計画実行・監視専門調査会(第41回)議事録

  • 日時:令和7年3⽉5⽇(水) 14︓00〜16︓00
  • 1.開会
  • 2.議題

        (1)女性デジタル人材の育成について
        (2)男女の性差に配慮した施策の推進について

  • 3.閉会

【配布資料】

資料1
  女性デジタル人材の育成について(内閣府説明資料) [PDF形式:1.2MB]別ウインドウで開きます
資料2
  デジタル人材育成の取組(内閣官房説明資料) [PDF形式:1.3MB]別ウインドウで開きます
資料3
  自営型テレワーク × 公設クラウドソーシング「KADO」+地域人材を起点とした自動運転/地域DXの推進別ウインドウで開きます
  (長野県塩尻市説明資料) [PDF形式:6.7MB]別ウインドウで開きます
資料4
  女性デジタル人材育成プランに関する説明資料(株式会社MAIA説明資料) [PDF形式:4.4MB]別ウインドウで開きます
資料5
  女性デジタル人材育成に関する提言(paiza株式会社説明資料) [PDF形式:3.6MB]別ウインドウで開きます
資料6
  男女の性差に配慮した施策の推進について(内閣府説明資料) [PDF形式:548KB]別ウインドウで開きます
資料7
  ジェンダード・イノベーション(日本大学・渡辺常務理事説明資料) [PDF形式:1.49MB]別ウインドウで開きます
資料8
  厚生労働省における男女の性差に配慮した施策の推進について(厚生労働省説明資料) [PDF形式:1.15MB]別ウインドウで開きます
資料9
  「ジェンダーと交通」セミナー(開催結果概要)(国土交通省説明資料) [PDF形式:296KB]別ウインドウで開きます
資料10
  井上委員提出資料 [PDF形式:344KB]別ウインドウで開きます
資料11
  佐々木委員提出資料 [PDF形式:4.2MB]別ウインドウで開きます
参考資料1
 計画実行・監視専門調査会委員名簿 [PDF形式:111KB]別ウインドウで開きます
参考資料2
 地域女性活躍推進交付金概要資料 [PDF形式:362KB]別ウインドウで開きます

【出席者】

会長 山田 昌弘 中央大学文学部教授
委員 石黒 不二代 世界経済フォーラム 日本代表
大崎 麻子 (特活)Gender Action Platform理事
桑原 悠 新潟県津南町長
佐々木 成江 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻特任准教授、
横浜国立大学客員教授/学長特任補佐「ジェンダード・イノベーション担当」
治部 れんげ 東京科学大学リベラルアーツ研究教育院准教授
徳倉 康之 NPO 法人ファザーリング・ジャパン理事、
株式会社ファミーリエ代表取締役社長
有識者 太田 幸一 長野県塩尻市先端産業振興室長
月田 有香 株式会社MAIA 代表取締役 CEO
片山 良平 paiza株式会社 代表取締役社長/CEO
渡辺 美代子 日本大学 常務理事
内閣府 岡田 恵子 男女共同参画局長
小八木 大成 大臣官房審議官(男女共同参画局担当)
大森 崇利 男女共同参画局総務課長
上田 真由美 男女共同参画局推進課長
内閣官房 大森 一顕 新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官
厚生労働省 宮本 直樹 健康・生活衛生局審議官
和田 秀樹 大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室長
谷口 倫子 健康・生活衛生局健康課女性の健康推進室長

議事録

○山田会長 定刻となりましたので、ただいまより第41回「計画実行・監視専門調査会」を開催いたします。
 本日御欠席の委員は、井上委員、小林委員、白波瀬委員、山口委員、山本委員でございます。
 また、徳倉委員が15時10分頃からの御出席予定とお聞きしております。
 昨年12月から、第6次基本計画策定専門調査会との合同開催という形で、現行の第5次基本計画のフォローアップを行ってまいりましたが、今回は、計画実行・監視専門調査会の単独開催として、 ・女性デジタル人材の育成 ・男女の性差に配慮した施策の推進 について議論を行ってまいりたいと思います。
 なお、本日は佐々木委員から資料の提出があり、御欠席の井上委員から書面により意見が提出されたため、事務局から出席者に対して送付しておりますので、御確認いただければ幸いです。提出のあった資料等につきましては、会議資料として内閣府男女共同参画局のホームページにて公開いたします。
 それでは、議題(1)、女性デジタル人材の育成について議論を行ってまいります。
 女性デジタル人材の育成については、令和4年に本専門調査会における議論を経て、男女共同参画会議決定により、「女性デジタル人材育成プラン」が作成されたところです。
 同プランは、3年間集中して推進するものとされ、策定後3年後をめどに、取組状況を把握した上で、プラン全体の施策の在り方について必要な見直しを行うこととされております。本日は、その見直しの方向性などについて、専門家の御意見もいただきながら議論をしていただきます。

○事務局 事務局のほうから御案内させていただきます。
 では、内閣府のほうから最初に説明させていただきます。

○大森課長 内閣府でございます。
 資料1に基づきまして、「女性デジタル人材育成プラン」の概要、女性デジタル育成に関するデータについて御報告させていただきます。
 1ページをお願いします。
 昨年6月に決定しました「女性版骨太の方針2024」における、「女性デジタル人材育成プラン」に関する記載となります。
 令和4年に策定しました「女性デジタル人材育成プラン」に基づきまして、令和4年度から6年度末までの3年間、集中的に取り組んでまいりました。赤字の部分でございますけれども、令和6年度末をめどに、主要な取組実績を把握するとともに、効果検証を行った上で、施策の在り方について必要な見直しを行うための検討ということで、今日がそのヒアリングということになります。
 この出口でございますけれども、本年6月の策定をめどとしていたしております女性版骨太の方針、今年の骨太の方針の検討と併せた形で見直しに向けた検討を進めてまいりたいと考えておりますので、審議のほうをよろしくお願いしたいと考えております。
 次をお願いします。
 こちらは、現在の「女性デジタル人材育成プラン」の概要になります。中段の赤枠になりますけれども、3年前、策定当時は、コロナ下で女性は就業的に厳しい状況であったということがありまして、就業獲得、所得向上に向けた、就労に直結するデジタルスキルを身につけるという形での人材育成の加速化が目的でございました。
 これに基づきまして、女性の参入の促進、あるいは育児・介護を行う女性でも柔軟な働き方ができる環境、また、全国に官民連携の取組を横展開するということをしてまいりました。
 4ページをお願いします。
 これは、当方の交付金による支援の実績となります。我々の交付金ですので対象が少ないのですけれども、38の自治体に交付金の支援を実施し、延べ6,000人の受講者が出て、就労支援に結びついたが240人になってございます。交付金をかなりたくさんお使いになられているということですので、引き続き就労につながる取組が重要ということが言えると思います。
 次をお願いします。
 ここからはデータでございます。IT技術者の男女比率は、労働者の総数では男女比は半数ですけれども、IT技術者について見れば女性が2割という状況でございます。
 次をお願いします。
 年収の推移です。デジタル分野に就労する女性は、他の分野と比較して経験年数に比例して年収の伸びが大きくなってくるという有望な分野であること。
 次のページをお願いします。
 そうでありながら、情報通信業における就業者の女性比率が平均より低いということでございます。
 次をお願いします。
 これを踏まえまして、今日皆様に御議論いただきたいポイントでございますけれども、コロナ禍を経た生活様式の変化、AIの活用の広がり、この3年間でデジタル人材における状況は様々変わってきていると想定されます。
 それから、女性の所得向上や柔軟な働き方の実現など、女性がデジタルスキルを身につける意義もあると思われます。
 また、育児や介護等により時間的な制約のある女性の就労、あるいは既に就労している女性のキャリアアップなど、女性がスキルを生かして活躍する具体的な姿とは何か、そのための支援の在り方は何か、さらに女性デジタル人材の育成・活躍に向けて、働き方改革の推進であるとか、学びの支援であるとか、地方における人材需要の創出であるとか、そのような今後取り組むべき事項について御意見をいただければと思っております。
 本日いただいた御意見を踏まえまして、プランの見直しに向けた検討を進めてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○山田会長 ありがとうございます。
 続きまして、内閣官房より資料2の御説明をお願いいたします。

○大森審議官 内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局でございます。
 資料の1ページ目でございます。
 デジタル人材の育成全体を政府でどのように進めているかという話です。岸田内閣のときのデジタル田園都市国家構想総合戦略がございまして、令和4年12月に策定し、令和5年12月に改定したのですけれども、そこで、デジタルの力を活用して地方の社会課題解決を図っていく、地方創生を加速化・深化させていくということで、大きな柱としては、「地方に仕事をつくる」、「人の流れをつくる」、「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、「魅力的な地域をつくる」という柱があるのですが、それをデジタルで支えるということで、右側の2つ目になりますけれども、「デジタル人材の育成・確保」というのがその条件として掲げられているものでございます。
 次のページになります。
 現状と課題です。この戦略をつくったときでございますけれども、デジタル田園都市国家構想が掲げるデジタル技術の活用による地域の社会課題解決を全国で進めるためには、その担い手となるデジタル人材の育成・確保が不可欠と。ただ、デジタル人材については、男性、女性、高齢者、若者にかかわらず、質・量ともに不足している。全体をならしてみると、都市圏に偏在しているのではないかというのがありまして、それが課題として挙がっているところでございます。
 政府全体では、デジタル人材を育成する必要があるということで、目標を定めております。その目標が、230万人を2022年度から2026年度までの5年間で育成するということでございます。その間に、2024年度末までに年間45万人を育成するという目標でございます。
 もともとこの戦略をつくったときに、デジタル人材というのはどういう人たちか、どういう人たちを育成するかというなかなか難しい議論があったのですけれども、数字に関しては、マクロ的観点から大胆な仮説を基に推計、と戦略に書いているのですけれども、330万人が必要なのだというところを設定して、情報処理・通信技術者の人数がその時点の国勢調査で100万人いたのですけれども、それを引いて、残り230万人を5年間で育成していくという目標を定めたものでございます。
 次のページになります。
 これは、我々内閣官房だけで取り組んでいるというわけではなくて、政府全体の取組ということで、デジタル人材の育成・確保という取組はいろいろな省庁で取り組んでいて、それらの施策で育った人材を積み上げて数字を出そうということになっております。
 具体的には、左側に担当省庁名がいろいろ書いてございますが、中心となっているのは経産省、厚労省、文科省でございます。ここは数値的には大きいのですけれども、経済産業省は、経済産業省自体とIPA、情報処理推進機構でありますけれども、そちらのほうでやっているデジタルスキル標準というのをつくって、オンライン教育コンテンツから、実際の企業の課題解決にチームで取り組む実践的なオンラインプログラムまで提供する「デジタル人材育成プラットフォーム」、あるいは情報処理技術者試験を通じた育成。
 厚生労働省は、「職業訓練におけるデジタル分野の重点化」ということです。企業のデジタル人材育成の取組への助成金による支援、あるいは公的職業訓練におけるデジタル分野の訓練コースの充実等と。
 文科省は、大学等における優れた教育プログラムを国が認定する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」がありまして、そちらの制度を設けたところです。教育という観点で人材育成をするということです。
 ここは主な省庁ということで重点取組と言っているのですけれども、実はKPIの9割以上、こちらの省庁が担当している。残りの省庁もいろいろな取組をやっておるところでございまして、こういったところを数的には積み上げるというものでございます。
 次のページになります。
 目標を定めて、それに向かって各省がいろいろな施策をやっていて、それをまた積み上げて幾らかという数字です。実は、年々目標達成をしている状況にありまして、2022年度は25万人の目標で33万人を達成、2023年度は35万人のところを51万人。2024年度は上半期ベースですけれども、48万人の目標を既に上半期で44万人ということで、かなり目標を上回るスピードで各省がデジタル人材の育成・確保をやっているということでございます。
 実は、男性と女性に分けたカウントが、各省で数値が取れればいいのですけれども、なかなか全部は取り切れないところがございまして、役所によって分かるところと、役所の中でプログラムによって分かるものと分からないものがあったりして、上半期の44万人で各省の数値を見ると、男女別で把握できた人数は15万人でございまして、そのうち女性をカウントすると4万2千人というのが我々が持っている数字でございます。女性の割合は約28%です。
 先ほどIT技術者における女性の割合は21%という説明が内閣府からありましたけれども、この数字で見ると28%ということです。ただ、これは44万人のうちの15万人の部分しか見ていませんので、それ以外のところは、男女の比率は現時点で我々は分からないということでございます。
 それから、全体では、次のページになりますけれども、新しい戦略として地方創生2.0という取組を政府としては進めているところでございます。
 地方創生2.0というのは石破政権になってから、これまで10年間やった地方創生を1.0とすると、次の新しい10年間で2.0ということですけれども、来年夏までにその基本の構想をつくろうと。今後10年間、集中的に取り組む構想をつくるということを今始めているところでございます。
 ここに書いてあるのは、昨年12月末に、地方創生2.0の「基本的な考え方」をその構想の前に先立つものとして取りまとめています。
 報道等もされていますけれども、楽しいと思える地方をつくっていくとか、あとは地方創生で必ず出てきますけれども、女性や若者にも選ばれる地域というものが重要だろうということで、そういった地域をつくっていくということを書いてございます。
 7ページ目になります。
 「基本的な考え方」ということで、若者・女性から見て「いい仕事」、「魅力的な職場」、「人生を過ごす上での心地よさ、楽しさ」が地方にこれまで足りなかった。問題の根源に有効にリーチできていなかったのではないかという反省。あるいは、地方にとって状況が厳しいところとか追い風となるところとか、いろいろあるのですけれども、例えば、地域間・男女間の賃金格差やアンコンシャス・バイアスなどによって、若者・女性の地方離れが進行しているというような厳しい状況とか、追い風としては、ICT技術の発展でリモートワークの普及とか、NFTを含むWeb3などデジタル技術の急速な進化・発展等がありますよということが書いてございます。
 9ページ目になります。
 「基本的な考え方」についてのところで、まず基本構想を夏につくるものの5本の柱を決めてございます。1つ目が「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生」で、これは魅力ある働き方、職場づくり、人づくりを起点とした社会の変革により、楽しく働き、楽しく暮らせる場所として、「若者・女性にも選ばれる地方」ということでございます。
 それから、今日の話で言うとデジタルの話ですけれども、「デジタル・新技術の徹底活用」ということで4番目の柱として書いてございます。デジタルの人材など、現時点ではこちらに書いていませんけれども、こういったところへも入ってくるような施策としてやっていくということでございます。
 以上でございます。

