少子化と男女共同参画に関する専門調査会

  1. 日 時:平成16年11月22日(月)13:30~15:30
  2. 場 所:内閣府3階特別会議室
  3. 出席委員:
    佐藤会長、岩男会長代理、阿部委員、大沢委員、奥山委員、玄田委員、杉山委員、高橋委員、武石委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 働き方の変化と結婚・出生行動の変化
    報告者:
    国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部長
     
    少子化と男女共同参画に関する専門調査会委員 高橋 重郷 氏
  3. 統計分析指標の仮説について
  4. アンケート調査実施案について
  5. その他
  6. 閉会

(配布資料)

資料1
高橋委員説明資料「働き方の変化と結婚・出生行動の変化」[PDF形式:321KB] 別ウインドウで開きます
資料2
統計分析指標関係資料
資料2-1
仮説設定のための検討資料-キーワードの整理 [PDF形式:23KB] 別ウインドウで開きます
資料2-2
仮説設定のための検討資料-軸の整理(案)[PDF形式:18KB] 別ウインドウで開きます
資料2-3
少子化と男女共同参画に関する実証分析について-指標(案) [PDF形式:12KB] 別ウインドウで開きます
資料2-4
基礎データに関する分析例 [PDF形式:12KB] 別ウインドウで開きます
資料2-5
統計分析関連作業スケジュール(案) [PDF形式:328KB] 別ウインドウで開きます
資料3
アンケート調査実施案
資料3-1
新規アンケート調査の実施について [PDF形式:39KB] 別ウインドウで開きます
資料3-2
管理者を対象とした両立支援策に関する意識調査 調査へのご協力のお願い [PDF形式:20KB] 別ウインドウで開きます
資料3-3
管理者の方へお願い [PDF形式:15KB] 別ウインドウで開きます
資料3-4
管理職を対象とした両立支援策に関する意識調査 調査票(案)[PDF形式:49KB] 別ウインドウで開きます
資料3-5
アンケ-ト調査実施関連作業スケジュ-ル(案)[PDF形式:11KB] 別ウインドウで開きます
〈参考〉

(議事内容)

佐藤会長
ただいまから、男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門調査会の第2回会合を始めさせていただきます。お忙しい中、御出席いただきありがとうございました。
 では、お手元の議事次第に従いまして、本日の審議を進めさせていただきたいと思います。
 まず最初に、「働き方の変化と結婚・出生行動の変化」という題目で、高橋委員から御説明いただき、質疑応答・意見交換をしたいと思います。
 それでは、高橋委員、よろしくお願いいたします。
高橋委員
それでは、パワーポイントを使いながら、時間があまりありませんので、始めさせていただきます。

(パワーポイント映写)
 「働き方の変化と結婚・出生行動の変化」

 少子化と男女共同参画社会
 少子化と男女共同参画社会ということですが、まず問題設定です。1つは、男女が等しく社会参画しやすい社会の実現というのが男女共同参画会議の中心的なテーマであろうと思います。そうしてここで取り扱う問題は「少子化」ということでありまして、少子化というのは言いかえれば、男女が家族形成しやすい社会の実現ということだろうというふうに思います。男女が等しく社会参画しやすい社会に関しては、根底にはジェンダー問題があるということ。
 それから、男女が家族形成しやすい社会ということに関しては、現在少子化問題ということがあるということです。少子化問題に関しては、その直接的な要因というのは未婚化現象、晩婚化現象、さらには1990年代からですけれども、夫婦出生力の低下ということがあります。こうしたこの2つの問題が同一の問題に根差していないかというのがここでの議論するポイントだろうと考えます。したがいまして、この同一の問題に根差しているのか、いないのかということに関して、きょうは説明することになります。
 少子化現象
 まず、少子化現象の方でありますけれども、少子化現象自体が出生率が長期にわたり、人口学的に見ると人口置換水準を割り込み、低下を続ける状態であると。人口置換水準というのは、いわば親の世代と子どもの世代が1対1で置き換わる水準のことを人口研究では指しますけれども、これを合計特殊出生率で言いますと、出生率で2.07~8の水準であると。こうした低下を続けることによって、日本の総人口の減少であるとか、あるいは高齢化が以前にも増して水準上昇をもたらすという、そうした社会現象を意味するものとして少子化現象というふうに理解しております。
 出生数及び合計特殊出生率の推移
 そもそも出生率がどのように動いてきているのかということに関してはこの図に示したとおり、特にポイントになるのは、1973年オイルショックの年ですけれども、その翌年から合計特殊出生率が低下傾向を示し始めた。一たん1980年代半ばに上昇する気配はあったのですけれども、それも一時的なことで、現在は2003年で1.29に達している。2004年も恐らく1.29より下回るであろうと見ております。
 合計特殊出生率の定義(TFR)
 そもそもこの出生率とは一体何かということですが、これを人口学的な方程式で見ると、この式に示されるように定義されるのですけれども、簡単に言ってしまえば、分子の方に、B(a,t)という記号が入っていますけれども、年齢a歳の女性が産んだ赤ちゃんの数を分子にしまして、同じ年齢の女性人口を分母にして割り算をして、それを年齢について足し上げてやると、これが合計特殊出生率です。
 年齢別出生率:1975年と2000年
 1975年と2000年について見るとこのように大きなカーブの変化があらわれて、特に20代の出生率が大幅な低下をしてしたということ。それから30代に関しては出生率はこのように上昇してきた、そういう変化を示しています。
 合計特殊出生率の定義(TFR)
 この出生率なんですけれども、統計学的に分母と分子に同じものを入れ込むことによって、最初の式の変形が起こります。入れたものは結婚した女性、年齢a歳の結婚した女性を分子と分母に入れてやる。そうしますと、片方の項が1つあらわれてきまして、これは一体何を意味しているのかというと、結婚した女性がどれぐらいの頻度で赤ちゃんを産んでいるのかという専門的な言葉でいうと「有配偶出生率」というものになります。右側の方は、結婚した女性が全体女性の中で何%いるのかという構成比を示していまして、結婚している人々がどれぐらいいるかということが合計特殊出生率に強い影響を示すということになります。
 有配偶年齢別摘出出生率:1975年と2000年
 今、それぞれその2つの項について統計的に見ることが可能でありまして、1975年と2000年について有配偶、つまり結婚した女性の出生率を2000年については赤線で、1975年について黒い線で描いてあります。これを見ていただくとわかるのですけれども、21歳より上のところ、22歳以上のところと、これよりも若いところで、1975年と2000年で大きく違いがあります。2000年の場合、非常に15~21歳の出生率が上昇したのですけれども、これは近年の出産の多くができちゃった結婚が多くなってきていると。第1子出産の今24~25%は婚前妊娠でありまして、それが結果としてこのように10代後半から20代前半の出生率を上昇させている。ただし、21歳未満の出生率というのは全体で見ると微々たるものですから、それほど強い大きな影響は与えていません。
 20歳代半ばから上のところに関して言いますと、20代で出生率が低下傾向、30代で上昇傾向ということでありまして、どちらかというと、いわば20代での落ち込みを30代で取り返していると、そういう状態が見てとれます。
 年齢別有配偶人口構成割合:1975年と2000年
 一方、もう一つのコンポーネントでありました結婚している人の割合でありますけれども、このように見ていただきますと、25歳ちょうどのところですが、1970年代は7割近くありましたけれども、それが2000年のデータで見ますと、約3割と急速に落ちています。さらに30歳のところを見ていただくとわかるのですけれども、30歳でも9割方が結婚していたのですけれども、2000年のデータで見ると6割少々である。つまり結婚の構造が大きく変化したことが出生率低下に大きく影響を与えたということで人口学的にわかります。
 合計特殊出生率変化の要素分解:1975年~2000年
 これを人口学分析では、要素分解という手法がありまして、ある年次間の出生率に対して、結婚の変化によってどれぐらいの出生率低下がもたらされたのか。あるいは結婚したカップルの出生率変化によってどれぐらい出生率が低下したのかということの計量化が可能です。これで見ますと、70年代後半で見ると、約9割方は結婚の変化、晩婚、未婚化現象によってもたらされていて、結婚したカップルが子どもを産まなくなるということによって13%であった。80年代を通じてみると、結婚が9割、夫婦の出生行動によって1割の低下がもたらされる。ですから1990年以前の日本の少子化現象は9割方は結婚の変化によって説明できるわけです。
 ところが90年代へ入ったところで見てみますと、出生率低下の約4割が結婚の変化によってもたらされる。そうして夫婦が子どもを産まなくなるという現象によって6割少々が出生率低下の要因となっていた。つまり、90年代以前と以後では出生率低下の意味合いが相当変わってきまして、90年代以降に関しては夫婦が子どもを産まなくなるということが非常に大きな少子化現象の要因となっているということがわかると思います。
 出生率の時代・年齢・世代変化
 出生率の変化を先ほど見ましたように、90年代からの変化というのがより夫婦出生力が落ちるという特徴を持っています。そもそも出生率というのは一体どのように見ればいいのかという問題がまず第一にあります。出生率というのは、ある年に生まれた人たちが、ある時期に結婚し、そしてある時期に子どもを産むといういわば世代単位に起きている現象です。
 これは人口学ではよく使うレキシスの図というものですけれども、上方向に向かって年齢がとってありまして、横方向に向かって年次がとってある。つまりここはこのポイントでいいますと、1950年に50歳に達した人はここにいるということです。さらにこちらのポイントでいいますと、1985年に50歳の人はここにいる。この人のライフコースをずっとさかのぼっていきますと、この人たちはこういう斜め線の人生を歩んでいまして、1985年に50歳の人というのは1935年に生まれた人である。その人は1955年に20歳を迎えた人たちであるというふうに、このようにこの図を見ます。
 この図を見ますといくつかポイントを見ることができます。例えば40歳になったときの出生率というのは、この人々は1935年生まれですけれども、2.0を記録している。1940年生まれの人は1.96、そして1945年生まれの人々は、40歳になったとき、2.09に達していた。1950年生まれの人は、1990年に40歳に達するのですけれども、2.0を産んでいた。
