「共同参画」2021年1月号

特集1

スペシャルインタビュー
(株)ビザスク 代表取締役CEO 端羽英子氏にお話を伺いました。
内閣府男女共同参画局総務課

男女共同参画局局長 林伴子氏×(株)ビザスク 代表取締役CEO 端羽英子氏の写真

自分の何気ない知識が、隣の畑ではものすごい価値になる。

林局長:この度は「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2021」大賞御受賞おめでとうございます。まず、ビザスクの事業の概要と立ち上げ期のお話を聞かせてください。

端羽CEO:ビザスクは、現在(2020年10月15日)国内外あわせ12万人のアドバイザーが登録するナレッジシェアプラットフォームで、個人の持つ知見・スキルを売る仕組みです。

立ち上げの最初のハードルは、アドバイザーになかなか登録してもらえなかったことです。どんなにその業界に詳しくても「こんなこと自分の業界なら誰でも知っていること。誰でも知っている情報を欲しがる人がいるのか」といぶかしがる人が多かったです。しかし、その情報を欲しがるのは、“自分の業界ではない人”。このサービスのコンセプトを理解してもらうのが大変でした。最初は、自ら異業種交流会含めあらゆる場に出向き、どぶ板営業で地道にアドバイザーを開拓しました。これってwebサービスなんだろうか、と疑問を感じることもありましたが、「〇〇な知見を持った人を探している」という顧客のために、「探してきます!」と走り回っていました。

次のハードルは、「副業していいんだっけ?」というアドバイザーの心理的課題です。これは働き方改革が後押ししてくれました。

林局長:副業は本業に役に立つ、という話もよく聞きますね。私自身、行政官をしながら、大学院で非常勤講師をしています。学生からの素朴な疑問が、政策に活かされることもありました。

端羽CEO:外部から見た時に自分の仕事はそういうふうに見えるのか、という新たな気付きが得られるのがいいですね。「経験の棚卸しになった」というアドバイザーからの前向きな感想もありました。

林局長:今年、マザーズに上場されましたが、そのきっかけを教えてください。

端羽CEO:ビジネスモデル上、安心・安全が必要であり、そのためには上場した方が適していると思いました。女性の起業家は少ないため、上場準備時に、「女性は野心がない」と言ってくる人もいましたが、最終的に投資してくれた人は、性別に関係なくビジネスモデルを評価してくれた人や、女性起業家を応援したいと言ってくれた人でした。自分をフェアに見てくれる人、応援してくれる人は絶対にいて、その人に出会う努力をした結果、上場を達成できました。


人と会った時間は、全てが自分のためになる。
そう思うと、人と会うことが怖くない。

林局長:“出会う努力”という点をもう少し詳しく教えてください。

端羽CEO:ビザスクの社内の6つのバリューの1つに「プライドはクソだ」という項目があります。私は、いろいろな人に会うことは重要だと考えています。どんな出会いにも、学べることはあるはずですので、とにかくいろいろな人に会って、応援してくれる人を探すことが大事だと思います。人と会った全部の時間が何かしら自分の糧になっているはずです。とにかく人に会う、これに尽きます。

林局長:「女性管理職育成プラン」やその発展形である「社外メンターとのマッチングサービス」について、誕生秘話を教えてください。

端羽CEO:ある時、大企業からの講演依頼で、いわゆる「強い」女性3人での対談をしました。その時、女性といってもいろいろな人がいるので、自分自身が「女性」と一括りにされることに、違和感を覚えるとともに、本当にいろいろな人がいる中、私は1人1人に寄り添えているのかと、ふと思いました。これまで、知見・スキルをマッチングするサービスを提供してきましたが、もしかしたらキャリア相談の面でもできることがあるのではないかと感じました。女性の場合、社内マッチングだと、ロールモデルの数が少なく、なかなかうまくいかないものです。では社外に目を向けようと。今では、女性だけでなく、男性のメンタリングにも広がっています。