○山田会長 ありがとうございました。
 本日は、外部有識者のヒアリングとして、長野県塩尻市先端産業振興室の太田様、株式会社MAIAの月田様、paiza株式会社の片山様に御出席いただいております。
 それぞれ女性デジタル人材の育成について、今後どのように取り組んでいくべきかなどについて、資料に沿ってお話をいただきます。
 最初に、長野県塩尻市先端産業振興室の太田様、よろしくお願いいたします。

○長野県塩尻市 塩尻市の太田です。よろしくお願いします。
 早速画面を投映させていただきます。
 女性に特化している取組ではないのですけれども、結果的に女性のデジタル人材の活躍をしながら自動運転とか地域DXを進めている事例として紹介させていただきます。
 塩尻市はこういう自治体です。日本全国にある1,718の基礎自治体のうちの一つで、その中の大宗を占める人口10万人以下のよくある自治体ですけれども、経済的にも財政的にもまだ余裕がある自治体でして、この余裕がある状態の中でいろいろなチャレンジをしていこうということで、今日お話をするKADOとか、自動運転とか、ちょっと変わったところで2地域居住の取組とか、DXセンター、それらを統合的に、有機的につなげながらやっている自治体でございます。
 その中でも一番ユニークな事業で、時間もかかっているのが「KADO」という事業です。簡単に言うと、公設のクラウドソーシングです。政策の目的は、上の四角に書いてあるような、ショートタイムでしか働けない方々が地方都市でも安心して働けるような仕組みがつくれないかということで、当時、厚生労働省の「ひとり親家庭等在宅就業支援事業」を契機に始めた事業で、結果的に15年かかってクラウドソーシングの仕組みをつくって、約400人の地方のデジタルワーカーさんが働いて、年間で3億円の仕事をこなしている。やっている仕事の中に、自動運転用3次元地図を作ったり、行政のDX、地域のDXを支えている仕事がある。後ほど詳しくお話をしますが、これが一番ユニークです。
 実は、それらと同時に、「スナバ」という2地域居住、いわゆる関係人口の皆さんが社会起業を地方でやるときに伴走する施設や自動運転。
 自動運転に関しては、実はKADOのデジタルワーカーが作った3次元地図を使って、最近ですと、オペレーターもKADOでリスキリングされた女性のデジタルワーカーが担ったりと、有機的につながっている事業です。自動運転に関しては、国交省の事業としても採択されていて、国内でもトップクラスの成果が出始めている。
 加えて、KADOをきっかけとして自動運転が始まり、いろいろなアセットが生まれてくる中で、最終的には、先ほど内閣府の方から御説明もあったのですが、地域自らでDXを進めて地域課題を直接解決するような仕掛けができないかということでつくったのが地域DXセンターです。これも一昨年開所しまして、いろいろな企業さんと官民共創で、テクノロジーを使いながら地域の課題を直接、東京とか大都市圏の企業に頼らず地方自らやっていくみたいなことができるチャレンジをしています。
 その中でも一番我々が重視しておりますのが、左側に小さくて見づらいのですけれども、地域の皆さんとの共創です。これがニーズをつかむ意味でも、アイデアを集約する意味でもすごく大事だと思っています。ただ、まちづくりも含めて地域住民の皆さんとの共創はすごく難しいと思っています。なぜならばボランタリーベースになってしまって、継続性難ありというのが我々の課題感だったのですけれども、KADOを通じると、なりわいとして、業務として、デジタルワークを通じて地域DXに住民の皆さんが参加できるという仕組みが今できつつあります。今日はこの話を一通りさせていただきます。今まではサマリーです。
 まず、KADOに関して言うと、これは3年前のこの会でも報告させていただいたのですけれども、コンセプトは変えておりません。皆さんが働きやすい環境をつくれないかということで、行政がリードしてつくってきた仕組みです。このような形で、行政がつくった、安心して働けるコワーキングや、在宅でも働けるようなシステムや機材をそろえた。
 一番大事なのは仕事の確保。リスキリングされた方々、研修を受けた方々が就職するというのは、時短の場合、地方都市はまだ難しいので、受入企業が少ないのが実情です。なので、一旦クラウドソーシングの仕組みを使って、雇用というよりも就労できる環境をつくれないかというチャレンジをやってきました。
 ただ、行政体が自ら業務を受注したり、自営型テレワーカーの皆さん、簡単に言うとフリーランスの皆さんに仕事を発注するという仕組みは取りづらいので、市が100%出捐してつくった振興公社が間に介在して、ここが与信の担保をしながらこのような事業を進めているというものになります。このスキームについては後でお話しします。
 特徴が、専用のコワーキング+在宅のハイブリッドで働いているという点と、準委任契約。昨年フリーランス新法ができたと思うのですけれども、それにほぼ該当するような形で、最賃以上の時間報酬で働ける仕組みで、より多くの方がチャレンジできることができないかと。
 結局、成果報酬が、全く正しい手法なのですけれども、どうしても未経験者の方にはそぐわないケースもあって、時間単価に換算してみたら500円以下になってしまったということも過去にあったので、安心して働けるように、準委任契約、時間報酬でお仕事をお願いするという形を取っています。
 働いている皆さんは、結果的にはワーカー400人のうち85%が女性です。一番多いのは子育て中のお母さんで、左上にあるような週の半分ぐらい働きたい方。あと、若い方も増えています。資格の勉強を取りながらと。ここは男女差はないです。あとは、障害をお持ちの方。手帳を持っている方が3%強で、精神的な理由とかフィジカルな理由で長時間働けない方が全体の3割ぐらいを占めています。これが交じって働いているのがKADOの一番の特徴です。
 この皆さんが安心して働ける環境ということで、イトーヨーカドーが撤退してしまったビルの一画を改装して、150人ぐらいの方が働けるスペースをつくって、ここをベースにしながら、あとは在宅と組み合わせて仕事を展開しています。
 実は、このイトーヨーカドーの空いてしまったビルを行政が購入して使っているのですけれども、こども広場が併設されていたり、認可外の保育園があったりということで、結果的に女性の皆さんが働きやすいというところと、心理的安全性を持って働くチャレンジがしやすい。皆さん、オフィスに通うことに対してはすごい抵抗感をお持ちだということもよくお聞きするので、こんなことがこの中で起こっています。
 経過に関しては、最初に厚労省の事業として始めて、ただ、事業として成果が出るのはすごく時間がかかったので、内閣府とか総務省の御支援をいただきながらここに来ています。
 我々が一番やりたいのは、右上にある、これも男女差とか年齢とか国籍も関係なく、地域において働きたいけれども働けない全ての方が対象です。ただ、今一番困ってらっしゃる方を時代時代でフォーカスしていったら、結果的に女性に行き着いたという側面があります。
 この事業は、仕事が取れないと全く意味がありません。いつも我々が困るのは、地方行政としてやっていて、就労するときに時短で働ける就職先とか、女性を中心に雇用を進めてくれる中小企業は地方都市にはほぼありません。結果的に、いきなり雇用ではなくて、在宅ワーク、自営型テレワークという形で働けないかとチャレンジをしてきたのですけれども、地方都市には仕事を出してくれるところもありません。なので、主に市外、場合によっては県外、海外も含めて、いろいろな仕事を行政の与信を使って獲得できるようになるまでに7年かかりました。その後は、働いている皆さんがQCDを発揮しながら、こんな形で事業規模を拡大してきている。
 2023年に一旦落としているのですけれども、なぜかというと、2022年までは赤字体制のままだったのです。行政がかなりのコストを投入しながら何とか収支を保っていたのですけれども、我々もずっと公的資金を投入できるわけではないので、ソーシャルビジネスとして自立させるというチャレンジを今しています。簡単に言うと、損益分岐点を迎えるための体制変革をしていて、このまま行くと、来期には一旦損益分岐を超えられそうかなという見込みが立ち始めています。
 やっている仕事は、これが一番肝心なのですけれども、多様な仕事をあえて取るようにしています。画一的な仕事の場合はどうしても人を選んでしまうので、未経験者の方も、スキルを持った方も、長時間働ける方も、短時間働ける方も、いろいろな方がチャレンジできるように、例えば、3次元地図データの作成もやりますけれども、バックオフィスや行政関係のアウトソーシングの仕事も、これは地域内経済循環という側面が強いのですけれども、優先的にここに出すようにしています。
 例えば、文科省がやられているGIGAスクールのサポート、ICT支援員も、通常だとベンダーに出さなければいけないものを、塩尻市の場合は市内の小中学校全てをKADOのワーカーが支えています。
 これがすごくやりがいのある仕事だということもよくお聞きしていて、子育て世代の方が多いので、自分たちのお子さんが情報格差に陥らないために我々も頑張っているのだということをお聞きすることもあります。今は、先生たちとの信頼関係もできて、授業のお手伝いだけではなくて、一緒に企画もするような関係性ができています。
 これが一番大事なスキームですけれども、簡単に言うと、クライアントは今50社ぐらい、ここに出ているような企業さんから仕事をいただいて、一人一人働いている皆さんは自営型テレワーカー、フリーランスの方としてやるのですけれども、間に中間組織として市が100%出捐をしている公社が機能しています。
 働いている皆さんはスキルがばらばらです。働ける時間もばらばらです。経験もばらばらです。その皆さんに対して、クライアントさんは一定の納期と品質を要求せざるを得ないので、そのギャップを埋めているのは振興公社で、その中にいるディレクターという17名のスタッフです。いただいた仕事を分解して、プロセスをつくって、品質の管理をしていく。
 実は、このディレクター17名のうち16名が女性です。半分がワーカーとしてキャリアアップをされた方、半分が、例えば、パートナーの方の引っ越しに伴って地方に来たのだけれども、自分がポテンシャルを生かしたり、やりがいを持ってできる仕事がなかったので、KADOで自分たちのポテンシャルを生かしたいですという方。その方々が交じり合って、中でもスキルトランスファーが起こりながら仕事を続けています。
 我々行政はこの事業に対して、一番は場所の提供、環境の提供と仕事の確保を今やっています。自治体連携、横展開をやってきましたが、相当ハードルは高いです。というのも、先ほどグラフを見ていただいたとおり、結果が出るのに数年かかるのですが、地方自治体は首長任期や職員のジョブローテーションに事業継続は左右されていくので、正直なかなか継続が難しく、結果的にほかの自治体が手を下ろした後、その地域に住んでいるワーカーと振興公社が直接契約していることもあって、現地の自治体のサポートが一切ない状態で、塩尻市民は150人だけで全体の4割ぐらい、あとは市外の皆さんと一緒に仕事をやらせていただいている。我々にとって物すごく大事なパートナーなので、これを続けているという状況です。
 仕組みとしてはすごくシンプルなのですけれども、もうかりません。なぜなら、働いている皆さんを生産性とかスキルで選ばないので、どうしても利益率に限界が来ます。なので、企業は仕事を出したいと言っていただけるのですけれども、あまりにも高単価な仕事を取ってしまうと、仕事ができる方を選ばなければいけないですし、リスキリングもすごく時間がかかります。いろいろな方がチャレンジしやすい仕事で、ぎりぎりこの事業が回っていくというところを今やっています。一応、損益分岐を超える見込みも立ち始めているので、今そこに向けてチャレンジをしている。
 ただ、我々はこのKADOは働いている皆さんにとってゴールではないと思っています。ここで安心して働ける場をつくることによって、地方の労働者不足に対して人材を供給していきたいというのは最後の我々の政策の目的です。
 働いている皆さんも、安定性といったものを求めると、どうしても就職をしていただいたほうがいいケースが多いので、もちろんKADOで働きたいという方はずっと受け入れ続けるのですけれども、働きやすい環境をつくって、仕事を通じてリスキリングをしていただいて、自信をつけて、スキルをつけたら、右上にチャレンジをしてほしい。それがKADOの全体の本質です。
 なので、3年前に報告したときから大きく変わっていないのですけれども、成果が出始めているのが、就職先が相変わらず地方都市にはないのですけれども、これはロゴが入っているのでお配りした資料に入れられなかったのですが、KADOを通じて自動運転が始まったり、core塩尻がスタートした後に、クライアント企業が塩尻市内にオフィスの設置をし始めてくれています。サテライトオフィスとして、KADOとパートナーシップを組むためにオフィスを構えてくれて、KADOで育ったデジタルワーカーを自分たちの会社で採用していきたいと。
 中でも一番大きかったのは、昨年、ジェイアール東日本企画の子会社が塩尻に設立されまして、ここ今、彼らの計画では100人規模の雇用を地方都市で生み出したいと言っているのですが、そこの最優先で採用したい人材はKADOで働いているデジタルワーカーと。ようやく我々の政策の目的も達成できるようになってきている。
 ここから先はプラスアルファなのですけれども、今、自動運転だとかいろいろなチャレンジを我々はしていますが、やはり東京から来た企業さんとだけ最初は開発をしてしまいがちなのですけれども、そこに対して、KADOがあることでオペレーションとか事業継続がすごくしやすくなっています。
 何よりも、左側にあるような企業は何を目指して塩尻市に来るかというと、テストベッドとか、いろいろな価値があるのですけれども、KADOです。地方都市でこれだけのデジタルワーカーが数百人単位で活躍しているところはない。しかも、3次元地図も作ります。デジタルデバイド対策もします。住民共創の一番望ましい姿だということで、KADOをきっかけにいろいろな企業とのパートナーシップを組むことができて、結果的に自動運転が促進されたり、いろいろなチャレンジができるようになってきている。
 我々がDXを進めていく中でデジタルデバイド対策はすごく気を遣ってやっているのですが、そのオペレーションを事業者の方とか我々行政がやるのはなかなか難しいので、それを地域の方々が業務として支えてくれている。これは結構大きなDXの推進のエンジンになっているという側面があります。
 最終的にはDXセンターをつくって、冒頭お話ししたような、地方都市でこういうチャレンジをしていきたい。東京でつくられた高いサービスに僕らは高いお金を払い続けなければいけないというのはどこかで変えなければいけないので、コアとなるテクノロジーはないのですけれども、それを持ち込んでいただいて、自分たちでアプリケーションとかサービスを仕立て上げていくときに、KADOでリスキリングされた方々が、単なるオペレーター、ワーカーではなくて、いわゆるエンジニアとして活躍ができるのではないかみたいなことも今考えています。
 先ほど内閣府の資料の中にもあったのですが、それを国を通してだけではなくて、基礎自治体同士の横連携はすごく大事だと思っているので、そんなことをやる場所としてKADOはチャレンジをし始めている。
 まとめるとこんな感じです。KADOをきっかけに自動運転が生まれ、いろいろなものが成果として地域にインパクトを与え続けている。女性のデジタル人材の育成というのは、よく雇用というのがKPIで設定されるのですけれども、もちろんそれは大事なのですが、それ以外の地域インパクト、女性だけではないのですけれども、地域にデジタル人材がそろうことによって地域に対してどんなインパクトが生まれるのかという視点で考えていただけるといいかなと思います。
 少し駆け足になりましたけれども、私からの事例紹介は以上となります。ありがとうございました。

