「共同参画」2016年1月号

「共同参画」2016年1月号

特集

女子生徒等の理工系分野への進路選択の促進
内閣府男女共同参画局推進課

理工系分野における女性の参画状況及び女子学生・生徒の理工系分野への進路選択に向けた内閣府の取組をご紹介します。

1.はじめに

平成27年12月、「第4次男女共同参画基本計画」が決定され、その第5分野(科学技術・学術における男女共同参画の推進)において、女子学生・生徒の理工系分野の選択促進及び理工系人材の育成に向けた具体的な取組が掲げられました。また、同年6月にすべての女性が輝く社会づくり本部において決定された「女性活躍加速のための重点方針2015」においても、女性の理工系人材の育成について取り上げられています。これらを踏まえ、ここでは、理工系分野における女性の参画状況及び女性の理工系人材の育成と活躍に向けた内閣府の取組をご紹介します。

2.理工系分野における女性の参画

我が国が本格的な人口減少社会を迎える中で、持続的な成長を確保するためには、多様な視点で社会の様々な課題を解決していくことが必要です。そのためには、ダイバーシティの視点、特に我が国最大の潜在力とされている女性の活躍を促進することで、人材の層を厚くする必要があります。中でも、科学技術を支える理工系分野の女性研究者・技術者の育成は、人材の多様性の視点からも、イノベーションの創出の視点からも極めて重要です。

(1) 女性の参画状況(現状)

我が国における女性研究者の割合は増加傾向にはあるものの、諸外国に比べて低い水準に留まっています。例えば、欧米各国におけるその割合は30%前後であるのに対し、我が国は14.6%となっています(図1)。なお、女性比率改善のために行うべき措置については、「積極的採用」を望む声が最も多いとの調査結果も見られます(図2)。


図1 諸外国の研究者に占める女性割合


図2 女性比率改善のために必要な措置


また、専攻分野別にみた女子学生(大学生)の割合については、人文科学及び薬学・看護学等において50%を超えている一方で、理学・工学については、それぞれ26.4%、12.9%と分野によって男女の偏りが見られ(図3)、理工系においては女子学生がそもそも少ないため積極的な採用が困難な状況にあります。さらに、理学の中でも、生物学は学生の40.9%が女性であるのに対し、数学は18.7%、物理学は13.7%といったようにいわゆる学科レベルにおいても男女の所属に差があります。


図3 専攻分野別にみた学生の割合(男女別、平成26年)


(2) 啓発の重要性

こうした偏りには様々な要因が考えられますが、「理工系分野は男性中心の仕事である。」や「研究室に寝泊まりしなければならない。」などといった先入観や固定的な性別役割分担意識、さらには、そもそも女性の進学や就職の選択肢として、理工系分野が十分に認識されていないことも考えられます。

また、男女を問わず、進路選択の際には保護者や教員等に相談することが多いとの声もあることから、女子生徒等の皆さん本人だけでなく、保護者や教員といった身近な人についても理工系分野への進路選択に対する理解を深めていただく必要があります。

理工系分野の職業選択にあたっては、大学など教育機関の研究者を想起しがちですが、男女の研究者の所属先は、大学等が約32万人であるのに対し、企業・非営利団体は約57万人となっています。ただし、女性の所属については、大学等が約8万人であるのに対して、企業・非営利団体は約5万人となっています(図4)。また、研究者ではなく、製品の開発や品質管理などを担う技術者・技能者といった道もあります。

図4 研究者の所属先


こうした選択肢があることを、女子生徒等の皆さんとその身近な方に理解していただくためにも、産学官が連携して、科学技術を身近なものに感じる取組を進めるとともに、理工系への進路選択がどのようなキャリアパスにつながるかについて十分な情報提供を行っていく必要があります。

リコちゃん1


3.女子生徒等の理工系分野への進路選択を促進するための取組

このような状況を踏まえ、内閣府では、女子生徒等の理工系分野への進路選択を促進するために、意識啓発を中心とした以下の取組を行っています。

(1) ウェブサイト「理工チャレンジ(リコチャレ)」(図5)


図5 イメージキャラクター「リコちゃん」


〔URL http://www.gender.go.jp/c-challenge/index.html

女子生徒等の皆さん、保護者及び学校の先生などに対して、理工系分野への進路選択に向けた産学官の情報を提供するため、ウェブサイト「理工チャレンジ」を開設しています。イメージキャラクター「リコちゃん」が、「理工チャレンジ」の趣旨に賛同する大学・企業等(リコチャレ応援団体)の取組を解説するとともに、女性研究者・技術者のロールモデルを紹介しています。ロールモデルである先輩に対して、直接メールで質問をすることもできます。

