平成23年版男女共同参画白書

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はじめに 平成22年度を振り返って

平成22年度は,男女共同参画社会の形成の促進に向けて,国内的にも国際的にも,様々な取組が行われた重要な一年であった。

一つには,男女共同参画会議等における精力的な議論を踏まえ,実効性を重視した「第3次男女共同参画基本計画」を策定した。

策定に向けて男女共同参画会議において様々な角度から議論が行われたが,その結果,「男女共同参画社会基本法施行後10年間の反省を踏まえ,実効性のあるアクション・プランとする」ことが策定に当たっての基本的考え方とされた。このことは,我が国における男女共同参画の現状が,いまだ道半ばの状況にあることを表している。

具体的には,

  • 政策・方針決定過程への女性の参画について「2020年30%」の目標を掲げてきたが,現状はいまだ低調であること,
  • 固定的性別役割分担意識がいまだ根強く残っていること,
  • 男性にとっての男女共同参画が十分に進んでいないこと,
  • 男女の均等な機会と待遇の確保や仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた取組を着実に進める必要があること,
  • 女性に対する暴力の根絶に向けた一層の取組が求められていること,
  • 性別にとらわれない主体的な進路選択のための意識啓発等が十分とは言えないこと,
  • 地域,防災・環境その他における男女共同参画の状況も十分とは言えないこと,

等が,議論の過程において課題として指摘されたところである。

また,少子高齢化の進展と人口減少社会の到来,家族や地域社会の変化,経済の長期的低迷と閉塞感の高まり,非正規労働者の増加と貧困・格差の拡大,さらにはこうした中での社会保障制度の安定性と持続可能性の確保など,社会情勢の変化や経済社会のグローバル化に伴う課題を解決するためにも,男女共同参画社会の実現が必要不可欠であるとの認識も高まった。

こうした議論を踏まえ,第3次男女共同参画基本計画では,できる限り具体的な数値目標やスケジュールを設定するとともに,その達成状況について定期的にフォローアップを行うための監視機能の強化等も盛り込まれており,政府一体となって男女共同参画社会の実現に取り組むこととしている。

また,配偶者からの暴力や性暴力の被害者を対象とした原則24時間対応の電話相談「パープルダイヤル-性暴力・DV相談電話-」を,平成23年2月8日から3月27日までの約2か月間,緊急かつ集中的に実施して潜在化している被害者に相談を促し,約2万3,000件の相談対応を行った。

平成23年3月に発生した東日本大震災に対応して,男女共同参画の視点を踏まえた様々な取組を行っている。一方,避難所運営などにおいて女性のニーズへの配慮や女性の参画についての対応が十分ではない事例があるなど,防災分野や地域・社会全体で男女共同参画が十分に進んでいないこと,また,これまでの災害を通じて得られた教訓が十分にいかされていないことが,災害時において顕在化している面もある。男女共同参画の視点からの東日本大震災対応を更に進めるとともに,防災やまちづくりを始め,地域・社会全体での男女共同参画の推進に積極的に取り組む必要がある。

国際的には,APEC女性リーダーズネットワーク(WLN)会合を日本で開催し,アジア太平洋地域の約600名の各界の女性リーダーが集い,ネットワークの構築や提言の取りまとめなどを行った。さらに,国連の女性関係機関が統合・強化され,「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関」(UN Women)が,23年1月に正式に活動を開始した。