平成14年版男女共同参画白書

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第2章 就業の分野における男女の共同参画

(依然として残るM字カーブ)

男女別の年齢階級別労働力率をみると,男性が20歳代後半から50歳代までを山とする台形を描くのに対し,女性では,30歳代前半を谷とするM字カーブを描いている。これは,昭和40年代からみられる我が国の女性労働力率の特徴である(第11図)。

年齢階級別労働力率の推移をみると,男性では大きな変化がみられない一方,女性では,25~29歳層では昭和50年から平成13年にかけて28.5ポイントと大幅に上昇している。しかし,M字の谷に当たる30~34歳層では14.9ポイントと,比較的小幅にとどまっている。

第11図  性・年齢階級別労働力率の推移

(有配偶者で低い女性の労働力率,就業希望者を加えると台形に)

女性の年齢階級別労働力率がM字カーブを描くことは先に触れたが,これを未婚者,有配偶者に分けてみると,未婚者では20歳代後半をピークに徐々に下降するのに対し,有配偶者では40歳代後半がピークとなっている。すなわち,有配偶女性では出産・子育て期に就業を中断し,子育てが一段落したところで再就職するという就業パターンを持つ者が多く,それがM字カーブの要因となっている。

一方,非労働力化している女性のうち就業を希望する者は,労働力率の低い30歳代に多く,就業希望者に労働力人口を加えて算出した潜在的労働力率をみると,M字のくぼみはほとんどなくなる(第12図)。このことは,子育て期の女性も就業希望を持っているが,現実には就業が困難である状況を反映していると考えられる。

第12図  女性の年齢階級別潜在的労働力率

(女性の勤続年数は更に長期化)

雇用者の平均年齢,平均勤続年数は上昇傾向にある。雇用者の平均年齢は平成13年で女性37.7歳,男性40.9歳(昭和60年は35.4歳,38.6歳),平均勤続年数は女性8.9年,男性13.6年(昭和60年は6.8年,11.9年)と上昇している。勤続年数階級別構成比をみても,男性は30年以上が増加しているが,女性では,20年以上が10.5%(平成12年)と昭和60年の5.5%から上昇するなど全体に勤続年数が長期化し,10年以上が約3分の1を占めるに至っている。

(男女で大きな差がみられる給与所得)

しかし,男女の給与所得には大きな開きがある。1年間を通じて勤務した給与所得者を給与階級別にみると,女性では300万円以下が63.4%(男性16.1%),100万円以下も14.9%(男性は1.8%)と多い反面,700万円超は3.2%(男性24.2%)と男女差が大きい。総務省「労働力調査特別調査」(平成13年8月)をみても,女性パート(パートと呼ばれている者をいう。以下同じ。)のうち仕事からの収入が100万円未満の者は57.8%,150万円未満の者は84.9%に上る(第13図)。

第13図  給与階級別給与所得者の構成割合

(所定内給与の男女差は縮小傾向,パートタイム労働者の賃金は一般労働者の3分の2)

女性一般労働者の平均所定内給与額は,平成12年で男性一般労働者の65.5%(13年は65.3%)であり,徐々に縮小してきているものの,依然として大きな開きがある(第14図)。この要因として,いわゆる年功制の下で,女性労働者では勤続年数の短い者の割合が高く,管理職の割合が低いこと,高学歴者の割合が低いことなどが挙げられる。実際,女性の学歴別構成・勤続年数階級別構成が男性と同じになったと仮定して推計すると,77.5%と男女比は大幅に上昇する。

一方,女性パートタイム労働者(同一企業の一般労働者より1日の所定労働時間又は1週間の労働日数が少ない労働者。以下同じ。)の1時間当たり所定内給与額は女性一般労働者の66.9%であり,低下傾向にある。しかし,男女計の一般労働者の所定内給与額と比較すると50%前後と安定しており,先に触れたような女性一般労働者の給与水準の上昇により,勤続に伴う賃金の上昇程度が正社員と比較して低いパートタイム労働者との差が拡大したものと考えられる。

企業が急速な環境変化に対応していくためにも,制度面を改善し男女均等なものとすることに加え,真に性別にとらわれず個人がその能力を発揮でき,処遇される仕組みが望まれる。

第14図  労働者の平均所定内給与額の推移

(勤続年数による賃金格差は縮小傾向)

企業においては,雇用者の中高年層の割合が上昇し,また,企業間競争が激化する中で,優秀な人材の確保に向け,年功的,集団的な労務管理を個々の職務内容や業績をより反映させた処遇システムに見直すなど,人事システム全体を見直す動きが進んでいる。

勤続年数1~2年の一般労働者を100とした勤続年数25~29年の一般労働者の所定内給与額をみると,昭和60年では,女性で186.8(高卒206.9,大卒249.4),男性で198.4(高卒209.5,大卒252.3)であったものが,平成12年には,女性で161.1(高卒171.8,大卒214.9),男性で186.6(高卒179.7,大卒210.2)と,勤続年数による賃金格差は縮小傾向にある。

(徐々に見直しが進む年功的雇用管理)

厚生労働省「就労条件総合調査」(平成13年)で企業の基本給の決定要素をみると,勤続年数は依然として基本給の大きな決定要素であるものの,個人業績を賃金に反映させている企業も65.0%,特に1,000人以上の大企業では83.2%に上っている。さらに,個人業績を賃金に反映させている企業では,その41.3%で過去5年以内に格差を広げる見直しを行っており,51.2%の企業は今後3年以内に格差を広げる見直しを予定している。近年,年俸制や職務給の導入により年功的な賃金体系を抜本的に見直す企業も増えてきており,個人業績がより強く反映される賃金体系に変化しつつあるといえよう。

(男性の就業時間は30歳代で長い)

 「労働力調査」で性・年齢階級別に平均週間就業時間をみると,男性では30歳代を山とするゆるやかな逆U字カーブを描き,週60時間以上就業している者の割合をみても同様のカーブを描く。一方,女性では,20歳代と50歳代を山とし30歳代後半層を谷とするゆるやかなM字カーブを描いており,男女の働き方には明確な違いがみられる(第15図)。第3章でみるように,こうした男女の働き方の相違は,仕事と家庭の両立にも大きな影響を与えている。

第15図  性・年齢階級別週間就業時間(非農林業)

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