「共同参画」2021年1月号

巻頭言

女性は「優等生」でなくていい

最近、「量産型」という言葉が、若い女性の間で使われています。

「量産型女子」などと活用され、「流行りのメイク、髪型、服装で、どの子も似たような雰囲気に見える」という意味。没個性的と否定的に見られることもありますが、「意識的に量産型の見た目を選択している」という女性もいるようです。

量産型と言うと例えが飛躍しすぎかもしれませんが、組織で「活躍する女性」のタイプやキャリアもステレオタイプ化されていないだろうか、と思うことがあります。「20代から仕事で成果を出し、結婚・出産を経て、夫婦で協力しながら家事・育児を行い、仕事と家庭を両立。仕事では順調に実績を上げ、40歳前後で管理職になり、役員にまで上り詰める…」。

いわゆる優等生的な、非の打ちどころのないキャリアです。もちろん、そんな順風満帆に見える女性にも、実際は仕事での挫折や、夫婦の危機、子育ての苦悩など悲喜こもごもがあるはずですが、そうした話はなかなか表に出てきません。

こうした先輩女性を見て「私もこんなふうになりたい」と思える女性もいるもしれませんが、「キラキラしすぎていて、私には無理…」と尻込みしてしまう女性も少なくないのではないでしょうか。

優等生タイプの女性は、組織の中枢にいる男性にとっても「使い勝手がいい」可能性があります。そうした女性ばかりが登用されていき、完璧な面ばかりがクローズアップされ、活躍する女性の「量産型」ができてしまうとしたら、恐ろしい話です。

仕事で新しい挑戦をして失敗したとか、数字は苦手だけれど発想力が豊かだとか、組織への批判は多いけれど責任感は人一倍強いとか、一癖も二癖もある扱いにくい女性たちを重要な仕事や役職に登用していくことで、活躍する女性のタイプも多様になり、後に続く女性も増えていくのではないでしょうか。

仕事ができると言われる女性ほど、「仕事で失敗は許されない」「仕事も家事も育児も完璧にしなければ」という思い込みにとらわれがちです。でも、たとえ仕事で大失敗して会社に損害を与えてしまっても、忙しくて家の中が散らかり放題でも、それで「人としての価値」が下がるわけではありません。

「うまくできなくても、私はちゃんと挑戦して、成長している」―女性も男性も、そんなおおらかな気持ちでいられるムードを組織や社会がつくっていけるような、寛容で多様性が認められる世の中になることを望んでいます。

日経WOMAN編集長 藤川明日香
日経WOMAN編集長
藤川明日香

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