 これを見てわかるように、1970年代から90年代に入るまで、40歳ぐらいのところの子どもの産み方というのはほとんど変化をしていないわけですね。世代別に見ると、少子化現象が引き起こされた時点でも、まだ実際には子どもを産んでいたということであります。この時代に何が起きていたのかというと、色を変えてありますけれども、ここで起きていた現象がいわば結婚の変化が起きていた時点であります。
 そして1990年以降、先ほどデータで見ましたように、この時期に結婚した夫婦が子どもを産まなくなるという現象があらわれました。この範囲を通過した人々の40歳時点の出生率を見てみると、なるほど世代別の合計特殊出生率は1.97、1.83というふうに落ちてきました。ですから出生率を見る見方によって起きている少子化現象というのは異なって見えるということをまずここでふれておきたいと思います。
 コーホート年齢累積出生率
 世代別、つまりコーホート別の出生率を、これは生まれ年別にはかったものでありますけれども、これを見ると、例えば典型的には30歳のところを見ていただくと、このように、1950年以前に生まれた世代の人々の出生率は極めて安定的でした。それはどの年齢階層についても安定的であったということを示しております。1950年から、そして1950年代半ばに生まれたカップルについて見ると、途中の子どもの産み方というのは相当落ちていました。
 ところがポイントとなる最終的な出生率、ここではかることができるのは45歳ぐらいまでのところですけれども、これで見るとほぼ横ばい状態で推移しております。1950年生まれから55年、あるいは57~58年にかけての人たちというのは、途中の子どもの産み方というのは遅くなったけれども、結果として50歳ぐらいになれば2.0を産んでいた世代であるということであります。
 そして、1950年代後半から60年代、あるいは60年代後半の世代に関して見ると、ほぼ軒並み出生率低下傾向が起きていまして、本格的な少子化現象というのが1960年代前後の世代から本格的に起きたということがこのことからわかります。
 出生率低下の要因
 今のことを簡単に整理しますと、出生率低下というのは、先ほどのことからわかりますように、第一に結婚の変化によってもたらされた出生率低下があったこと。それから、夫婦の子どもの産み方の変化によって出生率低下があったということがわかります。
 結婚の変化
 平均初婚年齢
 では、結婚の変化の方でありますけれども、これは皆さんのご存じのとおりだと思いますので簡単に言いますと、このように、オイルショック後までは結婚の変化は極めて小さかった。つまり、別の言い方をすると、高度経済成長期における結婚の年齢というのは、極めて安定的であった。そうして高度経済成長期が、1973年のオイルショック以降、変わって、低成長期に入るに従い、結婚の年齢変化が起きていて、今、なお続いているということであります。
 年齢別未婚率の年次推移
 同じことを年齢別の未婚率で見たものですけれども、20代後半女性について見ると、20代後半女性、1970年代に関していうと、20代後半女性の2割が未婚でありましたけれども、1985年には3割に達し、5年間という短期間で4割に達し、そうして2000年国勢調査では54%。東京都だけを見ると、これが64%になっている。そういう変化がございました。
 夫婦の子どもの産み方の変化
 夫婦の完結出生児数
 夫婦の子どもの産み方の方について見ますと、私どもの研究所で調査を行っていますが、結婚から15~19年を経過した夫婦について見ると、1972年の調査で2.20人を記録した。2002年に最新の調査を行っていますが、それの数値は2.23人でありました。ですから、1970年代以降、夫婦の産んだ子どもの平均値というのは、70年から2002年まで変わりはなかったということです。ただしという条件がつきます。結婚15~19年の夫婦でありますから、この人たちはいつ頃結婚したのかというと、1985年前後に結婚した人までについてはそういうことが言えますということです。ですから85年以降に結婚したカップルについては、夫婦の産む子どもの数が安定しているとは言い切れないデータです。
 妻の出生年別、平均出生子ども数
 では85年以降についてはどうなのかということを見たものが次のデータでありまして、これは妻の生まれ年別に調べています。生まれ年について見てみると、段差があるのはどこかというのははっきりしています。ここの部分です。この部分というのは、つまり1960年以前に生まれた女性に関していうと、平均子ども数というのは、どの年齢段階もほぼ等しかった。つまり2.数人の子どもを産んでいた。
 ところが1960年代に入って以降に生まれた女性たちに関してみると、軒並みこのように、ある年齢の経過とともに蓄積される平均子ども数というのは軒並み減少してきているということでありまして、1960年代生まれ以降、別名、「均等法世代」と言われる人たち以降で結婚してからの子どもの産み方が小さくなったということがわかると思います。
 社会経済変化
 社会経済変化と時代・年齢・世代
 そうした行動の変化、人口学的に見た行動の変化はどのような社会経済要因と関連するのかということでありますが、これは先ほど見た同じ図なのですが、経済との関係で対応させてみますと、この黄色い部分、結婚が安定し、夫婦と子どもの数が安定していた時代というのは、高度経済成長期でありましたし、製造業中心の産業化が進展していた時代である。そうして1973年のオイルショック以降、経済は低成長期に入り、90年代からは平成不況という現象が起きてきた。その間、一貫してあった経済の変化というのは、いわばサービス産業を中心とする産業化という産業構造の大転換であります。その時期に結婚が遅れ、そして90年代に入ってから結婚したカップルが子どもを産まなくなるという現象があらわれたということであります。
 産業類型別就業人口割合の推移
 産業構造は、このように、よく知られている図ですけれども、日本の場合、戦前から現在にかけて大きく変化をしました。
 男女の就業者数の推移
 これを男と女という視点で見直したものがこの図になります。この図は産業別の就業者数をグラフで見たものですけれども、この第1次産業について見ると、戦前ですけれども、これを見ていただくとわかるように、第1次産業というのは、男も働くし女も等分に働く、いわば共同社会です。男女共同参画社会、社会的に、あるいは女性が虐げられていたという大きな問題があるのですけれども、男も女も働いていたということであります。第2次産業について見ると、やはり男優位に働いていて、女性が従たる労働力だと。
 第3次産業に関しても戦前においては、男を主として、女性が従たる存在だと。こうした構造がいわば日本の1970年代の高度経済成長期まで第2次産業は増加をするという変化を示してきています。1970年で見ると、第1次産業はずっと小さくなって、第2次産業は大きくなって、男性、女性の比率でいうと、男性労働力は非常に大きくなった。
 第3次産業も、女性はどんどん増えてはきているのですけれども、まだ男性優位であると。ところが第3次産業がどんどん増えるに従い、男女の差というものが非常に小さくなってきて、いわば労働力市場における就業者というのは、男も働き女も働くという形に変化をした。第2次産業全体が縮小してくると、そういう変化をしてきています。
 女性の配偶状態別にみた有業率(1971年)
 このことを高度経済成長期と最近の女性のどういう人たちが仕事に就いているのかということを配偶関係で見ようとしたものがこの図です。ところが就業構造基本調査、配偶関係の調査項目が新しい調査からなくなって非常にデータがとりにくくなりましたので、こういうデータをつくってあります。世帯主の配偶者以外で仕事が主な女性です。つまり何を意味しているのかというと、未婚者をほぼ意味している女性たちです。
 高度経済成長期、1971年について見ると、全体の20代前半の女性の有業者の割合は65%程度でしたけれども、55%が未婚の女性である。そうして20代後半になるとぐんと就業者は減って、その中でも2割方が女性就業者、そういう状態になっていました。つまり典型的なM字型就労という形があらわれていたということであります。
 女性の配偶状態別にみた有業率(2002年)
 2002年になると非常に大きな変化を示します。どういう変化かというとこの部分です。20代後半の女性たちがぐんと労働力市場に出てきたということと、中高年の女性たちも多く労働力市場に出てきた。しかしながら、これで見てわかるように、20代後半女性・30代前半の女性も多く労働力市場に出て来るのですけれども、未婚で労働力市場に出て有業状態になっている人たちが圧倒的に多いということです。
 このことは、裏返せばサービス産業化した社会において女性の労働力というのは非常に強く需要は高まっているのですけれども、ただし、未婚の女性に対してという、そういう括弧付き条件があるということであります。
 女性の配偶状態別にみた有業率(1971年 2002年)
 この両者を見比べてみればよくわかるのですけれども、圧倒的に赤い部分、世帯主の配偶者以外で仕事を持っている女性たちというのが相当強く労働力市場に出て有業者となったということを示しています。
 配偶関係別労働力人口
 これは国勢調査から人口ピラミッドの状態で未婚の労働力市場がどの程度あるのかということを視覚的に見たものです。これを見てみると、左側が男性、右側が女性ですけれども、未婚の女性の人たちが多く働いているという姿がうかがえますし、また、一方では、このように非労働力化している女性たちもたくさんいるということがわかると思います。この図は、労働力市場にどれぐらい入っているのかということを見たもので、女性の労働力は若いところと、それから中高年のところで非労働市場に多くいるという姿が見られます。
 女性労働力化の特徴
 次に女性労働力化の特徴ですけれども、先ほど言ったように、未婚労働力に対する需要の拡大ということが起きているということ。それから中高年女性の就業の拡大、ただし、非婚、非正規就業の需要が拡大しているのだという特徴があるということです。
 結婚変動と社会経済変化
 それでは、結婚と経済変化との関係はどうなっているかということであります。
 未婚者の生涯の結婚意思
 私どもの研究所で調査を行っていますが、結婚に関する意欲を見てみますと、最新の調査で見ても、男性で87%、女性で88%。つまり9割近くの人々は結婚したいという意識を持っている。つまり結婚したくないから非婚にとどまっているということではないということであります。
 恋愛結婚・見合い結婚構成の推移
 もう一つ、結婚に関して非常に重要なポイントとしては、配偶者選択の手法が大きく歴史的に変化をしてきているということであります。見合い結婚が減少し、恋愛結婚が増大し、現在では約9割方が恋愛結婚である。見合い結婚が8.1%ですから非常に少なくなった。つまり、現代社会における結婚の形成というのが恋愛という市場を通じて結婚が成り立つ仕組みになってきているということです。
