「共同参画」2024年7月号

特集3

Special series vol.1

兵庫県豊岡市の挑戦
「ジェンダーギャップの解消」

豊岡市多様性推進・ジェンダーギャップ対策課

豊岡市は、兵庫県の北部に位置する人口77,000人の町です。コウノトリの野生復帰をはじめ「深さを持った演劇のまちづくり」などに取り組み、豊岡鞄などの製造業や城崎温泉などの観光業が盛んです。本市では、ジェンダーギャップ(社会的・文化的な男女格差)の解消、つまり、男性と女性があらゆる場において平等に権利・機会・責任を持つことができる環境整備を行うことがまちづくりに不可欠な戦略的課題であると考えて、分野・対象ごとに体系的に取組を進めています。全4回のシリーズでご紹介しますので、ぜひ、ご確認ください。

若年人口、特に若年女性人口の流出

豊岡市の最大の課題は、地方創生、すなわち人口減少対策です。本市の人口減少の主な要因は、若者の流出にあります。

2015年国勢調査結果の詳細が2017年夏に判明し、豊岡市の若者回復率(10歳代の転出超過数に対して20歳代の転入超過数の占める割合)を見ると、男女合計で39.5%、2010年に比べて5.3ポイント上昇していました。しかし、男女別でみると男性は52.2%、女性は26.7%。進学や就職で転出した若者のうち女性が戻ってくる(入ってくる)のは男性の半分しかないという事実に大きな危機感を持ちました。

そして、男性の若者回復率は、景気に大きく左右される傾向がありますが、女性の回復率は、景気に左右されることなく長年にわたって低水準で推移しています。

豊岡市若者回復率
豊岡市 若者回復率(2015年、2020年国勢調査データ)


なぜ、豊岡市が若者に暮らしの場として選ばれていないのか。地方は都市部に比べて経済的、文化的な魅力に乏しいことに加え、女性にとっては、男性中心の社会であって、家庭・職場・地域に根深く残るジェンダーギャップがあるためではないかと仮説を立てました。

ジェンダーギャップの問題は、人口減少の加速に加えて、女性が女性であるという理由だけで、補助的役割のみに甘んじ、能力を磨き、発揮する機会がないとすると、地域社会や地域経済にとって大きな損失であり、まちの存続にかかわる極めてリアルな問題でもあります。

そして、何よりも一番の問題は、同じ社会の構成員として公正さ(フェアネス)に欠けるということです。

トップのコミットメントと行政組織による率先垂範

そこで、2018年度から「ジェンダーギャップの解消」を市の主要政策に位置付けて、まずは、女性も男性も働きやすく働きがいのある職場づくりを進めるため、2019年1月に市内事業所向けの「豊岡市ワークイノベーション戦略」を、そして「まず隗より始めよ」に倣って「豊岡市役所キャリアデザインアクションプラン」を策定し、職場を切り口とした取組をスタートしました。

(※職場の取組は、次回8月号で紹介します。)

専門家による調査分析と課題設定

ジェンダーの専門家である上智大学名誉教授の目黒依子氏、特定非営利活動法人Gender Action Platform理事の大崎麻子氏による、市民意識調査などの先行調査と追加ヒアリング調査を踏まえた総括的な分析により、2019年12月に、「『豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略(仮)』策定に向けた提言」が取りまとめられました。

示された主な課題は次のとおりです。

・ジェンダーギャップ解消の意義とメリットが十分に理解されておらず「自分ごと」になっていないこと。

・職場において、女性管理職登用、男性の育休取得、時短勤務等を機能させるマネジメントの仕組みが構築されていないこと。

・これからの豊岡市の担い手であり、既に多様性、ジェンダー平等、フェアネスに敏感である若い世代のビジョン、問題意識、ニーズが政策に反映されていないこと。

・地域の「世帯主」を中心とした基盤・枠組みが固定化しており、多世代、多様な地域住民のコミュニケーション、相互扶助、協働の場が機能していないこと。

市民が未来を描くワークショップ・戦略策定

まち全体を対象とした戦略策定に先立ち、2020年2月に高校生と20代若者を対象に、シナリオプランニングという手法を用いたワークショップを行いました。

「ジェンダーギャップが解消された豊岡市」と「ジェンダーギャップが解消されなかった豊岡市」のそれぞれの未来像を描き、バックキャスティングによりジェンダーギャップを解消するためにどのようなアクションが必要か、市に期待することは何かを検討し意見をまとめました。

その後、2020年4月に商工会議所会頭、地域のリーダー、教員、経営者、子育てをしながら働く人、若者等に学識経験者を加えた多世代、多様な立場の10人で構成する豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略会議を設置して戦略案を検討しました。ジェンダーについて学び、先のワークショップで得られた若者の意見を反映させながら、グラフィックレコーディングで可視化して意見をまとめるなど、従来の計画策定手法とは異なる参加型プロセスにより、職場、地域、家庭、学校などを含むまち全体を対象とした「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」を2021年3月に策定しました。

2021年度から2030年度までの10年間の計画期間で、戦略の上位目的は、「固定的な性別役割分担を前提とした仕組みや慣習が見直され、お互いを尊重し支え合いながら、いきいきと暮らしている」とし、大きく6つの手段を掲げて、戦略的に取り組んでいます。


豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略会議委員が行動宣言を発表
豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略会議委員が行動宣言を発表


豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略 「戦略体系図」
豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略 「戦略体系図」


詳しくは、こちらをご覧ください。
豊岡市ホームページ「ジェンダーギャップの解消」
https://www.city.toyooka.lg.jp/kurashi/1007000/index.html

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