林局長:メンターも社外の方がかえって良い面もありますよね。利害関係がないため、率直な話が聞けたり、違う視点が得られたりもします。

対談風景

働く女性やママさんだけでなく、社員“みんな”をサポートすることが大事。
家事も頑張りすぎることはないのかもしれない。

林局長:ビザスクの福利厚生面の取組を教えてください。

端羽CEO:最初に作った福利厚生は“家事代行サービス”です。導入に当たり、対象を女性やママさんだけに限定せず、全社員が使えるようにしました。子供がいる社員、子供がいる社員を応援する周囲の社員、みんなをフォローしたかったからです。子供がいる社員が、周囲に「ごめんね」と思わずにいられる、全員が頑張れるようにサポートしたいと思いました。今は、家事代行に限らず、必要であるけれど普段なかなか頼まないサービス(家事代行、マッサージ、ベビーシッターなど)をメニュー化して選べるようにしています。子供がいる人のサポートだけでなく、社員“みんな”のチャレンジを応援したいという当初の思いが形になっています。

林局長:女性や子供のいる人へ偏った制度となりがちですが、“みんな”が使えるというのがいいですね。

端羽CEO:社員側も、“みんなのために考えてくれている会社”に対し、信頼感を持ってくれると思います。

林局長:男女共同参画局では、男性の家事育児を推進しています。海外生活をしていた時、家事や育児の外注が普及していると思いました。日本は家事を丁寧にやりすぎかもしれませんね。

端羽CEO:留学中、冷えたパスタをジップロックに入れた子供が楽しそうにランチしている姿を見ました。1時間でも、一生懸命働いて、そのお金で家事を外注する、そんな考え方があってもよいはずです。時間の使い方がもっと自由になったらいいなぁと思いました。

林局長:端羽さんは、妊娠出産、学び直し、転職、起業など多彩な経験をお持ちです。女性が活躍しやすい社会には何が必要だと思いますか。

端羽CEO:女性が頑張らないといけないというプレッシャーがなくなるといいと思います。女性自身も社会も変わらないといけない。江戸時代は、籠に子供を入れて横において農作業をしていたんです。高いレベルの子育てをしようとするから大変になってしまう。子供の面倒を見る手段にもいろいろな選択肢があるといいですね。選択肢があることが女性活躍を後押しすると思います。

また、女性が「できる」と自信を持てることが重要とも考えます。子供の頃から、失敗を見守ってもらえて、その結果、成功体験が積めるような機会があるといいですね。その成功体験によって、自信が付き、一歩踏み出せ、社会が変わっていくと思います。


コロナ禍で進んだオンライン会議は、グローバルなやりとりの助けに。
時差の壁は越えられないが、距離の壁は間違いなく越えた。

林局長:コロナ禍ではネガティブな話題も多いですが、オンライン会議やテレワークの拡大など、ポジティブな側面もあると思います。

端羽CEO:オンライン会議やテレワークは女性だけでなく、男女双方にとって良いことであり、継続させていくことが重要と考えます。また一方で、リアルに会うことの価値も見直されています。会う時にこういうコミュニケーションをしよう、会えたことが嬉しい、など会うときの生産性も高まっています。これもよいですね。

林局長:国際会議においても、出張せずにオンラインで開催・参加できるようになったことは良い流れですね。ビザスクは海外展開もされているのですか。

端羽CEO:現在登録されているアドバイザー12万人のうち、2万人は海外在住です。これまでも海外マッチングは手がけていますが今年4月にはシンガポールにオフィスを設立し、7月にはアメリカのスタートアップに投資をするなど、さらに海外展開を進めています。元々海外展開は視野に入れていました。そのためには、日本の強みを持っていることが重要です。日本の顧客をしっかり持っていると、彼らから海外の知見が欲しい、海外マーケットの状況を知りたい、といった相談が入ってきます。

海外のアドバイザーとのマッチングの際には、オンラインを使うことが多いですが、やはり時差の問題は難しいですね。間違いなく言えるのは、海外とのやりとりにおいてオンラインは本当に助けになってくれることです。時差の壁は無理ですが、距離の壁は越えられますね。


“女性”は素敵な個性の1つでしかない。

林局長:最後に、女性起業家、起業を志す女性、働く女性たちへエールをお願いします!

端羽CEO:“女性”は素敵な個性の1つでしかなくて、あなたを制限するものでは決してない。“女性”というタグは個性が強すぎて、何をやっても「女性の〇〇」と言われてしまいますが、あくまでタグの1つでしかありません。男女って2つしかないから、2つを分断するすごく強いタグではあるけれど、でもあなたをものすごく差別化するタグでもないのです。女性であることを過度に意識しすぎず、楽しみながら頑張っていけたらいいですね。

林局長:本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

男女共同参画局局長 林伴子氏 (株)ビザスク 代表取締役CEO 端羽英子氏の写真

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