 かつての社会というのは、見合い結婚という制度が残っていましたから、配偶者選択は恋愛という自由市場に任せられると同時に、いわば社会の側で調整をするという見合い結婚、その2つのルートがあったわけですけれども、結婚のそういう配偶者選択の道が非常に小さくなったということが言えると思います。
 結婚に対する考え方
 さらに結婚に関する考え方でいいますと、特徴的なのは、男性について見れば、「理想的な相手が見つかるまでは結婚しなくてもかまわない」という人々が相対的に多くなった。女性の場合も多くなってきている。つまり、いわば年齢規範に即した結婚の仕方から、パートナー、相手を中心にみた結婚に変わってきているということであります。
 未婚者の異性との交際
 さらに未婚の人々の異性との交際について見ると、「交際している異性はいない」というのが男性で5割、女性で4割というように、すべての結婚が恋愛を通じてというような社会になってきたのに、こうした異性との交際が非常にできない層が相当数あるということであります。
 独身にとどまっている理由:25~34歳
 独身にとどまっている理由を調査しても、結婚をできない理由としない理由と2つに分けられるのですけれども、「適当な相手にめぐり会わない」というのが約5割近くあるということであります。
 こうした結婚に関して見ると、非常に現在の結婚のシステムが恋愛市場というものに依存しているがゆえに、非常に結婚しにくい状況があらわれてきている。
 男女の年齢別失業率
 もう一つ、重要なのは近年の失業率との関連であります。失業率が特に20代のところで非常に高くなってきているわけです。
 男女の雇用状態
 そうしてもう一つ、雇用の状態を見ると、近年になるに従い、非正規雇用の人々が増えてきている。例えば男性の場合、2002年で正規雇用が6割、非正規のトータルで見ると、17~35.9%、20代後半で6.3~13.7%。女性に関しても、非正規雇用が、92年の16.5~44%というふうに、こうした非正規化が起きる。ということは、いわば経済基盤が非常に不安定な若者たちが増えてきている。そのことは結婚生活を開始する時期に当たる人々の非常に生活基盤が弱いということでありまして、これも近年における結婚の大きな問題の1つであろうというふうに思います。
 結婚の変動要因
 結婚に関しての変動を整理してみると、1つは、結局、高度経済成長期というのは、一体どういう結婚がなされていたのかというと、相当多くが見合い結婚に頼っていたということがあります。そうして外で働く機会というのは非常に小さかった。つまり多くの女性たちが結婚によって、親の経済から夫の経済のもとへ経済の単位の移行があって、そうして結婚をするか、独身を続けるかという比較優位性でいうと、結婚の方が明らかに経済的に比較優位性が高かった。したがって、95%の人々が結婚する社会というのが高度経済成長期にはでき上がっていた。
 一方、現代のように、サービス産業化していくと、女性をめぐる社会経済的な環境というのは大きく変化をしました。女性の雇用機会の増大、男女間の賃金格差の縮小、女性の高学歴化。
 そのことは未婚あるいは既婚女性の就業化を促している。そのことは対比的に言うと、経済の移行、結婚によって必ずしも経済の単位の移行というのは必要ではありませんから、女性にとって、あるいは男性にとっても、結婚の意味自体がパートナーシップをどのように形成するのか、あるいは愛情関係に基づく男女関係がどのように築けるのかということが結婚にとって一番重要なことになってくる。そのことが結婚市場におけるミスマッチをもたらして結婚の変化が起きているということであります。
 夫婦出生行動の変化と社会経済変化
 急がなければ終わりませんので、急いでやりますが、夫婦の子どもの産み方の変化の方であります。
 第1子出産前職種別就業継続率
 夫婦の子どもの産み方について見ますと、第1子を産んでから就業継続がどれぐらいあるのかということを見てみると、一般事務職という働き方が一番多いのですけれども、就業継続が2割である。つまり、それだけ結婚して子どもを産むと就業を継続することが困難な状態にある。かつてのように農林漁業や自営業社会であると非常に就業継続率が高いのですけれども、現代という働き方が非常に就業継続を難しくしている。
 潜在的有業率(2002年、女)
 さらに、これは就業構造基本調査で調べたものですけれども、M字型の就業率に対して就業希望というデータを足し上げてみると、日本もいわば欧米型のフラットな就業構造があらわれてくるわけですね。ですから、希望を加えてみると、日本の女性たちは、潜在的にはフラットな就業構造を持つ潜在性があるわけでありますけれども、それが様々な要因によってM字になっているということであります。
 女性の労働力化と少子化のトレード・オフ
 その問題は、女性の労働力化と少子化のトレード・オフの問題に典型的にあらわれている。
 このデータは、後の資料にもありましたので割愛してポイントだけ次に述べさせていただきます。
 就業中断・再就職の金銭的損失:短大卒
 機会費用の問題について少し見てみます。短大を卒業した女性たちが働き続けると、この外側のカーブを通って一生続いて所得を得る。ところがある女性は、26歳で就業を中断して、その後、家庭に入って数年間過ごすと。そうして32歳で正規に仕事に戻ると、このグリーンの部分が生涯賃金になるわけです。赤い部分が逸失所得になりまして、これが平成9年版の国民生活白書に載っているものですが、6300万円の所得を失う。
 一方、100万円というパート就労に出た場合ですと、赤い面積が非常に大きくなって、機会費用も1億8500万と莫大になるということであります。
 所得階層別雇用者数,35~49歳
 こうした機会費用の問題があって、現実に人々の平成14年版の就業構造基本調査で、35~49歳の人がどういう働き方をしているのかというのを見てみると、このように赤い部分が非常に多い。つまり99万円未満で働いている人が多い。
 女性の労働力化と少子化のトレード・オフ
 日本の女性の働き方というのは、非常に高い機会費用となっていて、子どもを産むことの経済的な損失を生んでいるということであります。つまり機会費用が非常に高いということと、日本の企業風土や雇用慣行が子どもを産むとやめさせるということがある。
 もう一つ、言いたいことは、税・年金制度が女性労働力インセンティブを奪っている問題であります。
 少子化問題
 女性の働き方や生き方が、社会制度や社会慣行によって誘導されている姿があるのではないかということです。税の仕組みであるとか、あるいは年金の仕組み、会社から扶養手当が夫の給与に足されるということが、働き方としても女性の就業が100万円のところで調整されてしまう要因になっている。したがって、子どもの機会費用が増大する。つまり仕組みによって就業行動が抑制され、子どもの値段が高まっているという構造です。
 さらに年功序列型賃金体系というのは、一方で、その会社に居続けた方が給料は後払い方式ですから、後でたくさんもらえる。そのために硬直した職業流動性というものを生み出している。そのことは女性の側にとってみると、ライフコースの変更を非常に困難にしている。一たん仕事をやめて正規就業に戻ろうとしても高い壁があるという問題です。子育て後の正規就業を困難にしているという問題がある。
 現実の経済社会は現在高齢化しています。労働力の総供給自体が今後人口減少社会で減っていきます。そういう中では未婚労働力に対する高い需要は今後とも続くわけでありますし、女性全体に続いている。そのことが一方で結婚の抑制につながって、結婚が発生しにくくなってきている。
 さらに、その女性たちが就業継続をすることで結婚も難しいし、子どもの機会費用の増大によって出産・子育ての抑制が起きている。
 したがいまして、最後に言いたいことは、こうした男女の働き方を誘導する様々な制度というものを変えていかなければ、出生率回復ということと男女共同参画というその2つの課題が解決しないのではないかというのが私の考え方です。
 駆け足でしたけれども、以上です。
佐藤会長
短い時間の中で、要領よく、この専門調査会で必要な情報について説明していただき、どうもありがとうございました。
 それでは、高橋委員の御説明に御質問、御意見があれば順次伺いたいと思います。関連する質問があれば、続けて出していただければありがたいと思います。どなたからでも。
岩男会長代理
事実の確認ですけれども、就業継続は3割というふうに聞いていたのですが、ただいまのお話で2割ということでしたね。事務職だけをとって……。
高橋委員
だけを採り出した場合。
岩男会長代理
わかりました。それから、もう一つは、恋愛市場のお話ですけれども、確かにかつてあったような形の見合いは少なくなりましたけれども、新たなマーケット、結婚仲介業というのですか、相談業というのが大変ブームのようですから、ああいうものを通じて結婚が成立するのはどちらのカテゴリーに分類されるのか。
高橋委員
このデータの処理上は見合い結婚に入っています。
岩男会長代理
見合い結婚に入っている。
高橋委員
はい。
佐藤会長
そうですか。ほかにはいかがですか。
大沢委員
サービス経済化になって、未婚の労働力の需要が非常に高まっているのだけれども、結婚してからも継続する人たちの割合は低い、それがいろいろな制度によっているというお話でしたけれども、もう少しそこについてお伺いしたいのですが、先生が考えていらっしゃる制度というのは賃金形態とか雇用制度のことでしょうか。
高橋委員
私が強調したいのは高度経済成長期に制度設計した様々な制度がありますね。税の制度にしてもそうですし、さらに高度経済成長期ではないですが、年金の第3号被保険者の問題、そのことが女性が労働力市場に出ることを抑制しているというのがデータから見ても明らかなわけです。特に少子化対策で育児支援をいくらやっても、制度で動かされている部分を変えない限りはそれを利用する人たちは増えないわけですから、そこのところを私は特に強調したいと思います。
大沢委員
制度がサービス形態化に即して変わっていないことによるんですね。
高橋委員
そうです。
佐藤会長
出生率低下の要因が、80年代までと90年以降で変わり、90年以降、カップルの出生率も落ちてきているというお話ですけれども、ウエイトは変わったにしても、未婚率が高くなるという傾向がずっと続いていますよね。そこのところをどうするかで、結婚したカップルは仕事を続けながらでも子育てはできる、企業の中でのサポートとか、地域でも子育て支援をやっているわけですけれども、今、結婚してない人たちですよね。もちろん結婚しなければいけないというわけではないけれども、先生のデータでは、かなりの人が結婚したいと思っている。ただ、出会いがない場合、ここについて政策的な手当てというのはあり得るのかどうか。あるいは制度的なものを変えれば、そういう人たちが、多少は自分たちの希望に沿った結婚ができるのか、その辺はどうお考えですか。
高橋委員
