「共同参画」2024年7月号

特集1

女性版骨太の方針2024

内閣府男女共同参画局総務課

令和6年6月11日に、全閣僚からなる「すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部合同会議」を開催し、「女性版骨太の方針2024」を決定しました。今回は、本方針の概要や具体策についてご紹介します。

「女性版骨太の方針」について

我が国では、5年に1度、施策の基本的な方向性や成果目標などを示す「男女共同参画基本計画」を策定するとともに、毎年6月を目途に、政府全体として当該年度及び翌年度に重点的に取り組む事項を「女性版骨太の方針(女性活躍・男女共同参画の重点方針)」として決定しています。


すべての女性が輝く社会づくり本部(第14回)・男女共同参画推進本部(第24回)合同会議の様子
すべての女性が輝く社会づくり本部(第14回)・男女共同参画推進本部(第24回)合同会議の様子


背景・基本的な方針

我が国における女性活躍の機運は着実に高まっているところですが、女性の登用の状況をめぐる企業間の差異や、女性参画の取組の進捗をめぐる地域間の差異が見られるのが現状です。

こうした状況を改善し、中長期的な観点で、我が国の女性活躍・男女共同参画を持続的に推進していくため、国内外における女性活躍による企業価値の向上を示すデータを含め、女性活躍推進に資する様々な情報の普及を行うとともに、企業や地域において活躍する女性人材の育成、企業の経営層・管理職、男女共同参画センターの職員を始めとする企業や地域における女性活躍・男女共同参画推進のリーダー・担い手の育成・専門性の向上など、「人材の育成」を軸とした取組を進めていきます。

こうした「人材の育成」は、個人の尊厳と安心・安全が守られる社会を実現する上でも不可欠な課題であり、能登半島地震の経験を踏まえ、防災分野における女性の参画拡大等を一層推進します。

また、こうした取組を進めるための基盤として、働き方改革、仕事と育児・介護の両立支援の推進、固定的な性別役割分担意識の解消、女性の健康への支援、配偶者等からの暴力への対策及び性犯罪・性暴力対策の強化などを着実に進めていきます。

そして、改めて、あらゆる分野における政策・方針決定過程に女性が参画する機会の確保に取り組むとともに、あらゆる分野において男女共同参画の視点に立った政策が実現されるよう、政府全体で取組を一層強化していきます。

このような方針のもと、「女性版骨太の方針2024」では、

Ⅰ 企業等における女性活躍の一層の推進

Ⅱ 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進

Ⅲ 個人の尊厳と安心・安全が守られる社会の実現

Ⅳ 女性活躍・男女共同参画の取組の一層の加速化

という4つの重点事項に沿って、具体策を取りまとめました。以下、それぞれの事項について、主な具体策をご紹介します。

主な具体策について

Ⅰ 企業等における女性活躍の一層の推進
~活躍する女性人材と企業等で取組を推進する人材の育成~

(1)企業における女性の採用・育成・登用の強化

我が国の女性役員比率の推移


女性役員登用目標の達成に向けた各企業の行動計画策定を促進するため、策定ガイドの作成・周知や好事例の横展開を行うとともに、役員候補となる女性人材のパイプライン構築に向けて、ロールモデルとなる女性役員等の事例集の作成等、啓発コンテンツの作成や情報提供を行います。全てのプライム市場上場企業に対する啓発(セミナー開催)等を通じて、女性登用の意義や必要性についての企業における理解の浸透も図ります。

また、女性活躍や子育て支援に積極的に取り組む企業を支援するため、各府省の補助金等において、補助目的に鑑みつつ、取組に積極的な企業に対する加点の優遇措置の拡大・促進に取り組みます。

(2)科学技術・学術分野における女性活躍の推進

大学(学部)の学生に占める女性の割合


理工系分野を目指す女子生徒等の育成に向けて、若手ロールモデルによる授業等の実施手順の事例等を示した「理工チャレンジ」のプログラムを作成・周知し、地域の大学・高専における取組を促すことで、理工系の魅力を発信する機会の増加を図ります。

