平成23年版男女共同参画白書

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第2節 高齢男女の自立と共生に向けた今後の課題

(高齢男女の就業と社会参画)

総務省「就業構造基本調査」(平成19年)によれば,65~69歳の女性の3割強が就業意欲を持っている。また,そのうち無業者については「収入を得る必要」を挙げる割合は男性よりも高くなっている。しかし,女性は男性に比べて,就業中断などで就業経験の蓄積や能力開発が不十分であるために,就業希望が実現されにくい現状がある。高齢者の就労促進には,このような高齢女性特有の状況を踏まえた取組が必要である。

また,高齢女性は就労に限らず家庭や地域など様々な場面において蓄積されてきた能力発揮を促進することも重要である。

(高齢期の経済的自立につなげるための制度)

女性パートタイム労働者の約2割が,税制や社会保障制度における被扶養者としての優遇措置を受けるために年収や労働時間を「調整している」と回答している。配偶者控除や第3号被保険者制度などは,女性の就業調整や非労働力化を促し,女性自身の経済的自立を阻害してきた側面がある。

今後の方向性としては,これらの制度について,高齢期の経済的自立につながるよう,世代間で公平であり,かつ,多様なライフスタイルに中立的なものとする方向で見直していくことが必要である。

(家庭・地域における支え合いの下での生活自立)

高齢社会を豊かで活力ある社会とするためには,年齢や性別に基づく固定的な見方や偏見を除去し,高齢者を他の世代とともに自立し誇りを持って社会を支える重要な一員として,積極的にとらえる必要がある。また,高齢者が自立し,健康で安心して暮らせる社会の実現には,男女の生活実態,意識,身体機能等の違いに配慮したきめ細かな自立支援施策等の展開が必要であり,さらに,若い時期からの働き方や家族の持ち方など世代横断的な視点が必要である。

(性差に配慮した医療・介護予防)

疾患の罹患状況や要介護になった原因には男女間で違いが見られる。例えば,男性については肝疾患や悪性新生物が,女性については認知症や関節性疾患等の罹患率が高い傾向がある。このような男女の違いに配慮した性差医療の推進や男女の違いに配慮した生活習慣病対策,介護予防対策を進めることが必要である。

(良質な医療・介護基盤)

介護を必要とする高齢者は,女性が男性の約2.5倍となっている。女性は長寿ゆえに一人暮らしになる可能性が高い等の理由により,高齢女性の介護は重要な課題である。

他方,介護の担い手としての女性を取り巻く状況を見ると,家族内の主な介護者の7割は女性であり(第1-5-5図),老老介護の負担の深刻さも指摘されている。また,ホームヘルパー等の介護労働者も約8割が女性であるが(第1-5-6図),介護労働者についてはその賃金等の低さも指摘されている。

第1-5-5図 要介護者等からみた主な介護者の続柄 別ウインドウで開きます
第1-5-5図 要介護者等からみた主な介護者の続柄

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第1-5-6図 介護労働者割合(性別) 別ウインドウで開きます
第1-5-6図 介護労働者割合(性別)

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