「共同参画」2024年12月号

特集3

Special series vol.3
OBNがつくってきた企業文化を変革する。
経営トップに必要なのはD&I推進への「本気の覚悟」と「徹底したコミットメント」。

NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)

日本では、企業経営者をはじめ多様な組織のトップの9割を「男性」が占めています。

その男性経営者が中心となって、経営戦略の要となるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、女性活躍推進にコミットし、強力なリーダーシップを発揮して、オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)がつくりあげてきた古い企業文化、組織風土の変革に取り組もうとする動きが始まっています。

輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会
J-Win CEO会議/実行リーダーの会

2014年に内閣府が推進する「輝く女性応援会議」が開催され、各地域・分野で、輝く・輝こうとする女性達を応援するムーブメントが始まりました。この取組の輪をさらに広げていくことを目的に、男性経営者による「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」を発足させています。

NPO法人J-Winでは2021年に、会員企業の経営者、D&I推進担当役員による「CEO会議/実行リーダーの会」を発足させました。「CEO会議」はD&I推進を経営戦略として位置づけ、経営トップが自ら徹底して実行することをコミットする会議体です。

これと連動する「実行リーダーの会」は、CEO会議で議論された女性活躍推進に向けたコミットメントを、より具体的な施策へと素早く結びつけていくことで実効性を高めることを目指しています。


J-Win 実行リーダーの会
J-Win 実行リーダーの会


D&I推進に、なぜ「経営者」のコミットメントが必要なのか

激変するビジネス環境にあって、これまでのやり方を続けるのでは現状維持さえ難しく、やがて事業の衰退を招くことになります。多様な価値観を持つ人材を活用し、互いが理解・尊重する議論の中から、新しい考え方やイノベーションを生み出すD&I推進が、企業の持続的な成長には欠かせないからです。

その一方で、女性管理職を増やし、働きやすさに配慮すれば業績は上がるのか、といった疑問や、D&I推進に取り組む余裕がない、女性社員の採用や教育を行っても進んでいる実感がない、という声も聞きます。

D&I推進は、単に数値目標を掲げ、制度を導入すれば解決するようなものではなく、その障害となっているものは企業の文化や風土として組織に深く根づいていることからも、社員の意識改革や企業文化の変革を伴う全社的な課題として捉えることが必要です。

D&I推進を組織に根付かせ、女性の活躍や指導的地位への登用を加速させるためには、ボトムアップの取組だけでは不十分です。経営者自らが率先して、本気で取り組む覚悟を示し、具体的な行動でその意思を示すことが重要です。トップダウンで推進しなければ、組織全体の意識改革は進みません。

J-Win CEO会議の取組

CEO会議の参加者はJ-Win会員企業の経営者(社長・CEO)です。ダイバーシティ経営に積極的な先進企業から、20名の経営者による経営者同士の、本音の議論が行われます。会議の目的を「D&I推進を経営戦略として捉え、経営トップ自らが徹底して実行する」とし、ここでも経営者によるコミットメントの重要性に触れています。

この会議では、社長・CEOから交代でD&Iにかける熱い想いを語っていただくことにしています。その後、毎回設定するテーマについて、それぞれの企業が持つ課題感やD&I推進事例・施策を議論しています。この議論の中で、経営者同士が相互に刺激を受け、 「気づき」 「覚悟」 「迷いの払しょく」 から、D&I推進の「スピーディな社内展開」へと結びつけ、同質性の高い企業文化を変革するための意識をより強固なものにしていきます。


J-Win CEO会議
J-Win CEO会議


女性活躍推進に関する課題認識(2つの壁)と取組

CEO会議で紹介された女性活躍推進に向けた取組事例を紹介しましょう。この企業では、女性がキャリアップして活躍するための課題解決に取り組んでいます。

女性社員が抱える不安として「課長の壁」「部長の壁」があると考え、それぞれのステージでの課題解決のための研修プログラムを設けています。

ここでの注目は「部長の壁」に対応するためのプログラムです。全社視点で視座を高め、キャリアアップを目指してほしい将来の役員、部長候補の女性社員に対して、全ての役員がそれぞれのサポーターを務め、リーダーの育成を図るという制度です。

この制度のメニューにはメンタリング、勉強会、自己啓発などがあり、メンタリングでは役員と対象者による個別面談が月1回、1年間かけて行われます。リーダーとしての考え方や意思決定の重要性、難しさなど多様な視点、視座(他事業、経営目線)を教えていくというものであり、役員が統括する部門のミーティングにも参加するといったオプションもあるようです。