また、中学校技術・家庭科(技術分野)や高校情報科の指導体制の充実、プログラミング教育に関する教員対象の研修会等の実施、大学・高専における幅広い学生を対象としたプログラミング教育を含む数理・データサイエンス・AI教育の推進等により、プログラミングに関する教育の充実を図ります。

(3)女性起業家の支援

起業家ネットワークへのアクセスが限定的、資金調達が難しいなどの課題を抱える女性起業家を支援するため、金融機関や地域中核企業など様々なステークホルダーを巻き込みつつ、全国各地で女性起業家に対して一貫した支援を提供するネットワークを構築し、事業計画に対する助言を行うとともに、支援者とのマッチングに向けた支援プログラムを実施します。

Ⅱ 女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進
~全国各地の女性が経済的に自立するための力の育成とこれを支える人材の育成~

(1)所得向上、リスキリングの推進

L字カーブの状況


出産を契機に多くの女性が非正規雇用化する、いわゆる「L字カーブ」の解消に向けて、正規雇用の女性の就業継続を支援するとともに、デジタル分野のリスキリング支援や就職支援など、初職から非正規雇用で働く女性や、過去に妊娠等を契機に非正規雇用となった女性を正社員転換するための取組を進めます。

また、男女間賃金差異の公表・分析を一層推進するとともに、男女間賃金格差の大きい業界に着目して、業界ごとのアクションプランの策定を促し、取組を進めます。

いわゆる「年収の壁」を意識せず働くことが可能となるよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」を着実に実行し、さらに、次期年金制度改正において制度の見直しなどに取り組みます。

(2)仕事と育児・介護の両立の支援

柔軟な働き方を実現するための措置や、男性の育児休業取得率の公表義務の拡充等を盛り込んだ改正育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の円滑な施行に向けた取組、経営層や管理職も含めた周知・啓発、中小企業に対する支援、企業が福利厚生として家事支援サービスを提供する取組を促進する観点からの広報等に取り組み、男女問わず育児、介護とキャリア形成の両立を図るともに、女性への育児負担の偏りの解消を目指します。

(3)仕事と健康課題の両立の支援

働く女性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性のライフステージごとの健康課題に起因する望まない離職等を防ぐため、労働安全衛生法に基づき事業主が行う健診において、月経随伴症状や更年期障害等の早期発見に資する項目を問診等に加え、その実施を促進するともに、企業等におけるフェムテック製品・サービスの活用も促進します。また、健康経営銘柄、健康経営優良法人、なでしこ銘柄等において、女性の健康課題に取り組み、成果を上げている企業や健康保険組合の好事例を集め、他の企業等にも広く周知するとともに、小規模事業者にも取組が広まるよう、健康経営優良法人制度中小規模法人部門の要件緩和等を検討します。

さらに、令和7年度末に期限を迎える女性活躍推進法の延長・改正に向けた検討において、事業主が女性特有の健康課題に取り組むことなど、更なる女性活躍推進に向けた検討を行います。

(4)地域における女性活躍・男女共同参画の推進

都道府県ごとの男女参画状況の可視化


地域において女性の活躍を推進・支援しているリーディングカンパニーにおける取組の把握を含め、各地域の企業の好事例の周知・啓発するなど地域の企業における女性活躍を推進し、地域の男女共同参画センターや国立女性教育会館(NWEC)の機能強化等を通じて、その担い手を育成します。

また、地域女性活躍推進交付金による支援、地域シンポジウム等を通じた好事例の横展開により、地方公共団体における取組の推進の鍵となる地域リーダーの意識醸成・育成を推進します。