1つは、前にも別なところで申し上げたことがあるのですが、いいか、悪いかは別にして、フランスのような結婚したカップルが税制上有利なシステム、要するに合算所得に対して、子ども乗数をつけて、それによって課税をする。そうすると、これは独身税ということとは全く逆で、結婚して家族を形成する人たちに対して社会が支援するシステムになります。そうすることによって、人々の結婚に対するインセンティブが高まってくるのではないかというふうに考えています。
 なかなか結婚そのものに対してダイレクトな政策というのは難しいと思いますので、そういうインセンティブを高める仕組みが大事なのではないかと思っています。
佐藤会長
そうすると結婚の意味が変わってきて、別に経済的な親元から、結婚して、経済的な所属でということはなくなってきたので、パートナーシップを重視して、一緒にいられる人かどうかということが大事になってきたというのがありますけど、一方、経済的インセンティブを結婚につけるということですね。結婚した方が得だという部分をつけたらどうかと。
高橋委員
要するに結婚し家族を形成していくということを日本の社会で非常に重要なことだと認識して、それを制度化するかどうかということですね。
玄田委員
教育水準と出生率の関係についてはどうなっているんですか。つまり高学歴化が進めば、当然機会費用が大きくなって出生率の低下要因になるのですが、一方で学歴水準が低い方が就業機会の現状が困難になるということは、両方の可能性があって、少子化の要因図式にまとめられているというのは非常にわかりやすいのですが、一方で教育の問題ということがあまりこういうときにクローズアップされないのは、以前からなぜかと思っていましたが、実際、出生率の変化と教育水準について教えていただきたい。
高橋委員
1つは結婚に関してみると、学歴別に見て未婚率はどこで高いのか、女性に関して言うと、高学歴の女性の未婚率が高い。
玄田委員
上昇率も高学歴は高いんですか。
高橋委員
高いです。
玄田委員
上昇率も。
高橋委員
そうです。男性の方は、実は学歴が低い方が未婚率は高い。
玄田委員
上昇率も高い。
高橋委員
上昇率も高い。男性と女性で非常に違う傾向が出ています。結婚してからの出生率に関しては、あまりクリアーな結果は出てきませんけれども、全体として言えることは、高学歴の女性は結婚市場に出るのが遅いですから、子どもを産むテンポが遅いということはありますし、さらに結果として若干出生率が低いということはあります。
大沢委員
関連質問なのですが、私も毎日新聞のデータでは見たのですけれども、所得水準と子ども数については、人口問題研究所の方で、例えばリニアの関係とかマイナスとか、そういうデータはございますか。
高橋委員
なかなかクリアーに出ないんですよね。我々の研究でも所得を入れて集計をするのですけれども、なかなかきれいに出てこないというのが結果ですね。
大沢委員
これから出てくるのかもしれないのですが、経済不安と出生数との関係は、毎日新聞のデータでは少し見られて、経済不安を抱えているところで、子どもが欲しいが、産んでいないという傾向があったように思いましたが。
高橋委員
私も毎日新聞のデータを見たときに、非常におもしろかったのは、バブル経済崩壊のことを聞いていますよね。それで希望子ども数を見てみると、1990年代の初めに結婚した夫婦について見ると、非常に経済不安というのを感じているのだけれども、子どもの数の希望が多い。90年代半ば以降に結婚した人について見ると、経済不安はそれ以前よりも多くはないけれども、希望子ども数が少ない。つまり調整をしているわけですね、後の世代の方が。ですから、そういう経済不安が実際に出生の意欲自体も小さくさせてしまったという、そういう結果は確かに見られました。
玄田委員
変なことを聞きますが、明確な理由があって、子どもを産まないという人と、理由はないけど、産まない人というのは一体どのくらいの割合があるかという分析はあるんですか。つまりある程度理由があって、所得の問題とか、家庭環境とか、はっきりとした理由で産まないという人に対する対策と、さっき不安という話もありましたが、何かよくわからないけど産まない、産むのが怖いという人と、当然対策も違うと思いますが。例えば統計をとられるときに、誤差項とか残差でとらえるような大きさというのが一体どのくらいかとか、そういうことは何か分析されているのですか。
高橋委員
我々の持っている時系列の調査データで調べてみると、産み終わった時点、50歳時点で、いわば無子率といいますけれども、子どもを持っていない人のパーセンテージを調べてみると、大体それは歴史的に見ると、古いのは10%ぐらい高いのですけれども、それ以降、70年代の人々に関していうと4%程度なんですね。
 ところがそれが近年になるにしたがって、つまり4%というのは、生物学的に不妊が発生する最低ラインだと思うんですけれども、それが今若い世代のところで10%ぐらいに高まっている。つまりその差分が、7%ぐらいが意図的に出生抑制している。子どもを持たない状態をつくっているのだろうというふうには見てとることはできます。
玄田委員
7%。
高橋委員
はい。
玄田委員
たった。
高橋委員
ええ。
玄田委員
ということは、逆に言えば、ほとんどは明確な意図もなく子どもを持たないということですか。つまり酒井順子氏が書くように、何となく痛そうだから産まないって、根拠のような、根拠じゃないような。
高橋委員
そういう人もいるだろうし、意識して子どもをつくらないという人も混ざった数値でいうと7%ということです。
大沢委員
その点に関して、確かな数字ではないのですが、意識調査から見ると、かなり若い層でも、結婚したいと思っていたり、伝統的な価値観を持っていたりする人たちが非常に多いとは思いました。例えば結婚相手に対する条件というのは大きく変わっているのですけど、でも結婚したら、自分が何をすべきかという、結婚した後の規範については、あまり年齢差がない。継続就業者と専業主婦の間で多少違うところもありましたが、継続就業者でもかなり伝統的な考え方が強いという面で、意図的に子どもを産まない夫婦が増えているという感じはあまり持たずに今までおります。参考になるかわかりませんけれども。
高橋委員
むしろ結婚年齢が上昇してくると、不妊確率が高まってくるんですね。ですから、今、平均出産年齢が29歳ぐらいのところにありますけれども、それが後半にずれればずれるほど、いわば子どもが持ちたくてもできないという確率は高まってくるということはよくわかっています。
岩男会長代理
きょうの御説明にはなかったのですけれども、何歳で第1子を産むかによって産む子どもの数というのが非常に影響されるようですね。私の限られた調査でも、例えば33歳以降で第1子を産んだという場合は、理想の子どもの数を満たしてない人の方がはるかに多いというデータになっていて、やはり早く産み始めないとなかなか出生率が上がらないと、そのような印象を非常に強く受けているのですけれども。
 ところが大学生で学校に行きながら、子どもを産むのはどうですかという質問を入れて聞いたら、全く賛成は得られませんでした。出産年齢を少し早める方策はないものかと思って調査したのですけれども、どうもその辺はうまくいかない。
佐藤会長
大体よろしいですか。
大沢委員
すいません、もう一つだけよろしいですか。90年代に夫婦が産む子どもの数が減った理由は何なのでしょうか。かなりそれが明らかになってきたということなんですか。
高橋委員
毎日新聞のデータとの関連で見てみると、やはり平成不況に入った段階で、つまりこれは推論にしかすぎませんけれども、結婚したカップル自体の経済的な不安定さというものがあって、さらに夫婦2人で所得があって初めてある一定のレベルの経済生活、生活水準が維持できるのですけれども、妻の片側の所得を失うということは非常に大きい。そのことが平成不況になってより鮮明になってきたということが大きいのだろうというふうに考えています。
武石委員
職業別で随分傾向が違いますよね。
高橋委員
はい。
武石委員
規模別に見ても、たしか中小企業へ勤めている人の方が継続率が高くて、大企業が低いというデータがあったと思いますが、本人の就業状況によって、これだけ就業継続率が違うというのは、例えば夫の収入が影響しているものなのか、本人のキャリア志向といったものが影響しているのか、この辺の背景の分析はされているのでしょうか。
高橋委員
そこから先のところはあまりまだ行われていないのが現状です。なかなか標本の規模の問題もあって、あまりにも構図ができないものですから。
玄田委員
できちゃった婚の要因分析というのはどうなっているんですか。つまり今結婚する最大の理由でしたか、できちゃった婚。
高橋委員
そうですね。
玄田委員
どういう人ができちゃった婚を選ぶかとか、背景とか、何か分析はあるんですか。大事なポイントだと思うのですが。
高橋委員
人口動態統計で、できちゃった結婚が多い、婚前妊娠が多いということはわかるのですけれども、社会経済要因が人口動態統計では調べられていませんから。
玄田委員
まだわからない。
高橋委員
わからないです。
佐藤会長
それは若い層ですね。
高橋委員
若い層。ただ、第1子出産の、今、24~25%ができちゃった婚ですから。
岩男会長代理
先生のお考えで、男女共同参画との絡みで考えたときに、例えばノルウェーのように、今、1.9人に回復したという、そのときの要因はどういうことだと解釈しておられますか。
高橋委員
今まで、私どもの所長も強調しているところですけれども、基本的に男女共同参画社会、つまり女性が働く。そしてそのもとで様々な社会制度が女性が就業することに対するバリアフリーの状態にすることによって、初めて結婚し、働き、そして子どもが産めるという社会が実現したのだということですね。ですから、そういう図式がない社会、例えば日本であるとか、あるいは特にイタリア、スペイン、東アジアも全般的にそうですけれども、いわば男性優位で固定化した社会で、なおかつ制度がそれを補強している社会というのはなかなか出生率が上昇していかないと、そういうことだろうというふうに理解しております。
佐藤会長
よろしいですか。ありがとうございました。また、最後、時間があれば、高橋委員に御質問する時間を持ちたいと思います。
 それでは、続きまして、議事次第の3「統計分析手法の仮説について」、御説明いただいて議論したいと思います。事務局で資料を用意していただいていますので、御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
矢島分析官
お手元の資料2を御覧ください。前回、調査の全体像について御説明いたしましたときに、少子化と男女共同参画に関する実証分析ということで、まず、国際間、国内間で、社会環境の把握をして、それを指標化するということを御説明いたしました。また、次のステップで各国の社会環境の背景にある施策・制度の違いを把握するということを御説明いたしました。
 そこで今回は、まず第一に、社会環境の指標を作成するための仮説について御議論いただきたいと思っております。
 資料2-1を御覧いただきますと、仮説設計のための検討資料としてキーワードの整理の(案)をお示ししております。こちらは一応様々なキーワードをプロットするに当たりまして、2つの軸を設けて設定しております。こちらについては、本日皆様に御検討いただく第1回ですので、皆様の方からこちらの案によらずもっと自由に様々な御意見いただければと思います。