○事務局 次の説明に移りたいと思います。
 続きまして、株式会社MAIAの月田様、御説明をお願いいたします。

○株式会社MAIA 承知しました。画面を共有させていただきます。
 株式会社MAIAから3年前にお話をさせていただきまして、そこからどのような進展があったのかみたいなところもかいつまんでお話をさせていただきます。
 まず弊社が今何をやっているのかというところをお話しします。「女性活躍×地域×IT」ということで、地域でチャンスがなかなかなくて就労ができないとか、子育て中とか、いろいろな制限がかかっている女性に対して全国でリスキリングをしておりまして、そのメンバーの皆様の就労支援をして、デジタル人材として様々な企業もしくは地域で活躍されるというところを担っている会社になりまして、今ちょうど8期目になっています。
 これはもう皆様もよく御存じの日本全体の課題で、女性の未活用労働人口はまだまだたくさんいらっしゃいまして、223万人だと言われていて、ジェンダーギャップ指数が118位でしたよとか、多くの女性がまだまだ家事を担っていますよとか、問題があったり、地域のほうに行くとさらに平均所得などが低くなってしまったり、仕事がなくて地域から都市部へ多くの女性、若手が流出してしまうみたいな課題があるかと思っております。片や、IT人材は全国ですごく不足をしているという状況なので、この3つの課題を一緒に解決できないのかなということで、地域の女性をリスキリングして就労支援をするという形でさせていただいております。
 我々がやっていることはすごくシンプルです。女性を集めて、育てて、「働く」を創るということをしているのですけれども、女性を集める際は、弊社は都内の会社なので、地域の女性たちになかなかアクセスができないのですが、この数年間で様々な自治体と連携しながら女性をリスキリングしてまいりました。
 リスキリングする内容は、ここにSAP、RPA、AIと書いてありますけれども、IT業界でも人材不足が顕著な分野にあえてリスキリングをするということで、リスキリングした人が何とか就労につながるというところに力を入れております。
 今8期目と言いましたけれども、大体7年間で女性に対してお支払いした金額が6.5億円です。本当に様々な働き方をする方がいらっしゃるので、大小はあるのですけれども、平均の年間の増加報酬は1人当たり212万円というところまで来ております。
 これは皆さんの資料にはないですけれども、女性の皆様の内訳で、30代から50代の方が多いです。子育て中の方、もしくは子育てが一段落してもう一度キャリアを形成し直したいけれども、どうしようかなと思っているような方、シングルマザーの方、そんな形の人たちが多いと思います。昔のキャリアはここに書いてあるように様々で、ITの出身だったかというとそうではないというところがお分かりになるかと思います。
 弊社とグラミン日本とSAPジャパンの3社で、2022年にでじたる女子活躍推進コンソーシアムを立ち上げまして、全国の女性の経済的・精神的自立みたいなところと、リスキリングと就労支援を一緒にやらせていただいております。
 でじたる女子活躍推進コンソーシアムには、女性の就労を増やしましょうということで、多くの企業に賛同いただくようになっておりまして、こちらに載せているロゴの会社が育成した女性を活用していただいております。もちろんここに書いていないいろいろな会社様に御支援いただいている状況です。
 右に「アウトリーチパートナー」と書いてありますけれども、先ほど申し上げたように、自治体の皆様と連携をしながら女性の皆さんを育成しているということで、現在、上は岩手県から下は沖縄県まで、いろいろな自治体と組んでやらせてもらっているところです。
 これはその詳細です。自治体との取組は令和4年度、2022年から始まりまして、愛媛県、鹿児島市、沖縄県糸満市を皮切りに令和5年度、令和6年度と、令和6年度はまだ進行中で、ちょうど女性のリスキリングが終了するかしないかぐらいのところですけれども、本当に多くの自治体と一緒にやらせてもらっているという現状になっています。
 でじたる女子の皆様の属性というところで、先ほど年代はお話をしましたけれども、正社員の人、契約社員の人、フリーランスの人、様々な方たちが入ってくださっているのかなと思います。
 結婚とか育児に伴い非正規に働き方を変えた方が多いというのと、就職氷河期世代の方たちも多くて、デジタルスキルを習得して安定した働き方や収入向上を望む声が非常に多いのかなと思います。
 でじたる女子の皆様は、実は4~5か月のなかなかハードなリスキリングの教育を受けられて、合格された人たちが晴れてでじたる女子となられるのですけれども、合格率が75%前後で推移をしているのですけれども、例えば、令和5年度、昨年度のでじたる女子の合格者は260名だったのですが、そのうちどのような働き方を希望しますかと伺うと、柔軟に働けるからフリーランスとして活動したいというところです。右にも書いてありますけれども、リモートワークとか、60時間程度の稼働が可能になるために、育児とか介護と両立しやすいのでフリーランスで働きたいと言われる方が多いというのが弊社の中の女子の皆様のデータです。
 どうしてそういうふうに皆さんは考えるのかなと言いますと、先ほどKADOさんもお話しされておりましたけれども、リスキリングをされたばかりの人は、すぐに正社員として雇用されたり、すぐに即戦力としてどこかの会社に行くというのは正直厳しい現状があります。でも、このように例えば弊社がいろいろな会社と連携をして、例えばシステムをテストしてくださいみたいな委託をいただいて、コンサルタントの下、皆さんの働ける時間帯を組み合わせながらチームで業務を遂行するということをしているのですね。中には60時間働く人も、120時間、またフルタイムで働く人もいろいろといるのですけれども、例えば3人前の仕事を五、六人のチームでシェアをしながら働くという形を取らせていただいております。
 もちろんリスキリングをされたばかりの方たちなので、案件に入ることに慣れていないとか、プロジェクト推進に慣れていない方もいらっしゃるので、リスキリングをしているけれども、案件に入ってからさらに成長できるような仕組みになっている。あとは、QCDみたいな品質とか納品責任は弊社のほうで取るので、企業と本当に上手に連携をしながら皆さんに御活躍いただいているのかなと思います。
 こういう女性を育成するメリットは、弊社が3年間、今8期目ですけれども、いろいろなお話を聞く中で、ちょっとまとめてみますと、男女とか地域における所得格差の是正とか自立の促進にもつながる。最近は、コロナ禍でリモートワークの導入が進んでいるので、住む場所を問わず仕事ができるようになる。あとは、新しい価値観、いろいろな働き方があるのだねというような価値観の提供もできているのかなと思っております。
 女性の皆様、弊社のリスキリングの教育を受けられた人は、例えば、無職からフリーランスになれたり、正社員の方が職場でほかのシステムの部門に異動されたり、パラレルワークを始めましたとか、非正規から転職されて正社員になられる人もいますし、逆に正社員からフリーランス、最近は起業したいなみたいな女性も増えてきていて、かなり意識構造が変わってきているように見受けられます。
 これは、令和4年度と令和5年度の各自治体で受講して合格された方々の内訳と就労率を示しています。皆様がフリーランスで働けるというわけではなくて、正社員の人もいるので、弊社が出す案件に応募しない方もいらっしゃるのですけれども、結構高い就労率を誇っているのかなと。これはひとえに、この活動を理解してくださっている企業さんたちのお力が強いのかなと思っているところです。こんなにすばらしくリスキリングされた女性がいるから、企業としてもそれを活用していくし、一緒に課題解決をしていきたいと思ってくださる出口サイドの企業さんがいらっしゃらないと、やはり就労というのは成り立たないかなと。
 もちろん「就労」という言葉も難しいですが、正規雇用社員だけではなくて、フリーランスとか、パラレルワークとか、副業・兼業とか、様々な定義の下の就労という意味でここでは書かせてもらっていますけれども、やはり多様な働き方がスタンダードだと思っていただくのがすごく大事なのかなと感じております。
 こちらは、沖縄県糸満市でNHKの『クローズアップ現代』にも取り上げられたシングルマザーの方の記事です。彼女はすごく頑張り屋さんで、ITは初めてのところからリスキリングを受けて、今はとある大きなコンサルファームでもう三、四年間働いておりまして、最近は福島に移住をして起業するというところまで、本当に成長されているなと。こういういろいろ頑張ってチャレンジされている女性がものすごく多いというのがよく分かりました。
 ただし、我々も3年間やってみて思いましたけれども、そもそもデジタル環境が変化をしてしまいました。ChatGPTも含めて、世の中の業務の在り方そのものが変わってしまうのではないか、今までの仕事のやり方も全然違うのではないかということで、デジタルがものすごく進んでしまったので、女性だけではないですけれども、業務全般におけるデジタルスキルとかリテラシーがすごく大事になってきておりますし、それに沿って業務の在り方とか人に求めるスキルの在り方も変化しているなというのがよく分かります。
 あと、3年間で見つけた課題の一つとして、私たちは都内の大企業でリモートで働いていらっしゃる女性が多いのですけれども、なかなか地域企業へのマッチングが進まないのです。
 地域企業はそもそもリモートの環境がないとか、正規雇用社員以外の使い方が分からないとか、多様な働き方を知らないみたいな企業もすごく多くて、地域の人材が地域の企業に活用される図ができない。これが今すごく私たちが悩んでいるところです。リスキリングした女性の受け口をいかに広げるか、そこに尽きるのではないのかなと。そのために、リスキリングサイドもそうなのですけれども、制度変革とか企業の変革がまさに必要ではないかと感じているところです。
 今、長野県の佐久市とかでだんだん事例が出てきて、地域で育成された女性の皆様が地域の中小製造業のDXの推進に携わるみたいなことが事例として出てきております。書かせてもらっているアクセンチュアさんという会社とも連携をしながらやらせてもらっています。
 アクセンチュアさんは、リスキリングをされた女性たちに対して、さらなる製造業の知識もリスキリングをしてくださっている。プラス、プロボノの支援もしてくださっている中、リスキリングにリスキリングを重ねた女性たちが地域の中小製造業でDXの推進を手伝う、こんなモデルができてきたわけです。
 課題と、それでも事例が出てきているというところをお見せしたのですが、最後にまとめとして、女性に対する取組としては継続的なリスキリングが要りますと。デジタルの環境が変化するから、1回学んで終わりではなくて、次々と新しいツールの勉強をしなければいけないなと。あと、経済的・精神的自立を促す継続的なマインドセット。やはり続けるということが大事かなと思っております。
 企業に対する取組は、3年前は出なかったお話ですけれども、リモートワークとか時短の人がいるよとか、フリーランスもありだし、多様な働き方があって、そういう人材を企業としても活用できるのだよということの啓蒙をどんどん進める必要があるのではないかなと思っております。
 あとは、フリーランスとか業務委託の方たちも多くなってきていますので、そういう人たちに対する社会保障とか、継続した働き方ができるようなサポートもすごく大事だなと思っております。
 少しオーバーしてしまいましたが、弊社のプレゼンテーションをこれで終わらせていただきたいと思っております。御清聴ありがとうございました。

