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第1節 女性を取り巻く社会情勢
(高齢者を支える現役世代人口の減少)
日本の総人口は平成60年(2048年)には1億人を割り,平成72年(2060年)には8,674万人になることが見込まれている。少子高齢化により,高齢者を始めとするケアを必要とする人口が増加する中,持続的発展のためには,現役世代,中でも大きな潜在力を持つ女性の活躍が喫緊の課題となっている(I-特-1図)。
(女性を取り巻く様々な状況の変化)
少子高齢化の中で,昭和45年から平成26年にかけての女性を取り巻く状況の変遷を見ると,女性の平均寿命は大きく伸びる一方,女性の平均初婚年齢及び平均第1子出生年齢は高くなっている(I-特-2図)。晩婚化,晩産化の影響も受け,合計特殊出生率は昭和45年の2.13から平成26年には1.42となっている。
(M字カーブの形成)
日本の女性の年齢階級別労働力率は,諸外国と異なりM字型のカーブを描いているが,必ずしも昔からそうした形状であったわけではなく,高度成長期頃に出来上がってきたものである。大正9年には,年齢とともに労働力率が低下する傾向にあったが,昭和30年には,M字カーブの左側の山が形成され,高度成長期の40年にはM字型がはっきりと確認できるようになった。その後M字の底が上がるとともに,M字の底の年齢層が上がっている(I-特-3図)。
配偶関係別に昭和47年と平成27年の状況を比較してみると,未婚者の労働力が増加しており,M字の底が上がった一因となっている(I-特-4図)。
(子供ができてもずっと職業を続ける方がよいと考える人の増加)
女性の就労に関する意識の変化について平成4年と26年を比較すると,26年には「子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい」と回答する者の割合が,「子供ができたら職業をやめ,大きくなったら再び職業をもつ方がよい」を逆転して上回り,女性が育児をしながら働くことに対する意識に変化が見られる(I-特-11図)。一方で,実際には出産等で離職を選択しているケースが多く見られ,女性の職業への思いと現実の行動との間のギャップが大きくなっていることがうかがえる。
(長時間労働の動向)
男女の長時間労働の動向を見ると,週間就業時間60時間以上の雇用者の割合は,平成27年には女性は2.7%,男性は12.5%となっているが,子育て期と重なる30歳代や40歳代の男性ではその割合が高い(I-特-12図)。長時間労働を前提とした働き方では,仕事と家庭生活との両立は困難であり,男性自身の家庭生活への参画を困難にするとともに,女性が就業したり,就業継続できなくなるなど,家庭生活以外の活動への参画・活躍に影響を与えていると考えられる。