平成24年版男女共同参画白書

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第2節 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

1 生涯学習・能力開発の推進

(1) 総合的なキャリア教育の推進

子どもたちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,後期中等教育修了までに,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育の推進が求められている。

中央教育審議会においては,平成23年1月,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」が答申された。同答申では,人々の生涯にわたるキャリア形成を支援する観点から,(ア)幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進,(イ)実践的な職業教育の重視と職業教育の意義の再評価,(ウ)生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援(生涯学習機会の充実,中途退学者等の支援)の3つの基本的方向性に沿った具体的な方策が提言されている(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm)。

また,文部科学省では,このようなキャリア教育を推進するため,調査研究協力者会議を開催し,キャリア教育を行っていく上で関係者間に求められる共通理解や,学校や教育委員会が求められる態勢づくり,学校が社会と協働して行うキャリア教育を進めていくための種々の方策等を報告書として取りまとめ,各都道府県教育委員会等に周知したほか,キャリア教育の指導用資料「高等学校キャリア教育の手引き」を作成,配布したり,文部科学省のホームページ上でキャリア教育についての研修用動画を配信している。

また,社会全体でキャリア教育を推進していこうとする気運を高め,キャリア教育の意義の普及・啓発と推進に資することを目的として,文部科学省,厚生労働省,経済産業省は合同で,「キャリア教育推進連携シンポジウム」の開催も行った。


(2) ライフプランニング支援の促進

文部科学省では,女性が長期的な視点で自らの人生設計(ライフプランニング)を行い,能力を発揮しつつ,主体的に生き方を選択することを支援するための学習機会の提供を促進している。


(3) 現代的課題に関する学習機会の充実

文部科学省では,行政だけではなく,市民やNPO等の民間が主体となって課題解決に取り組むことが期待されるテーマを具体的に指定して,地域の課題解決に役立つ仕組みづくりのための実証的共同研究等を行い,地域が課題を解決する力の強化を図る「社会教育による地域の教育力強化プロジェクト」を実施している。

また,「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」において,高齢者の生涯学習及び社会参画の現状と課題について整理し,「長寿社会における生涯学習の在り方について」を取りまとめた。

さらに,消費者が自ら進んで,その消費生活に関し必要な知識を習得し,必要な情報を収集するなど自主的かつ合理的に行動することを支援するため,関係機関と協力した,教員の消費者教育に関する指導力向上のための講座の実施,大学等及び社会教育における消費者教育の指針の普及,将来自立した消費者となるための基礎的・基本的な知識・態度を育成する場である家庭における消費者教育の内容及び方法についての実証的な調査研究の実施等を通して,消費者教育のより一層の充実を図った。


(4) リカレント教育の推進

文部科学省では,大学等における編入学の受入れ,社会人入試の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,履修証明プログラムや公開講座の実施等により,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入れ体制の整備を図っている。


(5) 放送大学の整備等

放送大学では,多彩な300の科目を提供するとともに,地域活動や社会貢献活動等様々な分野で一定の科目群を体系的に学んだ学生に対して,学位以外の履修証明を与える「科目群履修認証制度(放送大学エキスパート)」に臨床心理学基礎プランを加えるなどの充実を図ったほか,平成23年10月からはCS放送からBSデジタル放送に移行し,放送のデジタル化をいかした質の高い放送授業番組の提供等,学習環境の整備・充実や学習機会の拡大のための支援を推進している。

また,専修学校では,社会の要請に即応した実践的な職業教育機関として着実に発展してきており,平成23年5月現在,3,266校に約64万6,000人の生徒が学んでいる。そのうち,約6万8,000人が社会人であり,社会人の学習機会の提供において大きな役割を果たしている。

さらに,学習歴や生活環境等が多様な者が高等学校教育を受けられるよう,単位制高等学校の配置が進んでおり,平成23年度までに952校が設置されている。

そのほか,文部科学省では,学校法人や公益法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。


(6) 学校施設の開放促進等

文部科学省では,地域住民の学習機会や子どもたちの活動拠点(居場所)づくり等を推進するため,学校施設を,子どもたちの安全確保に十分配慮しつつ,放課後や週末等に開放し,多様な活動の場として提供する取組を支援している。また,学校・家庭・地域社会が連携協力することの重要性に鑑み,地域コミュニティの拠点としての学校施設,クラブハウス,屋外運動場照明,水泳プール,武道場等,学校開放諸施設の整備や活用を支援している。


(7) 青少年の体験活動等の充実

文部科学省では,体験活動を通した青少年の健全育成を図るため,家庭や企業等に対して体験活動への理解を求める普及啓発や自然体験活動の指導者養成に取り組んでいる。

また,独立行政法人国立青少年教育振興機構では,全国28か所にある国立青少年教育施設において,様々な体験活動の機会と場を提供するとともに,指導者の養成に取り組んでいる。さらに,「子どもゆめ基金」によって,民間団体が実施する体験活動に対する助成を行っている。


(8) 民間教育事業との連携

文部科学省を始めとした府省庁等が連携して実施している「子ども見学デー」においては,平成23年8月17日,18日を中心に,各参加機関の業務説明や職場見学等を行うとともに,民間教育事業者等の協力を得ながら,子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会を提供した。

また,文部科学省では,生涯学習活動の成果をいかした社会づくりに取り組む行政,NPO等の団体,企業,大学等の人々が一堂に会する研究協議を実施するとともに,それらのネットワーク形成を促進するためとして,全国生涯学習ネットワークフォーラムを平成23年11月5日,6日に文部科学省等で開催した。


