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第3章 仕事と子育ての両立
(出産を機に女性の約7割が退職)
厚生労働省「第1回21世紀出生児縦断調査」(平成13年度)によると,第1子出産1年前に「有職」であった母親のうち67.4%が「無職」になっており,第1子の出産を機に約7割が退職している。出産1年前に常勤として勤めていた者に限定すると,第1子出産に伴い59.5%の母親が勤めを辞めており,出産を機に仕事を辞める者が多いことがわかる。
(男性の育児休業取得に無関心な企業と父親)
また,同調査で現在常勤の父母の育児休業取得状況をみると,母の80.2%が育児休業を「取得済み・取得予定」であるのに対し,父親の場合は,わずか0.7%となっている。そのうち「制度はあるが取得しない」と答えた父親のうちでは,その理由として「職場の雰囲気や仕事の状況」を挙げた者が37.0%と最も多い。また,取得していない父親のうち,「制度があるかどうかわからない」とする者が29.7%,「制度がない」が31.1%もいる。現在,育児・介護休業法は事業所規模にかかわらず適用されており,被雇用者は申出により育児休業を取得することができる。育児休業の取得申請を行い難い職場環境に加え,父親自身が育児休業の利用を自分への可能性としてとらえておらず,育児休業に関する法律,社内制度に無関心であると考えられる(第1-3-1図)。
(仕事との両立を阻む重い育児負担)
内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成14年)によると,20歳代と30歳代の現在働いていない女性について,「働いていない理由」をみると,「育児の負担が大きいから」とする者が20歳代,30歳代ともに最も多く,それぞれ48.8%,64.2%であった。30歳代では「配偶者や子供などが望まないから」を挙げる者も22.4%と多く,母親が育児を担うことを家族から期待されていることがわかる(第1-3-2図)。
厚生労働省「第1回21世紀出生児縦断調査」により,母親の就業状況別にみた父の育児状況をみると,父親がいつも行う育児は「入浴させる」が最も多く,また,母親が就業中である場合に,父が「いつもする」割合が,他の母親の就業状態より若干高くなっている。
しかし,概して,母親の就業状態にかかわらず,父親の育児参加状況に大差はない(第1-3-3図)。
(週60時間以上働く父親は育児時間が大幅減少)
父の最近1週間の労働時間別にみた育児の状況については,父親の週労働時間が60時間以上になると,育児を「いつもする」と答える父親の割合の減少幅が目立つ。長時間労働が男性の育児参加に負の影響を及ぼしている(第1-3-4図)。
(育児期の男性の労働時間が長い)
総務省「労働力調査」で性・年齢階級別に平均週間就業時間をみると,男性では30歳代を山とするゆるやかな逆U字カーブを描く。週60時間以上就業している者の割合をみても同様のカーブを描き,育児期に当たる年齢層の男性の労働時間が最も長いことを示している。特に,育児参加に負の影響を与えている週労働時間60時間以上の男性についても,育児期が最も多くなっている。
一方,女性は,50歳代を山とし,30歳代後半層を谷とするゆるやかなM字カーブを描いており,男女の働き方には明確な違いがみられる(第1-3-5図)。
(男性にも強い両立志向)
しかし,男性の仕事と家庭を両立させるべきという意識は決して低くはない。仕事や家庭における男性の望ましい生き方についてみると,「仕事と家庭を両立させる」とする者が女性の53.2%,男性の43.3%に上っており,特に20歳代では55.0%と両立派の割合が高くなっている。また,「家庭を重視する」とする者も,20歳代では8.7%に上る(第1-3-6図)。
このように,仕事と子育ての両立を望む男性は少なくないにもかかわらず,序章で触れたように,我が国の長時間労働を強いる労働慣行が,男性の家庭や育児への参加を阻んでいる背景がある。
また,男性の仕事と家庭の両立を望む者が多くなったものの,実際の参加分野は限られており,育児休業についても男性が取得しようという積極的な意識は企業側にも男性自身にも,まだ育っていない。そして,このことが,女性だけが育児負担を負わざるを得ない状況をつくり出し,女性の仕事と家庭の両立を困難なものにしている。
(育児休業制度の整備は女性の勤務先への定着志向を高める)
出産・育児を機に勤めを辞める女性はまだ多いが,育児休業制度を取得しやすい環境は女性が勤続しやすくするものである。
財団法人家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」(平成13年度)によると,出産後も就業を続けている女性のうち71.4%が育児休業を取得していた。
育児休業取得者の傾向をみると,勤続年数が長く,高学歴である者が多い。また,復職後の賃金レベルも高い。
また,勤務先の育児休業制度導入状況と職場への定着指向との関連を調べた調査によると,有配偶の女性で育児休業を利用できる女性は67.2%が現在の勤務先で勤め続けることを希望しており,現在の勤務先への定着志向が強い。このことは,育児休業制度の整備が女性の定着志向を向上させることに効果があることを示し,育児休業の導入とともに取得しやすい環境づくりも重要である(第1-3-7図)。