[CSV形式:1KB]CSVファイル

加えて,育児休業取得者における取得期間別割合を見ると,女性は1年弱以上が大多数であるのに対して,男性で同等の期間を取得する者はまれであり,女性に比して圧倒的に短期間の取得となっている(I-特-22図)。もっとも,3年前の平成27(2015)年(厚生労働省「雇用均等基本調査(平成27年度)」と比較すると,民間企業における男性の育児休業取得期間割合は,5日未満が56.9%から36.3%に大幅に減少するとともに5日~2週間未満が17.8%から35.1%に大幅に増加しており,男性の育児休業取得の傾向に大きな変化が生じていることがうかがわれる。

I-特-22図 育児休業取得期間別割合別ウインドウで開きます
I-特-22図 育児休業取得期間別割合

I-特-22図[CSV形式:1KB]CSVファイル

平成30(2018)年度における配偶者出産休暇7取得率は,国家公務員が84.6%(平成29(2017)年度は79.6%),地方公務員が73.6(同74.0%)%であり,男性の育児参加のための休暇8取得率は,国家公務員が74.5%(同63.2%),地方公務員が38.3%(同36.1%)であり,地方公務員の配偶者出産休暇率を除き前年度より上昇している。

7出産に伴い必要と認められる入院の付き添い等を行う場合に,2日の範囲内の期間。

8妻の産前産後期間中に,当該出産に係る子又は小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性職員に対し,5日の範囲内の期間。

4 介護が必要な者がいる家族

(1)介護を行う者の概況

(介護者の男性割合が増大)

15歳以上でふだん家族を介護をしている人(以下「介護者」という。)は,近年,男女ともに増加しており,平成28(2016)年では男性介護者は277万6千人,女性介護者は421万1千人となっている。これは,平成3年(1991)年と比較して,男性介護者は2.5倍, 女性介護者は1.7倍である。平成28(2016)年において介護者全体に占める男性の割合は39.7%となっている。

I-特-23図 介護者数の推移(男女別,平成3(1991)年→平成28(2016)年)別ウインドウで開きます
I-特-23図 介護者数の推移(男女別,平成3(1991)年→平成28(2016)年)

I-特-23図[CSV形式:1KB]CSVファイル

男性の介護者が増加してきたのは,配偶者の親を介護する女性すなわち「嫁が舅や姑の介護をする」パターンが減り夫婦がそれぞれ実親の介護を担うパターンが増えたことや,未婚男性が親を介護したり既婚男性が配偶者を介護したりという形で介護を担う男性が増えてきたことが背景にあると考えられる。

同居の主な介護者を続柄別に見ると,平成10(1998)年に最も多かった「子の配偶者(女性)」(27.4%)が平成16(2004)年以降に大きく減少し,直近では16.3%となっている。一方,平成10(1998)年当時には6.4%であった「息子」及び11.3%であった「夫」が増加し,それぞれ17.2%,15.6%となっている。

妻が夫の介護を担うパターンが多く,期間を通じて25~28%前後で推移している。しかし,その他の続柄においてはそれぞれが占める割合の差は急速に縮小しており,平成10(1998)年においては,最小の「息子」(6.4%)と最大の「子の配偶者(女性)」(27.4%)の差は21%ポイントの範囲で散らばっていたものが,平成28(2016)年においては,最小の「夫」(15.6%)と最大の「娘」(19.9%)とわずか4.3%ポイントの範囲に収束している。このことから,家族の介護の担い手が近年多様化しており,その中で男性が家族の介護を担うことが決して珍しくはなくなってきていることが分かる。

I-特-24図 同居の主たる介護者の推移(続柄別,平成10(1998)年→平成28(2016)年)別ウインドウで開きます
I-特-24図 同居の主たる介護者の推移(続柄別,平成10(1998)年→平成28(2016)年)

I-特-24図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(働きながら介護をしている人の割合等)

男女ともに働きながら介護をしている人は多い。平成28(2016)年において女性介護者の50.7%,男性介護者の66.0%が仕事を持っている。介護をしている人が全年齢層を通じて最も多く,かつ年齢層別人口比で1割を占めるいわば介護の担い手のボリュームゾーンである50代及び60代について見ると,男性介護者は50代で90.8%,60代で65.3%が仕事を持っている。女性介護者はそれぞれ68.5%,40.1%である。

介護者に占める仕事を持つ介護者の割合は,5年前(平成23(2011)年)と比較して,女性介護者では比較的若い層(30歳未満から50代)で上昇しているが,男性介護者では逆に若い層(30歳未満,30代)で低下している。特に30歳未満の傾向は男女で対照的であり,女性介護者が20%ポイント以上増加しているのに対して男性介護者が20%ポイント以上低下し,この結果男女の割合が逆転した(介護者に占める仕事を持つ介護者の割合は,平成23(2011)年において女性と男性でそれぞれ52.3%と73.5%,平成28(2016)年においてはそれぞれ73.5%と51.1%)。

フルタイム勤務をしながら介護をしている人も多い。介護者に占めるフルタイム勤務の介護者の割合は5年間で男女とも上昇している。実数が多い50代において男性は61.4%から70.7%に,女性は28.4%から35.2%に上昇しているほか,概ね男女すべての年代で上昇ないしは横ばいの傾向を示しているが,30歳未満の男性においては51.9 % から39.0%に大きく減少しており,この点でも5年間で30歳未満の介護者の様相が男女で逆転している(介護者に占めるフルタイム勤務の介護者の割合は,平成23(2011)年において女性と男性でそれぞれ39.2 % と51.9%,平成28(2016)年においてはそれぞれ55.6%と39.0%)。

