巻頭言
鳥取県で実践した男女共同参画の取り組み
共同通信社が公表している「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」によると、鳥取県は行政分野において3年連続で1位、つまり男女格差が最も小さいとされています。これは県庁の管理職に占める女性の割合が他の都道府県と比較して高いこと、行政委員会や審議会の委員に占める女性の比率が高いことなどを意味しています。
鳥取県で知事を務めていた時に男女共同参画に取り組んだ故をもって、マスコミなどから、秘訣を尋ねられることがよくあります。秘訣ではありませんが、当時手がけたことが他の自治体でも参考にして頂けることもあるはずなので、それをお話しするようにしています 。
まず、女性の管理職を増やす観点で、職員人事の歪な慣行を正しました。それまで女性はどこの課に配属されても、もっぱら庶務係でした。庶務ばかり担当していると、庶務の大ベテランになります。ただ、その間いろんな仕事を経験した男性職員と比べ、どうしても管理職向きではなくなります。この「作られた能力差」は解消すべきです。そこで、男性も女性も、庶務も庶務以外の仕事もするという方針に変更しました。筆者が鳥取県で総務部長を務めていた時のことです。
その6、7年後に知事に就任した頃には、多彩な経験を積んだ女性職員が多く育っており、その人たちの中から管理職を任命しました。実力をつけてから管理職になっているので、議会対応などで気後れすることもなく安定感がありました。
二つ目は委員会や審議会の委員です。鳥取県男女共同参画推進条例では委員は男女とも定数の4割から6割の範囲内と定められています。人選に当たって「女性候補がいないので、特例扱いを」などとする声もありましたが、あくまで原則を押し通しました。
ただ、県防災会議だけは例外でした。委員は地方整備局長や運輸局長などの充て職なので、全員男性でした。これでは、生活感から縁遠いという印象は免れません。被災時の対応などを考える際、生活感を備えておくことはとても大切です。
そこで、当時は珍しかったのですが、法律上の委員以外に、女性団体や保育園の関係者などの中から、県独自に委員を追加しました。先の4割を満たすことにはなりませんが、それでも防災会議の議論に生活者の視点が加わったことはたしかです。
こんなことを懐かしく思い出すとともに、かつて取り組んだことがその後の県政でも引き継がれ、さらに成果を加えていることに感謝している今日この頃です。
片山善博
Yoshihiro Katayama
大正大学教授/地域構想研究所長