○山田会長 月田様、ありがとうございました。
 あと、私のほうで接続が時々途切れて申し訳ございませんでした。
 続きまして、paiza株式会社の片山様、よろしくお願いいたします。

○paiza株式会社 皆様、こんにちは。paiza株式会社代表取締役社長の片山と申します。
 本日は、貴重なお時間いただきまして、誠にありがとうございます。
 我々は、「女性のデジタル人材育成に関する提言」ということで、IT人材とかITエンジニア領域のところで提言をさせていただければと思います。
 こちらは、今日のエグゼクティブサマリーになります。
 まず1つ目です。2030年には我が国のIT人材は79万人不足すると言われていまして、その内数として先端IT人材が55万人不足すると言われています。
 そのIT人材は、現在、男女比が8対2というところで先ほど報告もありましたが、これが女性が増えて5対5になると、上記の79万人不足というIT人材不足がほぼほぼ解消できるというふうに計算ができます。
 では、なぜそこを目指す女子学生が少ないのかというところでいきますと、学生のIT業界のイメージがないというところと、ロールモデルがいないというところがかなり課題としてある。実際に学生に話を聞いてみますと、学生はよく、自分が使うスマホアプリと、それをIT業界がつくっている、ITエンジニアがつくっているというところがつながっていないので、なぜ「情報1」を学ぶのかというところがよく分かっていないという課題があります。
 その解決のコンセプトとして、ロールモデルの提示と興味喚起というところかなと。デジタル人材を目指させる前に、まずIT業界に行きたいと思ってもらう学生をどう増やすかというのが重要だと。そういう提言になります。
 最初に我々の簡単な紹介です。paizaは国内最大級のITエンジニア向けの転職・就職及び学習のプラットフォームを運営しております。今、会員数がITエンジニアを中心に学生も含め83万人ほどいるところでございます。
 プログラミングの動画学習、動画を見ながらブラウザ上でプログラミングができるような講座を持っていまして、それは2,300動画ほどあるというものです。
 それを学校のほうには全部無償で提供して、そこから就職につなげるということをやっているのですけれども、23年度には570校、12万名ほどに無償で提供させていただいておりまして、24年度は20万人ぐらいの規模になるというところで推移をしております。
 我々の全体像としては、学習をしてプログラミングのスキルレベルを測って、その上で企業のほうに正社員としてマッチングをする。ロールモデルを出して、スキルレベルと年収が明らかになり、それを教育に戻して、また学びのところに入れていく。そんなサイクルを回している会社でございます。
 我々が取り組んでいる課題の背景です。我が国は2008年をピークに人口減少フェーズに入っているので、放っておくと立ち行かなくなるというところで、どうやって1人当たりの生産性を上げるかということが重要である。そのポイントとしてIT技術による生産性向上なのですけれども、そのIT人材が2030年に最大79万人不足する、これを何とかせねばならないという話です。
 IT人材のところは、先ほど申し上げたように、男女比が8対2ですが、女性が増えて96万になると、この79万人不足がほぼほぼ解消できるということが見えております。その課題はロールモデルがいないというところなので、先輩の姿を見せていくことが重要になるところでございます。
 では、どういうIT人材が必要になるのかというところでいきますと、IPAのほうで出しております先端IT人材が年々、企業側でも必要性がどんどん増しているところがデータからも見てとれます。
 先端IT人材というのはどういう人たちかというと、ここに書いてあるようなAIエンジニア、データサイエンティスト、クラウドアーキテクトやDevOpsエンジニア、サイバーセキュリティーエンジニア、IoTエンジニアというところなのですが、そこに必要とされる要件を見ると、基本的に全てプログラミングスキルが必須となっているところが特徴になっているので、これをどう育てるかというのが非常に重要になっています。
 もう少し俯瞰した視点で、これはデューダに掲載されている全ての職種の求人のうち、ITの技術者が18%ぐらい求人として載っている。その技術者の18%のうち60%ぐらいはプログラミングスキルが必須となる職種で埋められている。合わせると全職種の10%、1割が今やプログラミングスキルが必須になっている。そういう状況が企業側のニーズとしてある。
 新卒においても、IT技術のハイスキルな人材は非常に囲い込みが進んでいまして、パナソニックだと技術者を採用する子会社のほうが初任給が高くなっているという状態が生まれてきたり、我々が運営しているpaizaで、新卒のマッチング領域でも、新卒で初任給1000万というケースが毎年数名は出るという状況になっています。
 実際、レベルが高いSランクというITSSレベル4相当の人であれば、初任給で420万円が平均で出るというところで、通常の学生の1.5倍ぐらいの年収も出ているので、それぐらい企業が欲している領域です。
 これをどうやって増やすかで、女性をそこでより増やすというのが大事なのですが、課題は、学生がIT業界のイメージを持っていない、女性のロールモデルがいないというところです。
 女性IT人材が少ないのはなぜかといいますと、身近にロールモデルが少なくて、自分がIT業界で働くイメージが湧かないというところがございます。イメージが湧かないし、親も知らないので、自分がふだん利用しているアプリ、サービスとIT業界というものが結びつかないので、「情報1」を何で学んでいるのか、その先に何があるのかというのが分からないというところでございます。
 もう一つは、IT業界というのは理系の専門性が必要というイメージがあり、大学で文系を選択するともう就職の選択肢に入らないということがあるので、今は文系でもかなり行く人がいるので、そういうところを解決しなければいけないというところで、解決のために必要なことは、まず女性のIT人材のロールモデルを提示して学生にキャリアイメージを持ってもらう。それから、IT業界の働き方を見せて、学生と親に解像度を上げてもらう。それから、学生がふだん使っているアプリ、サービスとIT業界って、そこでつくっているのだという関連を見せて、興味・関心を高めていく。それから、文系・未経験からでもIT人材・ITエンジニアとして働いている人を見せて、間口が広いということを伝えていく。そういうことが重要だというところです。
 こちらは、内閣府で出されている資料ですけれども、理系の女性をどうやって増やすかというのとほぼ似たような課題構造かなというところでございます。
 我々が、昨年、山形西校という女子高で、ラクスルと協力をして、女性のエンジニアを連れて講演をしたところ、やはり自分に身近なスマホアプリをIT業界がつくっているのを知らないという声が出たり、スーツを着てパソコンで作業をする堅い業界だと思っていたとか、IT業界は理系の人しか行けないと思っていた、そんな声も出ているので、こういったバイアスをどう外すかというのが重要なところでございます。
 そこで、解決のコンセプトです。まず、ロールモデルの提示と興味喚起。デジタル人材、ITエンジニアを目指させる前に、まずIT業界に行きたいと学生に思ってもらって憧れてもらうのが重要だというところです。文系でもプログラミングに楽しく触れる機会を幅広くつくる。それから、女性IT人材のロールモデルを見せて、キャリア教育と接続をしていくというところです。
 それをやるためには、まずプログラミング教育自体が進んではいるものの、まだまだ実際にプログラムを書いてアプリをつくるみたいなところまで学校でできていないので、そういうことをやる。先生の負担を軽減するためにe-ラーニング等を使って負担を軽減して、これができるような形にしていく。その上で、簡単なスマホアプリ、ウェブアプリをつくって、これは自分がふだん使っているスマホと関連しているのだというところをつなげてあげる。e-ラーニングであれば動画等を見せられるので、そこで働いている人たち、IT業界のオフィスや、社員はこんな人たちなのだというのを見せてあげる。また、イベントでロールモデルと触れる機会をつくることが重要かなと考えています。
 概念図としてはこんな感じで、e-ラーニングで負担を軽減しながら教えて、そこで動画等が見られるので、IT企業と連携してオフィスや先輩の姿を見せたり、実際に交流してもらって、そこからまたロールモデルを輩出する。こういうのを回していくのが重要かなと思います。
 コンテンツが重要だと思っていまして、これは山形西校で講演した内容ですけれども、やはり興味を持ってもらうためには、おしゃれなオフィスとイケてる先輩というのがすごく刺さったので、こういった憧れをつくるというのが重要だなと思っています。
 実際の取組事例としては、我々は女子大とか女子高でこういった講演をしていて、目指す人を増やしているのですけれども、山形西校でやったとき、事前にIT業界で働くイメージを持てるかというと、持てる人は18%しかいなくて、63%は持てていないのですね。ただ、実際に授業をやってみると、オフィスもきれいで、服装も意外と自由で、魅力を感じましたとか、ホワイトな職場環境で、リモートだから子育てが楽そうだなというところとか、そういったポジティブなイメージを持ってもらう。
 事前アンケートで、ふだんどういうアプリを使っていますかというと、いろいろなものが出てくるのですけれども、それが結びついていないのですね。授業の後には、こういった身近なアプリがITと関係していると知って驚きましたというような声が出るので、ここで「情報1」と結びつけてあげるというのが非常に有効だというところです。
 授業のときにこういうIT企業のきれいなオフィスを見せると、学生の反応としては、非常にきれいで興味を持ったというところが出てきたり、IT業界で働いている女性の様子を見せてあげると、これはエンジニアだけではない、うちの社員も交じっていますけれども、このようにカジュアルに働けるのだ、結構すてきだなというところで、こういったところで憧れが生まれてくる。
 その後に、実際にエンジニアがこんなことを開発していますよ、こんなリモートの環境ですよ、自分はこんなキャリアの変遷がありましたと話してあげると、高校から強い意志を持ってなくてもエンジニアになる人がいるのだというところで、可能性が広がりますね、リモートワークだと融通が利きやすそうですね、給料がいいのはいいな、そんなところで、割と具体的に詳細にイメージができるようになるというところです。
 これは数をこなせば絶対に解決するというのが見えてきているのですが、障壁がございます。1つは、プログラミングを実際に書かせるような授業が男女問わずできていないというところで、それは教える人の人材不足、教材の不足と、ロールモデル的な目的の不足というところが各分野でございます。また、女性IT人材に絞ると、早い段階、高校ぐらいの段階からこういったことをやっていかないと、なかなか就職の選択肢に入らない。
 こういったロールモデルの提示をするには、IT業界、IT企業の協力は不可欠ですけれども、イベント開催とか動画作成はコストが必ず発生しますが、なかなか売上げにつながらない。かつ、採用企業目線だと、高校~就活はすごくリードタイムが長いので、IT企業単体では実現がなかなか難しい。人材業界も同じようにリードタイムが長過ぎるという課題があるところです。
 そこで、提言でございます。こういったことを国として支援ができるといいのではないかというところで、今やっているプログラミング教育のところをもっとe-ラーニング等を積極的に入れることで、先生がそんなにITリテラシーが高くなくても教えられるようなものをまず導入していくというところですね。
 それから、女性のIT人材のロールモデルの提示とか、そういうところに国で費用負担をしてどんどんそういうことやっていったり、モデル事業者を選定するというところで先ほどのようなことをもっと広めていく。
 それから、女子学生のIT業界への就労支援サポート、ロールモデルの輩出、そういうところを支援する。
 あとは、民間の出身者が情報の教員や支援員になりやすいというところで、先生がIT業界出身だとそこを目指しやすいということもございますので、そういうことをどうやってサポートしていくか。
 それから、出産後のリモートワークをより推進するというところで、そういうことをやっている企業には補助金を出す等、より働きやすい環境をつくっていく。そういうことが重要ではないかというところが我々からの提言となります。
 最後に、実際に働いているエンジニアの声も幾つか取っておきましたので、そこら辺を取ると、先輩がいたというところで目指したというのがありますので、そういった姿を見せることができれば、エンジニアを目指す女子学生は確実に増えると思いますので、この辺りをぜひ御検討いただければというところでございます。
 私からの話は以上となります。御清聴ありがとうございました。

○山田会長 片山様、ありがとうございました。
 それでは、これまでの説明を踏まえ、「女性デジタル人材育成プラン」の見直しに向けた御意見などがある方は、Zoomの挙手機能を用いて挙手をお願いいたします。内閣府の「考えられる論点」も参考にしながら御発言いただければと思います。また、いただいた御質問については最後にまとめて回答していただきます。よろしくお願いします。
 佐々木委員、治部委員、石黒委員の順で御発言をお願いいたします。