高齢者の就業機会の拡充,女性の就業率の上昇などにより,今後も50代や60代において働きながら介護をしている人は増加することが見込まれる。他方,30歳未満の若い介護者において,仕事と介護をめぐる状況やその男女における違いの様相が急速に変化していることにも留意が必要である。特に30歳未満の男性介護者については,5年間で介護者総数やその人口比に大きな変化が見られない中で,仕事を持つ介護者やフルタイム勤務の介護者が大幅に減少していることから,この年代の個々の男性介護者における仕事と介護の在り方が短期間で大きく様変わりしている可能性が高い。

I-特-25表 仕事を持つ介護者・フルタイム勤務の介護者の割合(平成23(2011)年/平成28(2016)年)別ウインドウで開きます
I-特-25表 仕事を持つ介護者・フルタイム勤務の介護者の割合(平成23(2011)年/平成28(2016)年)

I-特-25表[CSV形式:2KB]CSVファイル

(2)家庭による介護の実施状況

家族が実施している介護の内容や頻度を見てみると,「育児」の実施状況(付図2参照別ウインドウで開きます)と比較して,「介護」の実施状況は男女差が大幅に少ない(付図5参照別ウインドウで開きます)。

家庭における介護は,様々な続柄の者が行うようになり,また,単独で介護をする場合もあれば,複数で分担をして行う場合もあるなど多様な形が想定されることからも,現在は,女性だけでなく男性も介護を担うことが増えていると考えられる。

5 外部サービスの利用

(家事支援サービス)

平成30年(2018年)に実施された調査9によると,家事支援サービスの利用状況は,「現在,利用している」が1.8%,「過去に利用していたことがある(現在は利用していない)」が4.7%となっており,両者を合わせても利用者は6.5%にとどまっている。

一方,利用したことがない人に対する「将来利用したいと思うか」との質問については,「利用したいと思う」が6.9%,「まあ利用したいと思う」が29.6%となっており,実際の利用率の低さと比較すると潜在的な利用意向が大きいことがうかがわれる。(I-特-26図)。

I-特-26図 家事支援サ-ビスの利用の有無・利用意向別ウインドウで開きます
I-特-26図 家事支援サ-ビスの利用の有無・利用意向

I-特-26図[CSV形式:1KB]CSVファイル

利用したことがない人の「家事支援サービスを利用していない理由」については,「家族内で対応できており,サービスを利用する必要性を感じないため」が最も多く(19.8%),「他人に家の中に入られることに抵抗があるため(17.5%)」,「所得に対して価格が高いと思われるため(15.1%)」,「他人に家事等を任せることに抵抗があるため(12.1%)」が続いている。「サービスが利用しにくいため(1.1%)」等,家事支援サービスを利用していない理由としてサービスの内容や品質を挙げる回答割合は高くなかった。

9「平成29年度商取引適正化・製品安全に係る事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)調査報告書」(平成29年度経済産業省委託事業・株式会社 野村総合研究所)

(育児支援)

ベビーシッター,ファミリーサポートセンターなどの育児支援の利用状況については,「利用している」という回答割合が3.6%にとどまり,一般的な利用からは程遠い状況である。

学童保育の利用者は4割程度である。利用時間については「2時間未満」「2時間以上~3時間未満」「3時間以上4時間未満」が多い。

I-特-27図 育児支援の利用状況別ウインドウで開きます
I-特-27図 育児支援の利用状況

I-特-27図[CSV形式:1KB]CSVファイル

(介護サービスなど)

介護をしている本人に対して,介護内容ごとに,自分以外に介護を担っている人について聞くと,「介護サービスや,ボランティア等の外部の支援」は,最も多いものでも「入浴介護」で27.8%であり,外部支援に頼らない介護をしている場合が多いことがうかがわれる。「入浴介護」以外は,「もっぱら自分が手助け・介護を行っていて,他者の支援は受けていない」という回答割合が最も多く,2~3割台となっている。

I-特-28図 介護サ-ビスやボランティアなど外部の支援の利用状況別ウインドウで開きます
I-特-28図 介護サ-ビスやボランティアなど外部の支援の利用状況

I-特-28図[CSV形式:2KB]CSVファイル

(利用意向)

内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和元年9月)によると,保育所,訪問介護,家事支援などの外部サービスの利用意向について,「外部サービスを利用しながら行いたい」とする回答割合は,「介護」が62.9%で最も高い。一方,「育児」と「育児・介護以外の家事」における外部サービスの利用意向はそれぞれ33.5%,26.3%で,「外部サービスを利用せずに行いたい」とする回答割合の方が高い(I-特-29図)。

性別・年齢別にみると,育児について「外部サービスを利用しながら行いたい」とする回答割合は女性の30代~50代で高く,30代で44.5 %(男性は37.0 %),40代で40.6 %(男性は34.3 %),50代で42.7 %(男性は30.6%)である。

介護については,「外部サービスを利用しながら行いたい」とする回答割合が,70歳以上を除き,男女ともにいずれの年代も6割を超えている(女性の70歳以上は50.7%,男性の70歳以上は49.6%)。特に回答割合が高いのは,女性の30代(76.1%)及び40代(75.0%)である。

家事については,「外部サービスを利用しながら行いたい」とする回答割合が,男女ともにいずれの年代も2~3割程度である。特に回答割合が低いのは,女性の18~29歳(20.9%),男性の60代(20.5%),男性の18~29歳(22.3%)である。

I-特-29図 育児・介護・家事の外部サ-ビス利用意向別ウインドウで開きます
I-特-29図 育児・介護・家事の外部サ-ビス利用意向

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コラム1 生活時間の国際比較

コラム2 東アジアの都市における家事・育児の風景