巻頭言
同質性が生む組織文化・風土の問題に気づき、変革を推進する
多様性が尊重される社会の実現は、企業にイノベーションを促進し、持続的な成長をもたらします。2024年6月に政府決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2024」では、女性人材の育成に留まらず企業の経営層や管理職、さらには地域における女性活躍・男女共同参画推進のリーダーなど、それぞれの分野における「人材の育成」を横串しに据えた取組を進めようとしています。
この女性版骨太方針では、女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の推進として、固定的な性別役割分担意識やアンコンシャス・バイアスの解消に加え、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に着目した広報啓発が行われます。
女性リーダーの育成とともに企業のダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)の推進を支援するNPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)では、女性活躍を阻む壁として3つの問題を取り上げています。
1つ目は「将来像が見えない」といった女性自身の意識の問題。2つ目が「仕事と家事/育児とのバランス」といったワーク・ライフバランスの問題。 そして3つ目が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の問題です。オールド・ボーイズ・ネットワークとは、企業の中核的な役割を担い、組織を支える男性たちがつくりあげてきた文化や風土であり、仲間同士での暗黙の了解、根回し、忖度などがこれにあたります。
変化の激しいビジネス環境にあって企業が成長を続けるためには、これまでのやり方を続けるのではなく多様な価値観を持つ人材を活用し、互いが理解・尊重する議論の中から、イノベーションを生み出していくことが極めて重要となります。リスクを避け、現状維持を優先する組織では急速に同質化が高まり、緩やかな衰退へと向かっていくからです。
「あたりまえ」だと思い込んできた企業文化を変革し、組織を活性化するダイバーシティ&インクルージョンの推進は、イノベーションを生みだすための原動力であり、有効な経営戦略であると考えられます。
世界的な流れから大きく取り残された日本のジェンダーギャップ。2030年までに女性の管理職比率を30%以上にするという数値目標が示すとおり、多様性の第一歩となるのが指導的地位への女性登用であり、ここでの変革こそが、すべての人の可能性を最大限に生かし、一人ひとりが自己実現へと結び付けられる社会に繋がっていくのです。
横尾 敬介
Yokoo Keisuke
NPO法人J-Win
(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)
理事長