さらに、各地域において、人々の中にある固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消と、企業等の広報担当や人事・業務管理に携わる管理職、さらには経営層の意識改革と理解の促進を図り、性別役割分担にとらわれない働き方を推進するため、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の存在について様々なコンテンツを活用した情報発信、地方公共団体や経済団体等を対象としたワークショップの開催等の啓発活動を実施します。

Ⅲ 個人の尊厳と安心・安全が守られる社会の実現
~男女共同参画の視点に立った防災・復興、配偶者暴力や性犯罪・性暴力の被害者等を支える人材の育成~

(1)男女共同参画の視点に立った防災・復興の推進

今般の能登半島地震における「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を踏まえた災害対応について調査を行い、報告書を取りまとめ、今後の対応に活用します。


男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン(避難所チェックシート)


また、国や地方公共団体の災害対応の現場等における女性の参画拡大と、これを推進するリーダー層の意識醸成のための研修の充実、こどもの発達段階に応じた男女共同参画の視点を取り入れた防災教育など国民への啓発を推進します。

(2)配偶者等からの暴力や性犯罪・性暴力への対策の強化

改正配偶者暴力防止法や女性支援新法(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律)等の関係法律の施行状況等も踏まえ、多様な被害者がためらうことなく相談できる体制の整備、法定協議会の活用等も含めた配偶者暴力相談支援センター、警察、児童相談所、民間団体、医師会や医療関係者、法テラス等の連携の強化等に取り組むなど、配偶者等からの暴力の防止、被害者の保護及び支援、相談体制の整備及び周知等の一層の強化を図ります。

「相手の同意のない性的な行為は性暴力」であること等の認識を社会全体で共有し、ワンストップ支援センターの運営の安定化、相談員の支援能力・専門性の向上や様々な相談方法の活用を図るとともに、こども・若者の性被害防止に向けた総合的な対策を推進するなど、性犯罪・性暴力の根絶のための取組や被害者支援を強化します。


ワンストップ支援センターへの相談者の被害時の年齢


(3)困難な問題を抱える女性への支援

令和6年4月に施行された女性支援新法に基づき、女性相談支援センターや女性自立支援施設の機能強化、女性相談支援員の人材の養成・処遇改善、民間団体と地方公共団体との協働等を推進など、困難な問題を抱える女性一人ひとりのニーズに応じて、包括的な支援を実施します。

(4)生涯にわたる健康への支援

生理の貧困への対応、フェムテックの推進と更なる利活用、緊急避妊薬の利用に向けた検討、スポーツ分野における女性の参画・活躍、女性医師に対する支援等を推進します。

また、女性の健康ナショナルセンター(仮称)を中心として、女性の生涯にわたる健康課題に関わる研究等に取り組むとともに、「ジェンダード・イノベーション」を推進し、性差に応じ更年期などにおける健康を支援する取組を推進します。(総合対策の確立)

さらに、医療従事者に対する女性の健康課題に関する研修・啓発の実施、プレコンセプションケアなど、性差に応じた健康を支援するための取組も推進します。

Ⅳ 女性活躍・男女共同参画の取組の一層の加速化
~あらゆる分野の政策・方針決定過程に参画する女性人材の育成~

(1)男女共同参画の視点に立った政府計画の策定等の推進

あらゆる分野の政策・事業の計画等において、男女別の影響やニーズの違いを踏まえた検討・立案を行います。その前提として、男女の性差を考慮するとともに、関連するデータの男女別の把握に取り組みます。

(2)政治・行政分野における男女共同参画の推進

女性が政治に参画する上での課題等についてより詳細な調査を行い、その結果に基づき周知・啓発を行います。

また、各府省において、各役職段階に占める女性の割合に関する数値目標を定め、目標や取組内容、実施状況を公務員を志望する女性等に分かりやすい形で公表します。

むすびに

今回決定した女性版骨太の方針に基づき、関係府省一体となって取組を進めてまいります。より詳細な考え方や具体策については、以下のリンクから資料をご覧ください。


詳細は、こちらをご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/sokushin.html

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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