(9) 高度情報通信ネットワーク社会に対応した教育の推進

文部科学省では,地理的・時間的制約を超えて,多様で豊富な学習機会や情報を提供することが可能であるとともに,双方向性や再現性等の特徴を有するICTを活用した生涯学習の充実を図る観点から,ICTを活用した生涯学習支援に関する調査研究を実施した。


(10) 学習成果の適切な評価

文部科学省では,様々な学習活動の成果が適切に評価され,その成果の社会的通用性の向上が図られるよう,検定試験の評価手法や評価の視点・内容,情報公開が望まれる項目等について示した「『検定試験の評価に関するガイドライン(試案)』について(検討のまとめ)」を平成22年6月に公表し,民間事業者等が行う検定試験の評価や情報公開の取組を促進することなどにより,検定試験の質の確保や向上を図った。また,大学等において,各大学等の判断により,専修学校での学修等の成果を単位として認定することを可能としている。

2 エンパワーメントのための女性教育・学習活動の充実

(1) 女性の生涯にわたる学習機会の充実

文部科学省では,女性が主体的に働き方・生き方を選択できるよう,若い時期から結婚,妊娠,出産といったライフイベントを視野に入れ,長期的な視点で自らの人生設計を行うことを支援するための学習機会の提供を促進している。


(2) 女性の能力開発の促進

文部科学省では,大学・短期大学・高等専門学校・専修学校が教育研究資源や職業教育機能を活用し,産業界や関係団体等と連携することなどにより,新たなチャレンジを目指す社会人(子育て等により就業を中断した女性を含む。)等のニーズに応じた専門的・実践的教育プログラムを開発・実施することを支援し,学び直しの機会の充実を図っている。

また,大学病院における女性医師・看護師に対する臨床現場定着や出産・育児等による離・退職後の復帰支援等,人材育成の取組を支援している。

さらに,独立行政法人国立女性教育会館では,地域活動を含む社会活動を行っている女性を対象に,「地域課題の解決と女性の経済的自立に関する調査研究及びプログラム開発」を実施したほか,女性がこれまで担ってきた社会活動をキャリアとして積極的に評価するとともに長期的な視野に立ったキャリア形成を学ぶ場として,女性関連施設職員,女性団体・NPOのリーダー,大学職員等を対象に「男女共同参画の視点に立った多様なキャリア形成支援研修」を実施した。


(3) 女性の学習グループの支援

文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう促している。

また,独立行政法人国立女性教育会館では,女性団体リーダー等を対象に,地域の男女共同参画を積極的に推進するリーダーとしてのエンパワーメントを目的とした「女性関連施設・地方公共団体・団体リーダーのための男女共同参画推進研修」を実施したほか,利用者のニーズに応じた研修プログラムの作成を支援するとともに,職員の専門性をいかし男女共同参画や女性教育等に関する積極的な情報提供を行っている。


(4) 独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)の事業の充実等

独立行政法人国立女性教育会館は,女性教育のナショナルセンターとして,基幹的女性教育指導者の育成,女性のキャリア形成支援や配偶者等からの暴力被害者支援に関する研修等喫緊の課題への対応,アジア太平洋地域等の女性のエンパワーメント支援,男女共同参画社会形成に資する多様なニーズに応じた情報提供サービス等を行っている。

また,平成20年6月に開設した女性アーカイブセンターでは,男女共同参画に関する理解の促進を図り,学習・研究支援を行うため,女性教育の振興や男女共同参画社会の形成に向けて顕著な業績を残した女性や女性教育・男女共同参画の行政施策に関する史・資料を収集し,展示や閲覧,所蔵資料データベースである女性デジタルアーカイブシステム(http://w-archive.nwec.jp/)等を通じて提供している。

そのほか,前年度に引き続き平成23年度も「大学職員のための男女共同参画推進研修」及び埼玉大学・埼玉県私立短期大学協会との連携授業等を試行的に実施し,男女共同参画の視点に基づくキャリア教育プログラムの共同開発等に取り組んでいる。

独立行政法人国立女性教育会館女性教育情報センターでは,男女共同参画社会形成を目指した情報の総合窓口「女性情報ポータル “Winet(ウィネット)”」(http://winet.nwec.jp/)において,事業企画や施策の実施の参考となる人材の情報提供を目的とした「男女共同参画人材情報データベース」を公開し,その充実に努めている。また,女性が様々な新しい分野へチャレンジし,キャリアを形成していくために有用な事例(ロールモデル)や学習支援情報を提供している。

3 進路・就職指導の充実

中学校及び高等学校においては,性別にとらわれることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。

特に,平成24年3月卒の高校新卒者の就職状況(24年3月末現在)については,就職内定率が前年同期を上回ったものの,女子の就職内定率が男子に比べて低いなど,全体的に厳しい状況である。こうした状況を踏まえ,進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,また求人企業の開拓等を行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細やかな就職指導を展開している。

一方,高校生を始めとする若者を取り巻く厳しい就職環境については,学校を卒業しても就職も進学もしない者の増加やフリーター志向の高まり,就職しても早期に離転職する者の増加等,若者の勤労観,職業観の希薄化を指摘する声も少なくない。このため,文部科学省では,子どもたちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,キャリア教育を推進している(本節1(1)参照)。

そのほか,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や,女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,全ての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

厚生労働省では,女子学生等が的確な職業選択を行うことができるような啓発資料を作成し,大学や高等学校を通じて配布することにより,意識啓発を図っている。

総合科学技術会議では,人材の活用に関する改革の方向として,女子生徒・学生が自然科学系の分野に進む意欲をかき立てるように進路指導の充実を図るとともに,身近なロールモデルを整備すること,大学等において進路選択等の悩みに関する相談体制を整備することを奨励している。