「共同参画」2024年11月号

特集3

Special series vol.2

男性管理職たちが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」を理解し、自分事として受止めることから始まる。

- J-Win男性ネットワーク

NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)

オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)とは、男性たちが中心的な役割を担ってきた多くの企業の中で培われた、明文化されていないルールや約束事、仕事の進め方などで、組織を支えてきた古い価値観や慣習となっているものです。 企業文化や風土として深く根付いていることから、無意識のうちに異なる視点を排除し、変革を阻み、成長の機会を失う要因ともなっています。

あなたの周りでこのような話を聞いたことはありませんか。「キャリアプランの話をすると、女性からは “管理職に魅力がありません” “仕事と家庭を両立する自信がありません” という答えが返ってくる」 と言うものです。それを受けて上司は、女性は昇進を希望していない、昇進意欲が低い、と判断してしまいます。

女性の管理職が増えないのは、キャリアに対する考え方など意識の問題なのでしょうか。 多くの企業には、中心的な役割を担ってきた男性たちがつくり上げ、共有してきた組織風土や仕事の仕方などがあります。女性たちにとって上位職にチャレンジするというのは、それらの約束事も知らされないままに男性管理職の中に入っていくことであり、その不安が躊躇させている理由の一つなのかもしれません。


J-Win


J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)は、企業における経営戦略の要となるダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)の推進と定着を支援するNPO法人です。

活動の柱は、組織、社会を牽引する女性リーダー育成を支援する「女性3層ネットワーク」と、企業のD&Iを推進し、組織の活性化を支援する「D&I推進3層システム」です。

この活動の中で、メンバー全員が男性というプログラムがあります。部長職、課長職の男性管理職が参加する「J-Win男性ネットワーク」です。


J-Win活動プログラム
J-Win活動プログラム


J-Win男性ネットワーク
- チェンジエージェントに向けての意識改革

男性ネットワークの活動目的は、男性自身がD&I・女性活躍推進の必要性を理解・腹落ちし、自分の言葉で自信を持って周囲に語れるようになること。1年間の活動を終え、それぞれの企業に戻って仲間を増やし、チェンジエージェント(変革を推進する人)として行動すること、としています。

男性ネットワークでの学びは、「企業の持続的な成長に向けて、なぜD&I(多様性と包摂)推進が必要なのか」を理解することから始まります。スタート時には 「D&I推進のために何をすればいいのかわからない」 「数字目標のために女性を管理職に引き上げるのは逆差別ではないか」など、疑問を持つメンバーも少なくありません。

D&I推進は企業にイノベーションを起こす経営戦略の要

第1回 男性ネットワーク定例会はJ-Win理事長 横尾敬介の講演から始まります。

「激変するビジネス環境にあって、これまでのやり方を続けるのではなく、多様な価値観を持つ人材を活用し、互いが理解・尊重する議論の中から、イノベーションを生み出していくことが企業成長を持続させるためには必要となります。過去の成功体験にすがり、リスクを避け、現状維持を優先する組織では急速に同質化が始まり、緩やかな衰退へと向かっていくからです。

企業文化・風土を変革し、組織を活性化するD&I推進はイノベーションを生みだすための原動力であり、有効な経営戦略であることをしっかりと理解してください。そして女性活躍推進が多様性の第一歩であることを忘れてはなりません。」


横尾理事長
横尾理事長


男性ネットワーク活動も数か月を過ぎると、D&I推進は企業が持続的な成長をするために必要な経営戦略であること、女性活躍を阻む壁として「オールド・ボーイズ・ネットワーク(以下OBN)」があることを理解できるようになります。ただ、頭では理解するものの十分に納得し「腹落ち」するまでには至りません。 自分の言葉で、D&Iの必要性を周囲に語ることは難しく、何よりも自分自身のOBNには気づいていないからです。

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の自分事化

企業も職種も異なる多様なメンバーが集い、D&I推進を加速させるための議論が続けられます。課題の本質を探るために仮説を立て、アンケート調査やヒヤリングを実施し、メンバーとのディスカッションを繰り返すなかで、多くの「気づき」や「ヒント」を得ていきます。そして、多くの洞察から新たな事実を知り、当初、考えていた仮説とのギャップに驚かされることになります。

この頃になるとメンバーの意識にも明らかな変化が見られます。これまで「あたりまえ」だと思っていた考え方、行動をしっかりと振り返ることで、はじめて「自分事化」が出来るようになります。課題解決の糸口を見つけるとともに、男性管理職としての責任や行動、どのようにして組織全体に浸透させていくのか、についても考えられるようになります。

スタート時の疑問であった「D&I推進のために何をすればいいのかわからない」の答えを探り出し、さらに議論を重ね、男性ネットワーク活動の集大成となる最終報告会での発表を迎えます。


男性ネットワーク活動風景
男性ネットワーク活動風景


チェンジエージェントとして企業のD&I推進を加速させていく

1年間の活動を終え、男性ネットワークメンバーはそれぞれの企業、職場へと戻っていきます。

そして、ここからが活動の目標であった「企業に戻り、仲間を増やし、チェンジエージェントとして行動すること」がスタートします。 D&I推進がなぜ必要なのかを自分の言葉で語り、仲間を募り、組織としての問題点を洗い出す。課題克服に向けて何が出来るのかを仲間と一緒になって考え、自らがチェンジエージェントとして行動していきます。

男性ネットワークの卒業生たちが、活躍の機会に恵まれず、マイノリティの存在であった人たちに寄り添い、サポートしていくことで多様な人たちが活躍できる環境を整えていく。チェンジエージェントとしての行動が企業文化、組織風土の「変革」を加速させていきます。

まとめると以下のようになります。


変革


NPO法人J-Winについて、詳しくはこちらをご覧ください。
https://j-win5.jp/

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