現在、リコチャレ応援団体は600を超えており、今後も、連携の輪の拡大を図り、理工系分野への進路選択に資する情報を幅広く掲載していきます。

このウェブサイト「理工チャレンジ」は、女子生徒等の皆さんへの情報発信のほか、リコチャレ応援団体をはじめとした関係団体等とのキーステーションの役割を担っています。また、このウェブサイトの略称である「リコチャレ」は、すべての理工系女子を応援するための取組の総称としても活用しています。

(2) 各団体のイベントを取りまとめた「夏のリコチャレ」(図6)

平成27年の夏休み期間中、リコチャレ応援団体にお声がけし、各団体のイベントを取りまとめた形で「夏のリコチャレ 理工系のお仕事体験しよう!」を開催しました。これまでも、各団体が主体的にイベントを開催してきたところですが、集客が困難であるなどの課題がありました。そこで、内閣府が、各団体のイベントを取りまとめて、ウェブサイト「理工チャレンジ」や各種メールマガジン等を活用して、広く周知しました。同期間中、70のリコチャレ応援団体がイベントを開催し、約1,800名の女子生徒等が参加しました。なお、この取組は日本経済団体連合会(経団連)と共催しました。


図6 有村前女性活躍担当大臣・古賀経団連副会長による合同記者会見


(3) シンポジウム「理工系女子!ワクワク夏の文化祭!2015」(図7)

「WAW!2015(女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム)」のサイドイベントとして、8月29日、女子学生等の理工系への進路選択を促進するためのシンポジウム「理工系女子!ワクワク夏の文化祭!2015」を開催しました。このシンポジウムでは、保護者と女子生徒等の2人1組で参加することを基本とし、女子生徒等本人だけでなく、保護者の理解促進を図りました。2部構成でパネルディスカッションを行い、前半は女子大学生・大学院生のロールモデルに、後半は女性の研究者・技術者の方にご登壇いただきました。

また、企業の「リコチャレ応援団体」12社にブースを出店していただき、参加者が、その企業の具体的な女性活躍に向けた取組や、実際の仕事の詳細についても理解を深め、また質問などが行えるよう工夫しました。当日は、約250名の聴講があり、「私も工学部でものづくりを学びたい。」や「理工系の仕事が良く分かった。」などといった意見が多く寄せられました。なお、このシンポジウムは、日本経済団体連合会(経団連)、日本経済新聞社、日経BP社と共催しました。


登壇者と有村前女性活躍担当大臣、伊藤委員長(経団連 女性の活躍推進委員会)


理系女子大生によるパネルディスカッションの様子
図7


リコちゃん2


(4) 「サイエンスアゴラ2015」へのブース出店

平成27年11月13日~15日、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催した「サイエンスアゴラ2015~つくろう、科学とともにある社会~」にブースを出店しました。これは、例年、東京お台場で開催している日本最大級の科学技術イベントであり、内閣府男女共同参画局としては初めて参加しました。「リコチャレ」の取組の紹介のほか、理工系分野への進路選択を支援する関係各府省の取組などをPRしました。

4.おわりに

「第4次男女共同参画基本計画」及び「女性活躍加速のための重点方針2015」においては、女子生徒等の理工系分野への進路選択を促進するため、産学官からなる連携体制を構築することとされています。理工系分野は、大学、研究機関、学術団体、企業などといった様々な就業等の場や、様々な研究・技術分野、さらに研究者・技術者・技能者といった活躍の場があるため、女性の活躍を目的とした「リコチャレ応援団体」や関係府省などとの連携ネットワークづくりは不可欠と考えています。

社会の様々な課題を解決する上で、多様な視点は極めて重要であり、その意味で女性研究者・技術者の活躍は社会として期待されるところですが、「科学技術の仕事は、イノベーションで社会を変えることができるので、やりがいがある。」や「理工系分野で学んだことで、製品などの仕組みが分かるようになり、視野が拡大した。」など、研究や技術の仕事に携わる魅力そのものを語る声も聞かれます。

理工系を進学や就職の選択肢として女子生徒等の皆さんにお考えいただくため、引き続き、「リコチャレ」の趣旨を社会に浸透させていくとともに、これまで行ってきた事業の共催等を発展させる形で、各団体と施策の連携や情報の共有を図り、女子生徒等の理工系分野への進路選択に向けた施策を積極的に進めていきます。

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リコチャレ応援団体は随時募集しています。加入を希望される場合は、下記のURLよりアクセスしていただき、趣旨にご賛同いただけましたら、手続きをお願いいたします。

http://www.gender.go.jp/c- challenge/dantai.html

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