「共同参画」2024年6月号

トピックス2

アンコンシャス・バイアスに気づこうとすることの大切さ


私たちは、何かを見たり、聞いたりしたときに、無意識に「こうだ」と思い込むことがあります。これが、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)です。アンコンシャス・バイアスは相手に対するものだけでなく、モノに対してや、「私には無理だと思う」等、自分自身に対するものもあります。そして、日常にあふれていて、誰にでもありうるものです。

「アンコンシャス・バイアスとは何か?」「気づかなかったら何が問題となるのか?」等、アンコンシャス・バイアスに気づこうとすることの大切さをお届けします。

一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事 守屋智敬

アンコンシャス・バイアスによる影響は多岐にわたる

何かを見たり、聞いたりしたときに、無意識にきっとこうだ!と思い込むことは誰にでもありうるものであり、日常にあふれています。

例えば、次のように思うことはありますか?

□「介護をしている」と聞くと、親を介護していると思う

□「親が乳がん」と聞くと、母親のことだと思う

□「親が単身赴任中」と聞くと、父親のことだと思う

□「友人が時短勤務中」と聞くと、女性の友人と思う

□「私にはどうせ無理」と思うことがある

□ 性別による向き、不向きがあると思う

これらはいずれも、とっさに思ったことと、実際とが違う場合があり、アンコンシャス・バイアスとなりうる例です。


ところで、ここでひとつ思いめぐらせていただきたいことがあります。それは、アンコンシャス・バイアスに気づかずにいると、いったい何が問題となるのか?いったいどのようなネガティブな影響に発展する可能性があるのか?ということです。

例えば、「私にはどうせ無理だ」等、自分に対するアンコンシャス・バイアスに気づかずにいたとしたら、挑戦する機会を逃したり、自分の可能性を狭めたり、成長の機会を逃す等、様々な影響が考えられます。

また、「女性には無理だ」等、相手に対するアンコンシャス・バイアスに気づかずにいたとしたら、相手を知らぬ間に傷づけてしまったり、活躍の機会を奪うなどの影響が考えられます。

アンコンシャス・バイアスは、自分や相手など対象によって、またその状況によっても無数にありえるため、考えられる影響も多岐にわたります。組織や社会の面でみると、一人ひとりがイキイキと活躍できなくなったり、人権侵害やハラスメント、コンプライアンス違反、新しい技術や商品が生まれなくなるといったことがあげられます。また、個人の面でみれば、キャリアや人間関係、生き方等に影響する可能性もあります。


<アンコンシャス・バイアスによる影響例>

アンコンシャス・バイアスによる影響例

配慮にひそむアンコンシャス・バイアスにも注意する

ところで、「がん」と診断された人に対する次のようなひと言について、あなたはどう思いますか?

『無理をせず、治療に専念してね』

一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所と法政大学の松浦民恵教授との共同研究「がんと仕事に関する意識調査(2022)」における1,055名のがん経験者の声をみてみると、「無理をせず、治療に専念するよう」にと言われた人が約半数いました。ただ、その言葉をうれしいと感じた人は、全員ではありませんでした。お伝えしたかったこと。それは、良かれと思っての言動であっても、受けとめ方は一人ひとり違う、ということです。 

日頃から、相手を慮ることは、とてもステキなことだと思います。ただ、自分にとっての「よかれ」が、相手にとっては違うということがあるかもしれません。相手にとってどうなのか?を確認することを忘れずに、対話することを大切にしていただければと思います。


<同じ対応でも、受けとめ方は人ぞれぞれ>

「がんと仕事に関する意識調査(2022)」より
「がんと仕事に関する意識調査(2022)」より


「がんと仕事に関する意識調査(2022)」について、詳しくはこちら(上図はP.25)をご覧ください。
https://www.unconsciousbias-lab.org/_files/ugd/0fe77e_84f1f66c40bd4954abfc776dcd0ea3ed.pdf


アンコンシャス・バイアスを「上書き」する

アンコンシャス・バイアスは、過去の経験や見聞きしたことに影響をうけています。一方で、新たな経験や見聞きすることによって、アンコンシャス・バイアスが「上書き」されることがあります。

例えば、「どうせ無理」と思っていたけれど、やってみたらできた!といったことや、第一印象は悪かったけれど、よくよく話してみたらとてもステキな人だった、等です。このようにアンコンシャス・バイアスに気づこうとすることで、上書きができ、見える世界や未来が変わるかもしれません。

子どもたちの声

子どもたちの可能性が広がることを願って、小・中学校でもアンコンシャス・バイアス授業を届けています。授業から1ヵ月たってきこえてくる声には、「絶対私は悪くない!と思っていたけれど、アンコンかも?と気づき、ゴメンナサイがいえました」「夢をあきらめるのをやめました!」「苦手だった科目が得意になりました!」「“世界一になるのは無理”というのも、ぼくのアンコンだった!と気づきました」という、様々な上書きの声があります。


<小学校での2日目の授業で出てきた声>

小学校での2日目の授業で出てきた声


<中学校での授業の様子>

中学校での授業の様子


「アンコンシャスバイアスに気づこう!」の日

8月8日は、「アンコンシャスバイアスに気づこう!」の日として、記念日制定されたことをご存じでしょうか?

この記念日は、一人ひとりが自分のアンコンシャス・バイアスに気づこうとすることによって、可能性が無限にひろがることを願って、制定されたものです。

私たちは、あたりまえと思うことが違ったり、学歴、職業、性別、性自認、性的指向、理想とすることが違う等、一人ひとり異なります。そうした、違いを尊重し、一人ひとりがイキイキとする組織や社会づくりをめざすにあたって大切なこと。それが、「私」を主語に、アンコンシャス・バイアスに気づこうとすることだと思います。

(注)アンコンは、アンコンシャス・バイアスの略です


8月8日は、「アンコンシャスバイアスに気づこう!」の日。詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.unconsciousbias-lab.org/88


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