特集1
痴漢撲滅に向けて
~政府の取組と被害にあったときの対応~
内閣府男女共同参画局男女間暴力対策課
痴漢は重大な犯罪です。被害者の心身を深く傷つける行為であって、決して許されるものではありません。
政府は、令和5年3月、「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」を取りまとめ、関係府省が一体となって痴漢撲滅に向けた各種施策を実行してきました。
痴漢撲滅に向けた取組の実施状況
政策パッケージでは、(1)痴漢を防ぐ取組、(2)加害者の再犯を防ぐ取組、(3)被害者を支える取組、(4)社会の意識変革を促す取組、(5)関係府省が連携した情報発信等の横断的取組を推進することとしています。
ここでは、これまでの主な取組の実施状況をご紹介します。
(1)痴漢を防ぐ取組
○痴漢事案の検挙件数を時間帯別・場所別に調査・分析を行い、HPに掲載【警察庁】
○都道府県警察に対して、被害が多発する場所、路線及び時間帯を中心に重点的な取締り強化を指示【警察庁】
○令和5年10月に新幹線や輸送密度10万人以上の線区を走行する新造車両への車内防犯カメラ設置を義務付け【国土交通省】
(2)加害者の再犯を防ぐ取組
○矯正施設や保護観察所において、認知行動療法に基づく処遇プログラムを実施【法務省】
(3)被害者を支える取組
○令和5年3月に警察庁のHPに痴漢・盗撮事犯対策のページを新設【警察庁】
詳細は、警察庁HPでご覧ください。
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/bouhan/chikan/chikantaisaku.html
○令和5年8月、痴漢の相談窓口、捜査の流れ等について記載したパンフレットを作成【警察庁】
○令和5年3月に各都道府県に対して、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおける痴漢被害に係る相談対応の充実を依頼【内閣府】
○痴漢を含む性暴力被害の例や被害時の相談先を記載した啓発カードを作成。痴漢被害等に関するオンライン研修教材を作成し、都道府県等に周知。【内閣府】
○令和5年3月に教育委員会、大学等に対して、痴漢被害により遅刻又は欠席した場合について、適切な対応を依頼【文部科学省】
○教育委員会、大学等に対し、受験生が、痴漢の被害にあった場合などやむを得ない事由により受験機会を失うことのないよう、受験機会確保の柔軟な対応を依頼【文部科学省】
○令和5年12月に大学入試センターHPに、試験場に向かう途中に痴漢の被害にあった場合、やむを得ない事由として追試験の対象となることや、試験当日の服装は私服でも構わないことを掲載【文部科学省】
(4)社会の意識変革を促す取組
○毎年6月、鉄道事業者と警察(警察庁、関東4都県警察)が合同で痴漢撲滅キャンペーンを実施【警察庁】
○令和6年4月の「若年層の性暴力被害予防月間」において、痴漢被害防止に関する啓発動画を作成し、SNS等で発信【内閣府】
動画は内閣府男女共同参画局公式YouTubeでご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=rfGJk74nqG4
啓発動画「痴漢は犯罪!」(15秒)
(5)その他の取組
○毎年7月の青少年の非行・被害防止全国強調月間等を通じた広報啓発を実施【こども家庭庁】
政策パッケージ等について、詳細は、男女共同参画局HPでご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/measures/chikan_bokumetsu.html
痴漢被害にあった・目撃したときは
痴漢は、重大な犯罪であり、被害者は全く悪くありません。政府の啓発活動では、以下のように、被害にあわれた方や被害を目撃された方に、すぐに警察に通報・相談することを呼び掛けています。
【被害にあわれた方へ】
周りの人に助けを求めてください
安全を確保するため、声を上げる、防犯アプリを活用するなどの方法で周りの人に助けを求めてください。
警察に110番通報、または相談してください
安全を確保することができたら、すぐに110番通報してください。また、被害にあわれてから時間が経っていても構いませんので、警察に相談してください。どんな小さなことでもかまいません。
【被害を目撃された方へ】
被害者に声をかけてください
被害を目撃したら、見て見ぬふりをせず、「大丈夫ですか?」などと被害者に声をかけてあげてください。
駅員、警察官などに知らせてください
駅員や周りの人に協力を求めたり、警察に110番通報をしたりしてください。
被害の届出を受けた警察の対応について
警察では、被害にあわれた方の心の負担の軽減に配慮しながら、犯人検挙のための捜査を行います。パンフレットなどでは、被害の届出を受けた警察の捜査の流れを以下のように紹介しています。
※なお、これは一例であり、具体的な流れは事案によって異なります。
警察庁パンフレットより。
パンフレットの全体はこちらからダウンロードできます。
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/measures/chikan_bokumetsu.html
あなたの行動で救われる人がいます
被害にあったり目撃したりして間もない場合などは、迷わず110番通報してください。あなたの行動が犯人の検挙と更なる被害の防止につながります。
また、各地の性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター「全国共通番号#8891(はやくワンストップ)」に相談することもできます。
ひとりで悩まず、早めに相談しましょう。
性犯罪に関する法改正等について
法務省刑事局
令和5年6月、性犯罪に対処するための法整備として、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号。以下「刑法・刑訴法改正法」という。)及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67号。以下「性的姿態撮影等処罰法」という。)が成立し、一部の規定を除き、同年7月13日から施行されています。
1 刑法・刑訴法改正法の概要
今回の改正では、改正前の刑法では強制性交等罪・準強制性交等罪及び強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪とされていた罪について、「不同意性交等罪」及び「不同意わいせつ罪」に改められ、「同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態」が中核的な要件として定められた上で、そのような状態の原因となり得る行為や事由(暴行、脅迫、障害、アルコール、薬物、虐待、立場による影響力など)が具体的に列挙されました。
また、改正前は「13歳未満」とされていたいわゆる性交同意年齢が「16歳未満」に引き上げられたり、性犯罪の公訴時効期間が延長されるなどの改正が行われました。
2 性的姿態撮影等処罰法の概要
近時、スマートフォン等を用いた下着等の盗撮事案などが多数発生しており、その被害は深刻なものとなっています。性的姿態撮影等処罰法は、こうした行為に厳正に対処できるようにするため、新しく制定された法律です。
この法律では、人の性的な部位や身に付けている下着などを撮影する行為のうち、正当な理由なく、ひそかに撮影する行為(①)のほか、撮影の対象者が前記1で述べたような状態、すなわち、そこで列挙されている行為・事由が原因となって、撮影されることについて「同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態」で撮影する行為について、「性的姿態等撮影罪」として処罰することとされています。
また、16歳未満の人の性的な部位や身に付けている下着などを、正当な理由なく撮影する行為(②)については、その人の同意の有無にかかわらず、同様に、「性的姿態等撮影罪」によって処罰することとされています。
さらに、これらの行為によって撮影された写真・動画を人に提供する行為(③)やインターネット上にアップロードする行為は、「性的影像記録提供等罪」として処罰の対象となりますし、そうした写真・動画を人に提供したりする目的で保管する行為は、「性的影像記録保管罪」として処罰の対象となります。
今回の改正には、ほかにも様々なものがあります。詳細は法務省のホームページをご覧ください。
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html