「共同参画」2018年11月号

特集2

APEC 女性と経済フォーラム2018
内閣府男女共同参画局総務課

APEC(アジア太平洋経済協力)とは、アジア太平洋地域の21の国と地域(「エコノミー」と総称しています)が参加する経済協力の枠組みです。その経済規模は、世界全体のGDPの約6割、世界全体の貿易量の約5割及び世界人口の約4割を占めています。

アジア太平洋地域の経済発展のためには、女性の新たな経済機会の創出が不可欠であるとの認識の下、APEC域内の閣僚や民間参加者が一堂に会する「女性と経済フォーラム」が、毎年開催されています。2018年は、9月3日~7日の5日間の日程で、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーにおいて開催されました。日本からは、田中良生内閣府副大臣、林文子横浜市長などが参加しました。

各エコノミー代表(右から4 人目が田中副大臣、3 人目が林市長)
各エコノミー代表(右から4人目が田中副大臣、3人目が林市長)


このフォーラムでは、「デジタル時代に女性と少女が前進する機会をつかむために」をテーマに、4つのサブテーマ(1)女性のデジタル経済への参加促進、(2)あらゆる分野における成長促進としてのジェンダー包摂とエンパワーメント、(3)リーダーシップ、(4)パートナーシップの構築と格差の縮小、について議論が行われ、女性の参画と経済の成長について、APECエコノミー間における情報及び優良事例の共有やAPECとしての取組についての議論が行われました。

女性と経済に関する政策パートナーシップ
〔PPWE: Policy Partnership on Women and the Economy〕
(9月3・4日)

PPWE においては、「2020年までに管理職に占める女性の割合を高めるための個別行動計画」に関する各エコノミーの取組や進捗の発表、PPWEの今後3年間の戦略計画及び女性と経済フォーラム声明案の議論などが行われました。

日本からは、日本のプロジェクト「個別行動計画」に関して、第4次男女共同参画基本計画で定めた数値目標達成に向けた具体的取組の説明を行いました。

また、新たに創設する「女性と経済に関する取組支援」(経産省)について説明を行いました。

会議の様子(PPWE)
会議の様子(PPWE)


APEC BEST AWARD
(5日)

サイドイベント「APEC Business Efficiency and Success Target(BEST)AWARD」において、日本の岩切知美氏(株式会社成美 代表取締役)が「Highest Growth Potential賞」を受賞しました。

「APEC BEST AWARD」は、APEC 域内における女性の起業に対するマスメディア、産業界及び官界の関心を高めることを目的として2016年から実施されています。本年は、9つのエコノミーから12名の女性起業家が参加しました。

岩切知美氏は、「命を大切にする、という祖母の教え」と「地元・大分県豊後大野市の食文化」を次世代につなげたいという思いで起業しました。地域の第一次産業(生産者)と顧客、双方のニーズをとらえた加工食品の開発・製造のビジネスモデルが高く評価され、受賞に至りました。

日本の受賞は、昨年に引き続き2年連続となります。

BEST AWARD の受賞者・主催者・審査員
BEST AWARD の受賞者・主催者・審査員


このイベントでは、林横浜市長がオープニングスピーチを行い、横浜市の女性起業家支援の取組を紹介するとともに、女性起業家の皆さんにエールを送りました。

林横浜市長によるスピーチ
林横浜市長によるスピーチ
※隣はパプアニューギニアの担当大臣
(APEC BEST AWARD)


女性と経済に関する官民対話
〔PPDWE : Public-Private Dialogue on Women and the Economy〕
(6日)

官、民、学識経験者などから女性リーダー等が参加し、4つのサブテーマに沿って活発なパネルセッションが行われました。

パネルセッション
パネルセッション(PPDWE)
〔写真:APEC 公式ウェブサイトより〕


また、林横浜市長が、IoTの活用や女性リーダーの育成・登用における横浜市の取組を中心に、基調講演を行いました。

林横浜市長による基調講演(PPDWE)
林横浜市長による基調講演(PPDWE)


女性と経済に関するハイレベル政策対話
〔HLPD: High Level Policy Dialogue on Women and the Economy〕
(7日)

最終日には、閣僚級による政策対話が行われ、女性と経済に関する各エコノミーの取組方針等についてスピーチが行われました。

田中副大臣からは、長時間労働の制限や同一労働同一賃金の取組などの働き方改革を通じた女性の活躍促進や、政治分野男女共同参画推進法の成立、女性がデジタル経済に参加し利益を享受することの重要性、STEM 分野への女性の参画促進の取組などについてスピーチを行いました。なお、冒頭に、9月に発生した台風21号や北海道胆振東部地震に対する各エコノミーからのお見舞いの言葉に御礼を述べるとともに、防災分野における男女共同参画の取組を紹介しました。

