特集2
人生100年時代の結婚と家族に関する研究会
内閣府男女共同参画局推進課
■研究会の概要について
人生100年時代を迎えて、我が国の結婚と家族の姿は、昭和の時代から大きく変化し、かつ多様化しています。
こうした変化に伴って、特に女性が置かれた環境をめぐり、どのような課題が生じているのか、また今後生じることが予想されるのかを把握することが重要です。
このため、男女共同参画局では、我が国の結婚と家族の変化を、データを用いて多面的に明らかにするとともに、それに伴う課題を整理するため、2021年5月から、家族社会学、人口学、経済学の専門家から構成される「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」を開催しています。
構成員名簿
天野 馨南子 ニッセイ基礎研究所生活研究部 人口動態シニアリサーチャー
稲葉 昭英 慶應義塾大学文学部教授
岩澤 美帆 国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部長
◎山田 昌弘 中央大学文学部教授
※五十音順、敬称略、◎は座長
研究会の様子
■研究会の開催状況
研究会は、これまで7回開催しました。
第1回から第3回までは、構成員からプレゼンテーションいただき、意見交換を行いました。
第4回以降は、各回のテーマに造詣の深いゲストスピーカーをお招きし、女性の人生と家族形態の変化・多様化について、議論を行っています。
●第1回(2021年5月18日開催)
•日本家族の現状とこれからについて(山田座長)
•近年のデータからみた家族の動態と今後の問題について(稲葉構成員)
●第2回(2021年7月8日開催)
•人生100年時代の変わりゆく結婚と家族について(天野構成員)
•人口変動から考える男女共同参画について(岩澤構成員)
●第3回(2021年7月26日開催)
•第1回及び第2回のプレゼンテーションを踏まえた議論
●第4回(2021年9月30日開催)
•近年の日本の家族の姿の変貌とその背景にある社会経済状況について(落合恵美子・京都大学大学院文学研究科教授)
●第5回(2021年11月2日開催)
•母子世帯の貧困の現状やその背景にある要因について(大石亜希子・千葉大学大学院社会科学研究院教授)
•世帯構造別、配偶状況別等の貧困率の推移から見る女性の状況について(阿部彩・東京都立大学人文社会学部人間社会学科教授)
●第6回(2021年11月30日開催)
•家事負担の軽減・家事のアウトソーシングの現状や課題、今後の方向性について(筒井淳也・立命館大学産業社会学部教授)
•日本社会における事実婚の実態について(阪井裕一郎・福岡県立大学人間社会学部公共社会学科専任講師)
●第7回(2021年12月14日開催)
•家族・世帯の変化に対応した税制・社会保障制度・雇用慣行について(永瀬伸子・お茶の水女子大学基幹研究院人間科学系教授)
•日本の社会保障制度が前提としている標準的ライフコースと家族主義の限界について(山田座長)
■人生100年時代の結婚と家族に関するデータについて
研究会では、各回の議論に資するよう、毎回事務局から結婚と家族に関する基礎データを説明しています。今回は、その中から、3つのデータを御紹介します。
(1)配偶関係別の人口構成比(男女別)
1985年と2020年の配偶関係別の人口構成比を比較すると、この35年間で、男女共に「未婚」と「離別」の割合が大幅に増加しています。50歳時点で未婚・離別により配偶者のいない人の割合は、2020年では男女共に約3割となっており、昭和の時代と比べて、結婚と家族の姿が変化・多様化していることが見て取れます。
(2)結婚・離婚・再婚件数の年次推移
1970年は、婚姻は年間102万9,405件、離婚は年間9万5,937件でしたが、2020年は、婚姻件数52万5,507件に対し離婚件数は19万3,253件となっており、離婚件数は婚姻件数の約3分の1となっています。また、2020年は、婚姻の約4件に1件が再婚となっており、近年の結婚・離婚の姿は、昭和の時代から様変わりしていることがわかります。
(3)所得階級別有業者割合(男女、配偶関係、年齢階級別)
有業者の所得分布を男女別に見ると、男性では既婚者の方が、女性では未婚者の方が、所得が高い傾向にあります。
また、配偶関係別に見ると、既婚者では男性の方が所得が高い傾向にあります。特に、有業の既婚女性の約6割は年間所得が200万円未満です。結婚と家族の姿が変化・多様化する中で、例えば離婚により経済的困難に陥るなど、様々なリスクに対して脆弱な状況にあります。また、未婚者では男性の方が所得が高い傾向がありますが、男女の所得差は小さくなっています。
■今後について
このように、我が国の結婚と家族の姿が変化・多様化する中で、女性が長い人生を通じて直面する可能性のあるリスクを踏まえ、女性が経済的に自立する力を高めていくことが重要です。また、男性が家庭や地域社会において望まぬ孤立に陥らないよう、社会的なつながりを持てるようにすることが重要です。
引き続き、研究会で議論を深めるとともに、研究会での議論の成果は「男女共同参画会議」やその下に設置されている「計画実行・監視専門調査会」に報告するなど、今後の政策を検討していく際の基盤として活用していきます。
研究会のホームページ
https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/Marriage-Family/index.html