「共同参画」2024年2月号

特集1

企業における女性登用の加速化に向けて

内閣府男女共同参画局推進課

企業における女性登用の現状

企業における女性の参画拡大は、多様性の向上を通じてイノベーションを喚起するとともに事業変革を促し、企業価値を高めることにつながることから、日本経済の今後の成長にとって喫緊の課題です。

我が国の女性役員比率は過去10年間で徐々に上昇してきており、プライム市場上場企業における女性役員の割合は2022年の11.4%から2023年は13.4%に増加しました。


我が国の女性役員比率の推移


一方で、プライム市場上場企業において、約1割の企業に女性役員がいないというのが現状であり、日本を除くG7諸国やOECD諸国の平均とのギャップは依然として大きくなっています。


女性役員がいないプライム市場上場企業数


また、民間企業において部長、課長、係長の女性割合は近年上昇傾向にはあるものの、上位の役職ほど割合が低い状況であり、女性の社内役員登用を進めるためには企業におけるパイプラインの構築が重要です。


民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合の推移


女性活躍の状況を投資判断においても重視

一方、内閣府男女共同参画局の令和4年度「ジェンダー投資に関する調査研究」報告書によると、投資判断に女性活躍情報を活用する機関投資家等は約3分の2で、活用の割合が最も高い女性活躍情報は「女性役員比率」です。

このように、昨今の資本市場においては企業の女性活躍状況が投資判断に考慮されるようになっており、女性が企業の責任ある地位で活躍することは、グローバルな競争が激化する中で、企業の持続的な成長にもつながるものです。


機関投資家等による女性活躍情報の活用状況


企業における女性登用の加速化に向けた取組

①プライム市場上場企業を対象とした女性役員比率に係る数値目標の設定等

こうした状況を踏まえ、昨年6月に政府決定した「女性版骨太の方針2023」において、まずは日本を代表するプライム市場上場企業に係る女性役員比率の引上げを図るため、「2030年までに女性役員比率を30%以上」とする目標を取引所の規則に設けることとし、昨年10月に東京証券取引所において、所要の上場制度が整備されました。

有価証券上場規程(東京証券取引所)(抜粋)

別添2 プライム市場の上場内国会社における女性役員比率に係る数値目標の設定等

1.2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。

2.2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。

3.当取引所は、上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。

※上記の女性役員には、取締役、監査役、執行役に加えて、執行役員又はそれに準じる役職者を含むことができる。

追加〔令和5年10月10日〕

②5次計画における役員に占める女性割合に関する成果目標の策定

2020年に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、東証一部上場企業役員に占める女性の割合に関する成果目標について、中間年フォローアップの際に市場再編後の目標を設定することとされていました。

東京証券取引所の上場規程も踏まえ、女性の役員が登用されていない東証プライム市場上場企業が2025年までに女性役員を1名登用し、更に2030年までに同市場上場企業役員に占める女性割合30%を実現することを前提に、昨年12月、第5次男女共同参画基本計画における2025年までの新しい成果目標を閣議決定しました。

第5次男女共同参画基本計画の一部変更について

●変更後の成果目標

・東証プライム市場上場企業役員に占める女性の割合(注)

19%(期限:2025年)

・東証プライム市場上場企業のうち、女性の役員が登用されていない企業の割合(注)

0%(期限:2025年)

(注)役員には、取締役、監査役、執行役に加えて、各企業が女性役員登用目標の前提とした執行役員又はそれに準じる役職者(会社法上の「支配人その他の重要な使用人の選任及び解任」として、取締役会の決議による選任・解任がされている役職者を基本とし、業務において重要な権限を委任されている役職者等)も含む。

今後について

政府においては、こうした目標の実現に向けた取組状況のフォローアップを行うとともに、管理職、更には役員へという女性登用のパイプライン構築に向けた取組等が強力に推進されるよう引き続き女性登用に向けた取組を進めます。


