平成18年版男女共同参画白書

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第3章 仕事と子育ての両立

(出産・子育ての仕事への影響は女性に偏っている)

厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」によると,第1回調査時点(平成13年度)では,調査対象である平成13年に子どもを産んだ女性のうち有職の者は25.1%であったが,同じ対象者について継続的に調査したところ,有職者の割合は年々増加し,第4回調査時点(平成16年度)では41.8%となっている。また,第3回調査時点(平成15年度)で無職であった母親のうち16.4%が第4回調査時点で新たに職に就いているが,これらのうち61.3%が「パート・アルバイト」として就職している。

厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成16年度)によると,在職中に出産した者又は配偶者が出産した者に占める育児休業取得者の割合は,女性が70.6%(平成14年度64.0%),男性が0.56%(同0.33%)であった。また,育児休業取得者のうちの男女別割合をみると,女性は96.1%,男性は3.9%となっており,夫婦に子どもが生まれた場合の育児休業の取得は女性に偏っている。

一方,出産を機に多くの女性が離職している。前出「第1回21世紀出生児縦断調査」によると,出産1年前に有職であった母親について,出産半年後も有職である割合は32.2%であり,67.4%の母親が無職となっている(きょうだい数1人の場合)。したがって,仕事を持っている女性全体での実質的な育児休業取得率はかなり低いものと推測される。

21世紀職業財団「女性労働者の処遇等に関する調査結果報告」(平成17年)によると,75.4%の女性労働者が,就業継続を困難にする理由に「育児」をあげている(第1-3-1図)。また,就業継続する上で必要な事項として「子育てしながらでも働き続けられる制度や職場環境」を最も多い51.7%があげており,「育児や介護のための労働時間での配慮」は41.3%,「結婚や出産で女性社員が差別されない職場風土,環境」は32.3%となっている。女性が仕事を続けていく上で,子育てが大きな影響を及ぼしている状況がうかがえる。

第1-3-1図 就業継続を困難にする理由(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-3-1図 就業継続を困難にする理由(複数回答)

(母親に偏る育児負担)

前出「第4回21世紀出生児縦断調査」により,母親の就業状況別にふだんの保育者が誰であるかをみると,「母」は母親が無職の場合は98.5%,母親が就業している場合も83.2%と高くなっている。「父」については,母親が無職の場合は45.0%,有職の場合は43.4%であり,母親の就業状況による保育への関わり方の差は余りない。母親が無職の場合と有職の場合で差があるのは,祖母と保育所の保育士であり,それぞれ16.4%と35.0%,9.5%と67.3%となっている(第1-3-2図)。

第1-3-2図 母の就業状況別にみたふだんの保育者(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-3-2図 母の就業状況別にみたふだんの保育者(複数回答)

また,妻の就業状況別に夫婦の生活時間をみると,妻の就業の有無にかかわらず夫が家事や育児などにかける時間は妻と比べて著しく短い。男性は共働きか否かで生活実態はほぼ変わらないものの,女性は共働きの場合は仕事をしながら家事も育児も担い,余暇時間が少なくなってしまっている(第1-3-3図)。

第1-3-3図 夫婦の生活時間 別ウインドウで開きます
第1-3-3図 夫婦の生活時間

さらに,諸外国の状況と比較してみても,日本の育児期にある夫の育児及び家事時間は短いことがわかる(第1-3-4図)。

第1-3-4図 育児期にある夫婦の育児,家事及び仕事時間の各国比較 別ウインドウで開きます
第1-3-4図 育児期にある夫婦の育児,家事及び仕事時間の各国比較

(男性の育児期の労働時間は長く,育児参加時間は短い)

総務省労働力調査(平成17年度)により,男女別,年齢階級別の平均週間就業時間と週60時間以上就業者の割合をみると,女性は30歳代後半から40歳代後半にかけての就業時間が短くなっている一方,男性は30歳代が最も長く,約50時間となっている。また,週60時間以上働く者の割合も,男性は30歳代が最も高くなっている(第1-3-5図)。

第1-3-5図 性・年齢階級別就業時間(非農林業) 別ウインドウで開きます
第1-3-5図 性・年齢階級別就業時間(非農林業)

夫の育児参加時間が短くなっている背景には,育児期の男性の労働時間が長いことがあり,女性が就業時間を調整することにより子育てを行っている状況にあると考えられる。

(企業における仕事と子育ての両立支援策)

前出「女性雇用管理基本調査」(平成16年度)によると,育児のための勤務時間短縮等の措置(短時間勤務制度,フレックスタイム制,始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ,所定外労働の免除,事業所内託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与,育児休業に準ずる措置)を導入している事業所は41.9%となっている。これらの措置を導入している事業所において,最長で子が何歳になるまで利用できるかをみると,「3歳に達するまで」が最も多く69.2%となっており,次いで「小学校就学の始期に達するまで」が20.5%となっている(第1-3-6図)。

第1-3-6図 育児のための勤務時間短縮等の措置の有無・最長利用期間別事業所割合 別ウインドウで開きます
第1-3-6図 育児のための勤務時間短縮等の措置の有無・最長利用期間別事業所割合

また,内閣府が育児休業制度の利用者のいる企業の管理者を対象に行った意識調査によると,育児のための短時間勤務制度利用状況は,「利用した」又は「利用中である」が28.6%であり,「制度はあるが利用していない」が54.6%で最も多くなっている。育児のための両立支援制度の利用が円滑に行われるために,職場の管理者として会社に期待することとしては,「休業中の代替要員を確保する仕組みを作る」が最も多く,次いで「従業員全体が制度に関する理解を進めるよう情報提供を行う」があげられており,制度の導入だけでなく,利用しやすい環境作りが重要であると考えられる(第1-3-7図)。

第1-3-7図 制度の円滑な利用のために会社に期待すること(複数回答) 別ウインドウで開きます
第1-3-7図 制度の円滑な利用のために会社に期待すること(複数回答)

(コラム:女性の労働力率と出生率の国際比較)