○佐々木委員 ありがとうございます。
 画面を共有させてもらいます。
 3つのすばらしい事例を紹介いただきまして、ありがとうございました。
 これは、ぜひ皆さん、今後、女性デジタル人材育成の中にしっかり入れていただければと思いますが、現在の30代においてはリスキリングが非常に重要になってくるのですけれども、今の若い人にハイスペックなデジタルスキルを身につけさせるためには、高校から大学というところにしっかり力を入れていく必要があると思います。
 先ほどのpaiza様の提言に関わってくるのですけれども、いかにロールモデルを示しながら高校から興味を持たせていくかということで、時々お話しさせていただいておりますが、福井県モデル「ふくいGirls未来のテックリーダープロジェクト」を紹介させていただきます。
 ここで重要なのは、福井県の教育委員会が主導しているということです。予算は企業版ふるさと納税を使っています。30名から50名が定員になっておりますが、県立高校の女子高生を選抜して東京研修2泊3日、様々なIT企業、ここにありますが、アマゾンなどにも行き、憧れを抱かせるということをしています。また、Waffleという、女子中高生へのIT・STEM教育の機会を与える活動をされているNPO法人に全面協力をいただいていて、ホームページ作成体験をしています。
 ただ、これだけで終わってしまいますと、東京に行ったまま戻ってこないということがあるので、やはり地元の企業や大学ともしっかり結びつく必要があります。県内研修として、県内大学生にメンターとして参加してもらいながら県内のIT企業によるデータ分析やAIチャットなどを作成しています。
 教育委員会が主導する重要性は、やってみて、高校への影響力が圧倒的に違います。また、高校の先生が教育委員会のほうに出向されているので、生徒への対応の仕方も圧倒的に違います。
 こちらは、Waffleの方がまとめてくださったデータですけれども、この福井県の取組で、参加者のうち、事前と事後で、将来大学で勉強したい分野で工学系とデータサイエンス系が非常に伸びていることが分かりました。
 これはどういうふうに行われているかというと、福井県は教育委員会が企業、県立高校、福井大学に声かけをしています。そして、それぞれがしっかり動いて、高校は保護者、あとメディアでも大々的に扱っていただいて、女子生徒たちのプログラム参加を促進し、周囲のサポートを充実させる。こういうモデルをしっかりほかの県でもやっていただきたいと思います。
 皆さん、お話ししていると、教育委員会がなかなか一緒にやってもらえないというところが多いです。福井県の場合は杉本知事の理解が大きいということも、また、私の出身の地元であるということも大きいと思うので、これが全部の県で当てはまるような施策をぜひ入れていただきたいと思います。
 また、Waffleは、Technovation Girlsという10代のジェンダーマイノリティーを対象とした世界最大級の社会課題解決アプリ開発コンテストというものをしています。ただ、参加者なしの県が東北地方に集中しているので、この辺りも課題かと思います。
 また、先ほどの福井県で行っているプロジェクトからそのまま参加される生徒も多くて、福井県は7名の参加者です。Technovation Girlsに参加すると、卒業生の58%がコンピューターサイエンスのコースに入学しているというデータも出ています。
 こちらは、山田進太郎様が理系を学ぶ女性を応援ということで、奨学金を渡しているのです活動なのですが、どこの県から多く応募がかかっているか、リアルタイムで出てくるのですけれども、福井は17位というデータが出てきたので、すぐ教育委員会のほうに言いましたら、すぐ全体の高校に周知してくれて、2位まで上がりました。やはり教育委員会が関わることの重要性が分かります。
 また、高校と企業をつなぐために、今日の説明の中で全く入ってこなかったのですけれども、経産省と文科省と連携してデジタル部活の普及や指導人材の育成に取り組んでいるデジタル人材共創連盟というのができています。こちらは、経産省が「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」というのを立ち上げまして、私もメンバーでした。半分が女性でした。そういう検討会があって、立ち上がったものです。
 この中で、デジタル活動におけるモチベーションの維持・向上のために、全国規模の大会を開催しています。この大会は、教育や部活動で培った力を使って、自分たちの生活や暮らしがよくなるというところのアイデアや作品を募集しています。この大会のガイドライン部会の部会長になっているのですけれども、その中でもしっかりジェンダーバランスの改善につながるようなガイドラインを設けて進めています。
 実際に第1回の大会だったのですけれども、女子の比率が4割ぐらいということが分かりまして、普通は2割ぐらいになるらしいのですけれども、やはり大会側がしっかり考えてつくることでこういう改善も見られているので、ぜひ制度に入れていただきたいと思います。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
 では、治部委員、石黒委員、桑原委員の順でお願いいたします。

○治部委員 ありがとうございました。
 まず、塩尻市様とMAIA様、数年前にお話を伺っておりまして、その後どのように進捗してきたかということが非常によく分かりました。ありがとうございます。
 特にこの分野ですと、通常の企業活動のように四半期で結果が出るものではないので、長い目でなさっているということ、また、いろいろな課題が分かってきたら、それをこまめに調整していくというところが大変すばらしいなと思ってお聞きしました。
 塩尻市様とMAIA様のお話に共通してくるのは、女性のデジタルスキルはかなりついてきている一方で、需要側、具体的には企業の発注者側の硬直的な人材マネジメントという課題が明らかになったかなと思います。出社前提、残業前提、フルタイムの人でないと仕事を任せられないという、かなり古いというか、コロナ前の考え方かなと思うのですけれども、ここを変えていくことが必要だと改めて思いました。
 ここは公共的な仕事になってくるかと思いますので、恐らく今日は厚生労働省の方とかもいらしているかと思うのですが、政府にどういったことを求めていかれるかということを伺えたらと思っております。
 もう一つ、片山様のお話はとてもすばらしいなと思いました。ロールモデルが可視化されれば、この仕事はいいではないかと思ってやってみようと思う。モチベーションを用いるということは非常に励まされる事例でありました。
 私自身、東京都で全く同じ取組を見たことがあります。東京都の女性活躍の部門とフェイスブックの東京のオフィスが連携しまして、女子中学生にフェイスブックのオフィスや仕事内容を見せてあげるという取組をやりました。これは大変な人気で、もともと用意していた定員を大幅に上回る応募があったので、この辺りはまだまだ需要の喚起が可能かなと思っております。
 ただ一方で、片山様からお話がありましたように、こういった取組にかかるコストというものは、企業の月単位、場合によっては年に何回も決算報告が必要な企業にとっては、これは一体何のためのコストだということを問われたときになかなか難しい。公共的な目的なので政府からの何かが欲しいということだと思うのですが、具体的にこういった取組を全国あまねくやる場合には、企業に対して補助金みたいなものがあればいいのか、もしくは学校にもっと広く横展開しようと思ったときに、既存の事業、例えば総合的学習の時間等々の中にうまく入れられないかといったことも考えられると思うのですが、文科省の方に何か要望とか依頼があればぜひ伺ってみたいと思います。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
 石黒委員、桑原委員、大崎委員の順でお願いいたします。
 石黒委員、お願いいたします。

○石黒委員 ありがとうございます。
 まず、高校の女子学生がなかなか理系に行かないというのは、私は再三申し上げているのですけれども、根本的に日本の入試制度に問題があると思っています。
 そもそも高校で理系・文系に分けて、大学が工学部とか、経済学部とか、そういう単位で入試を行っているというのが、高校生に職業のイメージが湧かない中で、しかも、現状ですと理系のクラスは男性ばかりで、女性が理系に行きたいという思いはなかなかハードルを越えられないのですね。私の場合もそうだったのですが、今もそれは続いていると思います。
 そもそも入試制度をアメリカの大学のように何々大学を受験するという形に変えていかないと、そして、1年、2年が教養という単位の取得の仕方ではなく、工学部のプログラミングなど専門教科を経て、3年生になった段階で初めて、学部を選択するという形にしていかないと、根本的には変わらないと思います。各大学がそれに踏み切るという形もあるとは思うのですけれども、日本全体でそういう仕組みにしていかないと裾野は広がっていかないと思います。それを文科省の方々にやっていただきたい。
 一方で、そうは言ってもなかなか時間がかかるというところで、片山さんがやっていらっしゃる取組は非常に意味があると思いますので、これを広くやっていただけたらなと思います。
 塩尻市の例は、時間がかかったのですけれども、いい形で回っているということで評価ができると思うのですけれども、一方で、地方自治体が個別にこれをやっていると、塩尻市が経験した、求人と求職の需給バランスが悪いところで、各自治体がお金を入れるということが各地で起こると思いますし、地方自治体の経済力によってはこれが達成できないということも今後起こってくると思いますので、いい例だとは思うのですけれども、私は随分前、平井大臣がデジタル大臣だった頃に、中央政府のほうでマッチングアプリのようなものを提供することを提案しました。在宅勤務といっても求人はまだまだ東京に多いので、これは中央政府が主導する形で需給をマッチングさせていったほうがいいと思っていて、そういうのを中央政府と地方自治体と協力しながらやっていただくことのほうが時間的には短く済むし、地方の財政にも負担をかけない。しかも、地方で働く人たちの、地方自治体の経済力の差が反対に格差を生まない形になるので、そういう努力を中央政府はしていただいたほうがいいかなと思いました。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
 桑原委員、大崎委員の順でお願いします。

○桑原委員 ありがとうございます。
 塩尻市様、MAIA様、paiza様から非常に重要な御示唆をいただき、ありがとうございました。労働環境改善をすると女性が増えるはずだという思いを改めて強くしたところです。
 女性比率が全産業の平均より低いということは、ITエンジニアが置かれている状況がまだまだブラックな環境が多く残っているということだと思っております。特にクライアントとの関係でパワハラのお話もまだお聞きしますし、チーム内でのコミュニケーションの障害も男性が多いという中ではあるのではないかと思っています。最悪の場合、職場の中が乱れたり、そういった世界もあるのではないかと思っております。
 こういった女性が増えにくいというところに対して、当たり前のことを普及させるというのは男女局しかできないことだと思っておりますので、引き続き、労働改善、環境改善というところをお願いしたいと思います。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
 大崎委員、お願いいたします。

○大崎委員 ありがとうございます。
 塩尻市さんとMAIAさんとpaizaさんの事例の御報告、大変すばらしいなと思ってお聞きしておりました。
 治部委員もおっしゃっていましたが、3年前にも御報告をいただいて、そこからいろいろとその後も試行錯誤されてこられた状況がよく分かりました。いただいた御提言がすごくリアルで、重要だなと思ったのですね。
 私の関心のポイントは2つございまして、1つは、最初の内閣府さんからの御説明でもありましたとおり、女性デジタル人材の育成というのが出てきた背景は、女性の経済的自立、所得向上。その背景には、コロナ禍で女性への経済的な影響が非常に大きく出て、それは非正規雇用への集中の問題だったり、報酬の低い業種への女性の集中であったり、そういう構造的な問題があるという前提でこういう議論につながっていると思うのです。
 経済的エンパワーメントをデジタルスキルを身につけることによって担保していくかというのがすごく重要だと思います。スキルを身につけても、高単価な業務を受注できなかったり、正規の雇用ではないので雇用が不安定だったり、様々な労働条件、労働保険とか社会保険の適用も含めて、脆弱性が変わらないままデジタルを使った仕事に移行してしまうのでは構造的な問題は解決できません。そこをどうするかというのは非常に大きい問題だと思います。
 MAIAさんからは、女性はフリーランス志向が非常に高いので、それを踏まえて、制度に関する取組を強化していかなければいけないという御提言をいただきました。
 企業に対しても、さっき治部さんもおっしゃっていましたけれども、発注する側の企業のマインドセットや働き方に対する柔軟性が変わってかなければいけないという御提言もいただきました。企業に対する働きかけをどうしていくかというのが次の政策で考えていかなければいけないことかなと思いました。
 もう一つのポイントは、先端IT人材の育成です。企業の技術革新、地域や国のDXの政策など上流のところに関わっていく女性が増えていく必要があり、そういう文脈での人材の育成もすごく重要になってくると思うのです。そうしますと、中学生、高校生ぐらいのときから、専門領域に進んでみようという意欲を醸成していかなければいけないと感じましたので、早い時期からどういうふうに女子に働きかけていくかというのも次の段階で非常に重要なポイントだと思いました。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
 時間も押しておりますが、最後に私から質問というよりもコメントです。
 まず1つは、IT技術者だけがデジタル人材なのかというのは常に問わなくてはいけないかなと思っております。私は大学教員なので、最近はAIでレポートをつくってくる学生をどうするか、そういう問題に対処するためによく知っている教員に聞く。でも、よく知っている教員は別にそれで評価されるわけでもないといったこともあります。今後は、営業なり、事務なり、普通の仕事でもプラスアルファとしてのデジタル人材が必要になってくると思うので、例えば事務をやっていた人がプラスアルファしてリモートワークをするとか、そういう方向もあるのではないかなというのが1つです。
 もう一つは、スキルに見合った対価が得られているのであろうか。新卒でIT技術者として入ったら高給というのは分かるのですけれども、そうではなくて、プラスアルファでデジタル技術を身につけた人が果たしてスキルに見合った対価を得られているのだろうか。
 私は15年ぐらい前に海外に流出した女性調査をしたら、私は派遣社員だったので幾らやっても、パソコンも英語もできない上司の給料の3分の1しかもらえなくて、海外に逃げてきたという事例もあります。治部委員もおっしゃっていましたけれども、職位による格差みたいなのがあったまま無理やりデジタルというのをやったとしても、なかなか行く人が少ないのではないかなという気がしています。
 時間が押しているのに長くなって申し訳ございません。時間の都合上、御質問はこれまでとさせていただきます。御発言し切れなかった内容があれば、後日事務局にメールでお願いいたします。
 では、これまでの御質問などについて御回答を、できれば手短にお願いできればと思います。こちらも挙手でお願いいたします。
 片山様からお願いします。

○paiza株式会社 ありがとうございます。
 治部様から御質問いただいた件ですけれども、我々がやっていることを全国あまねくやる場合にはどういうことが必要かというところです。我々は今、paizaラーニングというe-ラーニングのものを学校のほうに570校くらい入れていまして、今年度だと600校以上というところで入るので、ある程度メディアとしては取れているような状態にはなっているので、もし我々がそれを進めるのであれば、そこの中に企業の動画としてコンテンツを配信するということで、より幅広く流通させることは可能なのかなと思いますので、動画を作成するというところで、作成単位で補助金が出るみたいな仕組みがあると、よりそういうところに企業さんが載せてみようというところで、働き方を見せるみたいな、そういったことも可能になるのかなというのが1つございます。
 もう一つ、学校サイドは学校サイドで、授業の中でちゃんとそういうのを見るという取組をしていただけると、より確実に見ていただけることになるので、いいなというところがあるので、まず幅広くという意味でいくと、動画で流通させる。さらに、そこで興味を持った方は実際にアマゾンに行くとかフェイスブックに行くというところにつなげられると、より目指す人が増えるのかなと。そんなふうに考えております。
 あと、石黒様からあったような話は私も思っているところで、将来の職業が見えない段階で学部を選ぶということはナンセンスだなというところがあるので、そこは我々だけではどうにもならない部分なので、ぜひ取り組んでいっていただけるといいなと思った次第です。ありがとうございます。

