トピックス2
「ジェンダーと交通」セミナーを開催
国土交通省は、2024年7月25日、交通分野の取組にジェンダーの視点を取り入れる「ジェンダー主流化」の推進について、国際的な議論を国内に紹介するため、「ジェンダーと交通」セミナーを開催しました。
このセミナーでは、国際交通フォーラム(ITF)から、国際的な議論や取組を紹介いただくとともに、日本の交通企業の経営幹部から、女性の移動ニーズを取り入れた交通サービスの提供や、交通分野で働く従業員や管理職への女性参画の促進について、各社の取組を共有いただき、今後の課題と展望について議論いただきました。
国土交通省国際政策課
ジェンダー主流化に関する潮流
政策やサービス提供にジェンダーの視点を入れる「ジェンダー主流化」が、国際的に議論されています。これは、すべての領域で、男女がそれぞれどのような異なる状況にあるかを精査し、その実態に基づいた政策、事業を立案・実行していこう、という考え方です。
こうした国際的潮流や考え方を踏まえ、2023年に国土交通省は国土交通大臣を議長として、G7伊勢志摩交通大臣会合を開催し、「誰もがアクセス可能な交通の実現」をテーマに議論を行いました。この会合でも、「経済と国家の強化のためには、ジェンダーの公平性と平等性が不可欠」ということについてG7各国の意見が一致しました。
我が国においても、2024年の「女性版骨太の方針」においては、「各府省は、あらゆる分野の政策・事業の計画、実施、評価において、男女別の影響やニーズの違いを踏まえた検討・立案を行う。」という方針が示されました。これはジェンダー主流化の概念にもつながるものです。
誰一人取り残さない社会を作っていくためには、交通分野でも男女の違いを把握し、交通政策や交通サービスを提供していくことが大切です。
また、男女で異なるニーズを理解し対応していくためには、意思決定の場における女性参画をさらに進めていくことも重要です。そして、少子高齢化や人手不足の観点からも、交通産業における女性の位置付けの向上が求められることは言うまでもありません。
このように、「ジェンダーと交通」は、社会にとっても、交通産業の成長にとっても、重要テーマであり、官民連携して進めるべき課題と言えます。
「ジェンダーと交通」セミナー開催概要
開会挨拶では、斉藤国土交通大臣(当時)から、男女で異なるニーズを理解し、政策やサービス提供を行っていく「ジェンダー主流化」について、重要テーマであり、官民連携して進めるべき課題との発言がありました。
また、来賓挨拶では、ITFのキム事務局長から、交通部門にも女性を取り込み、ジェンダーの視点を主流にした、インクルーシブな政策が必要との発言がありました。
パネルディスカッションの様子
登壇者の集合写真
国交省公式YouTubeチャンネルに当日の動画を掲載しております。
https://youtu.be/RIk6zXJdWNc
基調講演では、ITFの笠原上級政策分析官から、「ジェンダー主流化」に関する海外での議論や取組についてご紹介いただきました。
また、日本の交通企業の経営幹部からは、ジェンダーについての各社の考え方や女性が利用しやすい商品やサービスの開発・提供事例、女性が働きやすい職場作りの取組事例等についてご発表いただき、続くパネルディスカッションでは、女性のニーズを取り入れるために何をすべきか、国際的な議論から何を学べるかといったこと等について活発な意見交換が行われました。
<日本航空株式会社 代表取締役社長 鳥取三津子氏>
・同社の客室乗務員や空港係員は女性社員が多く、女性の視点を交えて、安心して利用してもらえるサービスを心がけている。また、多様な属性の社員がそのスキルや価値観を併せ持つことが重要であり、やりがいをもって活躍できるような環境整備等を行っている。
・価値観が変化する中で世の中の情報を取り入れつつ、方針をしっかり持って女性が活躍できる場をつくることが重要。女性に安心してサービスを利用してもらえるように進んでいく必要がある。
<東日本旅客鉄道株式会社 常務取締役 伊藤敦子氏>
・女性専用車、ベビーカーを駅で貸し出すベビカルサービス等について紹介。女性社員、男性社員ともに意見発信できるようになってきている。
・多様性のある組織が新しい社会・公共交通サービスを実現していくものであり、ジェンダー主流化やその先の多様性について粘り強く取り組んでいきたい。
<WILLER株式会社 代表取締役 村瀬茂高氏>
・女性専用席を備えた高速バスを導入した結果、高い女性利用客比率を実現した事例等について紹介。
・女性に着目することで、新たな市場が広がる可能性が大きい。地域交通における多様性をクリアするために「ジェンダー主流化」は一つの解決策になりうる。
<ボストンコンサルティンググループ日本共同代表 秋池玲子氏>
・女性に働きやすい職場や快適なサービスは男性にも快適なもの。
・サービス開発や組織内のジェンダーバランス等に対する経営幹部の強い意志が「多様性」につながる。
こうした意見を踏まえ、国土交通省においては、共生社会実現の一環として、「ジェンダー主流化」に係る社会気運の醸成を図りつつ、行政やサービスの提供側における「ジェンダー主流化」を進める第一歩として、まずはジェンダー主流化に関するアイデア・取組について意見交換を行う場を設けることとしました。
具体的には、ジェンダー平等の観点から改善を図るべき国土交通分野の政策や事業について、女性目線の自由なアイデアを集めるための本省の女性職員による懇談会や、交通分野の事業者等で活躍されている女性の方々から、女性の顧客の満足度を高めるサービスや工夫、女性従業員の採用、幹部への登用を促進する取組等についてご意見をいただくため、地方運輸局長による座談会を開催しています。
【参考】国際交通フォーラム(ITF)とは
ITFは、2006年、欧州運輸大臣会合がグローバルな組織に改組する形で設置された、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)傘下の組織です。69の加盟国に加え、民間企業、有識者等が交通政策に関するハイレベルかつ自由な意見交換を行うとともに、交通に関する調査研究を行っています。陸・海・空、全ての交通モードを扱う唯一の国際機関です。
ITFサミット2024の様子