平成24年版男女共同参画白書

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第14章 メディアにおける男女共同参画の推進

第1節 女性の人権を尊重した表現の推進のためのメディアの取組の支援等

1 メディアにおける男女共同参画の推進,人権尊重のための取組等

(1) メディアにおける女性の人権の尊重のための取組の支援

内閣府では,女子差別撤廃条約を紹介するDVDを作成し,地方自治体等に配布したほか,HPにおいて動画を公開する等により,女子差別撤廃条約等の国際規範や女子差別撤廃委員会が勧告している固定的性別役割分担意識に基づく男女像に関する表現の是正等,我が国のメディアの課題について,その内容をメディア及び国民各層に周知した。また,男女共同参画週間等において,男女共同参画についての正しい理解を促進するため,メディアを通じた広報・啓発等を行った。


(2) 性・暴力表現を扱ったメディアの,青少年やこれに接することを望まない者からの隔離

内閣府では,「子ども・若者ビジョン」(平成21年7月23日子ども・若者育成支援推進本部決定)等に基づき,青少年を取り巻く有害環境への対応を図っている。また,有害環境の実態について調査・分析,情報の提供等を行うことにより,地域における有害環境の浄化活動に関する取組を推進しているほか,青少年育成条例における有害図書類の指定制度の効果的な運用を図るため,都道府県との連携を密にしつつ,情報提供している。

警察では,青少年保護育成条例により青少年への販売等が規制されている有害図書類について,関係機関・団体,地域住民等と協力して関係業界に対して自主的措置を講ずるよう働きかけるとともに,個別の業者に対する指導の徹底や悪質な業者に対する取締りの強化を図っている。

また,インターネット上の過激な暴力シーンや性的な描写を含むサイト等の少年に有害なコンテンツに少年が接することを防ぐため,携帯電話やパソコンにおけるフィルタリングの普及促進に努めており,特に,平成22年11月以降,関係府省等と連携し,児童が使用する携帯電話に係るフィルタリングの100%普及を目指して,関係事業者に対する要請活動,保護者に対する啓発活動等を強力に推進している。

文部科学省では,青少年とメディアに関する実態を把握し,青少年を有害情報等の危険から守るためのより効果的な普及啓発活動や新たな課題に対する施策の立案等に資するため,青少年の通信機器利用に関する調査研究を行っている。


(3) 児童を対象とする性・暴力表現の根絶

警察では,平成20年6月に出会い系サイト事業者に対する規制の強化等の改正がなされた,インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律を効果的に運用し,インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪からの児童の保護を図っている。また,「コミュニティサイトの利用に起因する犯罪から子どもを守るための緊急対策」に基づき,民間事業者による実効性のあるゾーニングの自主的導入の支援及び民間事業者による自主的なミニメール内容確認の支援に係る取組を推進している。

さらに,児童ポルノは児童の性的搾取・性的虐待の記録であり,児童の人権を著しく侵害するものであることから,平成21年6月に警察庁が策定した「児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム」に基づき,16年6月に法定刑の引上げ等の改正がなされた児童買春・児童ポルノ禁止法による児童ポルノ事犯の取締りを積極的に推進するとともに,心身に有害な影響を受けた児童の保護等に努めている。

加えて,平成22年7月に犯罪対策閣僚会議において「児童ポルノ排除総合対策」が決定されたことを受け,警察庁においても,ファイル共有ソフト利用事犯等の一斉取締りの調整や捜査員の技術向上を図るための研修の実施,国際関係機関との情報交換・連携の強化等により,児童ポルノ事犯の取締りの徹底を図っている。内閣官房,内閣府,警察庁,総務省,経済産業省においては,インターネット・サービス・プロバイダ等の関連事業者による実効性のあるブロッキングの自主的導入に向けた環境整備に努め,23年4月から,インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策の一環として,インターネット・サービス・プロバイダ等による自主的なブロッキングが開始されている。

警察では,サイト管理者等に対する児童ポルノ画像等の削除要請を行うほか,警察庁では,安心ネットづくり促進協議会や児童ポルノ流通防止対策専門委員会等に参加し,必要な情報提供や助言等を行うとともに,児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体に対して児童ポルノ情報を提供するなどし,民間の自主的な取組を支援している。


(4) 地域の環境浄化のための啓発活動の推進

文部科学省では,青少年を取り巻くインターネット上の有害情報をめぐる深刻な問題に対応して,メディア・リテラシー指導員の養成やフィルタリングの普及啓発,ネットパトロールの実施等,地域の実情に応じた有害情報対策の推進体制整備を総合的に支援している。