○山田会長 ありがとうございます。
 続きまして、月田さん、お願いいたします。

○株式会社MAIA どうもありがとうございます。
 先ほど治部委員からお話がありましたけれども、女性の受け手側になる企業をどういうふうにしていけばいいのか、していけばというのは失礼な言い方ですが、どういうふうに変革していくのかというところで、継続的なマインドセットと、多様な働き方があるのだよ、正規雇用だけではなくて、優秀な人たちがたくさんいて、上手ないろいろな契約を企業サイドでもどんどん採用していきましょうみたいなところをまず啓蒙していかなければいけないなと。特に、地域の企業となると、経営者の皆様の志向とか意思決定がすごく大事になってくるので、そこが非常に大事なのかなと思いました。
 あとは、そういう多様な働き方の女性だけではないのですけれども、女性を活用いただいた企業に対して、例えば女性だとか多様な働き方を推進している企業として何らか表彰なのか、そういう在り方みたいなものをもし企業のほうに提示できたら乗りやすくなるのではないのかなと思っておりますので、全力で企業サイドにこれからは私たちももっと訴えかけていくべきかなと思いました。ありがとうございます。

○山田会長 ありがとうございます。
では、太田様、お願いいたします。

○長野県塩尻市 治部委員と石黒委員から言われたことは共通するので、その2つに対してお話しします。政府への要望です。
 石黒さんがおっしゃったように、我々はすごく苦労しました。コストもかかっています。これをほかの自治体に横展開して個別にやっていくのは相当難しいなと。全く同感です。
 一方で、全てを中央政府ができるかというと、なかなか難しいと思っていて、基礎自治体、我々が持っている一番の価値は、地域に住んでいる方との信頼関係や関係性だと思っています。特に、我々公共の対象になる方はセーフティーネットに近い方が多いのですけれども、生活支援と就労支援はバランスがすごく大事になってくるので、一方的に中央のほうでリスキリングというところにフォーカスし過ぎてしまうと対象者が限られるのかなというのが一つ危惧です。
 ただ一方で、我々基礎自治体だけではできないことがあるので、協調領域と個別領域を設定して、我々基礎自体がやるべき個別領域と、中央のほうでやっていただく協調領域、そこをうまくできると我々もチャレンジしやすくなるのかなと思います。
 一つお願いが、リスキリングの対象者を誰にするかというところが大きなポイントだと思っていて、特に我々公共の場合はセーフティーネットのケースが多いです。恐らく皆さんが想定されているよりもスキルが低い方々が対象になります。パソコンの電源の入れ方が分からないどころか、箱の開け方が分からない。昔、我々はそこから始めました。なので、ロールモデルという話もあったのですけれども、そこが高過ぎると、ギャップが大き過ぎて、そもそもマインドセットとかチャレンジも難しくなってしまうので、恐らく対象となる方々によって施策はちゃんと分けたほうがいいのかなと思います。
 特に我々今一番困っているのは、今日のお話もあったのですけれども、MOOCだとか、高スキルのリスキリングのサービスが多くて、マイナスをゼロにする、職業訓練的なリスキリングのコンテンツがすごく少ないです。ここはぜひ省庁さんを中心に、職業訓練の延長だと思うのですけれども、カリキュラムみたいなものをつくっていただけると、基礎自治体はそれを使ったチャレンジがしやすくなると思います。
 以上です。

○石黒委員 横からごめんなさい。私も、全然リスキリングは地方でということでお話ししているわけではなくて、マッチングのところは、東京の仕事が多いのかなと思っていて、そこを地方がお金を出していろいろやってより政府のほうで協力できるところがあるのではないかなと思いますので、そういう連携をできたらいいなと思っての発言でした。

○山田会長 ありがとうございました。
 時間ももう迫っておりますので、それでは本日いただいた御意見も踏まえ、政府において「女性デジタル人材育成プラン」の見直しの検討を進めていただければと思います。また、内閣官房、太田様、月田様、片山様におかれましては御対応いただきありがとうございました。ここで御退室いただいて結構です。
 時間が押しておりますので、休息なしで進めさせていただきます。次の議題に移ります。
 議題(2)、男女の性差に配慮した施策の推進について議論を行ってまいります。
 昨年の「女性版骨太の方針2024」では、「性差医療」や「ジェンダード・イノベーション」の推進、「男女共同参画の視点に立った政府計画の策定等の推進」などが盛り込まれ、新しい軸として男女の性差に配慮した施策の推進が強調されています。このような取組を一層広げた上でどのような取組が求められるかということについて、専門家の御意見をいただきながら議論を行いたいと思います。
 初めに、内閣府より資料6の説明をお願いいたします。

○大森課長 内閣府でございます。
 1ページをご覧ください。
 まず、女性版骨太の方針の記述でございます。ジェンダード・イノベーションの広がりと、多岐にわたる分野で性差による影響に配慮した施策が求められているということが指摘されているところであります。
 2ページをお願いします。
 そのような観点から、性差に配慮した具体的な取組として、ニーズの違いを把握するということが去年の骨太でございました。それを受けて、男女局のほうから政府計画の策定の状況について調査をしたのが次のページでございます。
 政府計画において女性に着目した施策を含むものが約4割でございまして、これについて、次のページでございますけれども、統計的な男女別のデータを把握しているものが3割にとどまっているというところがございます。これが計画の前提になるものでございますけれども、3割というところであります。
 次のページでございます。
 このような中で、性差に配慮した施策を検討するためには、決定過程において女性の参画を推進ということになるのですが、これは審議会だけではなくて、計画において意思決定となる外部有識者の意見を求める会合という整理でございまして、各省からの申告ベースではあるのですけれども、4~6割となっている会議体は約4割になっております。したがって、これらの割合を高めていけるような、先ほど申し上げたような3つの割合を高めていくような努力が必要になってくるということでございます。
 次のページをお願いします。
 以下のニーズの具体例、有効な分野、留意事項が御議論いただきたい点でございます。
 手短に以上でございます。

○山田会長 ありがとうございました。
 本日は、日本大学の渡辺美代子常務理事にお越しいただいております。
 渡辺理事から、男女の性差に配慮した施策の推進について、今後どのように取り組んでいくべきかなどについて、資料7に沿ってお話をいただきます。
 渡辺理事、よろしくお願いいたします。

