「共同参画」2023年12月号

特集2

集まれ!防災女性職員とその応援団 第3弾

「みんなで語ろう!女性の視点からの防災@ぼうさいこくたい2023」を開催しました。

国民の防災意識の向上のため2016年から開催している「防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)」。関東大震災から100年目の節目にあたる今年は9月17・18日の2日間開催され、会場となった横浜国立大学では、様々な団体・機関がセッションやプレゼンテーション、屋外展示等を実施しました。

内閣府男女共同参画局総務課

男女共同参画局として3回目の参加となる今回は、防災に関わる女性たちが地域や組織の枠を越えて「つながる」ことを目的に、「みんなで語ろう!女性の視点からの防災」と題してワークショップを開催しました。昨年に引き続き、今年もよんなな防災会女子部、よんなな防災会、イラストデザインラボにご協力いただきました。子どもと一緒に参加できるように「キッズスペース」も設置するなどして募集したところ、幅広い年代の約70名が参加され、立ち見が出るほどの大盛況となりました。

プログラム

■開会の挨拶

内閣府男女共同参画局長

■共催団体の紹介

■情報提供:ワークショップのねらい

(内閣府男女共同参画局)

■情報提供:「生き残るために本当に必要なこととは ~防災への男女共同参画の視点の反映と組織の枠を越えたつながり~」

(浅野 幸子 減災と男女共同参画研修推進センター共同代表)

■トークタイム

■各グループの発表

まず岡田恵子男女共同参画局長から、近年は災害が頻発しており、女性と男性の異なる支援ニーズに沿った災害対応を行うには、行政だけでなく民間との連携が不可欠であること、そのためにも平常時から地方公共団体、自主防災組織、防災士、女性防災リーダー等とのつながりを密にし、災害時に多様なニーズに対応できるようにしておくことが重要とのメッセージがありました。

続いて内閣府男女共同参画局総務課よりワークショップの目的を説明。防災に携わる女性は少数派であることにより組織で意見を言いづらく孤独を感じやすい、また災害対応での悩みを相談しにくい等の課題も多いことから、ワークショップでは日頃の防災業務や活動での悩みや疑問を共有し、一緒に解決方法を考えてほしいと呼びかけました。

【情報提供:生き残るために本当に必要なこととは】

次に、浅野氏からの情報提供では、防災分野へのジェンダーの視点の反映は、国際的には1990年代から重視されてきた一方で、日本では2005年に国の政策に取り入れられたものの取組は不十分で、東日本大震災後にようやく社会的に必要性が認識されるようになったこと、それでも対策はまだ不十分であると指摘しました。特に、地方防災会議や災害対策本部などの意思決定の場において女性の参画が十分ではないため、女性特有のことだけでなく、育児や介護、衛生、栄養等の面で被災者支援の質が不充分な状況にあることを、「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」も紹介しながら解説しました。

さらに、女性のニーズを、物資やプライバシー・防犯の欠如、育児・介護に不充分な環境など目の前の困りごとへの対応と(実際的ニーズ)、そうしたニーズを繰り返し生じさせてしまう、意思決定の場への女性の参画不足などの構造的な要因への対応(戦略的ニーズ)とにわけて捉えるようにしたうえで、両方とも取り組んでいくことが重要と述べました。

そして、女性といっても、結婚しているか否か、子育て・介護経験の有無、仕事や地域/市民活動の経験や専門性など多様です。障害とともに生きる女性や外国にルーツのある女性もいることを意識することの重要性にも触れました。

【トークタイム】

続くトークタイムでは、参加者が6つのグループに分かれて意見交換を行いました。以下、それぞれのグループでの主な議論とグラフィックレコーディング(通称グラレコ※)をご紹介します。

※会話や対話、セミナーなどを図・絵・文字を使ってリアルタイムに可視化する技術。


Aグループ「誰もが生きやすい社会へ」

「女性の視点」に立った防災の取組がなかなか進まないことについて、(男性の)「女性のことはわからないから、女性がやればいい」との認識を変えなければ、結局女性の業務が増えてしまう。その解決のためには、男性も今回のワークショップのような、「女性の視点」について考えるイベントに参加して女性リーダーの意見を聞くなど、情報を積極的に取りにいくのがいいのではないか。また、「女性の視点」からの取組を進めることは、女性や男性だけでなく、みんなが生きやすい社会につながるのではないか、との話し合いがありました。

作:グラフィックレコーダー さーやさん
作:グラフィックレコーダー さーやさん
https://www.instagram.com/sayaaan1582/

Bグループ「女性の防災人口を増やそう」

女性といってもそれぞれ生活や考え方は異なり、一括りにはできない。ライフステージの変化により、育児・介護の面から防災に関心を持つ世代もおり、多様な声を防災対策に盛り込めるように、女性の防災ネットワークを活かす必要があるのでは。また、育児や介護中の行政職員の災害対応について、愛知県豊橋市が設置した職員用の託児所の事例を紹介し、防災への女性の参画には、防災業務に従事する職員への支援体制の整備も重要との認識を共有しました。