詳細は、こちらをご覧ください。

女性役員情報サイト
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/yakuin.html


第5次男女共同参画基本計画の一部変更について
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th-2/index.html


※参考:掲載のグラフについて
 女性活躍・男女共同参画の現状と課題
(2月号時点 p10・11)
https://www.gender.go.jp/research/pdf/joseikatsuyaku_kadai.pdf



Special introduction

特集1では、企業における女性登用に関して掲載いたしました。そこで、有価証券報告書に基づく上場企業の女性役員の状況において、役員(※)に占める女性の割合が30%を超えている企業の取組をご紹介します。

※「役員」とは、取締役、監査役、指名委員会等設置会社の代表執行役及び執行役を指す

内閣府男女共同参画局総務課

株式会社安藤・間

業種

建設業

設立

2003年

従業員数

3,283人(連結3,677人)

事業内容

土木事業、建築事業を中心とした総合建設業。グループ会社として安藤ハザマ興業㈱(建設用資材販売・リース)、青山機工㈱(土木・建築工事施工)、菱晃開発㈱(不動産売買・賃貸・仲介)、ハザマアンドウ(タイランド)(現地国内での建設事業、在外子会社)等。

役員(※)の状況

役員数10人、うち女性3人(2023年7月時点)

役員(※)に占める女性割合の推移


「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を人的資本の価値向上に向けた重点施策の1つとして位置付け、2025年度の「女性管理職人数(課長クラス相当)60人」、毎年度の「女性取締役比率30%以上」を数値指標として取組を行っています。

また、「女性活躍推進法に基づく行動計画」において「定年制社員に占める女性比率を、 2025年度までの5年間で15%以上に引き上げ」、「男性社員の育児休業取得率を、 2025年度までの5年間で50%以上に引き上げ」を掲げ、達成に向けた取組を行っています。

数値目標

2019年度実績

2020年度実績

2021年度実績

2022年度実績

2025年度目標

女性管理職人数(課長クラス相当)

22人

22人

23人

29人

60人

定年制社員に占める女性比率

12.7%

12.9%

13.3%

14.2%

15.0%

男性社員の育児休業取得率

13.8%

13.6%

18.3%

26.6%

50.0%

具体的な取組

①女性活躍推進に向けた環境・制度の整備

定年制社員に占める女性比率向上のため、採用に占める女性比率を18%以上とするほか、女性技術者が継続的に働きやすい環境・制度の整備を行っています。

また、男性社員の育児休業取得率向上のため、子どもが1歳2ヶ月になる前日まで取得可能かつ出生時育児休業も含め、2ヶ月までは有給休暇扱いとする育児休業制度の整備及び育児休業制度対象者へは上長と人事部にて育児休業前後に面談を実施、「子育て支援制度」ハンドブックの頒布による教宣等、男性社員も不安なく育児休業を取得できるよう取り組んでいます。

②女性活躍風土醸成のための研修やイベントの実施

女性のキャリアアップ支援のため、「女性総合職キャリア形成支援研修」を実施しています。また、無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)の解消に向け、継続的な「ダイバーシティマネジメント研修」(課長職対象)や、アンコンシャス・バイアスを数値化する「eラーニングテスト」(全社員対象)を実施、さらに「女性フォーラム」を開催し、女性社員だけではなく、男性の経営幹部や管理職も参加対象とすることで、男女を問わない気付きの促し、意見交換の場としています。

取り組むなかで見えた課題と今後の目標

現場で働く女性社員が増えていく中で、結婚や出産・育児などのライフイベントに合わせた働き方を現場でも実現するために制度の整備等を実施していますが、定着率は伸び悩んでいます。その背景には現場での長時間労働や休日の少なさにより家庭との両立が難しいといった声もあり、従業員一人ひとりの意識改革も含め、抜本的な働き方改革を実施していきます。

