資本市場では、世界的な潮流として、非財務情報であるESG(環境・社会・ガバナンス)情報を投資判断に組み込み長期的な投資リターンの向上を目指す、いわゆるESG投資が拡大しています。また、女性取締役を1人以上有する企業の方が、女性取締役を1人も有しない企業に比べ株式パフォーマンスがよいとの調査もあり、資本市場において、女性の活躍に積極的な企業が評価される動きも広まっています。
【ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究】 上記状況を踏まえ、当局では「ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究」を実施し、機関投資家等の視点から、ESG投資、中でも従業員に関する「S」と取締役会等のガバナンスに関する「G」を考慮した投資についての考え方をとりまとめました。 本調査では、約7割の機関投資家が、投資判断等において女性活躍情報を活用する理由として「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」と回答しています。このことから、多くの機関投資家においても、女性活躍の推進が長期的に企業の成長につながっていくと考えていることがうかがえます。 本調査研究の報告書では、機関投資家が考える女性活躍、情報開示の重要性、また左記取組において機関投資家からの評価が高い企業の事例を紹介しています。 詳細はこちら・・・「ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究」 |
【日本銀行の動き】 量的・質的金融緩和を補完するための措置として、2016年4月から年間約3,000 億円の枠を設け、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETF(指数連動型上場投資信託)の買入れを行っています。 株価指数の適格基準(銘柄組み入れ基準)として、設備・人材投資(労働環境の整備、保育支援、人材育成の拡充等)への取り組み姿勢や、適切な企業統治を通じた成長性を要件とします。 |
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【指数ベンダー等の動き】 各指数ベンダーにおいては、日本銀行の動きを踏まえ、設備・人材投資に着目した指数を開発しています。(証券会社等において、当該指数を連動対象としたETFを並行して開発し、2016年5月以降、こうしたETFが東京証券取引所に上場しています。 |
ESGの要素に配慮した投資は長期的にリスク調整後のリターンを改善する効果があると期待できることから、2017年に企業が公開する情報をもとにESG要素を加味して銘柄を組み入れる株価指数を3つ採用し、それぞれの指数に連動するパッシブ運用を国内株全体の3%程度、約1兆円で開始しています。
採用された指数の一つにMSCI日本株女性活躍指数(WIN)があり、将来的な労働人口減少リスクに晒されている日本では、女性活躍を推進している企業は労働力を確保しやすく、長期的事業持続性に勝るという観点から採用されています。
運用資産額は、2018年3月時点で3,884億円であり、今後も、拡大する予定です。
女性活躍を評価対象とする株価指数
名称 | 概要 | 女性活躍状況を評価する観点 | 指数提供 |
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MCSI日本株女性活躍指数(WIN) |
時価総額上位500銘柄(MSCIジャパンIMIトップ500指数)のうち、MSCI が新たに開発した性別多様性スコアに基づき、各業種から性別多様性に優れた企業を選別して構成。 MSCI ESG リサーチが非常に深刻な不祥事を起こしている、あるいは人権や労働者権利において深刻な不祥事を起こしていると評価する企業は対象外。
また、本指数に直近3年間の設備投資成長率や同売上高成長率が高い等の基準を追加し、企業を選別したMSCI日本株女性活躍指数(セレクト)も組成。 |
・性別多様性スコアは、企業の(1)女性の就職に関する項目、(2)女性の継続雇用に関する項目、(3)女性の昇進に関する項目、(4)会社の女性雇用に関する情報公開姿勢に関する項目、(5)会社の女性雇用に関するポリシーや取組に関する項目の5つの項目について評価。 | MSCI |
JPX/S&P設備・人材投資指数 |
東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄から、設備投資額や研究開発費の伸び、売上高に対する設備投資効率、人材投資に基づくスコアリングにより、最も総合スコアの高い上位200銘柄を選定。人材投資スコアは、ロベコSAM社の銘柄の持続可能性評価(CSA)のデータを活用し、「人材開発」「有能人材誘致と保持」「労働慣行指針と人権」の3項目を用いて評価。 |
・「労働慣行指針と人権」において、組織内における男女の平等や人権の尊重に関して積極的に取り組んでいることを実証できる能力に基づいてスコアが付与。 ・具体的には(1)職掌によらず女性従業員の保持に務めていること(2)同一職種の男女間において同一水準の賃金を維持していることを評価。 |
東京証券取引所、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス |
iSTOXX MUTB Japan 積極投資企業200インデックス |
安定的に高収益を上げている企業のうち、将来の成長に繋げるために積極的な投資(設備・人材)を行なっている企業200銘柄から構成。
銘柄選定の基準となるスコアリングにおいて、収益・安定性を評価する独自の収益性スコアに、設備投資の積極性や、女性の活躍推進を含む人材投資の積極性を評価するスコアを加味。 |
・人材投資スコアは、「給与の変化」(給与水準の増加トレンド)など5つの評価項目からなり、その中の1つが女性の活躍推進。 ・具体的には、管理職比率、出産・育児支援制度などの状況から、女性が積極的に活躍している企業を評価。 |
STOXX社(三菱UFJ信託銀行株式会社との共同開発) |
※ 企業における女性の活躍状況等を評価し、銘柄選定をしている指数を掲載
※ 掲載中の指数及び当該指数を利用した金融商品に関して、いかなる点でも内閣府が出資、保証、宣伝するものではありません。