 また、次に資料2-2の方では、プロットしたキーワードをもとに、今後、指標として軸を設定していくに当たっての候補をまとめております。左側は、仮に8分野で設定したパターンということで、社会の流動性、地域の子育て環境、働き方、子育ての経済的負担、家族形態、家族生活や家族に対する意識、性別役割分担、社会不安としております。
 右側の方は、もう少しまとめまして6分野パターンにしてございますけれども、こちらは社会の流動性というところを外して、左側の5番目の家族形態と家族生活や家族に対する意識と実態面というのを合わせて1つの指標にした場合ということでお示ししたものでございます。
 こちらについても、案と書いておりますが、全くのたたき台でございまして、皆様の方で全く違う軸の設定の御意見をいただければ、また検討させていただきたいと思います。また、それぞれの軸を設定することで、資料2-1にありました全体のキーワードを幅広く網羅するのがいいのか、それとも1つ1つの軸について、かなり象徴的な項目に絞っていく方がいいのか、そういったところも御意見をいただければと思っております。
 次に資料2-3でございますけれども、2-3は2-2の指標の項目につきまして、具体的に取れるデータ項目を整理したものでございます。こちらについては、具体的なデータをまだ把握できていないものも結構ございますので、抽象的な表現になっているところも多くございます。
 続きまして、資料2-4の方でございますけれども、各国の基礎データの傾向を皆様に見ていただこうと思いまして、図表を示しております。まず合計特殊出生率と女性就業率の相関ということで、前回、参考資料4でお示ししたOECDのグラフと類似のものでございますけれども、1980年、90年、2000年と見た場合に合計特殊出生率と女性就業率がどういう関係にあるかということを見ております。こちらは上の方は女性就業率で見ておりまして、下の方は女性労働力率のデータを入れております。就業率と労働力率につきましては、若干各国によって定義が違うという面もございまして、どちらを用いるのが適切かということの判断も必要ですが、実際に他のデータとの関係をみてどちらがいいのかという部分もございますので、当分両方を使って見ていきたいというふうに考えております。
 次のページに現在データを収集作業を進めております、対象国をあげておりますが、オーストラリア、オーストリア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ポルトガル、スペイン、スイス、イギリス、アメリカ、カナダ、デンマーク、スウェーデンということで、OECD諸国の中で、合計特殊出生率と女性の労働力率のデータが1980年~2000年について、ほぼ揃っている19ヶ国を対象としております。
 次のページでございますけれども、各国別に80年から2000年にかけて合計特殊出生率と労働力率がどのように推移してきているかということを示したグラフでございます。
 アメリカを見ていただきますと、女性の労働率が上がりながら、合計特殊出生率も上昇している。ニュージーランドのように、女性の労働力率が上がって、合計特殊出生率はやや上がっている時期、下がっている時期がありながら、ほぼ横ばいの状態にある国。それからフランスのように、女性の労働力率がやや上昇しながら、合計特殊出生率は下がってきたのですが、ここ5年の間にかなり合計特殊出生率が回復してきている国などがございます。
 めくっていただきますと、次のページは、デンマーク、オーストラリア、フィンランド、オランダの状況がございます。オランダも女性の労働力率がかなり伸びておりまして、合計特殊出生率がほぼ横ばいになっている状況でございます。
 次のページをめくっていただきますと、イギリス、カナダ、スウェーデン、ポルトガルの状況を示しております。
 それから、4ページ目へまいりますと、スイス、韓国、ドイツ、日本の状況でございます。日本の場合、1980~2000年で女性の労働力率はほとんど伸びておりませんで、合計特殊出生率だけがすとんと落ちているような形になっております。
 次の5ページ目にオーストリア、スペイン、イタリアということでお示ししております。グラフを並べている順序は、2000年時点の合計特殊出生率が高い順となっておりますので、後に行くほど2000年時点の合計特殊出生率が低い国ということでございます。
 OECDの諸国の中では、ここ5年間ぐらいで合計特殊出生率が回復している国が何カ国か見てとれると思います。
 次の資料からは、バックデータをお示ししております。
 資料2の最後に統計分析関連作業のスケジュール(案)というのをお示ししておりますが、やや細かくなっておりますが、一番上の枠が国際間比較でして、ステップ<1>で、社会環境を把握し、ステップ<2>で各国施策・制度の違いを把握する。
 それから2番目の枠は、国内間比較で、やはり社会環境の把握と、各施策・制度の違い、それから市区町村の事例分析を行うということでお示ししておりますが、スケジュールといたしましては、本日11月22日に指標の案を御検討いただきまして、12月2日にもう一度打合せ会をさせていただきまして、こちらで指標に用いるデータの候補について先生方の御意見をいただきまして、実際にデータを入れて相関関係等を見ていく作業を始めたいと思います。そして、年が明けまして、1月14日、第3回目の打合せ会で中間報告をさせていただきまして、指標について御検討いただきました上で、第3回、1月28日の専門調査会で、委員の皆様に御意見をいただきます。その後、適宜見直し作業を実施していくという形で進めさせていただきたいと思っております。
 本日は、資料2-1と2-2につきまして、指標にデータを入れていく作業を今後するわけですけれども、設定する軸等について皆様の御意見をいただければと思っております。
 以上です。
佐藤会長
この統計分析のアウトプットがどういうものかをイメージしていただいて御意見を伺った方がいいと思いますので、間違っていたら分析官の方から御説明いただきますけれども、最後の方に、女性の労働力率と出生率を図示したものがありますね。これは1時点で比較したものと時系列で比較したものもありますけれども、例えば日本とオランダ、日本は労働力率も出生率も上がらない。オランダは労働力率は上がったけれど、出生率は下がっていないとか、そういう違うタイプの国があるときに、その背景要因。先ほど高橋委員が言った、女性の社会参加が進むということと女性の出生率が逆相関しているところと、相関しているところ、この背景にどういう制度的な要因があるのかということを、例えばレーダーチャートで国ごとの違いを見たいというのが事務局のねらいのようです。
 ですから指標といった場合、それぞれの国の女性の社会参加なり、それと出生率の背景にある制度、重要なものが入ってないと比較にならないということですね。そういうものが指標として入っているかどうか。これが大事なのにこれが落ちている、これは逆に要らないという御意見を伺えればいいと思うんですが、そういうことでいいですか。
矢島分析官
今おっしゃっていただいたように、合計特殊出生率と女性労働力率の時系列で見た形のパターン分けをしたときに、できれば、そのパターンごとに特徴的な社会環境指標がこちらのレーダーチャートのような形であらわせて、その労働力率の推移の形とその背景にある社会環境というのを併せて見ることができれば、一番よいかと思うのですけれども。
佐藤会長
できるだけわかりやすくアピールするということも、一方で、アカデミックにやればどうかという議論はあるけれども、わかりやすさという、世の中に出していくためにはそういうものがいいのではないかと多分背景にあるのだろうと思います。これは国際比較ですが、同時に国内の地域間比較も同様のことをやるというお考えのようです。そういうものをやると考えたときに、どういう指標を採り上げたらいいかということについて、御意見、アドバイスいただければということです。よろしくお願いします。
岩男会長代理
たくさん指標があるわけですが……。
佐藤会長
そうです。全部はできないです。
岩男会長代理
指標がたくさんあるわけですが、要するにこの専門調査会のねらいは、男女共同参画との関係ということですから、まずそれを優先順位で選んでいって、そしてその他のものはできればとか、ニーズ的に考えるというような、少し差をつけた方がいいような感じがいたしますけれども。
杉山委員
質問になるかと思いますが、先ほどのご報告にも出ていたように税制度や年金制度のように、日本では、制度が女性の労働力をアップする、しないに大きく効いているという部分があったと思うのですが、ここには、制度、政策のようなところがキーワードに入っていないのですけれども。
矢島分析官
先ほどステップ<1>とステップ<2>というふうに御説明しましたけれども、こちらの指標で示そうとしているのは社会環境です。2-1の方を見ていただきますと、図の真ん中あたりに<3>の「働き方」という大きい枠囲いがあるのですけれども、この中に就業形態にある待遇格差というようなものを示しております。そういった実態面でどういう差があるのかということをここでは指標として示して、ステップ<2>で、そういう社会環境の背景にある制度は何なのかということ。それから、そういった制度がどのタイミングで、どういうふうに各国変化してきているのか、といったところを見ていきたいと考えているのですけれども。
佐藤会長
今の資料2-2で、<4>の「子育ての経済的負担」に機会費用がありますね。例えば、日本で機会費用が非常に高いといったときに、そのことの説明はこのレーダーチャートではなくて、別に分析すると、そういう趣旨ですね。
矢島分析官
はい。
佐藤会長
ここでは機会費用という形に載せておいて、国ごとに違いがあるといったときに、それぞれの国ごとの背景としてどういう制度があるかはステップ<2>でやる。
矢島分析官
機会費用・逸失利益が女性の労働力率、出生率と相関があれば指標として出てくるということで、その背景にある具体的な施策・制度はステップ<2>で出てくると。
佐藤会長
ということのようです。いろいろ御意見を出していただいて議論した方がいいと思いますので。
玄田委員
さっきの岩男先生がおっしゃったことと関連すると、この8分類でも6分類でも、非常に構造的によくまとまっていると思うんですね。非常にうまいなあと思う反面、「男女共同参画」という言葉とどう関係しているかというとよく見えない。僕がいつも思うのは、「男女共同参画」という言葉はまだ十分に正確に認知されてないときに、基本法のキーワードの3つというのは、機会費用の機会ということと、享受ということ、満足度という面と責任という、機会と享受と責任というのはこの基本法の大事な文面だから、この3つから整理したときに一体何が足りないのか。特にどの部分が少子化と関係しているかというまとめ方は、男女共同参画ということをかなり強く押し出すためには、この社会機能上の3分類からどれに当てはまるかというやり方もありで、社会構造上の8分類という見方もあるけど、一方で「男女共同参画」ということを強く押し出すのであれば、今言ったような社会的な役割としての3分類ということをベースにしてまとめる手もあり得るとは思う。
