平成22年版男女共同参画白書

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コラム9

【企業事例】女性の活用と仕事の見直しを一体的に進め,良い効果を上げた事例


コラム4で紹介したD社の生産性向上のための取組と女性社員活躍の取組はユニークである。流通業であるD社が生産性を高める方法として実施したのは,徹底した仕事の可視化・標準化と労働時間に制約を設けることの二点である。

まず,仕事の可視化・標準化は「製造業ではできるが流通業ではできないのではないか」という人々の固定概念への挑戦であり,店舗間のマネージャーの裁量による営業成績のばらつきを平準化するための取組が販売管理比率を引き下げる目標とともに実施された。徹底的な店舗運営のマニュアル化などの工夫により,仕事の標準化・効率化が進んだ結果,スタッフのシフト(交替)が組みやすくなったという副次的な効果もあったという。

また,D社の海外事業ではアジア圏を中心に仕事の繁忙期と閑散期の働き方を巧みに切り替えつつ,高い営業成績を上げているが,こうした海外でのホワイトカラー社員の働き方を会社全体で仕事のモデルとして取り入れようとしたところ,「海外ではできるが国内ではできない」という多くの人々が抱く固定概念の壁に直面した。この壁を打ち破ったのが育児短時間制度を利用する女性社員の働き方であった。同社では「『毎日残業をしない働き方』は,『毎日残業をする働き方』よりも厳しい働き方」と考えている。日々仕事の手順を決め時間内に決着させる,明日急に休んでもよいよう,帰り際には今日の仕事の整理と明日の仕事の手順を決める。このようにして成果を上げている育児短時間制度を利用する女性の働き方が働き方の標準とされた。現在,本社部門は全員が毎日6時半退社,店舗は閉店から30分以内に退社するのが同社のルールとなっている。D社では短時間勤務制度利用中の昇進もある。女性の活躍のための環境づくりと仕事の見直しとが一体的に行われ,効果を上げている事例といえよう。