○渡辺常務理事 どうもありがとうございます。
 今日はこのような機会をいただきまして、大変光栄に思います。
 それでは、資料を共有させていただきます。
 「ジェンダード・イノベーション」についてお話しさせていただきます。私の今日のお話は日本学術会議第25期、2022年11月に公表した見解の内容を中心にさせていただきます。
最初に、ジェンダー平等について欧米ではどういうアプローチをしてきたか、ジェンダード・イノベーションの提唱者であるスタンフォード大学のロンダ・シービンガーが3つの戦略的アプローチでやってきました、その3つをやることがいかに大事かというお話があったので、これを最初に紹介させていただきます。
 1番目は数値の改善で、これは男女局で積極的にやっていただいているように、例えば、数が少ないところに女性の比率をいつまでにどれぐらいにするかという目標を設定して、それに向かってやっていく。これは基本的なアプローチであると思います。ただし、それだけではなかなかうまくいかないというのが欧米の経験になっています。
 次に、例えば、女性が少ないところに女性を増やしても、その女性たちが働きにくい、そこに継続的にいられないとなると、結局、女性の参画は一時的に終わってしまうので、組織の改革も必要です。いわゆる環境整備ですが、それも同時にしていく必要があります。
 3番目が今日お話しするジェンダード・イノベーションですけれども、この2つだけではなかなか難しくて、例えば、女性を増やすことによってどういうふうに社会に便益があるのか、これもみんなで共有しながらやっていかないと、なかなか進まない。この3つは密接に関係しているので、この関係性を重要視しながら進めることが大事だと述べています。
 次に、ジェンダード・イノベーションとは何なのかということです。これも時期によって表現の仕方はいろいろなのですけれども、一番大事なのは、ジェンダー、つまり性別を重要な要因としてその効果を科学的に検証する。特に重要なのは、なかなか女性参画が進まない科学技術・イノベーションの分野ですよ。
 もう一つ大事なことは、性別、ジェンダーだけではなくて、他の要因、年齢や人種、文化、宗教など、これらの要因との密接な関係も一緒に検証していくことで、社会に便益をもたらすことができるという考え方です。
 また、こういうことを検討するときに、偏った人だけで検討すると結果も偏ってしまうので、全ての人が関わるために、ジェンダーバランスを重視して、女性等の参画も促進していくことが必要です。これがジェンダード・イノベーションの基本的な考え方になっています。
 ここから、学術会議が2022年11月に公表した見解について紹介させていただきますが、これを検討したのは「性差に基づく科学技術イノベーションの検討小分科会」で、左側にありますメンバーで検討いたしました。この見解は、人文・社会科学、生命科学、理学、工学、できるだけいろいろな分野の専門家を集めて議論した結果になっています。
 2021年4月から翌年の6月まで10回議論いたしまして、後半では、この小分科会の上に組織する男女共同参画分科会で2回議論し、2022年11月には科学的助言等対応委員会で議論して、様々な人の意見を入れながらこの見解を作り上げていきました。
 内容は、背景と現状の問題点、それから、提言に近い4つの見解を公表いたしました。この内容について、これから詳しくお話しさせていただきます。
 まず、性の定義です。性に関する言語ですけれども、生物的な性はセックスと言い、社会的・文化的な性はジェンダーと言うのは皆さんよく御存じだと思うのですけれども、その語源についてもしっかり共有するような形にしました。そして、セックス+ジェンダー、全ての性のことをジェンダーということで、ジェンダード・イノベーションのジェンダーは、生物学的な性と社会的な性、両方を含むということになっています。
 次に、性の定義のセックスの部分、生物学的な性の部分です。昔、私が理科で習った頃には、人間はXX染色体を持っている女性とXY染色体を持っている男性に二分されると習ってきましたけれども、現在ではそのような認識ではありません。広い自然界には雄と雌の2型だけではなく、広い性というのがありますよと。人も例外ではなくて、遺伝的性は多様になっています。X1つだけの染色体の方もいれば、XXY染色体を持っていらっしゃる方もいますし、心の性と身体の性が一致しない方もいらっしゃるということで、多様な性があるというのが生物学的には分かるようになってきました。このようなことを基にして、性は連続的な分布をするということで、性スペクトラムの可能性も提案されていて、2015年には『Nature』でもこのような内容が公表されています。
 次に、ジェンダード・イノベーションの内容のお話をさせていただきますが、まずは本日の前半で議論のにもあったデジタル人材についてです。AIにおける公平性というのが非常に問題になっているので、これについて見解の中では問題を指摘しています。
 社会で多く使われている機械学習、これは深層学習というものですけれども、このデータ駆動型アプローチは非常に便利で、皆さんも使っていらっしゃる方が多いと思います。画像認識、音声認識、言語の翻訳などで非常に有用性が確認されて、広く使われるようになっています。しかしながら、メリットだけではなくてデメリットの面もあって、差別や不公平性の問題が多数指摘されています。
 右側の図を見ていただきたいのですけれども、例えば、アフリカ系米国女性の写真が入力層にあるとすると、それに関係する中間層、隠れ層といって人間はどれを使ったかは見ることができないのですけれども、ここのデータにひもづけます。ただし、この中間層というのはあくまでも人間がつくったデータに基づいています。それを入力層からAIがどれに関係するのかというのを計算し、最終的に結果を出力層で出してくる。
 例えば、入力層のところでアメリカ系米国女性の写真があったときに、出力層としてはアフリカ系女性と出てくる場合もあれば、非常に問題となったこの写真、ゴリラと出てきてしまうこともありました。はっきり言って間違いなのですけれども、こういうことも起きてしまうというのが非常に問題視されています。
 つまり、問題としては、AIシステムは学習データとして中間層を使うわけですけれども、ここのデータは誰がつくったのかというと、人間がつくったということになります。AIシステムの精度を幾ら高くしても、人間がつくったデータを参考にするわけですので、解決としては人間個々人の差別意識を解消しない限りはAIの不公平性は解消されない。人間の問題だということになります。
 次が、スポーツと性についてです。これは1つの例を示していますけれども、運動習慣がどれぐらいあるか、例えば全年齢のところを見ていただきたいのですが、男性と女性で比べると、一番大きい差でも5%以内で大きな男女差はないと見えます。ところが、年齢別に見ると、20代では運動なしの割合は男女差が26%もある。70歳以上のシニアの世代では、毎日運動する人の割合が10%以上差があるということで、性別と年齢を組み合わせて見ないと、一体どこに問題があるのか、どこを変えていけばいいのかが分からなくなってしまうということで、こういう分析が大事です。
 それから、公認スポーツ指導者資格を保有している女性比率を見ると、40代、50代は20%以上いるのですけれども、若年層とシニアの層では女性比率が低い。こういうデータを見て、一体どこを変えていくべきかということも検討することができるので、こういう分析が非常に重要になります。
 次に、医学・医療と性の話です。精神神経疾患の男女差を比べてみると、アルツハイマー型の認知症、鬱病、不安障害は女性に多いのだけれども、自閉症スペクトラム障害、注意・欠如移動症、パーキンソン病はむしろ男性に多いということで、これも性差を見ないで全部一種類の人間と見てしまうと、どこを重点的に治療すればいいかが分からなくなってしまう。
 また、心血管疾患は様々な疾患があります。男性は緑、女性はオレンジ色になっていますが、性別と年齢によってこれだけ分布が違うということで、こういう分析をしていくことが非常に重要であるということになります。
 次は、ケアについてです。ケアというのは、世話や配慮、気配り、注意や用心をするという人間の行いという一般的な認識がありますけれども、研究の観点、医学・医療、看護学の観点から見ると、人の苦痛や苦悩の癒しと把握になりますし、社会福祉、社会学の観点から見ると、家庭生活の介護や育児等に焦点を当てていますし、社会制度の観点から見ると、高齢化社会が進んでいる中で、コミュニティーや環境との関わりで複数の行為者が関わる相互行為ということで、観点によって見方がいろいろ変わってきます。
 次に問題なのは、性差による問題、ジェンダー・バイアスです。看護学と医学というのは二元論で語られやすい。医学はCureで、看護学についてはCareで、右側の表を見ていただきたいのですけれども、医師は女性が23%程度で男性中心、看護師と准看護師は90%以上が女性で、女性の職業と見られている。
 月に働く労働時間はほとんど変わらないにもかかわらず、賃金では2倍以上の差があります。医師は男性中心で尊重されるのですけれども、女性中心の職業がなかなか高い賃金に結びつかない。これは日本だけでなく、世界共通の課題で、例えば、アメリカの医学アカデミーでは、看護学分野で学士を持つ男性を増やすことがいい解決ではないかという提言もされています。
 それから、工学の問題です。これは前半のデジタル人材の話と全く同じ課題ですけれども、分野別に見ると、とにかく工学は女性の比率が、学生についても、教員についてもいつも低いというのがここにも示されています。緑が女子学生の比率で、オレンジ色が女性教員の比率になっています。女子学生の比率に対して女性教員がどれぐらいかというのを青で示しているのですけれども、決して工学はその比率においては低いわけではなくて、女性教員になりにくいのは農学、薬学、芸術で、むしろ問題なのですけれども、とにかく数が少ないというのが工学の問題になっています。
 しかしながら、下の図を見ていただきたいのですけれども、女性参画に関しては経済的に非常にメリットが大きいというのが日本のデータから出ています。これは日本の特許100万件を対象に、男性だけで書いた特許と男女で書いた特許の経済的価値を調べたものです。男女で書いた特許の経済的価値は、男性だけで書いた特許よりも54%も経済的価値が高い。特に人数を増やさなくても、男性だけのチームを男女にするだけでこれだけ高い価値が生まれるので、女性が参画するメリットは非常に高いということになります。
 それから、海外の事例を見ると、スペインでは公共交通手段に女性を参画させたところ、社会のニーズをちゃんと把握できたという結果が出ています。都市計画においても同様に、女性が設計に参画することによって安全な都市計画を設計することができたという事例も報告されています。また、欧州の廃棄物管理では、雇用は男性中心なのだけれども、行動や意識を調べると、女性のほうがはるかに高いということで、女性がもっと雇用に参画することによって廃棄物の労働もよくなるだろうという提言がされています。
 次に、ジェンダー統計の必要性です。ジェンダー統計というのは、個人が社会的に置かれている状況が性別によってどう変わるのかというのを客観的に把握して、改善の方向を示すことができるものです。これは国際的な信用にも関わるものなので、日本はなかなか進んでないのですが、これの必要性を提案しています。
 日本の現状はどうかというと、国際比較において多くの項目で日本はデータを出していない。下の表を見ていただきたいのですけれども、これはデータバンクの25歳以上の博士課程の女性の進学率を示していますが、日本はデータを出していないとなっています。多くの国は毎年データをきちんと出している。中国は少ない中2020年にはデータを出しているにもかかわらず、日本は出していない。こういう状況があるので、国際的な信用を得るためにも、ジェンダー統計をしっかり取って世界に示していくことが必要だろうと思います。
 また、文部科学省の全国学力・学習状況調査においても、児童生徒には性別を回答させているにもかかわらず、公表のところでは性別が出てこない。性別ごとの結果が非公表になっていて、男子と女子でどう違うかという差が見えないような状態になっています。
 こういう状況の中で、内閣府男女局が2022年にジェンダー統計ニーズ調査を実施され、これは非常に大きな一歩であると私たちは考え、これの継続をぜひ強く望むということを公表させていただいています。
 ここまでが学術会議の見解の内容です。
 最後に、欧州で性別分析の普及が進んでいるので、少し紹介させていただきます。
 欧州委員会というのは欧州連合の政策執行機関ですけれども、委員の比率は男性が14、女性が13で、非常にジェンダーバランスがよく、そして、委員長がフォン・デア・ライエンさん、テレビによく出てくる女性ですけれども、男女バランスがよくなっています。でも、これは昔からではなく、少しずつよくして、今こういう状況に至ったというものです。
 ここで、Horizon 2020とHorizon Europeという研究費を配分する取組がありますが、2021年に公表されたHorizon Europeはジェンダーバランスとジェンダー分析を提案書に必ず書きなさい、書かないと研究費は出しませんという義務化まで進めているという状況があります。
 実際にこれを進める上で事例が必要だということで、15の事例を出しながら参考情報を提供しています。例えば、海洋科学でカイアシという生物があり、右側を見ていただいて、雌雄に関係なく統計を取ると、二酸化炭素が通常の状況と高い状況では呼吸数はほとんど変わらないというデータになりますが、雄と雌を分けてみると、雄は二酸化炭素が多いところで呼吸数が減り、雌はむしろ上がるという状況が見えてきて、これは性別でちゃんと分析しないと分からなくなってしまう結果です。
 次は、パルスオキシメーターです。新型コロナウイルスで皆さん使った方も多いと思いますけれども、これも人種別に見ると、白人に対しては精度が高いのだけれども、実はアジア人に対しては最も低い。私たちは数字が出るのでこれが正しいと信じてしまいますが、もしかしたらずれているかもしれないという問題が指摘されています。
 それから、ソープディスペンサー、手を出して石けんが出るのも、色の濃い方が手を出すと石けんが出にくい。こういう問題もあり、性別や人種などを重要な要因としていろいろな事象を捉えて分析していくことがいかに大事か、それが社会にとってどれだけ便益をもたらすかということを紹介させていただきました。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

○山田会長 ありがとうございました。
 続いて、関係省庁における取組について御紹介いただきます。
 先日開催した第3回計画策定専門調査会・第40回計画実行・監視専門調査会合同会議においても、消防庁や農林水産省から男女の性差に配慮した取組について御説明がありましたが、本日は厚生労働省より健康分野の取組について御説明いただきます。よろしくお願いします。

○宮本審議官 厚生労働省でございます。
 厚生労働省からは、女性の健康について御報告をさせていただきます。
 女性の健康については、ホルモンバランスの変動により人生の各段階に応じて心身の状態が大きく変化するという特性を踏まえまして、生涯を通じた包括的な支援が必要であると考えております。こうした観点から、厚生労働省では女性の健康の支援のために様々な施策を展開しておりまして、本日資料8に沿いまして御説明をいたします。
 まず1ページ目、女性の健康の包括的支援における研究事業についてでございます。科学的な根拠に基づいた支援施策を立案するために、女性の健康課題に関する科学的知見の収集・整理・分析を進め、女性の健康に関する国民の正確な情報提供や、女性が必要な支援を受けられる環境整備へ向けた調査研究を実施しております。
 引き続き、女性のホルモンの状況が人生の各段階に応じて変化するという特性を踏まえた取組について、女性の年代別の健康課題などの実態を把握しながら、生涯にわたり包括的な支援をするための研究を行っていくこととしております。
 2ページ目、健康増進事業における女性の健康相談についてでございます。健康増進法第17条及び19条の2に基づき市町村が行う健康相談の事業に対して都道府県が補助する事業、及び市町村が行う同様の事業に国庫補助を行っております。
 その中で、女性の健康につきましても重点健康相談として事業の対象になっておりまして、気軽かつ幅広く相談ができる健康相談室等の窓口を設置し、知識・経験を有する医師、歯科医師、保健師、管理栄養士、歯科衛生士等が女性専門外来や健診機関の案内、女性の健康づくりについて生活習慣を勘案した相談や指導を行っているところでございます。
 3ページでございます。「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」というホームページを作成しております。病気について自分自身でチェックすべきポイントと、その結果に応じた受診勧奨やライフステージごとの健康の悩みへの対策等について分かりやすく周知し、女性が自分自身の健康状態について理解を深める一助となるとともに、周囲の人々が女性の健康支援に活用できるような情報提供を行っております。
 4ページ目、女性の健康相談支援体制構築事業についてでございます。令和6年度の補正予算におきまして、女性の健康支援に関する関係者が連携し、必要に応じて適切な受診勧奨が可能な相談支援体制を構築する事業を進めることとしております。
 現状の課題の整理や教育資材の開発、好事例収集等を行い、女性の健康支援に関する資源を可視化し、相談支援員の養成・教育を進め、女性の健康の一層の推進を図ることとしております。
 最後に5ページ目、女性の健康総合センターについてでございます。昨年10月に国立成育医療研究センター内に女性の健康相談センターが設置され、女性の健康や疾病に特化した研究等に加え、女性特有の病態・疾患に関する診療を行う体制が構築されたところでございます。
 また、厚生労働大臣が定める当センターの中長期目標においては、重点的な研究開発の対象として、女性特有の病態・疾患の発症機構、予防法や早期発見及び治療法に関する研究開発や、性差医療に対する研究開発を挙げておりまして、性差医療の視点も含めた女性の健康に関する研究等の推進を図っているところでございます。
 厚生労働省からは以上でございます。

○山田会長 ありがとうございます。
 続きまして、国土交通省より、交通分野の取組について資料9の御説明をお願いいたします。

○荒木室長 国土交通省、荒木と申します。
 本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。
 日本において、男女共同参画に向けた取組が進められていると認識しております。現在、国際機関との連携を通じた機運醸成を含めまして、国土交通省においては国土交通分野、交通部門を含めて取組を強化しております。官民連携を通じた取組を今後とも進めたいと考えております。
 国際機関との連携を通じた機運醸成に関しまして、国土交通省では昨年7月に「ジェンダーと交通」セミナーを開催しまして、交通部門におけるジェンダー主流化をめぐる国際的な議論を国内に紹介いたしました。このイベントは、OECD(経済協力開発機構)の傘下にある、ITFといいます国際交通フォーラムとの連携にて開催しています。
 ITFは、交通分野での知見をシンクタンク的に蓄積しておりまして、多くの関係者と議論するフォーラムも持っており、国土交通省では長く一緒に取り組んでおります。海外の知見をもらって日本の交通分野の政策立案に日頃から生かしています。
 ITFにおいては、ジェンダーと交通の分野でも研究や議論の場を持っておりまして、その知見につきまして、国際部門では持っていたのですけれども、日本の政策立案者や企業にも広く還元したいという思いで開催しております。
 資料にございますとおり、セミナーにおいては交通系企業の幹部の知見なども取り上げながら、女性の移動ニーズに応えたり、女性の労働参加を促進するための取組などを紹介しておりまして、ホームページに会議の資料は全て公開しており、YouTubeにおいて日本語、英語の動画でも配信しているという状況にございますので、もし関心のある方がいらっしゃいましたらご覧いただければ幸いです。
 主な内容につきまして、資料の下にありますとおり、国土交通大臣からも、男女でニーズが異なることをちゃんと反映した上で政策やサービスを提供していきたいといった旨を挨拶したり、ITFからの知見を提供いただいたりしているところです。
 次のページですが、このセミナーを起点といたしまして、国土交通省ではジェンダーの主流化に取り組んでいこうということで、ジェンダーの視点を政策立案に取り入れるために、まず本省の女性職員から構成される懇談会を設置しまして、アイデア・取組について意見交換を行っています。
 この点ですけれども、近年、諸外国を中心に、男女で異なるニーズや課題を踏まえた取組が進められておりまして、ITFの指摘によると、女性の移動パターンの特徴は男性と違うということで、例えば、女性は買い物や送迎といった複数の立ち寄り箇所を伴っている。結果、短距離で多頻度の移動が比較的多いとか、通勤以外の移動が多いということで、通勤時間帯以外の移動がある。もしくは、子供や高齢者連れなど、1人で移動しないという特徴があることが指摘されております。こういった特徴に伴って、女性の移動ニーズを交通やまちづくりに反映する取組が海外で行われているということです。
 こういった事例を踏まえまして、日本においても男女でまずは異なるニーズや課題を把握する。それで、国土交通省の施策に生かしていくということを考えようということで、懇談会で自由なアイデアを集めたというところであります。
 国交省としては、業界も行政も含めて男性の比率が高い分野が多いということで、各種のルールや慣行が男性目線で形成されてきたのではないかという問題意識を持っていまして、このたび女性職員のみから成る懇談会を設置しております。
 また、地方運輸局という出先がありまして、北海道から九州運輸局まで全国の地方運輸局においても、地域の女性の交通事業者の幹部の方を集めた議論なども行った座談会も併せて開催しています。こういった議論を踏まえて、政策立案に生かしていければということを考えているところです。
 国交省としては、官民連携でということで、ジェンダーは単に男女平等を達成するだけではなくて、交通市場の拡大を図るビジネスチャンスにもつながるといったことも併せてPRしております。
 この観点で、資料にも書いているのですけれども、まずJR東日本の女性専用車両とかベビーカーの取組は分かりやすいところだと思うのですけれども、WILLERという会社がありまして、こちらは高速バスの会社ですけれども、女性のニーズを取り込んで女性が使いやすいバスにするということで、安心して使えるようなサービスをいろいろ考えて、女性の高速バスの利用客が7割を占めているということです。顧客が増えることで、企業の収益が上がった、市場が拡大したという事例になっております。
 こういった企業の事例を含めまして、国内でも情報共有や普及啓発の機会を持つとともに、国際機関においても日本のこういったジェンダーの取組を積極的に発信して、貢献していきたいと考えております。
 私からの説明は以上になります。