 満足度みたいなことは直接出てこない。見ようと思えば見えるけど。
矢島分析官
社会不安のところで、逆に不安感みたいなものは入れているのですけれども、満足度という形では……。
玄田委員
特に均等に満足度を享受しているかとか、これが女性については満足と見るのか、男女における均等度で見るかで、同じようでも全然とり方が違うから、それをやはり十分議論しないといけないのではないか。つまり絶対指標なのか、相対指標なのかということもあるし。
佐藤会長
2人の御意見にかかわるのですけど、女性の社会参画の程度のようなものをここに入れるのか。それともその1つとして、女性労働力率をとっているわけですね。男女共同参画の進展度というものをつくった上で、その違いに影響する制度ではない、社会環境をレーダーチャートにするのか、その辺はどうなのでしょうか。
岩男会長代理
労働力率だけを見ますと、要するに男女共同参画は専業主婦を対象にしてないのかという批判になってしまうので、そこは気をつけないといけないのではないかと私は思っているのですが。
佐藤会長
その辺も含めて、どういうふうに分析するかですね。それは大事な点なので、また後で、ほかの方は。大沢委員、先ほど労働力率、就業率とか、その辺は、当面両方やると言われていましたけど。
大沢委員
私が見た限りでは、労働力率といっても、働き方によってかなり出生数が違います。例えば働いている社会でも、先ほど高橋先生のお話にもありましたように、60年代は、専業主婦と家族従業者で子ども数に変化がなくて、ただ、雇用者のみ出生数に変化があったというようなことがあったので、大きな指標をとってしまうと、両方が相殺されて結果が見えないというようなことがあったんですね。特に韓国とか日本とか変化が非常に激しい場合には、1つはサービス経済化がどの程度進展しているかということだと思うのですが、それに伴って、外で働いている女性がどれぐらいいるかというのは、実際には出生率に関係するということと、それから出生率が低下し始めてから、各国でそれぞれいろいろな制度をとって、それぞれの国が出生率を低下させないための制度というのを直接的ではないのですが、間接的にとってきたように思うのですね。そのアプローチの仕方が国によって違うのではないかと思っていて、例えばアメリカとオランダでは、女性労働とか無償労働に関する考え方というのが全然違いますし、ヨーロッパの例えばスウェーデンなどでは、無償労働の部分を平等にすることによって、結果として有償労働の部分も平等になるというような考え方に対して、アメリカの場合は、有償労働の方の平等化から入りましたので、少しそれぞれの国で回復しているといっても違うのではないかと思いました。 それで、私、あまり詳しくないのですが、ヨーロッパの方で、今、福祉国家の類型化というような試みが行われていて、佐藤先生の方が御存じだと思うのですが、労使関係の仕組みと有償労働と無償労働の分担の考え方、両面同じコインの表と裏ですけれども、そういったところで類型化してみると、アメリカやイギリスのような国と、スウェーデンのような国とはアプローチが違うと。
 もう一つはドイツですよね。日本、スペイン、イタリアというように、福祉が家族によって担われることが前提になっている国というような形で、私が知る限りでは4パターンだと思うのですが、もう少しあるかもしれません。その辺りから、例えばデンマークとか、オランダとか、出生率が90年代になって回復している国は、働き方を変えたということが非常に大きいと言われておりますので、そういったことを少し入れてみるとパターン化できるかなというふうに思います。
 それと働き方というところにリンクが出てくると、働き方を変えることが出生率の回復につながるという可能性も出てくると思いますので、その4類型なり、類型化する中でヨーロッパの変化を見ていくとヒントがあるのではないかと思いました。
佐藤会長
高橋委員、いかがですか。
高橋委員
私が配った資料の中で、所得階層別の雇用者数30代から40代後半、こういうデータを各国別に集めると、どのような働き方をしているかというパターンがきれいにとれると思うんですね。
佐藤会長
50ページですね。
高橋委員
こういうデータで評価、つまりこういう形があらわれるというのは、何か制度がないとこういう形にならないわけですから、強度を各国別に収集するというのはいいのではないかと思いますけど。
佐藤会長
検討させていただきましょう。ほかには、はい、どうぞ。
杉山委員
少し細かいのですが、男性の家事時間が入っているのですけれども、そもそも家にいる余暇時間というか、それは男性に限らず、多分女性も働いていると、会社にいる時間が長過ぎて、夫婦で話をする時間もないとか、そういうことも少子化の影響になっているのではないかと思うので、家事時間だけではなくて、もう少し時間というものを見てみるといいのではないかと思います。
奥山委員
別の委員会では、週に何回、父親がというか、家族でごはんを一緒に食べているかという回数を出すといいのではないかというお話もありました。
岩男会長代理
厚生労働省の方で、未就学児を持つ父親の帰宅時間をとっておりますので、ああいうものも。
佐藤会長
そうですね。国際比較でとれるか、それはちょっと考える……。
矢島分析官
働き方のところで、労働時間と通勤時間をとっているのですけれども、今、岩男委員がおっしゃったように、そのようなことを併せて帰宅時間でみるというやり方もあると思いますし、杉山委員がおっしゃったように、その裏返しで家にいる時間という形でとるというやり方もあると思うんですけれども、あともう少しデータを見てみながら、その辺を詰めていきたいと思います。
佐藤会長
岩男委員がおっしゃったように、当然専業主婦を含めて男女共同参画を考えるわけですけれども、もともとの出発点は、女性が雇用者として働きに行くと出生率が下がるのではないかという議論があるので、それがどうかということだと思うんですね。女性の社会参加というのは、雇用者として働くことを進めることではないということを理解した上で整理するのかなという気もしますので、ちょっと事務局として……。
岩男会長代理
そうですね。特に男性の働き方と、子どもが生まれることとは当然関係があるわけですから、専業主婦の夫が、どういう働き方をしているかということも含めて考える必要があるのでは。
矢島分析官
働き方のところで、前回、打合せ会のときでも、勤務時間や通勤時間は、思い切って男性だけで見てしまってもいいのではないかという御意見もありました。
武石委員
質問ですが、例えば社会の流動性で4つの指標があって、これを総合的に見ようというときに、どういうふうに指標化するのか。組み合わせるのがいいのか、1つの指標を代表させるのがいいのかという投げかけがあったと思うのですが、例えば4つ使うときにどうやって指標化すればいいのか、技術的な問題としてあるような気がするので、何かアイディアがあれば。
矢島分析官
いろいろな難しいテクニカルなところがあるのですが、基本的には全部を入れて重回帰してしまうともうできないと思うのですね。どれかが効いてしまって、6分野なり8分野なりの指標を立てることは多分無理なので、1つ1つ単相関を見ていって、それである程度効いてくるものというのを残して、分野ごとに、それを総合化するのがいいのか、どれか1つに代表させるのがいいのかというのを、またそこから検討したいと思うのですけれども、ですから本当はあまりたくさんのものを合わせるのは難しいのかなというふうに思っています。
 ただ、イメージとして、この指標が、さきに描いたような社会環境全体をあらわしているという言い方が説明がしやすいのか、あるいはそれぞれの指標で地域の子育て環境といったときに、主に保育環境に代表させてしまった方が、その指標の意味が伝わりやすいのか、そのあたりも含めて、御意見をいただければと思っています。
玄田委員
そのあたり、多少関係あるけど、最終的にどの辺を落としどころにして資料つくるのかなということをイメージすると、資料2-4でほとんど語られているのではないかという気もする。つまり、これから見ることは、さっきの専業主婦の話もあるけど、就業率を今のままにして、日本だけは特別に出生率を上げるというのは相当難しくなっているだろうなと。例えば、こういう読み方をするのはちょっと乱暴だけど、決定係数を見ると、80年代、90年代、2000年代と上がっている。xの係数の傾きも大きくなっているわけで、結局、女性の就業率を上げないと出生率が上がらないという傾向は強まっているから、もちろん就業率と出生率というのは同時決定だから、どっちがどっちか説明するものではないけど、こういうのは全般から見ると、出生率を上げるということしかないだろうと。専業主婦のいろいろな権利とかあるけど、最終的には就業率を上げるしかないのでは。
 ただ、一方で、説明力といっても、0.3ぐらいしかないから、ほかのものも大事だという話はもちろんとっておくにせよ、最終的にはここではないかと思うけれども。
大沢委員
80年代のマイナスから、2000年に正の関係に移行する理由というか、そこが何か知りたいというか……。
佐藤会長
ここは大事だね。
大沢委員
それさえよくわかれば説得力があるのだろうなと思いますけど。
矢島分析官
皆様からその制度についての扱い方について、何度か御質問を受けているのですけれども、先ほど大沢先生もおっしゃったように、制度はかなり細かく見ていかないと、「ある」、「なし」ではなくて、どういうふうにアプローチしたかということが非常に重要だと思います。そういう意味で、指標化してわかりやすく見せるのは社会環境にさせていただきたいと。その背景として、時系列的にどういうことが起こってきたかという形で制度を見たいと考えています。ですから、今見えてこなくて、皆さん非常に不安に思われるかもしれないのですけれども。
佐藤会長
事務局としては、玄田さんが言われたように、後ろの方から見ながらワイドのデータを集めると考えられていると思います。実際はそういうふうにやらないと、全部網羅的に集めて落としていくなんていうのは無理なので。
 それではいいですか。きょうの御意見踏まえて、また……。
阿部委員
僕が思っていることを言わせていただくと、玄田さんや大沢先生が言ったところ、傾きが変わってくる1つの大きな原因は、先進国が成熟化社会を迎えて、経済成長が低成長になっていて、所得の伸びが伸び悩んできている。それが結果的に共稼ぎしないと家族を維持できないというようなことになっているのではないかと思っています。
  僕はこの4月に出した論文も、若い世代では所得環境が相当に悪化していて、それが子どもを産まないという選択につながっているのではないか、結果的に若い世代の所得環境をどう改善するかというのが非常に重要なのではないかと思っています。それが70年代、80年代、90年代、2000年代という形で就業率と出生率の間の関係が相当変わってきている大きな原因の1つなのではないかと思っています。
