「共同参画」2016年12月号

「議会における女性活躍及びメディアにおける男女共同参画について聞く会」の開催
内閣府男女共同参画局総務課

10日17日(月)、「議会における女性活躍及びメディアにおける男女共同参画について聞く会」が中央合同庁舎8号館講堂(東京都千代田区)で開催されました。

「聞く会」は、男女共同参画推進連携会議企画委員会が主催して行う公開シンポジウムで、これまでも男女共同参画に関する時宜に応じたテーマをもとに、国内外の講師を招いての講演や参加者との意見交換を行っています。

今回は政治分野およびメディアにおける男女共同参画をテーマに、第一部では、元欧州議会副議長、WIP(Women in Parliaments Global Forum)創設者・会長のシルバナ・コッホ=メーリン氏による基調講演、第二部では、テレビメディアで活躍されている、熊埜御堂朋子氏(日本放送協会編成局編成主幹)、平田さおり氏(TBSテレビ制作局制作一部部次長)、田代早苗氏(日本女性放送者懇談会、日本テレビ日テレラボ室長)をパネリストに迎え、「テレビメディアにおける女性活躍」と題して、パネルディスカッションが行われ、最後に2016年APEC「健康な女性と健全な経済」実施に向けてのワークショップ、SDGs、G7伊勢志摩サミット関係閣僚会合、日米韓女性フォーラムについて、報告がありました。


シルバナ・コッホ=メーリン氏による基調講演

【第一部】

司会の大崎麻子氏(男女共同参画推進連携会議企画委員)からの紹介の後、壇上に立ったシルバナ氏は、WIPを創設した経緯について「欧州議会の副議長を務めた経験から、女性が共同し、互いの課題を共有していくことの重要性を認識した。政治を行う女性は少数派であり、その少数派であることに負けないように力を合わせ、一緒に前進することが大切」と述べられました。

続いて、WIPの様々な活動について紹介がありました。

(1) WIPの各国大使の役割

WIPでは国内における変革を促すため、各国に大使を任命している。女性活躍に関する調査、研究、キャンペーン等を実施するに当たって、それぞれの議会に対して働きかけを行ったり、大使同士が協力し、2か国の国会議員が国を越えて交流を深めたりしている。

(2) グローバルサミットの開催

政治分野における男女平等に関するイベントを様々な国で開催しており、毎年300~400人ほどの女性議員が出席している。例えば、2014年にはアイスランドで、男女平等が一番進んでいると言われる同国から何を学べるかをテーマに、また、2015年にはメキシコで、法制度、憲法を変えて男女の比率を等しくすることをテーマに会合を実施した。

(3) アドボカシー活動

女性の政治参画が、世界各国で国のアジェンダとなるよう関心を高めていきたいと考えている。例えば、3月8日の「世界女性の日」に併せ、「メイク・イット・ハプン」というキャンペーンを展開した。本年は、全ての女性議員に男性の同僚を少なくとも1人、あるいはもっと探して、ツイッターのポストカードで男性から、女性をより政治に参画させるために何をやっているかを書いてもらい、キャンペーンに参加してもらった。

(4) 研究活動

女性の政治キャリアについての研究も行っている。まずは、女性が選挙に出ることを禁止している、あるいは当選することを禁止している国の数は少ないのに、なぜ女性が政治に参画しないのか、あるいは政治に参画し続けないのかということを研究した。その結果、政治分野で活躍する女性は、「男性、お金、マスコミ」という3つに女性が苦しめられていることが明らかになった。

WIPの取組に関する説明の後、「経済的にも女性を引き立てていくことには非常に大きなメリットがある。また、長期的、安定的な意思決定をしていく上でも同様。男性と同じ数の女性が意思決定に参画してもらうことは大切。いろいろな観点から女性参画の有効性が語られており、私たちは行動に移していく時期にきている。」とのメッセージを送り、講演を締めくくられました。

【第二部】

パネルディスカッションのコーディネーターは牛尾奈緒美氏(明治大学副学長(広報担当)・情報コミュニケーション学部教授)に務めていただきました。

始めに「意思決定を行う女性の数は、具体的に増えていると感じますか。」という問いには、皆さん管理職としては少ないというお答えでしたが、テレビ局特有の、番組制作の責任者として大きな権限をもつプロデューサーや演出家は非常に増えてきている、とのことでした。

それを踏まえ「意思決定者に女性が増えることで、番組づくりは変わってきていますか。」との問いには、平田氏から「女性視聴者に共感してもらえる番組づくりには、女性が大いに貢献できていると思う。」、熊埜御堂氏からは「ワークライフバランス、ダイバーシティは社会を変えていく非常にチャンスのある言葉。そんな実感を仕事にフィードバックできたらと思うのは私が女性だからかもしれない。」と答えられました。

女性がこれから管理職、さらに上の役職へと向かっていくときの課題については、ロールモデルが少ないことに加え、意識についての話が出ました。田代氏からは「女性は輝いて働いてくださいと言われます。なぜ女性だけがそう言われるのか、普通に働かせてくださいと言いたい。それには会社も職場もお互いが理解していることが大事。」、平田氏からは「クリエイターとしてはもっともっと仕事をやりたい一方、子供と向き合う時間が削られる、母親としてこういう働き方でいいのかなといった葛藤があると思う。それを乗り越えられる世代が増えたら変わっていくと思います。」、熊埜御堂氏からは「最近、管理職を見て責任ばかり増えて何が楽しいのという意識が男性にも女性にもあります。そういう時に、ここまで来て見える世界はこうなのよということを意識的に発信して、無意識に持ってしまっているハードルを下げてあげたい。」とお話いただきました。

最後に「女性管理職が増えていくことによるテレビ放送や番組の可能性について」という質問には、平田氏からは「女性にしかできない妊娠や出産という素晴らしい経験をアウトプットに生かすことができる女性のクリエイターが増えることで、テレビにも新しい可能性がある。」、熊埜御堂氏からは「誰にも将来像が描けずこれまでの固定観念ややり方が通じなくなる時代がこれからの三、四年。だからこそ、女性にとってチャンスだと思う。」、田代氏からは「組織の健全性というのは多様性が支えるものだと思っています。多様性を生み出す一歩として女性が担わなければいけない役割というのはあるだろうなと感じています。」と答えられ、ディスカッションは締めくくられました。


放送業界で活躍する女性によるパネルディスカッション