田中副大臣によるスピーチ(HLPD)
田中副大臣によるスピーチ(HLPD)


また、渡邉内閣府大臣官房審議官からは、女性役員登用に向けた研修や各企業による女性活躍状況の公表など指導的地位の女性を増やす日本国内の取組の説明と、APEC で日本が実施しているプロジェクトの紹介、来年3月にW20とWAW!を合同開催することなど日本の国際的取組の説明を行いました。

会合の最後に、フォーラムの成果である「APEC 女性と経済フォーラム2018声明:デジタル時代に女性と少女が前進する機会をつかむために」が採択されました。

声明のポイントは次のとおりです。

① 女性がアジア太平洋地域の経済的・社会的発展と繁栄に不可欠な貢献をしていることを認識し、持続可能かつ包摂的な経済成長を実現する手段として、女性の十分な地位向上を図るべく具体的な行動をとることを約束。

② デジタル経済への参加促進によって、女性がグローバル経済に参加する機会を創出すべく取り組むよう、技能習得、STEAM 分野の能力開発、デジタル男女格差の縮小等について、各エコノミーに要請。

③ 女性活躍を可能にする要因として、働きがいのある人間らしい雇用、教育、健康が重要。また、女性が働く業界・分野別のアプローチを推進する。

④ 指導的地位にある女性の数は増えているが、さらにできることがある。指導的地位にある男性への働きかけにも力を入れる。

⑤ ジェンダー平等を完全に実現する上で男性の役割や民間部門の関与とパートナーシップを適宜確保することが重要。

この声明は、11月のAPEC 首脳会議に提出されます。

共同記者会見の様子
共同記者会見の様子


フォーラムの開催期間中、田中副大臣は参加エコノミーの出席者と、女性活躍の状況や推進の取組について意見交換を行いました。

チリのマリア・メリノ男女共同参画副大臣との会談

田中副大臣からは、日本の女性活躍の取組について説明し、チリが議長国となる来年のAPEC に対する期待を述べました。

メリノ副大臣からは、来年のチリAPEC では3つの優先課題があり、その1つが「女性と経済成長」であることや、日本の参加を楽しみにしているとの話がありました。また、政治分野における女性活躍に関するチリの取組について、各政党の女性候補者を40%以上とすることを定めるとともに、女性候補者の割合が高い政党に対しては、より多くの政党助成金が支給されることになっており、その増額分の使途は女性候補者育成のための研修等に制限されていることの説明がありました。

田中副大臣とメリノ副大臣
田中副大臣とメリノ副大臣


米国・国際開発庁のミシェル・ベッカーリング審議官との会談

田中副大臣からは、女性がデジタル経済に参加することは経済成長のエンジンとなることや、働き方改革や政治分野における男女共同参画など日本の取組について説明しました。

ベッカーリング審議官からは、来年日本で開催するW20 に言及があったほか、同一労働同一賃金に向けた日本の取組をAPEC 内で共有してほしいことや、来年のAPEC で開催するSTEM 関連のワークショップに協力してほしいとの話がありました。

米国との会談の様子
米国との会談の様子


※ 声明や報告内容の詳細は、男女共同参画局のHP を御覧ください。

QRコード


「APEC へのチャレンジ」
株式会社成美 代表取締役 岩切知美さん

APEC BEST AWARD へのチャレンジは、自分へのチャレンジでした。必須アイテムの英語が全く喋れない。言い訳には充分すぎる事ですが、そんな私がアタック出来れば、これから一歩を踏み出したい女性の大きな勇気に成る!言い訳を超える事で、私自身の成長と成美の取組の進歩に成る。そんな思いで参加を決意しました。

APEC において、各国代表の女性起業家の方々とビジネスモデルのコンペティションが出来た事で、少しの勇気と努力があれば、女性は余すパワーを発揮でき、そのパワーは世界の経済を引率して行く源になると実感しました。

「最高の成長潜在能力(Highest Growth Potential)賞」の受賞に応えていくべく、成美は美味しい笑顔を創り世界へ発信して参ります。

APEC BEST AWARDで受賞した岩切さん
APEC BEST AWARDで受賞した岩切さん


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