また,平成23年度より,有識者によるケータイモラルキャラバン隊を結成し,保護者等を対象に,全国6か所でインターネット上のルールやマナーに関する参加・学習型シンポジウムを開催するなど,学校・家庭・地域社会が連携した有害情報対策を推進している。

2 インターネット等新たなメディアにおけるルールの確立に向けた検討

(1) 現行法令による取締りの強化

警察では,ネット上に流通するわいせつ図画等の違法情報・有害情報を,サイバーパトロール等を通じて早期に把握し,検挙等の措置を講じている。

また,情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成23年法律第74号)により,刑法におけるわいせつ物頒布等の罪が改正され,わいせつな画像データ等の電磁的記録を不特定又は多数の者に電子メールで送信して頒布するなどの行為が処罰対象に含まれることが明確になったことから,捜査機関においては,これらの行為に対して改正法を厳正に適用し,適切な科刑の実現に努めている。

内閣府では,青少年インターネット環境整備法及び「青少年インターネット環境整備基本計画」に基づき,関係省庁,団体等と連携し,青少年のインターネット利用環境実態調査や諸外国における青少年のインターネット環境整備状況等調査等の施策を総合的かつ効果的に実施するとともに,有識者による青少年インターネット環境整備法の施行状況等の検討を推進している。


(2) インターネット等新たなメディアにおける情報の規制等及び利用環境整備の在り方等に関する検討

内閣官房では,IT安心会議(インターネット上における違法・有害情報等に関する関係省庁連絡会議)の決定等に基づき,関係省庁における違法・有害情報対策に係る取組を督励している。

また,インターネット上の違法・有害情報に起因する問題に対し,官民横断的な実務家間での迅速かつ正確な情報共有を実現することにより,各業界における自主的な取組を推進するため,政府,事業者,関係団体等,関係セクターを横断したワンストップのスキームとして,「違法・有害情報対策官民実務家ラウンドテーブル」の枠組みを活用し,関係省庁,関係団体間の情報共有を図るとともに,関係団体における取組についての国民への情報提供を推進している。

さらに,関係団体等の違法・有害情報対策に係る取組を総合的に紹介するための「インターネット上の違法・有害情報対策ポータルサイト」により,違法・有害情報への具体的対策や関係省庁及び関係団体の取組等について,分かりやすく利便性の高い情報提供を推進している。

総務省では,性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護するための有効な手段の一つであるフィルタリングに関し,その導入促進及びサービスの多様化に向けた民間の取組を積極的に支援している。さらに,平成21年1月に策定された,インターネット上の違法・有害情報対策の総合的な政策パッケージである「安心ネットづくり」促進プログラムに基づき,同年2月に設立された「安心ネットづくり促進協議会」を中心とする民間団体等の自主的取組を支援している。また同年8月より,違法・有害情報相談センターを設置し,関係事業者等によるわいせつ情報等の違法・有害情報への対応を促進している。

さらに,平成22年9月からは利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会にて,青少年のインターネット利用環境について検討を行い,23年10月には青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言を取りまとめた。

経済産業省では,セミナーの開催等を通じ,青少年のインターネット利用にかかるリスクとその対策を説明することで,関係者全体のインターネットリテラシーの向上と保護者等による実効的な自主的対策を促進し,インターネットの利用環境整備を実施している。

警察では,都道府県単位でのプロバイダ連絡協議会等の設置を推進し,有識者,関係機関・団体,産業界等を通じ,官民が一体となってわいせつ図画等の違法情報・有害情報の排除を図っている。

3 メディア・リテラシーの向上

(1) メディア・リテラシー向上のための広報・啓発

総務省では,メディアの健全な利用の促進に必要となるメディア・リテラシーの向上を図るため,放送,インターネット,携帯電話等のメディアの特性に応じたメディア・リテラシーに関する教材等の普及を図っている。平成23年9月からは,青少年のインターネットリテラシー指標に関する有識者検討会を開催し,青少年のインターネットリテラシーを計測するテストの開発・実施に取り組むことにより,青少年のリテラシーの可視化を図っている。


(2)情報教育の推進

文部科学省では,学校教育,社会教育を通じて,情報を主体的に収集・判断し,インターネットを始めとする様々なメディアが社会や生活に及ぼす影響を理解することで,情報化の進展に主体的に対応できる能力の育成を図っている。