平成22年版男女共同参画白書

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第1節 仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し

1 仕事と家庭の両立に関する意識啓発の推進

平成20年4月には,「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。)に基づき,その点検・評価を行うとともに,仕事と生活の調和の実現のための連携推進を図るため,関係閣僚,経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」の下に,「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」(以下「連携推進・評価部会」という。)が設置され,21年度においても数次にわたり開催した。

連携推進・評価部会及び仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議では,平成20年後半からの経済状況の悪化の中で,仕事と生活の調和に向けた取組が停滞することを懸念する声が聞かれることから,21年4月に「緊急宣言-今こそ仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進を-」を公表した。この緊急宣言では,「仕事と生活の調和」の推進は中長期的・持続的発展につながる「未来への投資」であり,好不況にかかわらず国民運動として着実に進めていくべきものということを,政労使で改めて確認した。8月には,「憲章」及び「行動指針」策定以降の,企業と働く者,国民,国,地方公共団体等の取組を今後の展開を含めて紹介するとともに,仕事と生活の調和の実現状況の把握をした上で,今後に向けた課題を洗い出し,重点的に取り組むべき事項を提示した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2009」を取りまとめた。

男女共同参画会議仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会では,平成21年7月に,報告書「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進を多様な人々の能力発揮につなげるために」を公表した。

内閣府では,国や地方公共団体等が実施する女性の活用や仕事と生活の調和推進に関連する企業や団体等に対する主だった表彰の一覧を掲載している。また,気運の醸成に向けた取組として,「カエル!ジャパン」キャンペーンを推進している。キャンペーン賛同企業・団体等の名称及び取組事例を平成21年5月にホームページ上で公開した。このほか,男性を取り巻く職場や家族の意識を変えていくことを目的に,育児休業を取得した又は取得中の男性の体験を取りまとめた「パパの育児休業体験記」を病院や助産院に配布するなど,育児休業取得から復帰までの実践例として広く周知した。

厚生労働省では,「憲章」及び「行動指針」を踏まえつつ,あらゆる機会をとらえ,職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を積極的に行っている。

また,男性の育児休業の取得促進策として「パパ・ママ育休プラス」(父母ともに育児休業を取得する場合,休業取得可能期間を2か月延長できる制度)等の導入を始めとした育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)の一部改正法の成立を踏まえ,男性の育児休業の取得促進を目的として,「父親の育児休業シンポジウム」を全国6都市(東京,青森,広島,大阪,名古屋,福岡)で開催した。さらに,「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します!仕事と子育て両立パパ~」ハンドブックを作成した。

2 仕事と子育て・介護の両立のための制度の定着促進・充実

厚生労働省では,育児・介護休業法に規定されている,育児休業,介護休業,子の看護休暇制度,時間外労働の制限の制度,深夜業の制限の制度,勤務時間短縮等の措置等について周知を図るとともに,計画的に事業所を訪問し,就業規則等で必要な制度が設けられているかを確認するなど,制度の普及・定着に向けた行政指導等を実施している。

また,休業の申出又は取得を理由とした不利益な取扱いなど,育児・介護休業法に基づく労働者の権利が侵害されている事案について,労働者からの相談があった場合は的確に対応し,法違反がある場合その他必要な場合には事業主に対する適切な指導を行っている。

これらの取組により,女性の育児休業取得率は平成20年度において9割を超すなど,着実な定着が図られつつあるが,第1子出産前後で継続して就業している女性はいまだ38%であり,男性の育児休業取得率も1.23%にとどまっている。

こうした現状も踏まえるとともに,仕事と子育ての両立支援等を一層進めるため,男女ともに子育て等をしながら働き続けることができる雇用環境を整備することを目的とした育児・介護休業法の一部改正法が平成21年6月24日に成立した(21年7月1日公布)。

主な改正事項は以下のとおりである(ア~ウについては,平成22年6月30日施行(一部の規定は,常時100人以下の労働者を雇用する事業主について,24年7月1日施行)。エのうち調停については,22年4月1日,その他は21年9月30日施行)。

ア 子育て期間中の働き方の見直し

(ア) 3歳までの子を養育する労働者について,短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けることを事業主の義務とし,労働者からの請求があったときの所定外労働の免除を制度化する。

(イ) 子の看護休暇制度を拡充する(小学校就学前の子が,1人であれば年5日(現行どおり),2人以上であれば年10日)。

イ 父親も子育てができる働き方の実現

(ア) 父母がともに育児休業を取得する場合,1歳2か月(現行1歳)までの間に,1年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)。