作:イラストデザインラボ代表 山脇 英明さん
作:イラストデザインラボ代表 山脇 英明さん
https://www.instagram.com/yamacyan221/

Cグループ「日頃からできることをやろう」

様々な場面での「伝わりやすい言葉選び」の大切さや防災意識を高める取組・防災教育の重要性について共有。防災意識は地域によって温度差が…要配慮者への支援、個人情報の壁という課題も。災害時にお互いを理解するためにも、色々な人との日頃からの「価値観のすり合わせ」は大事なことで、日常ではなかなか関われない人との交流は貴重。まさに、今回のような情報交換の場やネットワークづくり、自分にできる情報発信の機会を大事にしていきたい、と盛り上がりました。

作:グラフィックレコーダー 廣瀬 杏奈さん
作:グラフィックレコーダー 廣瀬 杏奈さん
https://www.instagram.com/annah_graphic/

Dグループ「構造的な体制と意識を変える」

災害時に女性が抱える困難は、平時でも課題ではないかという視点から、課題解決のために必要なことは何か。一つはアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み・偏見)を自覚するなど意識の変革。もう一つは、防災・危機管理担当部局への女性の配置や地方防災会議に女性委員を増やすといった構造的な組織体制を変えること。こうした行動変容を起こすためには、女性も男性も声を上げていくことが大事であり、それが災害時の課題解決につながる、という意見にまとまりました。

作:グラフィックレコーダー きのぴーさん
作:グラフィックレコーダー きのぴーさん
https://www.instagram.com/knp_iiillust/

Eグループ「地域の自主防災ってどこまで?」

防災分野で女性が力を発揮できないという課題に対し、参加者はワークショップを開いても男性が多い、モデルとなる女性リーダーがいないといった現実を共有。また、地域の自主防災活動の内容や予算についての悩みについては、短~長期的な目標を立てて自分ができることを段階的に行う、地域内外でコミュニティを作るといった具体的なアドバイスがありました。

作:グラフィックレコーダー Mizukiさん
作:グラフィックレコーダー Mizukiさん
https://www.instagram.com/mizzzzzuki_/

Fグループ「災害時どう行動する?」

地域の防災活動において「自分事として捉えてもらえない」「若い人が集まらない」との悩みに対し、学校やネットを通じた情報共有、“子ども・孫”をキーワードにした広報等の具体的なアイデアを紹介。さらに移動中の災害時の対策として、安否確認機能があるアプリを入れる、LINEやオープンチャットを使う、モバイルバッテリーを持つなどの取組事例もあり、防災活動の様々なヒントが共有されました。

作:グラフィックレコーダー MIOさん
作:グラフィックレコーダー MIOさん
https://www.instagram.com/mio.grareco/


トークタイム終了後、参加者からは「普段はなかなか会うことのない世代や分野の方と交流できた」、「『女性の視点からの防災』についての気づきや悩みを話す機会を持ててよかった」、「これからの活動のヒントになった」のほか、来年以降のさらなる「つながり」を期待する声も聞かれました。

また、今回のワークショップは多様な立場の女性や男性が参加されたことから、最後の浅野氏からの講評において、「誰もが助かる、質の高い防災体制を構築していくためには、多様な経験や力を持つ女性が、互いの違いも認め合いながら連携してくこと、そして、男性も多様性があり、一緒に協力関係を構築していくことの大切さ」が述べられました。

災害はいつどこで起こるかわかりません。今回のワークショップのように、平常時から行政と民間が顔の見える関係を作り、災害時には両者が連携して多様なニーズに対応できるよう支援を行うことがますます重要です。今後も立場や地域を越えたつながりを大切にし、男女共同参画の視点からの防災に取り組んでまいります。


キッズスペース
キッズスペース


ワークショップの様子
ワークショップの様子


作:グラフィックレコーダー きのぴーさん
作:グラフィックレコーダー きのぴーさん
https://www.instagram.com/knp_iiillust/


※よんなな防災会女子部

防災分野で少数派として頑張っている女子達をつなぎ、一人ひとりがそれぞれの場で、その能力を発揮し、楽しくいきいきと防災活動ができるよう、オンラインを通じて、定期的な学習会や意見交換会などを開催。

※イラストデザインラボ

イラストデザインラボは、グラフィック等で対話や学び、思考・思想を可視化することを通じて、様々なバックグラウンドを持つ人々の①新たなきっかけや気付きをつくる②対話や議論を深める③地域や団体等の場の活性化に繋げることを目的としているグラフィッカーのコミュニティである。
イラストデザインラボ


内閣府男女共同参画局のHPではグラレコを拡大してご覧いただけます。
https://www.gender.go.jp/public/event/2023/zenkoku/pdf/20231026_2.pdf

内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)
法人番号:2000012010019