特集4
Special series vol.1
指導的地位への女性登用を組織の成長につなげる。
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」から「新しいリーダーシップの時代」へ。
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」から「新しいリーダーシップの時代」へ。
NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)
男女間での平等性が世界から大きく遅れている日本の現状をご存知ですか。
世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2024」で、日本のランキングは146カ国中118位。政治や経済分野で男女格差が大きい日本は、ジェンダーギャップ指数の比較において世界から大きく後れをとっていることがわかります。
女性の活躍を阻む壁として「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」の存在が挙げられています。全3回のシリーズでご紹介しますので、ぜひご一読ください。
政府は、2030年までに社会のあらゆる分野において、指導的地位に女性が占める割合を30%になるよう数値目標を掲げています。 「203030」と呼ばれているものです。
多様な価値観を持つ人材を活用するダイバーシティ&インクルージョン《多様性と包摂》は、イノベーションという新たな企業競争力を生みだす原動力となります。このことを熟知しているグローバル企業の多くは、ダイバーシティ&インクルージョン、とりわけ女性活躍の取組みを積極的かつ継続的に推進しているのです。
なぜ、日本では指導的地位への女性登用が進まないのでしょうか。
NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)では、多くの企業に存在する女性活躍を阻む問題は3つあると考えています。
一つ目が 『将来像が見えない』 という女性の意識の問題、二つ目が 『仕事と家事/育児とのバランス』というワーク・ライフバランスの問題、そして最後が 『オールド・ボーイズ・ネットワーク』 の問題です。
オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)とは何でしょう
終身雇用、年功序列が長く続いた日本の企業では、男性がマジョリティであり、同じ成功体験を持つ人たちが中心になって企業文化や風土、仕事の約束事(決まり)などがつくられてきました。その一方で、組織の中で仕事を進めるために大切な知識や暗黙知、必要な行動規範などはマイノリティである女性にはほとんど伝えられず、これが女性活躍を阻む問題の一つとなっているのです。
男性たちに悪意などはありません。仕事を円滑に進める上において「あたりまえ」の意識、行動だと思っています。 自分自身のOBNには気づいていないのです。
つまりOBNとは、これまで、成功を収めてきた企業の中で培われた、明文化されていないルールや約束事、仕事の進め方などで、組織を支えてきた古い価値観や慣習となっているものです。 企業文化や風土として深く根付いていることから、無意識のうちに異なる視点を排除し、変革を阻み、成長の機会を失う要因ともなります。
「OBN」は日本だけでなく、世界中に存在します。
海外では「オールド・ボーイズ・クラブ(OBC)」と呼ばれることもあります。
ドイツでは「トーマス・サイクル」というものがあります。 「役員トーマスさん」の後任も、同性で、似た経歴や考え方を持つ「次の役員トーマスさん」が誕生することを指します。これまでの成功体験から抜けきれず、自分と似た考え方の男性を新たに仲間として加え、やり方を変えずに繰り返していくOBNの考えがその背景にあると考えられています。
世界中、どこにでもあるOBN。マジョリティであり、長い期間にわたり実権を握ってきた人達にとってはストレスが少なく、快適だとも言えます。
無意識のうちにグループ以外のメンバーには情報を知らせていない、苦労して築き上げてきた自分たちのポジションをまったく価値観の違う人には奪われたくないと考えるOBNの壁を、少しでも低く、薄くするにはどうすればいいのでしょうか。
男性自身が「OBN」の存在に気づくこと
先ずはマジョリティである男性がOBNの存在に気づき、自分事化して受止めることが大切です。ここでの自分事化とはOBNの事象に対し、自分は気づいていなかったという前提に立って、マイノリティの女性たちに起きていることを知り、話し合うことです。
多様な価値観を持つ人材がお互いを受け入れ、議論するダイバーシティ&インクルージョンが、企業にイノベーションを生む経営戦略の要であると共に、組織においては、多様性の第一歩となるのが女性活躍であることを忘れてはいけません。
指導的地位に多くの女性を登用することが、これからの企業、地域の持続的な成長には欠かせないのです。
「OBN」を理解しただけでは何も変わらない
今まで組織を支え、企業文化をつくり上げてきたのがマジョリティである男性ならば、OBNの問題に気づき、自分事として受止め、壁を打ち破っていくことも男性が行わなければなりません。
ただ、ここで注意してほしいことがあります。 OBNを理解しただけで満足し、「中立の立場」にいたのでは、これまでの格差を再生産するだけで何も変わらないということです。
だからこそマイノリティの人たちの立場や気持ちを理解して十分なコミュニケーションをはかり、何が出来るのかを考え、自らが行動を起こしていくことが必要になります。活躍の機会に恵まれず、マイノリティの存在であった人たちに寄り添い、積極的にサポートしていくことが強く求められているのです。
“コラム「子育てとジェンダー」(2022)”
誰もが知る、「見える化」こそが多様性を受け入れる文化をつくる
そのためには「見える化」することが大切です。
世の中が大きく変わろうとしている時に、これまでのやり方を続けるのは難しいことです。これまでの閉ざされたコミュニティで受け継がれてきた約束事やルール、仕事の進め方といったことを、誰もが知り、理解できるように「見える化」する。 数値化や仕組化・言語化を推進し、客観的に認識できるようにすることはとても重要なことなのです。
ここでの「見える化」とは、多様性を受け入れる「文化」を組織に生みだしていくことに繋がります。 そして、この文化こそが企業や地域に持続的な成長をもたらし、「新しいリーダーシップの時代」へと繋がっていくことを理解しなければなりません。
NPO法人J-Winについて、詳しくはこちらをご覧ください。
https://j-win5.jp/