以上の取組による数値目標の達成を通じて、従業員一人ひとりの「Well-being」を実現し、「建設業界で最も従業員を大切にする会社」を目指しています。


女性総合職キャリア形成支援研修の様子
女性総合職キャリア形成支援研修の様子


株式会社安藤・間におけるコーポレートレポート等については、こちらをご覧ください。
https://www.ad-hzm.co.jp/sustainability/report_2023/


株式会社ローソン

業種

小売業

設立

1975年

従業員数

4,490人(連結10,648人)

事業内容

コンビニエンスストア「ローソン」「ナチュラルローソン」及び「ローソンストア100」のフランチャイズチェーン展開など

役員(※)の状況

役員数10人、うち女性5人(2023年12月末時点)

役員(※)に占める女性割合の推移


ローソンのグループ理念は、「私たちは"みんなと暮らすマチ"を幸せにします。」です。これは、社会に存在している多様性を認め合い、環境の変化に対応した新しいモノやサービスを生み出すことで、マチに貢献し、マチと一緒に幸せになることを意味しています。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを経営戦略の一つに位置づけ、従業員の多様性を推進し、一人ひとりを公平に扱い、違いを受け入れて、誰でも自分のアイデアを声に出し、チャレンジできる企業を目指しています。

取組紹介

①女性活躍推進に向けた目標と取組

「女性が子育てをしながら活躍し続けられる会社であること」を定性目標、「2030年度に女性社員比率30%」「2030年度に女性管理職比率30%」を定量目標としています。

また、2005年より「新卒採用における女性比率を50%にすること」を目標に、女性の積極的採用を継続しています。

その上で、具体的な取組としては、以下があります。

●女性社員選抜型リーダーシップ研修の実施

営業ラインにおける女性幹部候補を養成するため、女性役員及び社長が女性社員と直接対話する機会を定期的に設けています。

●女性社員キャリア開発研修の実施

20代後半~30代前半の女性社員に向けて、ライフイベントと仕事の両立に関する不安を解消し働き続ける後押しのため、先輩社員の経験を聞き、自らのキャリアビジョンを描く研修を行っています。

●育児休職社員研修の実施

育児休職中の社員向けに会社の情報提供や復職後のキャリア形成、ネットワークづくりを目的とする集合研修を実施し、復職後の不安を払拭、活躍を推進しています。2022年度は3名の育児パパも参加しました。

●「ローソンワークスタイルハンドブック」を配布

経営トップから社員へDEI推進に向けたメッセージを伝えるとともに、キャリアパスや両立支援制度の紹介、そしてロールモデルとなる社員の紹介などを掲載、全社員に共有しています。


ダイバーシティ推進冊子
ダイバーシティ推進冊子
「ローソンワークスタイルハンドブック」


②「育成型人事制度」で新たな人財づくり
~次世代育成委員会でのリーダー発掘~

一人ひとりの属性や価値観に関わらず、個人の実力に基づいて、責任範囲と果たすべき役割に応じて役割グレード・給与を定める人事制度を運用、個人が希望するキャリアの実現をサポートするため、定期研修以外も職種別研修、階層別研修、選抜型研修などを組み合わせて行っています。

また、部長職を対象とした「次世代育成委員会」では、経営層による次世代リーダーの個別育成計画の作成、面談などを通じた育成、そして進捗確認を行う委員会を2016年度から開催しています。

次世代リーダーの育成計画は複眼(複数ジェンダー)で議論することが重要と考え、育成候補者(後継者)3名のうち必ず女性を1名指定すると決め、女性リーダーの育成にもつなげています。

今後の課題と目標

「女性が働きやすい職場」とは、「全社員が働きやすいと感じる職場」であると考え、制度の追加やアップデートそして業務改革により、働きやすさの改善を行ってきました。

今後も働きやすさの改善を継続的に実行し、あらゆる職種や階層での女性管理職の登用・育成を積極的に進めていきます。


株式会社ローソンにおけるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)については、こちらをご覧ください。
https://www.lawson.co.jp/company/activity/social/employee/

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019