○山田会長 ありがとうございます。
 それでは、これまでの御説明を踏まえ、御意見、御質問をいただきます。Zoomの挙手をいただきたいのですが、もう時間を過ぎていますので、できるだけ手短にお願いできたらありがたいです。よろしくお願いします。
 佐々木委員、治部委員の順番でお願いします。
 佐々木委員、お願いします。
 止まっていますので、治部委員、先にお願いいたします。

○治部委員 ありがとうございます。
 私からは、内閣府男女局にお願いがあります。それは、性別統計、ジェンダー統計の重要性をいま一度周知していただきたいということになります。
 この件は、審議会の委員の皆様には当たり前のことではあるのですけれども、私は大学の中とか企業向けで研修もやるのですけれども、最近、やや誤った認知が広まっているように感じるところがあります。
 先ほど渡辺先生のお話でもあったのですけれども、男女二元論にしてしまわないほうがいい場合があります。そういったことに配慮しているためと思うのですけれども、男女別に統計を取らないことが人権への配慮であると、ある種曲解、誤解が広がっていることがあって危惧を抱いております。
 一つの事例が、1月の終わりに報道されたのですけれども、防衛省が報道向けに話したこととしまして、自衛隊のハラスメントか何かの事案について、関連の性別を公表しないと。理由は性自認への配慮だということですけれども、これは自衛隊という組織が極めて女性が少ない中で女性が被害を受けやすいという実態を見えなくしてしまうもので、非常によろしくないと私は思ったので、解説をしたことがありました。
 もちろん男女で分け切れない方がいらっしゃることは認識した上で、目下の日本の状況を踏まえますと、ジェンダー統計、性別統計は政策の基礎として大事であるということを、繰り返しになるのですが、きちんと内閣府から発信をお願いしたいというのが私からのコメントです。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
  佐々木委員、大崎委員の順番でお願いします。

○佐々木委員 渡辺先生、どうもありがとうございました。また、各省庁もありがとうございます。国土交通省の「ジェンダーと交通」は非常にいいセミナーなので、皆さん、ぜひ動画を見ていただければと思います。
 共有させていただきます。
 ジェンダード・イノベーションを進めるときに気をつけなくてはいけないところは、やはり生物学的な性と社会的・文化的な性をきちんと区別して考えていかなくてはいけない。かつ、両視点から考えていかなければいけないというものです。また、この2つは必ず一致するものではなく、トランスジェンダーの存在もしっかり考慮していく必要があります。
 また、最近、インターセクシャリティー、交差性を考慮するということが重要視されていて、セックス、ジェンダーではなくて、渡辺先生のお話にもありましたが、民族、地域性、経済的状況、こういう差別が起きそうなところは、差別が増幅されてしまうので、様々な要因を重ね合わせていくことが重要です。
 厚生労働省のところに関わってくるのですけれども、命にも関わってくるので、薬のところはしっかり力を入れていただければと思います。あまり知られていないのですけれども、低用量アスピリンは心筋梗塞の薬として出ますが、有効性は男性にあって、女性はないということが示されています。一方、脳梗塞予防効果や2型糖尿患者における認知症発症リスク低下は女性のほうに有効性があるということが分かっているので、こういうデータがちゃんと社会実装されるようにしていただければと思います。
 あと、早期アルツハイマー治療薬ですが、認知機能低下を防ぐという有効性が男性のほうにはあって、女性にあまりないということも分かってきています。これはアルツハイマーの治療薬ですけれども、有効性が違うことと、別の問題として、レカネマブは早期に介入しなければいけないのですけれども、女性は言語能力が高いので、アルツハイマーの初期の段階はうまく言葉でごまかされてしまうことがあるので、そこも重要です。
 また、血液検査ときに男女別の基準範囲が設定されているのですけれども、この基準範囲は病気が起こるかどうかの目安とは別のものです。例えば、心筋梗塞だと120~129でリスクが増加すると言われる数字ですけれども、実は女性は110~119でリスクが高まるので、介入が遅くなります。一方、男性の場合は150以上からリスクが増加するので、介入が早過ぎる。
 こういうふうに、渡辺先生のお話にもありましたが、データは収集しているのだけれども、男女のデータをまとめて平均を出して分析する。かつ、間違った分析が多い。トレーニングが必要になってきます。
 最近、AMEDが非常に力を入れてくれておりまして、「性差を考慮した研究開発の推進」というサイトができています。ここに様々な海外の状況が載っています。
 本日、参考資料として、AMEDとJSPが昨年度開催したジェンダード・イノベーション意見・情報交換で、ジェンダード・イノベーションを提唱されたロンダ・シービンガー先生の基調講演のスライドも翻訳されておりますので、ぜひご覧ください。
 また、国土交通省にお願いがあるのですけれども、車の安全性の衝突実験用のダミー人形は、女性が小柄過ぎるということ。ドライバー席には男性の人形を使用することが基準になっていて、同じような衝突の場合、女性乗員が重傷を負うリスクが高まってしまっている状況があります。
 平均的な女性の衝突ダミー人形がスウェーデンで作られて、それを様々な座席で行われ、座席に座る場所によって異なるパフォーマンスが得られたということも分かってきています。女性は首のむち打ちが多くて、関節の剛性がちょっと弱いというところで、そういうところも反映したダミー人形を作っていく必要があって、アメリカでは先ほど言った交差性で、年齢も見ていく必要があります。
 このようなお話をしていたら、最近、国土交通省と自動車事故対策機構の自動車アセスメントで改善がありました。まず、運転席に女性のダミー人形が乗るようになりました。男性が乗らなくなって、女性が乗る。助手席に乗っていた女性ダミー人形は搭載せず、後部座席に乗ったみたいです。また、新オフセット前面衝突試験と側面衝突試験というのは、男性のダミー人形がやはり使われています。
 また、むち打ちが多いのは女性なのですけれども、後面衝突頸部保護性能試験は男性のダミー人形が使われているので、やはり乗せる場所、ダミー人形の大きさについても改善をしていただければと思います。
 また、力を入れていただきたいのが、都市の計画・設計です。世界銀行が「ジェンダー包摂を実現する都市の計画・設計ハンドブック」というのをつくっております。ここが、設計事務所において女性が最高ポジションに占める割合が非常に低くなっています。そのために、性別役割分担の意識を持つ男性ユーザーのためにつくられた都市は、女性、女児、性的少数者の都市におけるニーズや関心、日常生活が無視されやすいということがあります。なので、こういう都市設計のところに、女性の研究者だけではなく、ジェンダーの専門家もぜひ入れていただきたいと思います。
 また、バーチャル・リアリティーは、女性のほうが2倍以上の不快感の症状を示すことが分かっています。なぜかというと、開発するときのプロトタイプテストを開発チームでやるのですけれども、そこに女性技術者がもともと少ないということで女性のデータが少なくなっていることも大きいです。
 また、気をつけていただきたい点は、本当にそれが性差なのかということをしっかり見ていっていただきたいということが進めるときにも重要です。例えば、人工関節では、男性と女性の膝には解剖学的に違いがあるということで、男女別の人工関節を販売したのですけれども、これを身長で補正すると差がなくなります。そうすると、背の高い女性に女性用を、背の低い男性に男性用ということがあります。また、白人を対象とした研究が多いので、アジア人の膝は非常に小さいので、立ち上がったり、民族的に使い方が違うということで、そういうことも考慮していく必要がある。なので、男女差がデータに出た場合、すぐそれを性差とするのは危険です。
 また、ジェンダード・イノベーションが少しずつ企業に広まっていて、そのときに非常に問題なのが、性差がないのに、男性物しかなかったから女性物を作りましたというのは、ジェンダード・イノベーションではなく、ステレオタイプを強化してしまうので、そういうこともしっかり考えながら、政策の中にそういうことが起きないように入れていければと思っています。
 以上です。

○山田会長 ありがとうございます。
 大崎委員、お願いいたします。

○大崎委員 どうもありがとうございます。
 内閣府から、男女共同参画の視点に立った政府計画等の策定の状況について御報告いただきました。その中で、政府計画等における女性に着目した政策や男女別データの把握の有無、外部有識者の意見を求める会合における男女バランスを御報告をいただいたのですが、どういう政策領域で女性の構成員が少ない傾向があるのか、どういう政策領域に関して男女別データが用いられていないのかなど、政策領域別にクロスした情報をいただけるとありがたいので、今日でなくてもいいのですけれども、整理して情報をいただければと思います。
 あとは、国交省のITFの交通政策の「ジェンダーと交通」のセミナーは、大変面白い、すばらしい取組だなと思いました。フォローアップとしてジェンダー懇談会も行われているということで、先ほど御説明の中で、移動に関する男女の違いの調査とか統計みたいなものが海外の事例としてあるとのことでした。それを日本でもぜひやっていただきたい。そういったジェンダー視点からの調査。
 あと、ITFが、これは日本語版でもあるようですけれども、交通政策のジェンダー分析ツールキットを出しているようで、そこに政策評価や策定の際のジェンダー指標、データセット、どういうものが男女別で必要なのかみたいなことも示されています。ぜひそれを活用してみてはどうでしょうか。今後、御報告いただけるといいなと思います。よろしくお願いします。

○山田会長 ありがとうございます。
 大変恐縮ですが、時間がもう過ぎておりますので、ここまでとさせてください。御発言し切れなかった部分は、後日事務局にメールでお寄せいただければ幸いです。
 では、何か回答がありましたらお願いいたします。
 大森様、お願いします。

○大森課長 内閣府でございます。
 まず、大崎委員からいただきましたものですけれども、分野別というよりは省庁になってくると思います。それで代用できるかどうかは、また事務的に調整させていただければと思います。
 それから、治部委員がおっしゃったことは確かにおっしゃるとおりで、これも委員御案内のとおりだと思うのですけれども、内閣府は昨年度から男女別データの有無などの状況を把握するためにジェンダー統計の整備状況の調査をしていて、把握状況も公表していて、かつ、それに併せてマイノリティーの方、当事者を対象とした調査で留意すべき事項という調査研究をしています。
 こういうように配慮していかないといけない、でも、それは当然統計を取っていかなければいけないですよということだと思うのですけれども、そこをそういう勘違いがないように周知し続けることはしていかなければいけないと思いますので、そこはやり方も含めて、今後骨太の方針にも書いていく話にもなるかもしれませんので、そこはまた具体的なやり方は中で考えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

○山田会長 ありがとうございます。
 渡辺先生、お願いいたします。

○渡辺常務理事 ありがとうございます。
 治部委員がおっしゃったように、性別を問わないほうがいいのではないかという認識が広がっているというのは私も大変感じています。性別が男女だけではないというと、何か聞いてはいけないような、その誤解が心配です。性別が2種類でないのだったら、男性、女性、どちらでもないという3つの選択肢を提供するなどの、聞き方が必要です。とにかく性別を問うことが大事だというのがどうも皆さんの認識になっていないので、ぜひ内閣府には大事なのだということを強く言っていただく必要があります。むしろ、今、逆方向に動いているのは私も感じています。
 それから、大崎委員からも御指摘がありましたけれども、国交省の取組はぜひ期待したいところです。交通手段や都市計画は実はスペインがすごく積極的に取り組んでいて、私も今日あまり詳しくは説明しなかったのですけれども、ホームページにもどんな分析をしてどんないいことになったというのが出ているので、ぜひそういうのも参考にしながら進めていただきたいと思います。大変期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。

○山田会長 渡辺先生、ありがとうございます。
 社会学の立場から言っても、調査などで男女別の統計が出ていないとほとんど使い物にならないところもありますので、ぜひその点は御指導をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 ほかにありませんでしょうか。
 では、本日いただいた御意見も踏まえ、政府においては男女の性差に配慮した施策の検討を深めていただければと思います。
 また、渡辺理事、厚生労働省、国土交通省におかれましては、御対応いただき、本当にありがとうございました。皆様、本日も活発な御議論をありがとうございました。
 事務局から何かありますでしょうか。

○大森課長 大森でございます。
 本日も活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。今日は局長が途中で抜けてしまって申し訳ございませんが、今日いただいた御意見を骨太の方針あるいはデジタル人材育成プランの改定に生かしていきたいと考えてございます。
 以上でございます。

○山田会長 ありがとうございます。
 司会の不手際で大幅に超過してしまいまして、どうも申し訳ございませんでした。
 これで会議は終了したいと思います。ありがとうございました。