 そういうふうに見ていくと、この資料2-2のところで、共稼ぎをしなければいけないといった部分がどういうところから出てくるのか、もちろん男、女それぞれの所得の伸びというのは見えるかもしれませんけれども、男女共に外で働く、それと同時に男女共に家族を維持するとかという、そういう指標が少し足りないような気がしております。そこも少し考えてみないといけないなと思います。
矢島分析官
それは経済的な側面、働き方で見るということですか。
阿部委員
という部分もあるだろうし、あるいは意識というのもあるかもしれません。
佐藤会長
阿部委員が言われたように、低成長になって2人で働いて生活を維持するというふうに変わってきたのだと思うのですが、高橋委員が言われたように、日本の場合、そうなっても出生率が落ちるところと上がるところがあるわけです。そこの方が大事なわけですね。
阿部委員
多分高橋先生が言われたところで重要なのは、制度が女性を働きにくくさせていると。結果的に働き続けようとしたら制度を突破しなければいけないので、子どもを産まないとか、正社員のままやっていくとか、結婚しないとかという選択しか残ってないと。
佐藤会長
説明の仕方ね。
玄田委員
経済で思い出したが、さっき男性との比率で見るかというのは、変化で見ないといけない。つまり最適な出生率というのは限界、もう一人子どもを産むことに伴う追加的な費用の増加と追加的なベネフィットから決まるから、80年代と90年代という長期で限界と見るかどうかはわからないが、10年前とか数年前とは変化……もっと言えば、もう一人子どもを産むことがどのくらいそれに対してベネフィットがあるか、そうでないかということを見ないと、厳密には意味がない。だから、男女比、あと変化、同じ指標をつくるにしても見方によって全然解釈が違って、厳密には男女比を考慮に入れた変化、相対的な価格の変化ということを見ないと、まじめな経済学者には文句を言われるかもしれない。平均を見てどんな意味があるのかとか。
佐藤会長
いろいろ有益なアドバイスをいただいて、かなりやれることもあると思いますが、それで修正していっていただければと思います。
 それでは、もう一つ、この専門調査会ではアンケート調査を企画しています。特に子育て、先ほど女性が結婚して子どもを産んで育てられるようにサポートすることは非常に大事だということで、今度はかなりミクロにおりて、企業の中でそれをどうサポートするのか。育児休業を取った人の、職場もうまくいくし、本人の復帰後もうまくいく方法、その辺について調べようというアンケート調査を企画していますので、どういうやり方で、どういう内容かを説明していただいて、御意見をいただければと思います。それではよろしくお願いいたします。
矢島分析官
お手元の資料3-1を御覧ください。「新規アンケート調査の実施について」ということでお示ししております。
 まず1番目に調査の目的ですが、企業の管理者を対象に両立支援策に関する意識調査を行います。
 職場において社員が両立支援策を利用しやすい環境づくりとして、支援策利用の際の具体的な対応策、課題等を、部下に支援策を利用した者がいる管理者の意識・経験から把握するということでございます。
 2番目の調査対象といたしましては、企業において両立支援策を利用した社員がいる部門の管理者:計7000人ということで、前回、専門調査会では1社当たり3名というような形で把握することを御提案いたしましたが、もう少し1社当たり把握できる人数は少ないのではないかという御提案も受けましたので、対象企業数を増やしまして、従業員規模100人~300人の企業の管理職:1000社、各社1人当たりで計1000人。従業員規模300人超の企業の管理職:3000社、各社2人ずつで計6000人を対象にしたいと思います。
 サンプリングの方法は、「帝国データバンク会社年鑑」「日本会社録」等の企業リストをベースに、対象事業所を抽出いたします。
 また、調査方法ですが、調査票は各社の人事部担当者宛てに郵送します。
 人事部において、調査対象者を選定し、調査協力を依頼します。
 調査対象者とは、過去3年間に両立支援策を利用した社員がいる部門の管理者とするということです。
 調査実施の具体的な流れは次のページにお示ししております。
 まず、人事担当部門へのお願いということで、両立支援策の利用者の選定をしていただきまして、その方の管理者を選んでいただきまして、『管理者の方へのお願い』状を作成していただいて、調査票の一部に人事部で回答いただきます。
 それから、管理者の方へ協力依頼を回していただきまして、管理者の方で調査票に2ページ以降を回答していただくということで、回収は管理者の方から人事部を通さず直接に郵送していただきます。
 ページをめくりまして、ずっと5ページまで飛ばしていただきまして、次にA4横の1枚紙があるかと思いますけれども、こちらを見ていただきますと、こちらのアンケート調査の調査票設計の考え方を示しております。
 両立支援策の利用希望の申し出を受けてから現在に至る流れの中で、管理者の経験として、各タイミングに感じたこと、行ったことなどを把握することにより、職場において社員が両立支援策を利用しやすい環境づくりのための具体的な対応策、課題等を検討するということでございます。
 記入者は管理者ですけれども、把握する内容としましては、利用者、管理者、周囲の方、人事部門・福利厚生部門・会社の対応等を把握いたします。
 左側の流れを見ますと、対象利用者からの支援策利用の希望の申し出があった時点、この時点で利用者の属性はどうであったか。それから管理者の属性・価値観はどうであったか。申し出を受けたときにどのように感じたか。支援策を知っていたか。承認するまでにどのようなことをしたか。それから申し出の承認があり、支援策の利用の開始がありまして、具体的な利用内容、管理者が現場で対応したこと、周囲の方の理解と協力、会社・部門全体の理解と協力。
 それから支援策の利用の終了後で、利用者の就業状況、利用者に対する影響・効果、管理者に対する影響・効果、周囲の者に対する影響・効果、会社・部門全体に対する影響・効果。
 そして最後に、仕事と子育ての両立支援に関する、企業や行政への意見・要望ということを把握したいと思っております。
 次のページからは、具体的な調査票案と依頼状案になっております。資料3-2が人事担当部門担当者宛てに依頼する依頼状でございます。こちらでは、調査のお願い状ということで挨拶文がございますけれども、次のページから、先ほど御説明いたしました調査の実施の流れが書いてございます。
 1枚めくっていただきまして、資料3-3で、管理者の方へのお願いという依頼状がありますけれども、こちらの方は頭の所属、氏名というところが、人事部門の方に御記入いただく欄でございます。人事部の方から両立支援の対象者を選んでいただきまして、その対象者が利用を申し出たときの管理者を選んでいただきまして、その管理者の所属と氏名をこちらに書いていただきます。
 それからこのお願い状の中ほどに育児休業制度を利用した者の氏名ということが書いてございますけれども、こちらは制度の利用者を人事部でピックアップしていただきまして、ここに書いていただきます。
 今回は両立支援の中でも育児休業制度と短時間勤務制度についてお聞きすることにしております。
 次のページ、資料3-4からが調査票になっております。こちらは時間もありませんので、駆け足で御紹介いたします。まず1ページ目は人事担当部門の方に調査の対象となります両立支援策の利用者の方の属性についてお答えいただきます。年齢や勤務年数、育児休業制度の利用期間などは現場の管理者の方が思い出して書かれるのは負担が大きいと考えられますので、人事部でその対象者の方をピックアップした時点で御記入いただくという形をとっております。
 次のページにまいりまして、2ページ目からはそれぞれの管理職の方に御回答いただく分でございます。まず、所属する企業の都道府県、所在地、それから業種、従業員数でございます。こちらにつきましては、人事部で書いていただくということもあるのですけれども、300人を超える企業につきましては対象者の方が2名以上になりますし、それぞれについて同じことを答えていただかなければならなくなりますので、一応こちらは管理職の方にそれぞれ書いていただくということにしました。
 次に利用者が育児休業制度を利用したいと申し出た当時の職場の状況についてお伺いしています。Q4が従業員数、正社員のみについてです。Q5が正社員の女性比率、Q6が正社員以外の職員がいたか、いなかったか。それからパート・アルバイト等がどれぐらいの比率でいたかということでございます。
 次に3ページにまいりましてQ7は、当時の職場の残業の程度について把握しております。またQ8は、フレックス制度の導入状況についてでございます。
 次に利用者の育児休業制度の利用内容について確認いたします。
 Q9が、育児休業制度を利用したいという申し出を受けたのが利用開始のどれぐらい前であったか。Q10が、それまでに管理者の方の周囲で育児休業制度を利用した人がいたかどうかということを聞いております。SQでは利用した方が本人なのか、本人の配偶者なのか、同じ職場の同僚なのか、部下なのか、上司なのかということを聞いています。Q11では、管理職の方の会社の育児休業制度に対する理解について聞いています。Q12は、申し出を受けたときにどのように感じたか。
 次、4ページ目にまいりまして、当時、利用者が担当していた仕事の特徴はどれに近かったかということで、こちらは代替要員を見つけることの困難性がどの程度であったかということを把握する設問でございます。
 Q14は、利用者の育児休業制度の利用に当たって、どのような準備をしたかということを聞いております。
 Q15からは育児休業制度の利用中の対応についてでございます。開始時期や終了時期などについては、仕事等の都合で申し出を変更してもらったことがあったか。Q16、利用期間の長さが利用者の希望通りだったかということ。Q17は、当時の利用者の仕事をどのように引き継いだかということ。Q17のSQでは、選択肢の2、3は、職場にいる特定の個人に引き継いだ、あるいは他部門からの異動によって引き継いだという選択肢ですが、こちらに「○」をつけた場合に、その方の職級がどの程度だったかということです。利用者と同じくらいであったか、それより下か上の人であったかということを聞いています。 次に5ページ目ですが、Q17で、パート、派遣社員に引き継いだという場合、新規に雇用したのか、職場にもともといた人に引き継いだのかということを聞いております。
 またQ18は、制度利用期間中、職場で対応したこと。Q19は、周囲の方々の協力です。 また、次からは育児休業制度の利用終了後ということで、Q20 利用者は、原職に復帰したか。Q21 復帰後の利用者の仕事のスキルは、制度利用前に比べてどのようであったか。SQ 利用者の仕事のスキルが制度利用前に比べて下がった場合に、戻るまでにどれくらいの時間がかかるか。それからQ22は、社員が育児休業制度を利用することについてどのように考えているかということでございます。
 次に6ページからは勤務時間短縮制度についてでございます。
