コラム6 「シェアリングエコノミーを活用した家事支援サービス」

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コラム6

「シェアリングエコノミーを活用した家事支援サービス」


(一般社団法人 シェアリングエコノミー協会)

平成30(2018)年に実施された調査1によると,家事の負担軽減に外部サービス(以下,「家事支援サービス」という。)の利用が有効であると回答した割合は,全体の6割を超える。しかしながら,家事支援サービスの実際の利用については,料金の負担感や他人に家の中に入られる心理的抵抗感があるなどの回答が多く,消費者にとって実際の利用のハードルは相応に高いことがうかがえる。

こうした家事支援サービスの「利用意向」と「利用のハードル」のギャップも踏まえて,一般社団法人シェアリングエコノミー協会(以下,「協会」という。)は,「シェアリングエコノミー2(以下,「シェアエコ」という。)を活用した家事支援サービス」を推奨している。

シェアエコは,インターネット上のマッチングプラットフォームを介して,個人等のサービスの提供者と利用者が直接取引する経済活動のことで,代表的なサービスに民泊や自動車のライドシェアなどがある。仲介者をはさまないため,利用料は事業者が提供する場合に比べて低廉なことが多いという特徴があり,家事支援サービスを利用する際の経済的なハードルを下げることにもつなげやすいという。また,シェアエコの提供者は利用者と直接取引するため現場の裁量も大きく,利用者の様々な個別対応に応える必要がある家事支援サービスとの親和性は高い。さらに,信頼できるスタッフに巡り合えて身近に家族以外の頼れる存在が増えると,精神的にも暮らしが豊かになると語る利用者もいる。一方,シェアエコの課題としては,事業者によるサービス品質の担保が少なくなること,利用者は自らサービスや提供者の信用度を確認する必要性が増すことなどが挙げられる。

協会で新規事業を担当している蓑口さんは,ご自身がシェアエコのヘビーユーザーでもある。蓑口さんが最初に決めるのは予算。例えば,月に1万円までと最初に予算を設定し,次に「誰かにお願いしたいこと」をリストアップしていく。料理が面倒,買い物に行く時間がない,平日にも布団を干したい,お風呂掃除を代わってほしい……,日々の生活の困り事がまとまったらスマホでシェアエコのサイトを開き,お目当てのシェアサービスを利用する。結婚後に必要となった名義変更手続きにもシェアエコを活用した。自分一人では何週間も掛かっていたかもしれなかったが,「一日半の有休で,すべての必要な手続きを完結できる効率的な方法をタスク表にしてほしい」とお願いしたところ,同じ地域に居住する経験者が完璧なタスク表を作成してくれたため,見事に一日半で解決することができた。

このようにシェアエコの本質は,自分の持っている資産(家事支援サービスであれば家事のスキルと時間)を必要としている他人に分けるという分かち合いの精神であり,協会では「ITを活用した現代のおすそわけ文化」と形容する。また,「ゆとりがあるからシェアではなく,シェアすることでゆとりが生まれる」等をキーワードに掲げ,シェアエコは富裕層だけが利用するビジネスではないことも発信している。協会の今後の抱負としては,シェアエコのさらなる普及3に取り組み,普通の人が気兼ねなく家事を誰かに頼める社会,女性が一人で抱え込まずに胸を張って周りの助けを借りながら生活できる社会を目指していくこととしている。

1野村総合研究所「平成29年度商取引適正化・製品安全に係る事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)調査報告書」(平成30年)。

2シェアリングエコノミーとは,「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を,インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」を指す。

3一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所(ICR)の共同調査「シェアリングエコノミー市場調査2018年版」によると,日本のシェアリングエコノミー経済規模は,2018年度に過去最高となる1兆8874億円を超え,2030年度には11兆1275億円と約6倍になると予測されている。