1年間のプログラムを終えると候補者は、上位職へのキャリアチャレンジに前向きになった自身の変化を実感出来るようになります。また、女性社員の育成に直接携わった役員からも、指導的地位への女性登用、人材育成の重要性を改めて理解できた、などの感想が寄せられるようになったようです。


女性活躍推進に関する課題認識(2つの壁)と取組


経営者が考えるべきこと、行動すべきこと

経営者が考えるべきこと、行動すべきことについてお聞きします。社内でD&I推進月間などを設けて社員を教育する、それでD&Iは進むのでしょうか。D&I・女性活躍推進は企業に課せられた数値目標ではなく、イノベーションを生み、古い文化や風土を変革し、企業の持続的な成長のために不可欠なものです。

経営者には、組織全体の課題を明確化し、多様性を尊重する文化を醸成するために、率先して具体的な行動を示すこと、全員参加型の研修や教育プログラムを通じて成功事例を共有することで、社員一人ひとりが組織の目標達成に貢献できるよう、モチベーションを高めることなどが求められます。


繰り返しになりますがD&I推進は経営戦略です。経営者は自社の現状をしっかりと把握し、長期的な視点を持ち、強力なリーダーシップを発揮し、経営に多様性を取り込むことで、必ず成果に結びつけることができます。 企業文化を変革し、企業の持続的成長を実現するのは、経営者の「本気の覚悟」と「徹底したコミットメント」です。


~自分を/企業を/社会を変えるチャレンジ・ラボ~
「女性社員が自ら意思決定し行動する場」を提供するJ-Win女性ネットワーク


Next Stageネットワーク
Next Stageネットワーク


Executiveネットワーク
Executiveネットワーク


High Potentialネットワーク
High Potentialネットワーク


J-Win女性ネットワークには、J-Win活動に参加する約200社の企業から550名ほどの女性社員の方たちがメンバーとして登録しています。女性ネットワークは、High Potentialネットワーク(管理職一歩手前)、Next Stageネットワーク(課長・部長層)、Executiveネットワーク(執行役員)の3層のレイヤーに分かれていて、女性社員が「J-Winメンバー」となって、毎月の定例会やテーマごとの研究を行う分科会・研究会などの活動を行っています。


J-Winメンバー


J-Win活動が企業の階層別研修や一般のセミナーなどと大きく異なっているのは、J-Winメンバーが各ネットワークに設置された幹事会や委員会などの役割を担って、自ら活動内容の企画・運営を行う点です。自分たちが何を目的に活動すべきか、その目的に沿ってどんなプログラムを組み立てればよいか、参加することを通じて誰とどのようにネットワークを結ぶかなどを自分たちで考え、実行し、その結果を振り返るというサイクルをメンバーが主体となって行っています。


それぞれのJ-Winメンバーは所属企業では上司がいて、その指示に従って日々の業務を行っています。しかし誰かに指示されたことをこなすだけでは、ひとつの組織をマネジメントしたり利害関係が対立する集団をリードしたりする力は身に付きません。

J-Win活動を通じて、メンバー同士が意見を交わしながら自ら課題を設定し、それをどう乗り越えるかの意思決定をすることで、自分のキャリアを変えようという意識が醸成されていきます。そして企業で管理職の立場になれば、部門の力を使って企業を変えることができるようになり、執行役員となって企業の意思決定の場で意見を言えるようになると、社会を変えることさえ可能になっていくのです。


これまでに女性ネットワークには、2,500名以上の女性社員が参加し、J-Win活動を通じて、多くのメンバーが所属企業で管理職や経営職に昇格を果たしています。所属企業での仕事では常に結果を出すことが求められますが、J-Win活動では失敗が許されており、その失敗を取り戻そうとメンバーたちが一致団結して再挑戦することが少なくありません。

上位職に上がるためには成功体験が非常に重要であると同時に、失敗した悔しい経験はメンバー本人に気づきを促し、大きく成長させる機会を与えてくれます。女性ネットワークは、J-Win活動に参加する女性社員たちに、失敗しても挑戦し続けられる「チャレンジ・ラボ」の場を提供しているのです。


女性管理職が育たないと悩んでいらっしゃる企業・団体の人事担当者の方には、ぜひJ-Win女性ネットワークの活用をご検討いただければ幸いです。国や地方自治体の職員の方のご参加もお待ちしております。


NPO法人J-Winについて、詳しくはこちらをご覧ください。
https://j-win5.jp/

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019