(イ) 父親が出産後8週間以内に育児休業を取得した場合,再度,育児休業を取得可能とする。

(ウ) 配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。

ウ 仕事と介護の両立支援

介護のための短期の休暇制度を創設する(要介護状態の対象家族が,1人であれば年5日,2人以上であれば年10日)。

エ 実効性の確保

(ア) 苦情処理・紛争解決の援助及び調停の仕組みを創設する。

(イ) 勧告に従わない場合の公表制度及び報告を求めた場合に報告せず,又は虚偽の報告をした者に対する過料を創設する。


また,平成19年4月,第166回国会で成立した雇用保険法等の一部を改正する法律(平成19年法律第30号)において,19年10月から22年3月31日までの暫定措置として,雇用の継続を援助,促進するための育児休業給付の給付率を休業前賃金の40%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に10%)から50%(休業期間中30%・職場復帰6か月後に20%)に引き上げ,21年3月,第171回国会で成立した雇用保険法等の一部を改正する法律(平成21年法律第5号)において,22年3月末まで給付率を引き上げている暫定措置を当分の間延長するとともに,休業中と復帰後に分けて支給している給付を統合し,全額を休業期間中に支給することとした。

3 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

(1) 働き方の見直し

厚生労働省では,いわゆる「労働時間分布の長短二極化」の進展,長い労働時間等の業務に起因した脳・心臓疾患に係る労災認定件数の高水準での推移,労働者の意識や抱える事情の多様化等の課題に対応するために,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)及び「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針(平成18年厚生労働省告示第197号))に基づき,年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減を始めとした労使の自主的な取組を促進する施策を推進した。


(2) 企業における仕事と子育て・介護の両立支援の取組の促進,評価

次世代を担う子どもたちが健やかに生まれ育つ環境をつくるために,次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。)に基づき,国,地方公共団体,事業主,国民がそれぞれの立場で次世代育成支援を進めており,平成20年12月に,地域や企業の更なる取組を促進するため,同法が改正された。

同改正法においては,常時雇用する労働者数が301人以上の企業が,平成21年4月1日以降に労働者の仕事と子育ての両立支援に関する一般事業主行動計画(以下「行動計画」という。)を策定又は変更した場合に,同計画の公表及び労働者への周知が新たに義務付けられた。これに伴い,厚生労働省では,企業において同改正法に沿った行動計画の公表及び労働者への周知がなされるよう,「両立支援のひろば」等の周知とあわせ,次世代法の履行確保を図った。

また,平成23年4月1日から,一般事業主行動計画の策定・届出等が義務となる企業が,常時雇用する労働者数301人以上企業から101人以上企業へ拡大することとなったことから,厚生労働省では,次世代育成支援対策推進センターや地方公共団体等と連携し,多くの企業において行動計画の策定・届出が行われるよう周知・啓発を行うとともに,次世代法に基づく認定の取得促進を図っている。

さらに,改正法が施行されるまでの間,特に新たに行動計画の策定・届出が義務となる企業を支援するために,「中小企業一般事業主行動計画策定推進2か年集中プラン」として,都道府県労働局において新たに行動計画の届出が義務となる企業に対する個別企業訪問等の支援事業を実施し,円滑な施行に向けた支援を実施している。

【参考:平成21年12月末現在】

○ 一般事業主行動計画届出状況

 規模計 36,607社

 301人以上企業 13,653社(届出率98.3%)

 101人以上300人以下企業 3,131社(届出率 8.5%)

 300人以下企業 22,954社

○ 認定企業818社

また,国及び地方公共団体においても,職員を雇用する「事業主」の立場から,職員の仕事と子育ての両立支援等に関する「特定事業主行動計画」を策定することとされており,平成21年10月1日現在で国及びすべての都道府県では策定済みであり,市区町村については98.1%が策定済みである。

厚生労働省では,企業の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を示す両立指標についてインターネット上でその進展度を診断できるファミリー・フレンドリー・サイト(http://www.familyfriendly.jp/)や両立支援に積極的に取り組んでいる企業の取組等を掲載したサイト「両立支援のひろば」(http://www.ryouritsushien.jp/)の活用を進めるなど周知・広報を行うとともに,ファミリー・フレンドリー企業への表彰(厚生労働大臣賞及び都道府県労働局長賞)の実施により,仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち,多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行うファミリー・フレンドリー企業の普及促進を図っている。

また,育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境を整備する事業主に対し,助成金を支給するなどの支援を行っている。

さらに,育児・介護等の各種サービスに関する地域の具体的情報をインターネットにより提供している(フレーフレーネット)。

経済産業省では,従業員の出産・育児と仕事の両立を支援するため,株式会社日本政策金融公庫を通じ,事業所内託児施設を設置する中小企業者に対する融資制度を講じた。また,一定の要件を満たす事業所内託児施設等の取得等をした法人に対して,税制上の優遇措置を講じている。