 こちらは、基本的には育児休業制度と同じような構造でございまして、Q23 利用の希望を聞いたのはいつであったか。Q24 制度のことを知っていたのか。Q25 利用開始前にどのようなことをしたのか。Q26 実際に勤務時間短縮というのはどのような短縮をしたのか。Q27 1日の時間をどの程度短くしたのか、就業日数をどの程度短くしたのかというようなことでございます。
 次の7ページ目、Q28 利用者の希望通りに日数を少なくしたのかどうかというようなこと。Q29 制度利用期間中に、どのように仕事を引き継いだのかというようなことが続きます。
 次に8ページ目にまいりまして、Q30 利用者の制度利用期間中に職場で対応したこと、Q31 周囲の方々の協力状況。Q32 管理者の立場として、勤務時間短縮制度の利用についてどのように考えるか。1日当たりの就業時間を短くする方法で、これぐらいの時間がよいとか、いずれの方法でもできれば利用してほしくないというような、実際にそういった部下を持った管理者の方の感想ということで聞いております。
 それから、9ページ目からは、影響・効果ということで、まずQ33が、管理者自身に対してどのような影響があったか。次にQ34 利用者本人に対して、どのような影響・効果があったのか。Q35 利用者の同僚、周囲の者に対して、どのような影響があったのか。Q36は、企業や部門全体に対してどのような影響があったのかということでございます。
 10ページからは、企業における社員の子育て支援についての一般的な考え方についてお伺いしています。
 Q37は、企業が社員の子育てを支援する理由について、どう考えるか。Q38は、子育て支援を進めるに当たっての問題点。Q39が、両立を促進するために必要と思われること。Q40は、国や自治体など行政に期待するものとなっております。
 11ページからは、最後に管理職の方自身のプロフィール等についてお伺いしております。Q41 性別、Q42 年齢、Q43 パートナーの有無、Q44 配偶者・パートナーの仕事の状況、SQ 配偶者・パートナーの就労形態、Q45 子どもの有無、SQ子どもが未就学の状態のときの子育ての仕方、その当時の配偶者・パートナーの働き方、Q46 その当時の配偶者・パートナーの方の就労形態。
 最後に女性の働き方ですとか、性別役割分担に関する管理職の方の考え方ということで、この問い、<1>、<2>、<4>は、内閣府で行っております世論調査と基本的に同じ設問を設定しております。
 以上、ざっと駆け足で御説明しましたが、対象者の抽出条件といたしましては、この3年以内に育児休業制度を利用した方、あるいは育児休業制度+短時間勤務制度を利用した方ということになっております。そして、その中でも、優先順位としては、男性がいれば男性を優先していただくということでお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
佐藤会長
育児休業を取得してやめる人もいるのですけれども、基本的には、比較的うまくいっている方の情報を集めて、ほかに参考にしてもらうという趣旨です。そういう意味ではいろいろな施策もあるのですけど、基本的には育児休業と、もう一つは育児休業+短時間勤務制度の取得。短時間だけ取るという可能性もゼロではありませんが、一般的には育児休業を取ってから短時間勤務です。ですから、対象者の選定に当たっては、まず男性を優先する、次に、短時間勤務の利用者は少ないので、育児休業+短時間勤務の利用者。最後は直近の育児休業利用者という形で選んでいただく。特に管理者が、育児休業取得期間中、うまくマネジメントできるかどうかが、やはり利用しやすさにかかわるので、その辺を調べようというふうになっています。まだ、70点ぐらいの出来なので、こういうものが大事だというような変数があればぜひ伺って、こちらで工夫して、また質問に入れたいと思っています。
 全体の量があるので、総量規制でカットするということは起きるかもわかりませんが、こういうものを聞いてほしいことがあればぜひ伺えればと思います。
 また、個人の名前を書かせるところ、個人情報はこちらまで戻らないという形になるよう、別の紙にします。
杉山委員
5ページのところで周囲の方々の反応を聞いているのですが、職場の同僚がどうだったかというところで、話を聞いてみると、かなり同僚が厳しくて、それに対して上司なりがどういうふうに対応したかという部分、そこに苦慮される部分があるのではないかと思っています。例えば、そのとき、人事部がセミナーをすればよかったとか、同僚のために何をしたらよかったのかといった部分が聞けるといいと思いました。
 それに併せて、「スキルが戻りましたか」という質問がその下の方にあるのですけれども、スキルが戻らなかったという場合は、何をすると有効かという質問もあるといいかと。
佐藤会長
4ページのQ14で、対応は聞いているのですけど、問題は聞いてないのは確かですね。同僚に説明しても、周りがあまりサポートしないというようなことがあったかどうかということ。それは考えさせていただきます。ほかには。
阿部委員
別にこの調査の価値を否定するわけではないですけれども、育児休業を取得する人というのは、出産している女性のおそらく2割以下でして、いくら一生懸命頑張ったとしても、影響するのはそれぐらいしかないと。それよりむしろ、残りの8割の人たちが、育児休業を取れるような方向へ向けるということをしていかないと、向けなくてもいいのですけれども、育児休業そのものの効果というのはかなり限定的になるだろうと思っています。
 私が思うのは、育児休業を取得する人はどういう人たちかというと、やはり機会費用が高くなって、この会社をやめると困る人。比較的人的資本を多く身につけるような人たち。何を言おうとしているかというと、積極的に活用されるかどうかというのが、育児休業につながっていくかどうかの非常に重要な点だと思っています。
 ですので、それを少しこの調査票に盛り込むことはできないか。企業が女性の管理職を活躍させることについてどう思いますかとか、1行入れるぐらいでも十分ではないか。十分ではないですけれども、やってもいいかなと思います。
佐藤会長
阿部委員の言われるのは大事な点で、女性雇用管理調査では、育児休業取得率は73%となっている。出産時点まで勤めていた人をベースにすると73%だけれども、阿部委員の言われるのは、妊娠した人をベースにすると2割じゃないかという話ですよね。それが多少わかるようにした方がいいということですね。
 それの要因として、本人の機会コストの問題で、育児休業を取りやすいような職場かということを聞くと思うので、多少取りやすくなると、妊娠でやめる人も減るかなという趣旨ではあります。その会社全体として、出産までいて育児休業を取る人が多いのか、事前にやめてしまう人が多いのかは、どこかで押さえた方がいい。大事な指摘だと思います。
玄田委員
最後、管理職の家族に対する何とか聞いているのは非常におもしろいと思うが、それを除けば、管理職はすごくマシンみたいな感じ。現実には、明日から育児休業を取るという最後の日に何と言っているか、復帰した日に何と言って迎えているか、そこがポイントなんです。本当はそういうことを聞いた方がいい。あなたがどう思ったかどうかは関係ない。管理職が何と言って送り出すか、何と一言言ったのかが明らかに大事で、佐藤さんが参考資料になればいいというのは、実はそちらで、決めぜりふなんです。
 その7000人のうち何人ぐらい回収されるかわからないけど、そのときに、いいせりふが100でも集まれば、それは非常に参考になる。
岩男会長代理
同じようなことで、それをどういうふうに入れ込めるかなと迷っていたのですけれども、出産に関して私が行った調査ですが、継続就業をしてきた人と、やめて復帰した人、不本意ながら専業主婦になった人の違いは、周囲が戻ることを期待していたかどうかと関係しています。上司、配偶者、同僚と三者について聞いていますが、全部きれいに相関するんですね。だから、育休をとる人に、何て言って送り出したか……。
玄田委員
期待しているような演出をしているか……。
岩男会長代理
そう、「期待しているよ、必ず戻ってくるよね」と言うか、それとも「さようなら」と言うか……。
玄田委員
制度についてどう思うかなんて、どうでもいい。Q48、行政に対する意見なんて、書かれたって何もしないんだから、それだったら、何と言って送り出したぐらいのことは自由記述にした方がいい。
佐藤会長
後ろの方は確かにもう少し改善した方がいいかもしれない。
岩男会長代理
それとスキルとの関連で言うと、休業中にスキルをちゃんと提供している企業があるわけですね。だから、むしろスキルが落ちたかどうかよりも、そういう利用されるようなものが提供できたかという方が大事な気がしますけど。
 ただ、全般的に問いが多過ぎると思います。
佐藤会長
考えます。ただ、阿部委員が先ほど言われたように、妊娠でやめてしまうというのは会社もあまり期待していないという状況もあるんですね、多分。そういう意味では、経済的なコスト計算だけではなくて、どういう会社なのか、どういう職場なのか、聞いた方がいいかもしれませんね。均等を進めているところは、こういうことに熱心なのか、ということが出ればいい。
玄田委員
結局、その人をどうしたいかでは。その人についてこれまでどういうふうに見ているか。それまでどんな仕込みをしていたかというのが非常に大きいでしょう。育児休業を取って継続させたいというような気持ちにさせているのか、子どもができた、さようならというふうな感じのことをつくっているかというのは大きい。
佐藤会長
それでは、まだまだ完成ではありませんが、前回御説明しましたように、12月の初めには発送するんですよね。時間の制約が相当あるということで、きょういくつか御意見をいただきましたが、例えばこういう質問を加えたらどうか、こういう先行調査を参考にしたらどうかという御意見があれば、ぜひ1週間以内、29日までに事務局にお寄せいただければありがたいです。
 後ろがタイトなものですので、12月2日の打合せ会で、玄田委員、阿部委員、武石委員等々にまた御意見をいただく機会がありますが、そのときに最終案をつくらせていただいて、調整を私に任せていただくとありがたいのですが。皆様の意見を100%入れられるかどうかはわかりませんが、できるだけ努力いたしますので、そのようにさせていただければありがたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

佐藤会長
では、そうさせていただきたいと思います。
 それでは、あと事務局から連絡等ございますでしょうか。
矢島分析官
ありがとうございます。次回は、1月28日(金曜日)午後2時から4時、内閣府内の会議室を予定しておりますが、まだ部屋は確定しておりませんので、後ほど部屋は御連絡いたします。
 また、前回の議事録(案)を机の上に配布させていただいております。修正などがありましたら、11月30日までに事務局へ御返送をいただきたくお願いいたします。
 以上です。
佐藤会長
それでは、本日も熱心に御議論いただいてありがとうございました。特に高橋委員には、貴重なプレゼンテーションありがとうございました。
 それでは、本日の専門調査会、これで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上