特集1
地方公共団体の首長・幹部職員向けシンポジウム「防災分野における女性の参画拡大に向けて」を開催しました。
内閣府男女共同参画局総務課
令和6年2月6日、地方防災会議等の防災の意思決定過程や災害対応の現場における女性の参画促進に向けて、委員の登用や庁内職員の配置に決定権を持つ自治体の首長や管理職を対象に、男女共同参画の視点からの防災についての理解を深めることを目的にオンラインシンポジウムを開催しました。
第一部 基調講演
片山善博 大正大学地域構想研究所長
片山所長は、鳥取県の総務部長在任当時、管理職のほとんどが男性という「いびつさ」に違和感を覚え、個人の資質や意欲と関係のない「作られた能力差」をなくすため、女性職員にも様々な部署での業務経験を可能にする人事を行った結果、女性管理職が増えたという事例について話しました。その上で、自身が男女共同参画の重要性を認識した背景として、一つは、自分の娘が社会に出た時に「女性だから」という理由で補助的な役割を担わされるという無念さを味わってほしくないこと、二つ目は、管理職への女性の登用の遅れは、組織にとっての損失であり、組織内のジェンダーギャップをなくし、個人の能力を発揮できるようにすることが生産性の向上にもつながると述べました。
鳥取県知事在任中には、県の男女共同参画推進条例に基づく男女共同参画計画で、審議会等の構成員の割合が定められ、どちらかの性別が4割を下回らないように運用されており、防災会議においては、いざというときの準備や計画の策定が重要であり、意思決定の場には多様な意見や生活者の視点が必要であるとの認識のもと、県独自の取組として保育園や障害者団体の代表等から女性委員を積極的に登用したことを紹介しました。
所長はまた、県庁職員に対して地域社会での一人一役を推奨したところ、職員が生活者の視点を持ち、地域の課題を自分事として捉えることができるようになった結果、県政を運営する上でも大きな力になったという経験から、組織の中で男女共同参画を進めると同時に、男女にかかわらず一人ひとりが生活者の視点を持つことが重要であると述べました。
第二部 パネルディスカッション
池田恵子 静岡大学教授
池田教授は、「男女共同参画の視点による人材配置で実効性ある防災・災害対応を」というテーマで問題提起をしました。
防災部局への女性職員の配置や防災会議への女性委員の登用は、女性の視点に立った災害対応が可能となり、避難所の環境改善のほか、要配慮者を中心に幅広く市民のニーズに対応できるようになること、さらに備蓄物資に女性用品や乳幼児用品などが入る割合も高くなり、質の高い支援につながることを述べました。また、防災分野に子育てや介護経験等を持つ多様な職員が配置されることで、災害対応を行う職員への支援体制の強化にもなることをデータとともに説明しました。
発災時に自治体が設置する災害対策本部に女性職員を配置することで、被災者支援に女性の視点が入りやすくなることから、防災分野への女性のより一層の参画促進の必要性を力強く述べました。
三重県鈴鹿市の取組
末松則子 三重県鈴鹿市長
末松市長からは、鈴鹿市では「審議会等における女性登用推進方策」を掲げ、肩書や職種にこだわらず女性を委員に推薦することで、防災会議の女性委員の増加を実現できたことを述べました。市長は、就任当時に防災会議の女性委員が1名だったことに強い危機感を持ち、同市で活躍する女性消防団員等を登用していったところ、平成30年度には女性委員の登用率が43.2%と全国の市町村で第2位となり、現在も4割を超え、その結果、避難所レイアウトや備蓄物資に女性の視点を取り入れることができたと話しました。市長は、防災会議の委員登用にあたっては、充て職に限定せず、幅広い分野の専門家や学識経験者等も登用することで、防災会議に女性を増やすのは難しいという意識を変えることが重要と述べました。
群馬県渋川市の取組
伊勢久美子 群馬県渋川市副市長
伊勢副市長は、渋川市の地域防災計画や避難所マニュアル等の計画策定の段階から、女性の職員や住民が参画する仕組みづくりを整備したことにより、防災の議論の場で女性が意見を言いやすくなり、平時から女性の視点を取り入れた防災の取組が促進したことを話しました。伊勢副市長は、防災分野において男女共同参画を進めるためには、防災=男性というような無意識の思い込みを疑い、役割の固定化をしないように危機管理室長に女性を配置するといった取組を進めていくことが必要と述べました。
大阪府泉大津市の取組
政狩拓哉 大阪府泉大津市危機管理監
政狩危機管理監は、男性だけでは気づかないニーズに対応するためには女性の視点は不可欠であることを、先進取組ではなく「失敗例」を用いて紹介しました。泉大津市では、以前は女性と男性で異なる防災服だったところ、有識者の意見をきっかけに無意識の思い込みに気づき、ジェンダーレスの防災服を作ったことで着用率がアップしたこと、また庁内の女性管理職から備蓄してある女性用品は使いづらいと指摘されたことにより、若手職員を中心に楽しく備蓄用品を見直すことになったという事例を挙げました。
防災部局への女性職員の配置が難しいという課題には、他部局と連携し、液体ミルクに関する両親教室の開催や災害時の妊産婦ホテル制度の導入等で対応するなど、これまでの「当たり前」を変え、女性の視点を生かす仕組みづくりの大切さを強調しました。
資料は、こちらをご覧ください。
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/symposium.html